見え - みる会図書館


検索対象: 痕跡 (下)
79件見つかりました。

1. 痕跡 (下)

ー一五で武装している。«æ- 一五はストームのような捜索用の軽量の銃ではなく、 銃身が五十センチ以上ある、強力な戦闘用の武器だ。約三百メートル先の敵でも倒す ことができる。彼には家のなかの敵を一掃するための武器は必要なかった。自分のほ うが先にたてこもっているからだ。ルーディは戸口から、シンクのうえのこわれた窓 大型ごみ収集箱 のところへ移動した。四、五十メートルはなれたダンプスターのかげで、人影が動く のが見える。 <cz—一五をシンクのはしで支え、銃身をくさりかけた窓枠のうえにのせた。スコ ープをのぞくと、ダンプスターのうしろに最初の獲物がうずくまっているのが見え た。黒い服を着た体が、わずかにのぞいている。ルーディは引き金をひいた。銃が鋭 い音を発し、捜査官は悲鳴をあげた。、 へつの捜査官がどこからかとびだしてきて、ヤ シの木のかげに身をふせる。ルーディはそいつも撃った。その捜査官が叫んだり、声 をあげたりするのはきこえなかった。ルーディは窓からバリケードでふさがれた戸口 へ移動し、テープルや椅子を荒々しくけとばし、ほうりなげた。そうして自分が築い たバリケードを突破して家の表側へいき、居間の窓ガラスをわって、撃ちはじめた。 五分もしないうちに、五人の捜査官全員にゴム弾がたたきこまれていた。だが彼らは 前進するのをやめず、ついにルーディは無線で彼らにとまるよう命じた。

2. 痕跡 (下)

ス・ポールソンのむかいの、冷えきった暖炉の前に移動した。 「エドガー・アラン・ポーグのことを話してくれ」マリーノが大声で、ゆっくりいっ た。「きいてるのか、スーズ ? おーい ? きいてるか、スーズ ? やつはあんたの 娘を殺したんだ。それとも、そんなこと気にしちゃいねえのか ? 悩みのたねだった そうじゃねえか。ギリーはよ。ひどくだらしない子だったんだってな。あんたはあの 子のあと始末ばかりやらされて : : : 」 「やめて ! 」彼女は金切り声をあげた。マリーノにむけられた目は血ばしり、大きく このろくでなし 見ひらかれ、憎しみにもえている。「やめてよ ! やめてったら ! の : : : あんたなんか : ・ : 」すすり泣きながら、ふるえる手で鼻をふいた。「あたしの マリーノはひじかけ椅子にすわっている。ふたりともスカーベッタが部屋にいるこ とを忘れたようだ。けれどもマリーノにはわかっている。芝居の筋書がわかってい 下 た。「やつをつかまえてもらいたいだろ、スーズ ? 」と、マリーノがきいた。急に低 跡 くおだやかな声になっている。身を乗りだし、太い腕を大きなひざのうえにのせた。 痕 「どうなんだ ? いえよ」 「ええ」泣きながらうなずく。「ええ」

3. 痕跡 (下)

る。本当のことをいっているようだが、うそのうまい人間ならそう見えるだろう。ス カーベッタは彼女のいうことを信じなかった。 「やつはこの家にきたことあるのか ? 」マリーノは追及の手をゆるめない 「とんでもない ! 」彼女は首を大きく横にふり、腰の前で両手を組んだ。 「へえ、そうかい ? だれのことかわかんねえのに、どうしてそういえるんだ ? 牛 乳屋のことかもしれねえぞ。あんたの例のゲームをするためによったんじゃねえの か ? だれの話をしてるかわかんねえのに、なんで一度も家へきたことがねえといえ るんだ ? 」 「こんな口のききかたをされたくないわ」彼女はスカーベッタにいった。 「質問に答えて」ミセス・ポールソンを見ていう 「ほんとなのよ : ・・ : 」 「ほんとなのは、やつの指紋がギリーの寝室から見つかったことだ」マリーノは語気 下 を荒らげ、彼女のほうへ近づいた。「あのちびの赤毛やろうをここにいれて、ゲーム 跡 をやらせたのか ? そういうことか、スーズ ? 」 痕 「ちがう ! 」涙が頬を流れおちた。「ちがうわ ! あそこにはだれも住んでなんかい 0 よ ) 2 / し おばあさんが住んでたけど、もう何年も前に亡くなったわ ! ときどきだれ

4. 痕跡 (下)

159 痕跡 ( 下 ) したとする。そうした外力を受けた骨のかけらは、砕けたように見えるんじゃないか しら ? 正確なところはわからないけど」 「でも、いったいなぜ病気の女の子に、火葬された骨のかけらがついていたんだろ 一つ ? 」と、アイズカきく 「そうよね」スカーベッタは頭をはっきりさせ、筋道をたてて考えようとした。「そ のとおりだわ。これはホイットビーのほうの証拠ではない。焼けて砕けたように見え るこのかけらは、彼についていたものではない。わたしが見ているのは、彼女につい ていた微物なのよね」 なんて 「病気の女の子のロのなかから、火葬された骨のかけらが見つかったとはー ことだー これはぼくには説明できないな。どうがんばっても。どうですか ? 」 ) 。まかに A 」 「そもそも、なぜ彼女の事件で骨のかけらが見つかったのかがわからなし んなものが見つかってるの ? ギ リー・ポールソンの家のものを、いくつか調べたと きいているけど」 「べッドにあったものだけですよ。キットとふたりでスクレープ室で十時間作業し た。それからまたぼくが膨大な時間をかけて、綿の繊維をつまみださなきゃならなか った。ドクター・マーカスが綿棒を気にいってるおかげでね。きっとティップスの

5. 痕跡 (下)

あびながら、そのときのことを思いだしていた。息をすると、こわばった肺がぜいぜ しい一つ。スカーベッタは、その朝のようにきちんとした服装をしていると、とても見 栄えがした。むこうが気づいていないときに彼女を見ると、ポーグはいつも胸がうず いた。遠くから彼女をながめると、胸の奥に名状しがたい痛みを感じた。ルーシーに も何かを感じていたが、それとはべつのものだった。彼はスカーベッタのルーシーに 対する思いの強さを察知し、それゆえにルーシーに何かを感じていたのだろう。だ が、それはスカーベッタに対して感じるものとはちがっていた。 ホーグはあ 空のドラム缶はすさまじい音をたてて、タイルの床のうえを転がった。。、 わててそれを追いかけた。ドラム缶は移動べッドに乗っているルーシーのほうへむか っていった。二百リットルいりのドラム缶から、ホルムアルデヒドを完全につぎだす ことはできない。だからドラム缶が転がるにつれ、底に残っていた液がこぼれて、と びちった。ポーグがドラム缶をつかまえたとき、顔にしずくがかかった。その一滴が 下 ロのなかにはいり、彼はそれを吸いこんでしまった。しばらくのあいだ彼はトイレで 跡 咳きこみ、嘔吐していたが、様子を見にくるものはいなかった。スカーベッタもこな 痕 かった。もちろんルーシーもこない。トイレのドア越しに、ルーシーの声がきこえ た。彼女はまた笑いながら移動べッドに乗っていた。その瞬間、ポーグの人生がこわ

6. 痕跡 (下)

「百七十センチなかったと思うわ。体重も六十キロ足らずかしら」と、思いだしなが らい , つ。「目の色はおぼえてないわ」 「州の自動車局の記録によると、茶色です。でも実際はちがうかもしれない。身長と 体重については、うそをついてるから。運転免許証は百八十センチ、八十二キロにな ってます」 「じゃ、なぜわたしにきいたの ? 」スカーベッタはふりかえって彼を見た。 「でたらめかもしれない情報であなたをまどわす前に、思いだしてもらおうと思って ね」プラウニングはガムをかみながら、ウインクした。「髪も茶色ということにして いる」そういって、ポールペンでメモ帳をぼんぽんとたたいた。「そういう連中は、 当時どれぐらいの給料をもらってたんですか ? 死体の防腐処理とか、彼が遺体処置 部でやっていたような仕事をして ? 」 「十年近く前の話よね ? 」スカーベッタはまた外の闇に目をやった。フェンスのむこ 下 うのギ リー・ポールソンの家に、明かりがともっている。その庭にも警官がいた。ギ 跡 丿ーの部屋にもいる。カーテンがひかれた窓のむこうで、人影が動いているのが見え 痕 る。エドガー・アラン・ポーグが、ことあるごとにのぞいていたと思われる窓だ。彼 はのぞき見しては、妄想にふけっていたのだろう。家のなかでおこなわれているゲー

7. 痕跡 (下)

間「椅子のうえだ」 「椅子のうえ ? きちんとおいてあったの ? 」 「ああ、わりにきちんとな。服のうえにピストルがのっていた。べッドのうえにおき あがったけど、だれもいなかった」 「べッドの彼女の側は乱れてた ? 寝たあとがあった ? 」 「ふとんはひつばりおろされて、ぐしゃぐしやになってた。でもだれもいなかった。 まわりを見まわしたけど、そこがどこかわからなかった。でもそのうち、タクシーで 彼女の家へきたことを思いだした。前の晩、彼女があんなかっこうででてきたこと ーポンの も。もう一度あたりを見まわすと、おれのほうの側のナイトテープルに、バ グラスとタオルがあった。タオルには血がついてたんで、おれはびびっちまった。お きようとしてもおきられなかった。だからただそこへすわってた。立ちあがれなかっ たんだ」 マリーノは紅茶のカップがいつばいになっていることに気づいた。スカーベッタが 椅子から立って、ついでくれた記憶がないことにぞっとした。自分でついだのだろう かいや、それはありそうにないずっとこの姿勢でべッドにいるような気がする 時計を見ると、ふたりがこの部屋で話をはじめてから三時間以上たっていた。

8. 痕跡 (下)

345 痕跡 ( 下 ) んとに ~ のり・かと , つ」 「おぼえてるのはそれだけよ。彼はあたしのうえにすわった。そのことをいいたくな かったの」苦しそうに息を切らしながら足をふみだし、そこでとまってまたふりむい た。暮色のなかに白くうかんだその顔は、冷酷な表情をたたえている。「だって、か っこわるいじゃない」といって、息をつく。「頭のいかれた、ぶざまなふとっちよが べッドにやってきてさ。それでやつに何もされないなんて。体のうえにすわられただ けなんて」そういってまたむこうをむき、苦労しながら歩きはじめた。 「貴重な情報をありがとう、ヘンリ。まさにすご腕の捜査官ね」 「もう捜査官なんかじゃないわ。やめた。あたし帰るわ」と、あえぎながらいう。 「ロサンゼルスへ。あなたのところで働くの、もうやめた」 ルーシーは丸太にすわって雪をすくい、黒い手袋のうえのそれを見つめていった。 「やめることはできないわよ。だってもうくびになってるんだから」 ヘンリにはルーシーのことばがきこえない 「あなたはくびよ」ルーシーは丸太のうえでいった。 ヘンリは高く足をあげ、ストックをついて、森のなかをすすんでいった。

9. 痕跡 (下)

彼女はいった。本気でかむのが好きになるから。ためしたことがなければ、どんなに いいかわからないじゃない。そういっているあいだも彼女の動きにつれて、暖炉の火 のかげがその肌のうえでゆれた。マリーノはスーズのロに舌をいれてよろこばせよう としながら、彼女につかまれないよう足を交差させて身をくねらせた。いくじなし ねといいながらスーズは彼をカウチのうえにおしたおし、無理やりジッパーをさげ ようとしたが、マリーノはなんとかその手をのがれた。彼女の歯が暖炉の火に白く光 るのを見て、あの歯にかまれたらどんな気持ちだろうと考えていた。 「ゲームはカウチのうえではじまったの ? 」スカーベッタがはなれた椅子からきい 「カウチではその話をしただけだ。それから立ちあがると寝室へつれていかれて、ド アのかげで五分待つようにいわれた。さっきいったとおりだ」 「まだ飲んでいたの ? 」 「もう一杯、つがれてた、たぶん」 「たぶん、じゃだめ。大きなグラスで ? それとも小さいので ? そのときまでに何 杯飲んだ ? 」 トアのかげにいけといわ 「あの女はちまちましたことはやらねえ。でかいグラスだ。、

10. 痕跡 (下)

ざに感じる。あいにくカメラは彼女が感じているものをとらえることができない 「ちょっとトイレにいかせてください」と、ルーシーはいった。「すみません。すぐ ・もどり・ます・から」 ドクター・ポールソンが体をはなしたので、急にまた部屋のなかの様子が目にはゝ った。地面の穴にかけたおおいがとりのぞかれ、そこからはいあがることが許された かのようだった。ルーシーは診察台からおりて、急いで戸口へむかった。ドクター ポールソンはコンピューターのところへいって、ルーシーの正しく記入されたほうの 用紙を手にとった。「シンクのうえのビニール袋にカップがはいってるから」と、彼 は診察室をでようとするルーシーにいった。 、先生」 「用をすませたら、便器のうえにおいておくように」 だがルーシーはトイレを使わず、水だけ流して、べントンにむけて「失礼」といっ 下 た。あとは何もいわずにレシー ーを耳からはずし、ポケットにおしこむ。尿をカッ 跡 プにいれて便器のうえにおくことはしなかった。自分の生物学的特徴を示すものを残 痕 したくないからだ。彼女の Z < がどこかのデータベースにのっているとは思えない か、用心するにこしたことはない。ルーシーは長年、自分のや指紋が、国内お