246 シリーズの世界観を発展させつつェイリアンをゲストス ズは、「プレデター』 ターに迎えたものに近くなっている。本作の中頃で『。フレデター 2 』の設定を 意図的に組み入れたのもその顕著な例ではないか。もちろん『エイリアン』シ リーズへの目配せも怠りなく、『エイリアン 3 』で犬の遺伝子を受け継くト ッグ・ウオリアー〃を登場させ、『 4 』では人間を母とする″ニューポーンー を登場させた前例を踏み、本作ではプレデターの遺伝子を受け継ぐ″プレデリ アン〃が登場するのである。だがこうなると、いよいよ現代の地球上に多様な ェイリアン新種が闊歩する″何でもあり〃状態になってきて、このまま数世紀 後にどこかの外宇宙で人類が″未知の〃怪生物と遭遇し驚愕する物語など、と ′いっか、ど ても成立しがたく感じるのも事実だ。『エイリアン』シリーズは、 こかの宇宙〃の物語として』シリーズと切り離し受け止めた方が賢明 。たつ、つ .0 筆者はそんな、競演を成立させるための策を否定するものではない。残念な がら日本ではプレデター人気は ( 一部の熱烈なファンを除き ) いまひとつであ るが、こうしてエイリアン人気にあやかって一作ごとに『プレデター』 ズが再生していくのを楽しく思っているし、新登場の″ザ・クリーナー〃のキ
184 た。逃げていく彼らが強い咆哮を耳にして振り返ったならばきっと、エイリアン 2 体を倒し終 えたあとにもかかわらず、店内できらめき続けるプラズマの閃光を見たことだろう。 そう、闘いは終わっていなかった。 人間狩りを放棄したクリーナーの前に、あらたなエイリアンが現われたのだ。 天井から出現したその 1 体の鈎爪に、フェイスマスクのレーザー・ポイント射出孔を引っ掛 かれた。照準が死んだ。キヤノン砲自体の機能が失われたわけではないものの、その脅威を悟 ったヌーヴェル・ウオリアー ・エイリアンが右肩のキヤノン砲をむしり取った。受け身を取っ て魔の手を逃れたクリーナーは、今度こそ己が驚愕する番だと知った。 新手のウオリアーは 3 体 ! ェイリアン・ビュ ・モードで視界に捉えられるものの、追跡 モードでは何も反応しない。つまりこいつらは、細胞サン。フルを採取していない別個の成体工 ィリアンだ。地球に降り立ってからっきまとった正体不明の視線と、彼らの存在とがクリーナ ーの中で一本の線に結ばれた。 サンプルを取ったフェイスハガーのほかに、別種の成体工ィリアンが地球に降り立った。 そしてそれは何らかの方法で生殖の方法を編み出し、この町でウオリアー ・エイリアンを繁殖 させているのだ。新ウオリアーはこの 3 体だけではあるまい。ガントレットの核爆弾を使うべ き時が来た : だが、とクリーナーは狂わんばかりの闘争本能を燃え上がらせ、ウオリアー たちもたじろぐまがまがしい雄叫びをあげた。 ウオリアーを産み落とすェイリアン・マス
いすがるように、腹部の孔から軟体質の胎児が顔を覗かせた。 h ィリアン・チェストバスター だ。胎児はあたりを窺うように、血と自身のぬめりに塗れた頭部をゆっくりと巡らせた。 地上での成人儀式で、カーは一匹のィリアを倒した際に、ひとり " 血塗り式を 行なった。現地星の古代文明の戦士も行なう儀式だ。仕留めた獲物の血で顔に紋様を描きそ の成果の証とする。これで一人前の戦士として同胞に受け入れられる。スカーもまた、仕留め たエイリアンの指を絵筆代わりに使い、強酸の体液を顔になそって稲妻模様を描き入れようと うかっ した。儀式の最中だというのに、このため、迂闊にもスカーは戦闘用フェイスマスクを外した。 その時彼はエイリアン・フェイスハガーに襲われた。ェイリアン・エッグに近付いた生物の顔 面に取り付き、ロから寄生管を差し込んでその体内に幼体を宿す、エイリアン成長過程の初期 寄生態だ。自ら手足を使ってエッグから移動してきたフェイスハガーは、不意を突いてまんま とスカーの顔面に取り付いた。もちろんすぐに剥がされ粉砕されたのだが、スカーも気付かぬ 間に寄生卵管を挿入しおおせたわけだ。そのフェイスハガーから寄生した幼体が、いま、チェ ストバスターとしてスカーから″孵化〃した。 チェストバスターとはいえ、仮にエイリアンが生体のまま突如に出現すれば、船内のセンサ ーが警報を鳴らすはずだった。ェイリアンの脅威は重々承知している種族だ。スカーの遺体を 収容した際も、スキャンで寄生の有無を探知している。だがこのチェスト・ハスターはセンサー やスキャンの探知を潜り抜けた。首をもたげあたりを窺ったチェスト・ハスターは、無人の状態 まみ
208 ー・ヒュ ー・モードに固定し、ズームをかける。まだ フェイスマスクのビジョンをプレデタ 雨の降りそ・ほる〈ビッグ・ディーンズ〉の屋上に昇ったプレデター・クリーナーは、町を走査 した。そこかしこに成体工ィリアンの痕跡が認められた。おそらく、ヤッらを生み出すェイリ アン・マスターもどこかにいるはずだ。その変種ェイリアンの細胞サンプルは取っていないか ら、追跡モードで捜し出すことは出来ない。これまでの経験から言って、プレデター・モート とこかにいる。 で発見できるのかも確信が持てない。だが、。 電気の戻らない町並みを見渡す。通りに残った自動車のヘッドライトもほ・ほなくなった。燃 くすぶ えていた発電所もいつの間にか消火活動が放棄され、施設は雨の下で黒煙だけを燻らせ続ける。 まさにガニソンの町は廃墟だ。それでもまだわずかな灯りを残した施設があった。人間用にこ うこうと照らすのではなく、自家発電の能力を残しながら、薄暗く光を内側に吸収している。 さらにズームアップすると、無数のエイリアンの痕跡が感知された。成体工ィリアン : : : ウォ リアー・ ェイリアンが各エリアに蠢き、さらに一画全体をェイリアン向けに環境改善している。 うごめ
21 第 1 章帰還 をェイリアン・ビュ ー・モードに切り替え、左手首に装着したガントレットを右手で操作する。 内蔵のコントロールバネルに指を触れ、左肩に背負ったプラズマ・キヤノンを起動させた。背 中側で砲口を下に向け折り畳まれた砲身が、首を持ち上げ水平に保たれる。マスクの右目脇に 付いた照準機が、赤い 3 点のレーザー・ポイントを発し、標的の探査を始める。この 3 点の光 条が標的を捉えれば、。フラズマ・キヤノンの一撃でエイリアンなど簡単に仕留められるだろう。 3 人が倉庫エリアで見たのは、防護ガラスの砕かれた標本容器と、フェイスハガーが這いず り逃げた跡だけだった。だが跡を追えばフェイスハガーもすぐに退治できる、船内は密室なの だから。注意すべきは、的を外して船体に傷を付けることだ。強力なプラズマ砲の威力で穴で も開けようものなら、航行に異状をきたし乗員が宇宙空間に投げ出されることもあり得る。 照準ビームを壁や天井の暗部に走らせる一人目のクルーは、しかしプラズマ・キヤノンを撃 っことがなかった。ェイリアン・モ ードのまま船内の潜伏者を探る彼は、唐突に現われた″揺 らぐ巨体〃の影に襲われ、鋭い切っ先に身体を貫かれた。フェイスハガーの攻撃より何十倍も 何百倍も強力で、しかもエイリアン・モードでは何も見えなかった。最初の攻撃を免れたクル ーがマスクのモードを切り替える。慌ただしく首を動かす彼の視線に、自分を上回る巨体の影 が飛び込んだ。黒い悪魔が、そこにいオ
ーを真ん中に挟み、一列に連なって階段を昇った。先頭はダラス、しんがりはドリ = ー ー・クリーナーが雨の屋上に到着した。広い敷地面を横切り、 外階段を跳ね上がり、プレデタ 階段に通じる小屋へ走ってドアを蹴った。 中の階段を降りて 4 階まで一気に下がった。この階はエイリアン・モードで走査した通り、 全体がエイリアンの巣と化している。変質したエイリアンの粘着体液が壁を覆い、巨大生物の ひだ 内臓の中のようにゆるやかな襞を作っている。窪みの大小にウオリアーが潜んでいたなら、ビ ジョンが反応してしまう襞は絶好の隠れ簑だ。クリーナーはリスト・フレイドを右腕から伸ばし た。戦闘態勢を取り、巣に踏み込んでいく。 塞がれていない外科室があった。天井は高く、室内も広い。もう一方の出入口に向かった。 ェイリアンの巣窟であることははっきりしているのに、この病院は先程から静かすぎた。 この部屋はエイリアンの巣にしては広すぎる、これは狩場だ , 何かの気配を感じた。 争罠と悟ったものの気配の主は見えない。暗い部屋の中に、・ほやけた揺らぎを見た。その瞬間何 存かがクリーナーの顔面を打ち、吹っ飛んだ彼は壁をぶち抜いて通路へ飛び出た。 章通路に倒れたまま壁の穴を見る。そこからエイリアンの声に別の音響を交えた絶叫が響く。 第光学迷彩の揺らぎに似た何かがクリーナーを追って穴から出てきた。彼と同じか、少し上回る ほうこう 巨体 : : : おそらくエイリアン・マスターだ。再びその咆哮が聞こえた。 みの
水路の合流点 進んできた。ホームレス同士、いつも互いに気遣って生きてきたのだから。 まで歩くと、曲がり角の壁に巨大な影が見えた。入射角の関係で、人影が巨大な怪物のように 壁に映ることはよくある。誰、とその人間は特に警戒もせず声をかける。 それは影ではなかった。後頭部を後ろに長く歪めた黒く巨大な実体が、あたらしい人間の前 に立ちはだかった。人間の顔が歪み、悲鳴を発した。チ = ストバスターのそれに劣らぬ金切り よだれ ・エイリアンは涎をだらだらと溢 声だ。成体になって初めての獲物を真下に睨み、ウオリアー れさせた。 / 、 後退し始めた人間を鈎爪の長い指でつかみ、中空に掲ける。もがき悲鳴をあげ続け ほうこう る人間を引き裂こうとするその時だ、トンネルの奥から咆哮があがった。いくつもの低周波と 高周波が複雑に絡み合った″声〃。ウオリアーはひとつの指令を感知し、つかんだ人間を水路 に投げ捨てた。 トンネルの曲がり角から別のエイリアンが現われた。 もう 1 体のウオリアーでもなく、早くもフェイスハガーから変態を遂げた新生体でもない、 いや、第 1 の、と言い直すべきだろうか。この個体こそ、宇宙船の中 第 5 のエイリアン。 でプレデター・スカーから生まれ出て、ハンター船で 5 体のフェイスハガーを解放した、″最 初の〃ェイリ・アンだった。 そのエイリアンは、人間を投げ捨てたウオリアーに吼えかけ、一撃を食らわせた。外骨格な ェイリアンを壁まで吹き飛ばした。身体も がら肉付きをも感じさせる太い腕は、ウオリアー・
ざまずいて遺体を確認すると、彼は自分のフ = イスマスクを外した。強酸で焼かれた左目を露 にする。過去の戦闘の傷だ。マスクで視覚は補強されるが、外してしまえば彼は片目だった。 殺された同胞のマスクも外すと、自分に装着し、電子コードを接続し直す。 コントロールバネルを操作すると、死者のフェイスマスクは、数時間前の戦闘記録を装着者 の脳裏に再生した・ : ーストノイズが現われ、視覚が復活した。視界が激しくぐらっき、持ち主の動揺を示して いるーーまもなく再生画像に慣れ、映像が自分の体験のように感じられる。 すでに 2 体のプレデターが倒されていた。フェイスハガーの殺し方ではない。もっと凶暴で 凶悪な、まるでエイリアン成体が船内に出現したかのようだ。突然、激しい一撃を食らい、視 ドに切り換わった。周囲を素早く窺う 界を揺らせて床に倒れ込む。ェイリアン・ビュー が、エイリアンの影は捉えられない。何かを感じたのか、一方向に視線が固定される。何も映 ナ 一らないエイリアン・モ ードのまま 3 点レーザー・ポイントの照準が前方を走り、ショルダー・ プラズマ・キヤノンが発射された。そこにエイリアンはいない、プラズマ光の軌跡は壁に直進 ザ し船体に穴を空けた。船が微振動を始め、船内の大気が穴から急激に漏れ出る。ひとつの死体 章 が、穴に吸い込まれ消えた。 左手が壁のパイプをつかみ、視線の主は船外排出を堪えた。自由な右手でコントロールバネ
112 縦横に張り巡らされた地下網の要所に三芒星地雷を仕掛け、エイリアンたちの退路を断ちっ ー・クリーナーは下水道を進んだ。トンネルは水路だけの細いものもあれば、人 つ、プレデタ 間用の通路や手摺を持った幅広いもの、配管や送電線が天井と壁を這うものなどあって様々だ。 いよいよェイリアンが密集する地点に近付いた頃、クリーナーは前方にドーム型の合流点を臨 んだ。自分が来た通路の他に三方向のトンネル、そして四つ辻の中央には宇宙船の研究エリア ほどの空間がある。 格好の場所であり、またエイリアンたちも同じ本能を働かせたのだとクリーナーは知った。 ついに狩りの : : : 闘いの時だ。 待ち構える視線を今度こそ全身にひりひりと受け止め、まず自分の後方に三芒星地雷を仕掛 けた。左手首のスイッチで起動させ、センサー・ビームの線条幕がいま来た道の退路を断つ。 ドーム型合流点に進み、空間の広さと位置関係を頭に叩き込む。三方のトンネルの入口それそ れに、三芒星地雷を投げた。壁に食い込んだこれら 3 つの地雷は、まだ起動させない。警戒を
・エイリアンが現われた。罠にかかって誘き出されたのだ。同時にダ わち天井に、ウオリアー 尊に聞く化け物ー ラスも目を覚まし、首を振って己の状況を理解しようと努めた。 覚えのある怪物を天井に見て、モリーがまた悲鳴を上げる。ヘイ ! と気迫を発し、ケリー がショットガンを宙に投げた。まるで打ち合わせてあったかのように、ダラスが浮かんだ銃を つかんだ。腹筋で上半身を起こし、ダラスはショットガンを撃った。狙ったのはエイリアンで はなく、自分を吊り下げた足許の鎖だ。銃口を近付け確実に当てられる、冷静な判断だった。 轟音とともにダラスは床に落ち、ショットガンが手から抜けて跳ねた。 続いてウオリアーも敏捷に着地した。ダラスを上回る巨体だ。立ち上がったダラスはケリー とモリーを庇う。そのはるか後方で、保安官たちが怪物の出現に驚愕した。 クリーナーはエイリアンを挟んでダラスたちの反対側、すなわちウオリアーの背後に身を躍 らせた。光学迷彩を施しているから人間にもウオリアーにも見えない。腰のベルトの″スラッ シャー・ウィップ〃を握って、・ハックスウイングで腕を廻し、ウオリアーに振り下ろした。グ リップだけの本体からカミソリ鋼の鞭がシュッと伸び、ウオリアーの首に巻き付いた。クリー 変ナーが引き戻すと、それはすつばりとウオリアーの首をはねた。強酸の滴を一度振り払い、鞭 章がグリップに収納される。鞭の本体は数回の使用に耐える特殊鋼だ。ェイリアンの首から漏れ 第た強酸の体液が床を焼いた。 一瞬の出来ごとにダラスたちは呆然とした。その目前で、クリーナーは光学迷彩を解いた。