、、等は、光というもので情報が伝えられて行 し くだけで、逆に辿る路はついていない。こういうこ 立 とを、回路では互いに孤立している ( アイソレイト されている ) と表現する。回路が完全に孤立してい は て、望ましい向きにだけ必要に応じて情報を流せる 等 という事が極めて重要な場合がしばしばある。その ためには光が大変重宝だという事である。 何故光ならこれができるかというと、量子論では 合。光というのはエネルギーを持って飛んで行く粒と考 場る えるのだけれども、この粒が。フラスやマイナスの電 のい 光て荷をもっていないという理由によるものである。っ 図 まり、中性の粒を送るのに電場をかける必要はな 第 い。その光の粒が飛んで行って、行った先で情報を 伝える、これで回路は互いにアイソレ 1 トされてい る事が可能である。アイソレートされているから、行った先の方から逆にもどってくるものに よって影響を受ける事が全く無いのである。 もう一つ、光を通信に使う事を考えよう。光というのは、波長の短い電波としても振舞う。 その波長は、マイクロ波などよりはるかに短い。マイクロ波は波長がセンチメ 1 トル位、光は (a) S 光 光 226
S 5 次の可能性を求めて 波のスペクトル たっていろいろの波長の光を持っている。そして、量子論の立場を加味していうと、それらの 違った波長の小さい波の切れつばしが空間に飛び出して行くのだということになる。図の様に それぞれの波の切れつばしが異なった波長をもって、 互いに密接な関係をもたずに飛んで行く。 この比較から判る様に、一口に光も電磁波だと言っ てしまってはその本質的な違いがかくされてしまうわ っ も けである。そこで、欲しいのは@図と同様な性質をも を波 っ光である。これを便宜上、私は『新しい光』と標題 み尾一つこゝゝ、、 ーカカけた。新しい光とは、今使われている電波と同 長よ 波の様な性質をもった光の事を意味している。 の光 さて、半導体で、こういう新しい光が作られたの 一白は、ほんの五年程前の事である。この辺のいきさつを 2 少し述べておこう。 図 第図の様に、一般に半導体の接合を作り、こ の接合に電流の流れ易い方向 ( をプラス、 z を マイナス ) に、、 ( ィアス電圧をかけると、との境目 の辺りから光が出るという現象は早くから見つかって四 いた。これもエレクトロ・レ ノミネッセンスの一種であ 波の伝わり方 (a) 長 (b)
S 5 次の可能性を求めて 光 波長で一 ミリメートルの一〇〇〇分の一位のところである。 波長はこれ程短いけれども、電波 ( 厳密には電磁波 ) という基本の性質は同じ事だという事 は物理学によって理解されている。さて、前にも述べた様に、情報を沢山送るということに関 しては、電波の波長が短い程よい。情報を乗せられる量が、波長の短い程多くなってくるから である。それだから、通信に利用する上から考えると、まず光は非常に都合がよいという事に なってくる。 改まってこんな事を考えなくても、半導体が光に感じる事は判っているし、また、エレクト ルミネッセンスで光を出す事もできる。既に答は出ている様に思われる。たしかに、光を 間感じたり、光を出したりする事はもうできて いる。けれど、ここに述べた様な目的から考 えると、まだ極めて不充分なのである。 判り易い例を一つあげよう。第図の様 図に、硫化カドミウムを用意し、これに光を。 ( 第ッとあてるとしよう。その時、それに応じ て、電流が増加する。しかし、実際は電流の 増え方は非常にゆっくりなのである。ゆっく りといっても、例えば一秒の一〇〇〇〇 ~ 一 〇〇〇〇〇分の一という位の時間である。カ 硫化カドミウム 光 電流の変化
く結品のままで、それに電子線を叩きつけたり、他の光を照射したりしてレ 1 ザー作用を起こ 0 したりする事もできる様になって来た。このレーザー光こそ、『新しい光』なのである。つま り電磁波に対応し、充分な情報を乗せて送る事のできる光である。 はじめは、マイナス二〇〇度位に冷却して、しかも、。ハルス電圧をかけて使うのでなければ うまく行かなかったのが、段々この条件がゆるめられ、連続的に光を出しつづけたり、あるい - はもっと高い温度でも安定に使える様になって来た。 波長の長い方でしきりに半導体レーザ 1 を作ろうとした一つの理由は、光の通信をさまたげ る空気中の光の吸収の問題があるからである。炭酸ガス、水蒸気などのために、光は一般にか こして数ミクロンから一〇ミクロン位 なり吸収をうける。その吸収が比較的少ないのが、波長。 のところで、赤外光線なので、これを『赤外の窓』とよんでいる。赤外線の辺りで使える半導 , 体レーザ 1 の魅力の一つはこれなのである。 一九六五年三月、既に砒化ガリウムレーザーは実用の試験を受けている。地上三〇〇〇〇フ ィートを飛ぶー一〇〇戦闘機と地上との通信を、両方に冷却した砒化ガリウムの接合レ 1 ・ザーを置き、毎秒入〇〇〇回の。ハルスを、一〇サイクルで変調して通信してみた。 声を送る場合、マイナス四度に冷した砒化ガリウム・レ 1 ザ 1 を使ったトランスミッターを 作った。このトランスミッターはせいぜい煙草の箱位にまとめられたそうである。当時、この 調子でいけばジ = ミニにも使うのだという発表があった事を覚えている。しかし、新しい光の ・時 , 代を迎えるまでにまだ沢山の障壁を我々は越えなけれはならない。
6 一新しい『光』の時代へ ーー半導体レーザーの誕生。ーー 半導体の未来図を考える時、私達は、『光』というものをもう一度考えなおさなければなら ない。此処では、それから話をはじめよう。 光は、地上で物理的に考えられるものの中で、一番速いものである。一秒間で地球を七まわ り半と教わった様に、秒速三〇万キロメ 1 トルで伝わる。実際に、何物かを『送る』という事 を考える限り、これより速いものは無いわけである。 さて、エレクトロニクスに課せられている一つの問題が、電子計算機のスピ 1 ドをできるだ け早くするという事だったのを読者は覚えておられることと思う。そうすれば、当然この二つ は結びつく筋合いにある。 て め「光で、電子計算機を働かせる事はできないか ? 」 性という事である。 ム月 光を電子装置に使った場合、具合のよい事がもう一つある。それは第図に例を示す様に、 可 の普通の電気回路の様に電線でつなが 0 ている装置 << 、等を働かす場合と、それを光で働かせ .5 る場合とでは違いがあるということである。の様に電線でつなが 0 ているときは、から << お へ、 < から、もとのスイッチへと、逆に辿る路がついている。ところが、光の場合には、
2 物理学と工学との対話 一方、光のエネルギ 1 というのは、あてる光の波長えと 2 という関係にある。ここでんは。フランクの定数、じは光の速度である。つまり、この光のエネ ルギ 1 が、半導体のエネルギー・ギャツ。フと比べて 0 E Ⅳ・ 、′なと クぐクヾ になれば、価電子帯の電子 ウ由る ジ自れ は伝導帯にあげられるか 0 ンと入 イるを ら、抵抗率の減少が起こる れム のである。半導体の種類に ヾクヾク をジ よって、光による変化を起 モイ こすための光の波長が異な チ ンきるる理由はここにある。つま 引アで残 / ぐクヾ ががり、エネルギー・ギャツ。フ ン品子 結電は、半導体を特色づける ン 大切な量なのである。 最後にもう一つ、大切なア 6 クヾ今◎第 ことをつけ加えねばならな (b) 十 hc 正孔 0 〇 0 0 0 〇 ◎ 〇 0 〇 〇 0 0 0 〇 0 ( 3 )
メラの露出計であればもちろんこれで充分だ。しかし、電子計算機ではこれでは問題にならな 何故なら、今、光で情報を運んでいる電子計算機があるとして、三センチメ 1 トルの距離の ところをその光の情報が走ったとしたら、その間にかかる時間は百億分の一秒である。その情 報を計算処理をしようと思って図の様なものに当てたら、そこで十万分の一秒もかかるとい うのでは、全く話にならない。そんな事なら、もともと光など使わない方がよい位である。 つまり、半導体を使うとすれば、光に反応する速さが、光が情報を運ぶのと同じ位速くなけ れば困るのである。不幸にして、今のところ、これに楽御的な答を与える程動作の早い半導体 の装置はまだ出ていない。 むしろ、普通に電気信号をパルスにして送りこんで、トランジスタやダイオ 1 ドで取り扱う 方が早く、一〇〇〇万分の一秒を切る位の早さまで追随できているから今の段階ではなまじっ か光の信号と電気の信号との変換のために半導体を使わない方がよい位である。これは今後の 研究に期待しなければならない。 そこでもう一つの問題を考えてみよう。通信に使われているのも電磁波、そして光も波長の 短い電磁波だと先に私は書いた。しかし、実はこの二つに非常に大きな違いがある。これが本 質的な事なのである。電波として放送や通信に使われているのは、先ず一定の波長を持ってい る。第図の④の様に、ある波長にだけ成分をもち、こういう波が、空間を伝わって来る。 これに対して、普通のガス入り電球の光を考えてみると、⑤の様に、それはひろい範囲にわ 228
S 5 次の可能性を求めて 子ボルト、シリコンなら一・一電子ポルトという様な値をもっている。 これだけのエネルギ 1 が光のエネルギーとなって吐き出されると、その出て来る光の波長え は、量子論によって次の様に表現される。 1. 24 ・ : ( 26 ) 2 ( 川ロ ) 日 ( こ 表に書いた様に、出てくる光の色は、結品の種類によっていろいろに違っているわけであ る。実際、シリコンから出る光は、とても人間の眼には見えないけれども、燐化ガリウムの場 合は濃いオレンジ色にはっきり見える。さて、こうやって出てくる光が、場合によって、丁度 ハンド・ギャップと対応しないで、もっと波長が長い場合がある。これは、注入された電子、 正孔が互いに結びついて消える時、第図の様に、バンド・ギ 子し ャツ。フ間に介在する不純物のエネルギー準位を、一度経由して 位電合通い 準価結多くるために、図ののエネルギ 1 に対応する波長の光を外に出 ' 再位が の準とすという事がしばしばあるのである。それはさておき、 不 孔のこ 一九六〇年頃から、技術者の間に、砒化ガリウムの結品を使 正物る 子純こ ったダイオ 1 ドを、非常に高い周波数のところで使ってみよう 電不起 という動きが強まっていた。周波数の高いところで使う上に 図 は、どんな特色のある結品がよいかという事を判定する方法が 第 ある。くわしい事ははぶくけれど、結論として砒化ガリウム 伝導帯 231
だけをもっ光にガラリと変わる。と同時に、光の向きは出てくる方向にだけしぼられて、殆ど わきに散らないビームとなり、その上非常に強い光に変わる。 これが半導体レーザ 1 の誕生であった。実際、—は砒化ガリウム、ゼネラル・エレクト リックは砒燐化ガリウム (GaAs1-cPæ) 、マサチ = ーセッツ工科大学は砒化ガリウムで、それ ぞれ殆ど独立に、しかも殆ど同時に成果を発表した。エピソード がその裏にいろいろあるけれ ども、残された紙数が減って来たので一つだけ紹介しておく事にしよう。 ゼネラル・エレクトリック社の研究員ホロニアックは、同じことなら、世界で最初に、眼に 見える光の半導体レーザ 1 にしてやろうという野心をもった。此化ガリウムでは赤外線になっ てしまって人間の眼に見えない。そこで砒燐化ガリウムに手をつけた。しかし、強い発光まで は出るのだが、先に述べた様なレ 1 ザ 1 としての特色のある光が出て来ない。そこでホールと いう理論家に相談をした。 「もう一歩なんだけれど、レ 1 ザ 1 にならないんだ」 「æZ 接合の両端の面はどうしている ? 」 「よい平行平面にするために、結品の割れ方の癖を使っている。つまり劈開面を使ってい る」 「それを止めたらどうかな ? 却ってこまかい研磨剤でみがいてやった方が良いのじゃない 「やってみよう ? 」 236
「砒化ガリウムの接合に電流を流すと、大変強い発光が得られる」 この発表は学会に集まった人達を驚かした。というのは、シリコンやゲルマニウムの様に、 既にかなり馴れ親しんで来た半導体の接合で、そんなに強い発光を見た事が無かったから である。 試みに、発光の能率をしらべて見た。つまり接合に電流を流すということで、これに加 える電気工ネルギーに対して、光となって出てくるエネルギ 1 が、何パーセント位に相当して いるのだろうかという量である。この測定結果も再び予想外であった。三〇 ~ 一〇〇パ 1 セン トという驚くほど高い値だったのである。時には一〇〇パーセントを越した事もある。これは 一見不合理だけれど、実は光が出る時に、その近くのところから熱エネルギーを吸いあげるた めに、見かけ上効率が一〇〇。ハ 1 、セントを越したという様に考えられた。 さて、この異常に高い発光の効率を見た時、かなりの技術者達が 「もしかすると、砒化ガリウムの接合で変わった光源を作れるかも知れない」 という希望を持ったのである。 というのは、その頃、既にレ 1 ザーというものが一方でできていた。これは半導体とは関係 のないものだったけれど、原理的にいうと、電子をエネルギーの高い状態に沢山ためておいて 突然それを低いエネルギ 1 の状態に落すと、そのエネルギーの余りが光になって出て、その光 が更に電子が低いエネルギ 1 に落ちるのを促進するために、極端に強い光となって外に放射さ れるのである。 23 イ