使っ - みる会図書館


検索対象: 半導体の話―物性と応用―
179件見つかりました。

1. 半導体の話―物性と応用―

「使えるか ? 駄目か ? 』 この結論を出すのが、技術者達の職業である事を、彼等は骨まで知っているのだ。 おもしろそう 「面白相な現象だ。一つ研究してみよう」 と、やや趣味の様に何時までも、ただいじっているという様なところは滅多に見られない。何 かの目的意識が非常に強いのである。 一つの発見をして有名になった男が次に行った頃には別の仕事をやっていた。 「君、何故あれをもう止めたの ? 」 と尋ねたら、 ( スキムした ) 「もうミルクから脂を抜いたから」 と事も無げに答えた。この形容は彼等がよく使う。つまり、ある立場の技術者は、研究は相手 の脂を抜いてしまう事と思っている。 トンネル・ダイオ 1 ドだってそうである。一番早くこれに眼をつけ、精力的に検討し、いろ いろに使って来た連中は 「も、ついし 、トンネル・ダイオードの使い場所は大体決った」 と言っている。つまり、何から何まで良いのではない。猛烈な早さで、長所と欠点を見きわめ てしまって、その長所を生かすべきところに積極的に使い、その代わり欠点まで過大評価で誤 認して無駄を生まない様にするわけである。彼等からみたら、我々の研究は随分のんびりして いて、そして寬容たと感じる場合が多い事だろう。これは、技術者への要求が強く、彼等の社 192

2. 半導体の話―物性と応用―

らゆうちょ 時、工業化を躊躇した技術者達は、その躊躇の理由を失ったからである。 という点は、針を使わない接合トランジスタには全く 機械的に不安定である いらない心配である。結品そのものを叩き割るとか、リード線が切れるとかしない限り、機械 的強度に不安は起こらない ーミングは、再現と設計可能性の点で すなわち、電気的フォ 2 製作時の問題 著しい欠点とされていたが、接合トランジスタでは、こういうあやふやな処理は本質的に介在 しない。 もちろん、接合トランジスタでも、当時容易にできるとはいえなかった。歩止りが一〇〇。 ( 1 セントに近いという楽観がすぐ成り立ったわけではない。しかし、少なくとも、設計をする 事ができ、技術の向上で精度や歩止りをあげる事のできる見通しが立っていた。 開 例えば、第図の様な合金法を使うにしても、温度をいくらにすれば、形成される型層の の 代中の正孔濃度がいくらになるとか、中央の z 型の領域の厚さが何十ミクロンになるという予測 ス をする知識をもっていた。だから、まるで見当のつかない点接触トランジスタの電気的フォー ミングとは、本質において違っていた。その上、トランジスタとしての動作のメカニズムが、 ク接合トランジスタでは、ほぼ判 0 ている。だから、動作特性の解析もできるし、何等かの改良 = をする場合にも、めどを立てて方針をつかむことが原理的に可能なのである。 そな つまり、接合トランジスタができた時、はじめて近代工業の対象としての『適格性』が具わ った。こうなると、もう躊躇する理由は全くない。軍の後援によって、大がかりなトランジス 141

3. 半導体の話―物性と応用―

例えば第Ⅱ図の様な方法である。結品を銅板に乗せ、これに針を押しつける。そしてこの針 を少し温める。これには細いニクロム線の様なものを巻いてもよい。こうして、温い針をおし つけ、針と下の銅板との間に、感度のよい電流計を入れる。一般に半導体は、この場合にかな りの電流を流す作用がある。 特に、半導体の性質によって、この電流計の針が右にふれたり、場合によって左にふれたり するから、それによって、その結品の電気的な性質まで判断する事ができる。 この様に熱の作用を使う他に、硫化カドミウムの結品の例で前に触れた様に、光をあてて、 電気の流れ方の変化が生ずるかどうかを見てもよい。これは半導体に特有の性質の一つであ る。結品によってこの性質が強く出るものと、弱いものとがあるし、また、あてる光の色 ( す なわち波長 ) によっても効果は非常に違うから注意が要る。つまり、赤い光で照らしても殆ど 変化が見られないが、黄色とか緑色の光でなら変化が起こるということがあるからである。 話 ここに述べた様なポイントが、与えられた結晶が半導体であるかどうかをしらべる上に我々 対 のが注意をする点である。 工だから逆にいえば、こういった点が、半導体というものの一般的な特色、つまり、半導体ら 学しさという事になるだろう。 物半導体には、前にも述べた様に、極めてヴァラエティが多く、しかも、それぞれが独得の持 2 ち味を具えているから、それぞれの特色に目をうばわれていたのでは、一般的にみた半導体ら しさというものは出てこない。

4. 半導体の話―物性と応用―

「何とかして、真空管と同じはたらきをもった装置を、真空を使わないで、できれば何等か の結品を使って実現したい」 と考えた。 それ以来、彼はさまざまの工夫をしては実験を試みた。彼が考えたのは 『結晶を使って、真空管の様に増巾する事ができないか』 という事であった。つまり、小さい電波を入れて、それが大きい電波となって出てくる様な現 象を、半導体の様なものを使って実現する事ばかり考えて来たのである。 ショックレ 1 の研究所にいたドイツ人の科学者からきいたところでは、ショックレ 1 という 人は、一つの命題について取組んだら、全く寝ても覚めてもその事ばかりに心が占められて、 他の事はあまり考えない様なタイ。フだという。その彼が、一九三五年以来十五年目に、むしろ 夜偶然からその目標を成就したのだから、これはもう『執念』とでも形容した方が良いのかも知 スれない。 ショックレ 1 は、ベル電話研究所へ入っても、自分のグループの研究者達を指導しつつこの 野心から出発した着想を一つ一つ丹念に実験的に検討していた。しかし、残念な事には、彼の レ試みは彼の志に反して殆ど失敗に終わる破目になった。あまりにも失敗が多く、ついには彼の 代グループから人が辞めて行くのを止める術が無くて、ほとほと悩んだ事も随分あったそうであ る。 じようちゃく 例えば、ある時彼は第図の様なコンデンサを工夫した。薄い石英板の一方の側に金を蒸着

5. 半導体の話―物性と応用―

だけをもっ光にガラリと変わる。と同時に、光の向きは出てくる方向にだけしぼられて、殆ど わきに散らないビームとなり、その上非常に強い光に変わる。 これが半導体レーザ 1 の誕生であった。実際、—は砒化ガリウム、ゼネラル・エレクト リックは砒燐化ガリウム (GaAs1-cPæ) 、マサチ = ーセッツ工科大学は砒化ガリウムで、それ ぞれ殆ど独立に、しかも殆ど同時に成果を発表した。エピソード がその裏にいろいろあるけれ ども、残された紙数が減って来たので一つだけ紹介しておく事にしよう。 ゼネラル・エレクトリック社の研究員ホロニアックは、同じことなら、世界で最初に、眼に 見える光の半導体レーザ 1 にしてやろうという野心をもった。此化ガリウムでは赤外線になっ てしまって人間の眼に見えない。そこで砒燐化ガリウムに手をつけた。しかし、強い発光まで は出るのだが、先に述べた様なレ 1 ザ 1 としての特色のある光が出て来ない。そこでホールと いう理論家に相談をした。 「もう一歩なんだけれど、レ 1 ザ 1 にならないんだ」 「æZ 接合の両端の面はどうしている ? 」 「よい平行平面にするために、結品の割れ方の癖を使っている。つまり劈開面を使ってい る」 「それを止めたらどうかな ? 却ってこまかい研磨剤でみがいてやった方が良いのじゃない 「やってみよう ? 」 236

6. 半導体の話―物性と応用―

さて、この公開に対する反応はどうだったろうか ? 当然、一番強い反応は、軍関係の仕事 をしている技術者達の中にあった。この傾向は今日でも変わらないが、可能性をとことんまで 追いつめ一刻も早くものにしようとする米国の技術者共通の雰囲気がその底を流れている事は 間違いない 彼等は二通りの評価をした。良い点を認め、危い点に疑惑をもつ。 第一に、良い方は次の様である。 ①軽くて、小さくて、真空管の様にガラスや真空がいらない点が魅力である。 ②能率が非常に高いと信じられる。 寿命が真空管より長いだろう。 能率がよいというのは、こういう事である。真空管では、フィラメントが赤熱されないと使 用状態に入らない。その中から電子を飛び出させて使うからである。半導体の中には、使うべ き電子はもう常に用意されている。つまり、真空管でフィラメントを熱くするために食わせる エネルギーは、トランジスタの場合全くいらない。真空管の場合、このために使う電力は相当 の。ハーセントを占めている。この事は、トランジスタは、少しの食料でよく働く動物の様に、 極めて能率がよい事を意味している。③の寿命についても、フィラメントが切れる心配が無い ことから当然生ずる予測であった。 これらの事から、軍の技術者達は、トランジスタが、先ず 3 航空機用の電子装置の目方を減らせるか ? という事を考えた。そして 2 腕時計型のラジ

7. 半導体の話―物性と応用―

Ⅱ—tc ・ であらわされる。は電波の速度である。 この場合、反射して帰ってくる電波は実は非常に弱い。この弱いマイクロ波電波をつかまえ る役目に使われるのが鉱石検波器であった。 鉱石検波器には、当時、例えばシリコンに金属の細い針を立てたものが使われていたが、こ の検波器用の材料は、はしめ自然の鉱石の中から選び出され、人間はこれに格別の処理を加え たりしなかったのである。 そのうち、同じシリコンでも、一度真赤になるまで焼いてみたらどうだろうという様な試み が、例えばベル電話研究所などで行なわれる様になった。 今から考えれば随分荒っぽいもので、小さいシリコンの塊りを、石綿の網の上にのせ、下か 蟯らガス ' ( ーナーであぶる。これで、赤熱位まで加熱する事ができる。 の と これをもう一度さましてみると、空気中で焼いたのだから、結品の表面は酸化して、薄い酸 学化膜ができている。この酸化膜を一度例えば弗酸の様な薬品で軽く溶かしてから、その表面に 学針をおしつけてみると、整流性がかなり改善されるという様なことがあった。消極的ではあっ ても、とに角、結品が『天然に与えられたもの』ではなくなり、曲りなりにも人間が手を加え 2 たものになりはじめたのである。 この熱処理には面白いエピソードがある。ベル電話研究所のオールという人は、こういった 7

8. 半導体の話―物性と応用―

4 エレクトロニクス時代の開化 はだか 第図 3 の様に、接合を裸にして電流電圧特性をとってみる。表面にイオンがついてい なければ、の様に、ゝ カってショックレーが式を解いた様に、典型的な特性を示している。と ころが、この p--iZ 接合の表面に。フラスのイオンを 作用させると、突然特性はの様に変化する。こ れはショックレーの基本式では期待できない形で ある。 ところが、光を使う巧妙な実験によって、こう いう状態の時には、⑤図の様に実は型領域の表 面に、æZ 接合のところから Z 型の薄い層が延び 図て来ている事がっき止められた。この Z 型の表面 第層は永久的なもの ( 結品の中にできてしまったも の ) ではなく、表面のイオンをとり去れば同時に 消失する。これを、チャネルと呼んだ。筒抜けに 連絡するといった感じを出すためである。 チャネルの長さは、 Z 接合にかける電圧によ って変化する。そして、 Z 型のチャネルだから、 そこでは電子が電気を運び、こうして表面を伝わ 5 る電流が、図のの様に異常に多くの電流成 ) Q. 冫ノル イオン 十十十十十十十 Q. 電圧 十十十十十十十 (b)

9. 半導体の話―物性と応用―

6 一新しい『光』の時代へ ーー半導体レーザーの誕生。ーー 半導体の未来図を考える時、私達は、『光』というものをもう一度考えなおさなければなら ない。此処では、それから話をはじめよう。 光は、地上で物理的に考えられるものの中で、一番速いものである。一秒間で地球を七まわ り半と教わった様に、秒速三〇万キロメ 1 トルで伝わる。実際に、何物かを『送る』という事 を考える限り、これより速いものは無いわけである。 さて、エレクトロニクスに課せられている一つの問題が、電子計算機のスピ 1 ドをできるだ け早くするという事だったのを読者は覚えておられることと思う。そうすれば、当然この二つ は結びつく筋合いにある。 て め「光で、電子計算機を働かせる事はできないか ? 」 性という事である。 ム月 光を電子装置に使った場合、具合のよい事がもう一つある。それは第図に例を示す様に、 可 の普通の電気回路の様に電線でつなが 0 ている装置 << 、等を働かす場合と、それを光で働かせ .5 る場合とでは違いがあるということである。の様に電線でつなが 0 ているときは、から << お へ、 < から、もとのスイッチへと、逆に辿る路がついている。ところが、光の場合には、

10. 半導体の話―物性と応用―

メラの露出計であればもちろんこれで充分だ。しかし、電子計算機ではこれでは問題にならな 何故なら、今、光で情報を運んでいる電子計算機があるとして、三センチメ 1 トルの距離の ところをその光の情報が走ったとしたら、その間にかかる時間は百億分の一秒である。その情 報を計算処理をしようと思って図の様なものに当てたら、そこで十万分の一秒もかかるとい うのでは、全く話にならない。そんな事なら、もともと光など使わない方がよい位である。 つまり、半導体を使うとすれば、光に反応する速さが、光が情報を運ぶのと同じ位速くなけ れば困るのである。不幸にして、今のところ、これに楽御的な答を与える程動作の早い半導体 の装置はまだ出ていない。 むしろ、普通に電気信号をパルスにして送りこんで、トランジスタやダイオ 1 ドで取り扱う 方が早く、一〇〇〇万分の一秒を切る位の早さまで追随できているから今の段階ではなまじっ か光の信号と電気の信号との変換のために半導体を使わない方がよい位である。これは今後の 研究に期待しなければならない。 そこでもう一つの問題を考えてみよう。通信に使われているのも電磁波、そして光も波長の 短い電磁波だと先に私は書いた。しかし、実はこの二つに非常に大きな違いがある。これが本 質的な事なのである。電波として放送や通信に使われているのは、先ず一定の波長を持ってい る。第図の④の様に、ある波長にだけ成分をもち、こういう波が、空間を伝わって来る。 これに対して、普通のガス入り電球の光を考えてみると、⑤の様に、それはひろい範囲にわ 228