作家 - みる会図書館


検索対象: 波 2017年1月号
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1. 波 2017年1月号

と思って『ふがいない僕は空を見た』を を読んだあと、読む前よりも世界がすご 読み直してきたんですけど、やつばりぼ くいいものに思えてきたんですよ。なん ろぼろ泣きました。最初に読んだのは、 でこんなに妻いものが書けたんですか。 カエターノ・ヴェローゾのライプを見に窪う 1 ん、一生懸命書いたからかなあ。 大阪に行く新幹線の中だったんですけど、前野みんな一生懸命ですよ ! 大泣きしちゃって、ライプ中も続きが読窪やつばりデビュ 1 作だし、依頼があ みたくて読みたくて。 って書いたものじゃないから、私のそれ 窪それは光栄です。 までの四十年ぐらいの人生が、コンクジ 前野東京に帰る新幹線のなかで、いっ ュースみたいに濃度の高いままで出ちゃ も持ち歩いてるノートに感想を書き付け っているんですよね。 たんです。「こんなにも、家がある。意前野書き始めたきっかけはなんだった 志はあっただろうけど、流されるように、 んですか ? 自然に」。 窪ー文学賞という賞に応募するた 窪さすが、感想が歌詞みたい。 めに書きはじめたんです。十五歳の息子 前野新幹線の外の家々を眺めていて、 が塾に行っている間に、マンションの四 あると思いません ? 「暮らしって、いつばいあるんだなーと畳半でセックスの場面とか書いてて。そ 前野あ、それはめちゃくちゃあります思ったんです。それが本の内容と重なっ れこそ「変態だ」ですよね ( 笑 ) 。 たんですよね。 ね。声を出すために、体の仕組みを知っ 前野いや、ロックですよ ! て、「体つてこんなことができるんだ」 窪わかります。新幹線に乗ってると、 窪そういう前野さんは歌詞をどんな風 という発見があったんですけど、それつ 田んぼがあって、鎮守の森があって、そ に作るんですか ? て中出しにも通じるものかもしれない。 こに家がぼつんとあるような風景が流れ前野そうですね、たとえば今日、窪さ 窪最近の前野さんから、プレイク寸前 ていくじゃないですか。私もよくそこに んと話しているこの la kagüの会場って、 の雰囲気をひしひし感じているんですけ住んでる高校生のこととか想像しますね。 ちょっと飛行機の格納庫つぼいじゃない ど、中出しのおかげだったのか ( 笑 ) 「どんな音楽が好きなのかな ? 」とか ですか。それで「神楽坂から飛行機が飛 「どんな鬱屈を抱えてるのかな ? 」とか。 び立って : : : 」ってフレーズが出てきた 「変態」を楽しむ りとか、かなあ。 前野そういうところから小説が生まれ 前野実は今日も俺、窪さんに会うんだ てくるんですね。俺、『ふがいない、』 窪素敵ですね。誰かの言葉が発想のも 2 ー年ーま ◎松竹プロードキャスティング 企画・原作・脚本みうらじゅん、安齋肇初監督作品 映画「変態だ」は全国順次公開中 www.hentaida.jp 106

2. 波 2017年1月号

なーーしかし素朴すぎる面をもっーー国見の足を引っ張り、 めない。敗戦のとき十四歳だった恩地に、戦争や敗戦の責任 彼を更迭する側にまわる。龍崎は、壹岐とは違い、全面的にを、たった一片といえども、帰することはできないのだから。 肯定されてはいない。 戦争へと向かう戦前の体制と屈折した関係をもつのは、最太陽は大地を照らす 初は労務担当の役員として登場し、御巣鷹山事故のときには では、どのように見ることが正解なのか。私の考えでは、 社長になっている堂本である。堂本は、恩地を「アカーとし『沈まぬ太陽』の真の意味は、これを、戦争一二部作の弁証法 て徹底的に弾圧する。その容赦なさは、彼自身がかって「ア的展開の最終産物であるところの『大地の子』と重ね合わせ 力」だったこととおそらく相関している。戦前、東都大学在て読むことで明らかになる。『大地の子』の陸一心が、どの 学中に、堂本は、学内の共産党細胞のリーダ 1 として、治安ような苦難を経験したかを思い起こすとよい。彼は、日本人 維持法で逮捕されたのだ。天皇の名において裁きがくだされであったがために、文化大革命のとき、辺境の労働改造所に おもて ふかあみがさ る法廷では、「面を見せることは許されず、深編笠をかぶせ送られ、ダム作りの肉体労働を強いられたり、ほとんど人が すあわせ られ、厳冬でも素袷に裸足の草履ばき」という屈辱の姿が強訪れることのない草原で羊飼いの仕事をさせられたりしたの いられた。要するに堂本は転向したのだ。堂本の恩地への仕であった。陸一心は、最終的に、自ら中国に残ることを決意 打ちは、次のような暗黙の叫びの表現だと解釈することがでし、 が制作したドラマ版ではーーー自ら志願して、 きる。お前がカッコつけていられるのは、お前が俺ほどにはかって自分が左遷された内蒙古の製鉄所に赴任するのだった。 過酷な弾圧を受けていないからだ ! お前をなんとしてでも これらは、『沈まぬ太陽』のアフリカ篇で、恩地元が国民 転向させてやる ! もし恩地がどのような辱めにも耐え、信航空に強いられたことと、よく似ているではないか。もちろ 念を貫き通せば、その態度は、意図することなく、堂本の戦ん、恩地は、「自由な労働者」だから、暴力的な強制によっ 前の転向を批判していることになる。堂本が己の過去を正当て、カラチやテヘランに送られているわけではない。しかし、 化するためには、恩地を屈服させる必要があったのだ。 今、会社から逃げない、逃げられないということを前提にす の このように、『沈まぬ太陽』の主要登場人物にも、戦争やれば、会社の人事異動の命令は、絶対に拒否できない。彼は、 子 崎敗戦が影を落としている。が、いずれにせよ、この作品は、懲罰的な意味をこめて、カラチやテヘランといった ( 日本か 戦争三部作に比べると、戦争の関係が間接的であることは否ら捉えたときの ) 辺境の事業所に収容された。会社を中国一

3. 波 2017年1月号

そして老女はそれをすべて見ている。彼らは丁寧に描き分けナイーヴ、あるいは、僭越なものに映りうるのを承知してい られることによって、あたかも知人ででもあるかのように読る。それゆえに、フェルネは、エステールをふつうの市民生 者の前に立ち現れる。私たちと同じ人間が、歴史の流れによ活を送っている人間でありながらも、特異な人物として設定 って、このような生活をしていることの不公平さ、それと同している。エステールは「同情心からジプシーに近づこうと 時に、このような生活をしながらも、私たちと同様に産声をしたのではなかった」。彼女は「人生には本が必要だし、生 上げて生まれ、熱い肉体で若さを謳歌し、そして枯れて死きているだけでは十分じゃないと思うから」というその信念 んでいくという、人間の条件の絶対的な公平さも立ち現れに突き動かされている。狂信者だともいえよう。だが宣教師 る。 は考えを植え 0 けようとするが、彼女は読書という行を通 勿論『本を読むひと』のような主題を扱った小説は批判にじて、人が考えることができるようにしたいのである「人 晒されうる。「よそ者」のエステールがジプシーの子供らに間は考える葦である」。アンジェリーヌばあさんは彼女の特 本を読み聞かせ、最終的には小学校に通わせることにどんな異さを敏感に嗅ぎつけ、死ぬ間際には自分の娘として扱う。 意味があるのか。それは、たんにフランスにとって異質な存「人に尽すってことも病気の一種だ」という忠告も残す。 在を消滅させ、フランスと同化させ、近代という枠組みの中翻訳には躍動感があり、地の文も会話もびちびちと跳ねる に回収してしまうだけではないかと。『本を読むひと』の素ようである。この小説家が初めて日本で紹介されるのに、ふ 晴らしさは、本を手に取ってみれば、このような批判を撥ねさわしい小説であり、ふさわしい翻訳である。 ( みずむら・みなえ作家 ) つける信念が、静かに、力強く脈づいていることにある。 アリス・フェルネ著 / デュランテクスト冽子訳『本を読むひと』 人には本が必要だという信念である。 ( 新潮クレスト・ブックス ) 590 一 33 ー 2 発売中 著者のアリス・フェルネは、そのような信念が傍から見て 者 そ よ 漢国びやの税 ? のこ税 て税 の ら、に円 刺中円 人 久ト 始未繝 をみの 一旅偽い世邪ま四 田大体 0- 3 一・ 1 リ 者ム介屈語 1 族 ノ鴕謹る幻 家 子昭平価 害ア俊 0 一者列 田並 大 タ 号顕 の 区 9 障件耋 。ー。矢社嫗 ジ 京瀬 g. ä- 東市回 ・総は通

4. 波 2017年1月号

ーそのものだ。 1 対 1 で個人的人間関係を構築する技法にプその結果、ウクライナへの影響力を保全するためにプーチン 羽、ルガンスク ーチンは長けている。しかし、それは相手を対等の友人としはクリミア併合、ウクライナ東部のドネックリ て尊重しているからではない。ロシアの国益にとって操作可州をロシア系武装勢力の支配下に置くという冒険をせざるを 能にするためだ。その観点からすれば、私的利益を追求する得なくなった。その代償は大きく、ロシアと米国、 ( 欧 腐敗政治家は、プーチンにとって利用価値の高い工作対象に州連合 ) との関係は著しく悪化する。ケース・オフィサーの なる。前ウクライナ大統領のヤヌコーヴィチがその例だ。感覚で、外交を展開しても、成功するとは限らないのである。 〈プーチンから見れば、ヤヌコーヴィチ大統領のあからさま本書を通読してもプーチンの私生活がほとんどわからない。 な守銭奴ぶりは、大いに利用できる弱点であり、ロシア側にプーチンがプライバシーを厳重に秘匿しているという要素も 多大な影響力を与えるものだった。ャヌコーヴィチは、一九ある。しかし、それよりもプーチンにとって仕事がすべてで 七〇年代や八〇年代、プーチンやの同僚たちがレニン私生活の要素がほとんどないというのが実態と思う。評者が グラードやドレスデンでターゲットにした外国人そのものだ外交官時代に付き合った ( ロシア対外諜報庁 ) やモサ った。その強欲さと罪が、国内外で名声を失うリスクを高め、ド ( イスラエル諜報特務局 ) にも仕事がすべてという人がい 買収されやすい状況へと彼を追い込むのだ。プーチンはまさ た。プーチンにもあの世界のライフスタイルが染みついてい にそこを突いたーーヤヌコーヴィチの側近たちに利害のあるる。 ( さとう・まさる作家・元外務省主任分析官 ) 不透明なエネルギー取引を結び、ヤヌコーヴィチやその家族 フィオナ・ヒル、クリフォード・・ガディ著 / と密接な関連のある産業に高利益な発注を出すようロシア企 濱野大道、千葉敏生訳 / 畔蒜泰助監修 業に促した。〉 ( 43 。頁 ) 。もっともャヌコーヴィチが強欲 『プーチンの世界「皇帝」になった工作員』 5070 一一ー 3 発売中 すぎたため、国民の反発を買い、ロシアへ逃亡してしまった。 教 の 良 最 て 『陽だまりの彼女』で大人気の著者、 い っ に 待望の新作は厄年男と自称魔法使い少女の ア ドタバタだけどハートフル・ストーリー々 の チ 副店長越谷オサム 魔使いと 書き下う ( 四亠ハ判ソフトカバー☆定価本体 180 ①円 + 税 徳間書店 〒 105-8055 東京都港区芝大門 2-2-1 TEL.048-451-5960 ( 受注 )http://www.tokuma.jp

5. 波 2017年1月号

が作るものに影響を受けてきたんですが、 窪私、小説のなかでセックスばっかり わ体内にしみ込んできて、中でうごめく 描いていると思われてますけど、バ リエ感じがありますよね。それで俺、窪さん女性の書いたものにこんなにつき動かさ れたのははじめてかもしれません。窪さ の小説をきっかけに、「中出ししよう」 ーションは意外と少ないんです。変態セ んの小説には、すごく新しいメッセージ ックスというと、『ふがいない僕は空を と決意したんですよ。 があるな、って思いました。 見た』で描いたコスプレセックスぐらい窪え思わず崩れ落ちそうになった 窪私の小説、意外に男性読者が多いん かな。あとはずっと、普通のセックスを ねちっこーく描いているだけなんですよ。前野『よるのふくらみ』で解説者の尾ですよ。でも新しいかどうかはわからな いなあ。むしろ、セックスや恋愛が気持 前野いやあ、それが一番ェロいっすよ。崎世界観さんが「生理小説」って書いて ますけど、俺に言わせりや窪さんの小説ち悪いとか面倒くさいっていう若い人た 大きな声では言えませんが、俺、窪さん ちが増えている世の中の流れには反して は「中出し小説」ですよ ! 子どもがで の小説で : : : すいません ! 『よるのふ るのかな、って思ったりします。 きるとか、それで結婚するとか、家族が くらみ』読んでたら、俺がふくらんじゃ できるとか、そういう一人一人の人生の前野そんなことない、これからは着床 変化こそがロックンロールだな、って窪してからの結婚、チャクショウ結婚が主 窪 ( 笑 ) でも、実はそういうダイレク 流になりますよ。セトウチチャクショウ さんの作品に気付かされたわけですよ。 トな反応が一番うれしいです。地方にい ですよ ! て『ふがいない僕は空を見た』を読んで、 ' 窪なるほど。前野さん、子ども欲しい 窪最後のは聞かなかったことにします んですか ? 興奮して耐え切れずにデリへル呼びそう ( 笑 ) 。でも前野さんの中出し話を聞いて 前野ええ、中出ししてるんで、そのう になったって人 . もいたし。 腑に落ちました。新しいアルバム「今の ち成果がでるかな、と思ってます ! 前野やつばりそれは小説ならではのこ 時代がいちばんいいよ」を聴いたら、深 窪厚労省が推薦してくれないかなあ、 とだなあ。俺の曲聴いててエッチしたく みがものすごい増してて。「この人、人 「少子化対策小説」として ( 笑 ) 。 なった、っていう人の話は聞いたことな ル 間として大事な局面を迎えているな」と 一いし、俺自身も大好きなポプ・ディ一フン前野ご自分でもそういう影響を意識し ン いう感じが伝わってきたんですよ。腰が て書かれてますか ? とか尾崎豊とか聴いてても、心がかき立 てられることはあっても、肉体を動かさ窪いえ。自分も中出しされてのできち据わったというか。 しれることはないんですよね。 やった結婚だったので、世間的な順序を前野ありがとうございます。でもポイ トレのおかげじゃないかな。低音を出す きちんとたどっていないから、自然にそ 中窪そういうものなのですね。 訓練をしたから。 ういうものになったのかなあ ( 笑 ) 。 前野歌を聴くのって、即効性はすごく あるんですけど、小説のほうは、じわじ前野俺はいつも、音楽も小説も男の人窪でも中出しと低音って、何か関係が 105

6. 波 2017年1月号

ど、気持ちたけでも元気になってもらい 惜しんでくださるうちに亡くなってよか山本竹田さんが遺されたものは「考え たい。その一心で、どうしても圭吾さんったのでは、と思っています ( 笑 ) 。五方」かな、と思います。「竹田圭吾流」 をニューオリンズに連れて行きたかった。十一年間ではありましたが、充実した人は誰にもできませんが、影響を残してく ( 同頁 ) 生でした。 れました。今日はいろいろ申し上げまし 山本竹田さんはまだまだこれからが楽 たが、チャーミングな、強い人でした。 竹田本人が「最後」とまで言っている しみな″途上〃の人でした。僕としては竹田そんな風に言っていただいて、満 のに行かないと、私としても後悔するか 「惜しい」というよりも、「もう少し長く 足していると思います。圭吾さんが亡く なったときに、「やった ! もしれないと思いました。旅行で体力を生きていられたら何をされたかな」とい これで何の 消耗したかもしれませんが、べッドの上 う興味の方が大きいです。 心配もなくの現場を見に行ける」と でのつらい時間が長くなかったので、か竹田今もニュースを見ていると、圭吾喜んで飛び回っているに違いないと思い えってよかったのかもしれません。 さんが生きていたら、出来事自体や報道ました。今頃はアメリカ大統領選をひと 山本男としては理想の死に方と思いま とおり見たあとかもしれませんね。 の仕方に腹を立てていたかもしれないな、 ニ〇一六年十一月ニ十五日新潮社クラブにて と思うことがあります。 す。家族との別れの時間もあり、亡くな ( やまもと・いちろう実業家・作家 ) る六日前まで、ラジオマイクの前で仕事山本被災地や教育問題には特に強い関 ( たけだ・ゅうこ主婦 ) をされました。 心をお持ちでしたから、最近のいくつか 竹田裕子『一〇〇万回言っても、言い足りない のニュ 1 スについては、きっと「まじお 竹田半分冗談半分本気ですが、「あの 吾 けどジャーナリスト竹田圭吾を見送って』 こ」だったでしようね ( 笑 ) 。 圭頑固じいさん、ようやく逝ったか」と言 35059 一ー 4 発売中 竹われるまで生きるよりは、まだ皆さんが竹田目に浮かぶようです。 た っ だ 編 一たて方々円 子 円る円、心円 の トるつき神 8 AJ 男 0 」孺の ン , きま生「 0 漱石のこころ 。 , の学」 る 「その哲学と文学ー 人ョ , 合舌の生のる体芸 語人一。生人。 じ 司本本本 波 ~ ん 本シ鉧河一 き鎌は恵代与 【岩波新書】本体 780 円 赤木昭夫 マ 日ク全 / 生 = に知現を亠既 岩饗 " を ロンドンで練った文学論から漱石の着想、 ス 、人解中いト箋 ま”引話核心が見えてくる。読者の、社会の意識 をつかむ文学を生んだ漱石の姿と近代化 、し代。。深↓方源 - 物神」 一神めいにの Ⅱ Ⅲ 以後の日本の時代精神が明らかに。 河Ⅳ 工 気こ岩波現代文庫物第

7. 波 2017年1月号

0 山崎豊子の〈男〉 【第 + 一回】太陽の光は遍く 例外的な作品 ど深く関わってはいない。だが、彼もまた男の中の男である。 戦争が主題や背景になっている山崎豊子の長篇小説は、戦とすると、ここまで述べてきた提題を修正しなくてはならな 争三部作だけではない。『不毛地帯』以降のすべての山崎豊いのだろうか。私の考えでは、そうではない。 子の作品、遺作『約束の海』も含むすべての作品が、戦争を『沈まぬ太陽』は、ナショナル・フラッグ・キャリアである 扱っている。が、ひとつだけが例外だーーという印象を与えことを誇る航空会社、つまり日本航空・ーー小説の中では「国 る。『沈まぬ太陽』だけは、「戦争」が前面には現れていない。民航空」 , ーーと、その労働組合をめぐる物語だ。物語の中に、 われわれは、山崎豊子が、まさに「男」と見なしうる男を 1985 年の日航機墜落事故、つまりジャンボ機が御巣鷹山 造形できたのはなぜなのか、を考えてきた。ここまでの考察に墜落し、 520 名もの犠牲者を出した事故のことが組み込 が示唆してきたことは、負け方ーー総力戦の負け方ーーに鍵まれている。 1995 年から四年にかけて週刊新潮で連載さ がある、ということだ。敗北を否認も欺瞞もなしに受け取るれた後、単行本化された。全体は、三篇に分かれている。ア ことは、非常に難しい。山崎は、敗北を正面から受け止めたフリカ篇、御巣鷹山篇、会長室篇である。 男たちを描いた。そのとき、はじめて「男」が、善や正義の アフリカは、恩地が、ケニアのサバンナで、象を狙う猟 側に立つ「男」が生まれた。このように論じてきたわけだが、をしているシーンから始まる。アフリカ篇の大半は、この 1 おんちはじめ 『沈まぬ太陽』の主人公、恩地元は敗戦ということにそれほ 971 年の時点からの回想である。その十年前、恩地は、国 大澤真幸

8. 波 2017年1月号

源氏姉妹げんじしすたあず 日発売 / 150 。円 酒井順子 ( さかい・じゅんこ ) 源氏の君を介して「姉妹」となった女たちが、千年の時を超え、彼との 赤裸々な体験談を大暴露。純愛、セフレ、不倫、セックスレス : : : 人のリアルな「しちゃった」証言が照らし出す等身大の光源氏。現 代人が心底共感できる最強・最ェロの「源氏物語」誕生 ! 四六判 / クレスト表紙カ・ハー / 256 頁 398509 ー 9 ギリシア人の物語Ⅱ民主政の成熟と崩壊スイミングスクール 日発売 / 14 。 0 円 塩野七生 ( しおの・ななみ ) 日発売 / 3000 円一局橋弘希 ( たかはし・ひろき ) 帝国。ヘルシアを打破した民主政アテネ。不世出の指導者。ヘリクレス 父の不在。愛大の死。不妊の疑い。実家の片付け。神社の縁日。そし の手腕により、エーゲ海の盟主として君臨し、輝かしい絶頂をむか て謎のカセットテープ。離婚した母とその娘との、繊細で緊張感ある えた。しかし、ペリクレスの没後、不安を煽るポピュリズムが猖獗 関係を丁寧に描く表題作と死の淵の娘を為すすべもなく見守る父の をきわめ、ス。ハルタとの泥沼の戦争へと突人してしまう 姿を描く芥川賞候補作「短冊流し」を併録した新鋭の圧倒的飛翔作。 判 / / ハードカ・ハー / 416 頁 309640 ー 5 四六判 / ハ 1 ドカ・ハー / 144 頁 337073 ー 4 ファイプ 琴電殺人事件 ハンゲア 5 日発売 / 1600 円 西村京太郎 ( にしむら・きようたろう ) 日発売 / 83 。円朝香式 ( あさか・しき ) 最古の芝居小屋といわれる琴平町の金丸座。年に一度の「こんびら 大学時代に出会い、完璧な・ハランスを保っていたはずの男女五人は、 歌舞伎」に出演する人気役者に執拗な脅迫が。琴平に行けば人が死 ある事件をきっかけに・ハラ・ハラになってしまう。だが、蓮太がテレ ぬーーその予告通り、事件は琴電の車中で起きた。東京の社長殺し ビで高僧となった旧友を発見したその時から、彼らの道は再び交わ りはじめた との関連は ? 因習と確執が渦巻く梨園の謎に、十津川警部が挑む ! 。ー文学賞受賞作家が描く、選択と役割の物語。 新書判 / 17 6 頁 334432 ー 2 四六判 / クレスト表紙カ・ハー / 240 頁 336452 ー 8 万葉恋づくし 駒姫三条河原異聞 日発売 / 1800 円 梓澤要 ( あすさわ・かなめ ) 日発売 / 16 。。円武内一示 ( たけうち・りよう ) うかれめ 赴任先の現地妻を自認していた遊行女婦が、恋の終わりに流した涙。 文禄四年夏。最上義光の娘・駒姫は、関白秀次の側室となるため聚 楽第に人った。しかしその直後、秀次は謀反の罪で切腹。残された 若き日の穂積皇子と異母妹・但馬皇女との悲恋。万葉集の編 纂者・大伴家持が自らうたった、年上の紀女郎への募る思い 妻子たちには過酷な運命が待ち受けていた・、 : : 姫を救うために命を 名歌に秘められた身も心も焦がす恋を描く、連作短編小説集。 懸けた家臣たちを通して、人間の真の強さを問う慟哭の歴史ドラマ。 四六判 / ハードカ・ハー / 240 頁 3 533 ー 6 四六判 / ソフトカ・ハー / 416 頁 350641 ー 6 1 月の新刊 120

9. 波 2017年1月号

煙たかろう、さのよいよい い寺 足利義満の治世を伝える そでサ翌 重要な日記、初の全文翻刻 いは 【史料纂集古記録編 1 田回】 迎陽記 2 小川剛生校訂【 12 月刊】 A5 判・ 312 頁・本体 14 , 開 0 円 た映みに いわたる 軏で 戦国期日本人の心情と風俗を そを人く 赤裸々な懺悔が暴き出す ! 方て こ観 き不たか コリャード に母 懺悔録 らな 慶さ は魚 現た 楽つ 場寺 日埜博司編著【 7 月刊】 や所焼 てイ B5 判・ 732 頁・本体 25 , 000 円 のけ 天理図書館本をカラー影印し つに 匂カ 翻刻・現代語訳・註解を付す どれ 地域の記録を読み解き、近世 がれ ~ 近代の記憶の継承を探る いだ 燃た 世た つア 地域の記録と たア 記憶を間い直す のウ 白井哲哉・須田努編【 4 月刊】 A5 判・ 416 頁・本体 9 , 88 円 に画 て生 、わなをすと 相関図・ビジュアル資料 の帰 いき 等から全 46 作品を解説 ! べだ 菊池寛現代通俗 にもやなたろ に横 ・子・ン 小説事典 たき 片山宏行・山口政幸監修【 7 月刊】 、月 いく A5 判・ 448 頁・本体 9 , 8 開円 いさ って 文書の作成・保管からみた て怪 ん母 公家政権の成立史 スき 古代中世の 文書髏と官人 れそ 井上幸治著【 2 月刊】 焼行 A5 判・ 480 頁・本体 9 , 000 円 い新 だ濃た宿 へす な厚 緒新 んなわま なを に宿 * 表示は本体価格 ( 税別 ) です て焼たれ か食 く呈詳細内容見本〉 N 係まで 、き べあ 東京都千代田区神田小川町 3 ー 8 血 03 ー 3 四 1 ー 2 % 1 / FAX ー 638 https:〃catalogue.b(X)ks-yagi.co.jp/ 上ば初中 と映 27 か と 配 に な で お 不 動 ん に は 行 な で わ た し は に 早 く 食 さ い と そ の か さ れ 食 に く と で 魔 こ宮し 行ののかち 映伝 こ画説 を 夏を 。画 、行か な く な て し う の で 、なた に る に前と し み、 し て た 燃 る こ と し そ の 、休観日出を た し は と ン イ シ ヨ ン り で い こ い た そ の 日 つ映と て画父 いをは な く や 、と い 、し を 好 をこ っ 母 は ス 見 。と 焦 た 様 子 で お 不 動 さ ん に か め 食 へ と 。か ら ソ た 学 の こ か 若 焼 て節燃ちを え オこ は う 参ちだ 行おわ 、動し / レ と なばを つや い分 に 。は寺 必 ず お り に 事 祈 お、 話 つ と 、大て でよ所 願呼母る母 でてんが食 シなが い イ共 ひ と り で あ 物 よ焼れ て い の ら い 漂 な月 若 をま 父 ら連丁 、れは て ヨ ン ン 暗 、し い る 寺 た 朝 の シ た干 ン ョ 。には り た観笑好 。終っ物 わたが ひ と 、丁宿 横〒 ンで ン は 、はニ朝 ス 。を え つ観る い と したれ た め じ り 喋 日 の レ み焼 あけ げ落 レが ポ映 し さ と 。ば母映 良に画 じお行 や不く な動 に り で は と に た あ と は 若 月 で 焼 き そ ば を 食 若が 月た ゝそ 焼ぶ食 も ら のつをたた地月 0 。生 し か の の映 っ路若画 。に観 人でに き そ ば りべ父 のては し 安そは 気そた ば 。れた る 勇 は た へ を こ と が つ な行言 つつ めてた 、 0 の 出 て ら オど こ く 行に て

10. 波 2017年1月号

ころで、言い忘れたことがひとったけある。 傑作です。〉 昨年本誌 4 月号で葉室麟さんがこう評した朝井まかてさん 受 の『眩』が、日本の歴史を素材とした最も優れた文学作品に 与えられる第回中山義秀文学賞を受賞しました。 学 葛飾北斎の娘で自らも絵師であった葛飾応為を描いたこの 文 作品、選考委員から「偉大な父親の背中を追い、西洋画の遠 き秀 近法や光と影の描写にも果敢に挑戦しておのれの道を突き進描義 む懸命さ、葛藤と苦悩に真正面から取り組んだ姿勢がいい」 を山 1 と高く評価され、すでに 7 刷まで版を重ねています。 熱中ま叨 朝井さんは美術館で本書のカバー装画でもある応為作「吉 の回 原格子先之図」を見て、浮世絵離れしたモダンな表現方法と 円 作 美しさに息を呑み、その場で彼女を描くことを決意したと言 創第 います。完全な一目惚れでしたが、どうやら応為の方も朝井 さんを見初めたよう。「わたしたけの表現をする、 わたし自身になりたい」と願って画業一途の生涯 を送る女絵師の姿が、朝井さんのそれとびたり重 なるのです。 日常から離れた年末年始のひととき、相思相愛 ふたりの創作者が放っ甘美な熱に触れ、思うさま 「くらっ」としてみませんか ? 〈と 非物第社Ⅲ ' 第 物第物・物・物を、ツを一 新潮社の新刊案内 朝井まかて 三三 2017 年 1 月 新潮社の ISBN の出版社コードは 978-4-10 です。表示の価格には消費税が含まれておりません。 119