授業 - みる会図書館


検索対象: mundi 2016年9月号
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1. mundi 2016年9月号

国際社会に生きる日本人としての自覚を 高めてほしいと思います」と話す 社会の時間にインターネットや資料集 などを使って事前にアフリカ諸国につい て下調べをしていたため、生徒たちは青 年海外協力隊が書いたモザンビークの 紹介文を事前知識と照らし合わせながら 読むことができた。また、美術の時間に、 1 枚の写真を多角的に鑑賞する方法を 学んだことで、写真の背景情報まで深く ちの生活とアフリカの生活の相違に気ものだ。 2011 年のー O< 教師海外類推して考える力やそれを発信する力も 付き、その良さを英語で表現しよう % 研修の際に知り合った他校の先生が、そ身に付いた。 「いろいろな教科を通して学習するこ 英語の授業だけでなく、他の教科ともの後、青年海外協力隊としてモザンビー とで、文化の大切さがよく分かった」「英 連携した横断的な授業の実践が特徴だ。 クに派遣されたことを受け、同じ研修仲 昨年は、社会の時間にアフリカ全体や 間と一緒に、その先生を訪ねてモザンビ 語の授業で他国についても学べるのは効 個別の国を取り上げて地理的なイメー 率的」「今まで暑いというイメージ ークまで足を運んだのだ。「生徒たちに、 しかなかったけれど、日本との共通点も ジをつかみ、美術の時間には、アフリ より現実味のある途上国の情報を伝えた 力の写真を鑑賞して現地の生活や文化 いと思い現地では授業に生かせる材料多いことが分かった」など、教科横断に への理解を深めるなど、 4 科目で計秬 を探しながら過ごしていました」と竹島よる国際教育は生徒たちからも好評だ。 授業を通じて、ク将来、国際協力の仕 時間の授業を行った。それらの学習を踏先生は話す こうして撮影された枚の写真を授業事をしたいと話すようになった生徒も まえて、生徒たちは英語の時間に日本 しるとい一つ とアフリカ・モザンビークを比較する で目にした生徒たちは、「写真に写って しし国なんだな 英文ェッセイを書き、発表したのだ。 いる人の多くか笑顔で、、、 「教え子が外国語系 他教科との連携による授業のプログラ と思った」「モザンビークには自然がたや国際系の大学に進 くさんあるだけでなく、スー ーマーケ学したという話を聞 ムは、竹島先生が計画全体の骨子を作り 他の先生に提案するかたちで進めたとい ットなどのにぎわっている場所もあるんくのは、本当にうれ しいものです。現在 う。「計画を共有する中で、他の先生方だなと思った」など、さまざまな気付き の赴任先の旭東中学 にも面白そうだ % と思ってもら - っこと を得たようだった。 が大切です。協力が得られた後は、それ さらに、授業では友人の青年海外協力校でも、国際協力に ぞれの専門的な観点から新たなアイデア隊員が英語で書いたモザンビーク紹介文取り組む ZOO など と連携しながら授業 が付け加えられていきました」 も教材として活用。こうした多様な教材 を使った授業について、竹島先生は、「英を実施していけるよ 語でアフリカの生活や文化に触れる中う、準備を進めてい 授業の材料は自分で集める で、言語や異文化に対する関心を高め ます」と竹島先生。 人脈を生かした国際教育 それらを尊重する心を育てることか狙い 国際教育にかける思 授業で使用したモザンビークの写真のです。また、青年海外協力隊の活動を知 いは確実に生徒に届 いている 多くは、竹島先生が現地で自ら撮影した ることで、世界の国々への理解を深め、 モザンビークの写真から読み取れる 内容を英語で発表する生徒たち。 1 枚の写真が、英文法を学びながら 外国を理解するための教材となる モザンビークの中学校を訪れた竹島先生。京山中学校の 1 年生 の取り組み内容は、青年海外協力隊を通じて現地の中学生にも 伝えられた 青年海外協力隊としてモザンビークで活動 中の友人を訪ねた竹島先生 ( 中央 ) 。竹島 先生は J ℃ A の開発教育指導者研修にも 参加し、他校の先生たちと国際教育の事・、 例を共有しながら授業に役立てている レい 2 モザンビークの首都マプトの様子。「生徒 たちにはこ結構、日本と似ているなあ " どや つばり違うなあ " の、どちらの感想も大切に してもらいたいと思います」と竹島先生 第 2 23 September2016

2. mundi 2016年9月号

など、生徒たちは習った英文法を使って度まで京山中学校に勤務し、今年 4 月か表の さまざまな教科と連携 写真の様子を描写していく。 らは同じ市内の旭東中学校で教えて、 し軸学 国際教育の情熱を共有 をの その後、生徒たちはペアを組んで 1 枚る 容で 内学 岡山市立京山中学校の 1 年生の英語の の写真から読み取れる事柄を書き出す作 竹島先生は、 2 011 年にー 0 < 教の中 授業。この日のテーマは、現在進行形の業を始めた。「現在進行形を使って写真師海外研修に参加した。「研修で訪れた教よ 文法だ。その練習の材料として用いられの説明をしながら、モザンビークの良さ ネパールは、私にとって初めての開発途 たのは、モザンビークの街中を写した四 や日本との違い、文化的な特徴なども読上国でした。学校を訪問したり、現地で教の 枚の写真だった。 み取りましよう」。そう生徒たちに呼び活動する青年海外協力隊の話を聞いたり 「女の人がニワトリを売っています」掛けるのは、英語科を担当する竹島潤先する中で、研修での経験を国際教育とし生の 先も 「子どもたちか友達と話をしています」生だ。竹島先生は、 2010 年から昨年て生徒たちにも共有したいと思うように島え 竹鍛 なったんです」。当時勤務していた京山 ど 資な 中学校で国際教育を始めたきっかけを、 のカる 生るい 竹島先生はそう振り返る 年えも 1 考徒 2011 年以降京山中学校ではネパ たて生 めいす ールを皮切りに、毎年、アジアやアフリ とっ話 力などのさまざまな国を取り上げ、食糧し 問題や貧困問題を題材に国際教育の授業 6 世っ を展開してきた。モザンビークの写真を ヒ発の 使った英語の授業は、昨年度の国際教育ンや成 ザカ大 の一環だ。取り組みのテーマは、ク私た モ現集 教科横断で 第世界への関心を広げる 岡山県岡山市で英語教師を務める竹島潤先生は、 2011 年にー 0< 教師海外研修に参加して以来、 研修で築いたネットワークを生かした国際教育を展開している 教科横断による授業には、異文化に対する生徒の関心と 理解を深める工夫か散りはめられている 世界とつながる 教室 ith conn Mozärhbiqu モサンビーク September 2016 22

3. mundi 2016年9月号

次世代の担 0 2 1 cambodia cambodia ンゴル弁護士会とは友好協定を結んで 大学に設置された「日本法教育研究セ いる。そのきっかけを作ったのが、 2 ンタ 1 」の運営だ。ここでは、現地の 学生が日本語で日本法の教育を受けて 004 年から 2 年間、モンゴルで法整 おり、 4 年間の課程を終えた学生の中備支援プロジェクトの専門家を務めた から、名古屋大学の修士課程への留学田邊正紀弁護士だ。 取り組みの一つが、調停制度の導入 生が選抜される。の小畑郁セ だ。「心掛けていたのは、日本のやり ンタ 1 長は、「特長は、現地大学で開 かれている現地法の講義と並行して、方を押し付けないことです。日本では、 当事者が別々に調停委員と面接する別 日本法を教えている点です。学生には、 日本法を比較材料として学びながら、席調停が基本ですが、モンゴルでは司 法に対する信頼が低く、自分がいない 現地法の課題にも気付いてもらいたい 場所で不正が行われているのではとい と考えています」と話す。 う疑念を抱かれる懸念がありました。大きな意味があります。また、日本の カンボジアの同センター第 1 期生の ム・リー 法学分野でも国際貢献が ホンさんは、現在は名古屋そのため、両方の当事者が同席の上で学生には、ク 大学の博士課程で日本などの司法制度話し合う方式としました」と田邊弁護できる道があるツという新しい認識を リ 1 ホンさんは、「将士。もともとモンゴルには調停という与えています」 を研究している 法整備支援を学ぶために名古屋大学 来は母国力ンボジアの大学で法学の先言葉すら無かったが、今では全国の裁 各 に入学したという法科大学院 1 年の坂 判所に調停制度が導入されている 生になり、法曹界の人材育成に貢献し 右 番 また、判例の公開にも取り組み、当本あずささんは、学部時代、大学の留 たいと思います」と目標を語る ん 初は年間 2 件ほどしか公開されていな学制度を利用してベトナム・ホーチミ さ一 ン クオール愛知で ホ かった判例が、今では全件インターネ ン市法科大学に半年間留学した。「留 支援や教育の現場を支える ット上に公開されている。「現地の裁学中、現地の 0 < プロジェクトオ 議行 会を フィスでインターンシップに参加させ 判を傍聴したり、法律事務所を回った 海外に進出する日本企業にとって、 全交 てもらいました。日本の法律家の方々 りして、自分の目で見て問題点を考え 経済活動の根幹となる相手国の法制 究意 が綿密な議論を行っている様子を目に 研て度。名古屋大学は、愛知県などの企業ました。若い世代の弁護士たちにも、 して、まずは日本法を習得しなければ、 で構成される中部経済連合会と定期的もっと海外を経験して視野を広げても らいたいと思っています」と田邊弁護他国の法整備支援の役に立てることは に意見交換や情報共有の場を設けるな ス 法 何もないと感じました」。そう話す坂 士は語る ど、産学連携の取り組みを推進してい ン 名古屋大学の鮎京さんは、法整備支本さんは、弁護士を目指して学業に励 る。また、愛知県弁護士会とも連携を てガ 図り、留学生向けの授業や特別セミナ援はその国の発展に貢献すると同時んでいる 行備 アジアの法に寄り添い続けてきた経 に、日本にも良い影響をもたらすと話 1 を現役の弁護士が受け持っている 愛知県弁護士会は、これまです。「明治以降の日本の法律学が対象験を、次の世代へ。そんな未来を見据 学生 大学 < の研修コースに協力するなど、法整としてこなかったアジア地域の法の歴えた循環が、ここ愛知県から生まれて 4 を屋留 いる 名国備支援にも積極的に関わっており、モ史や現状を明らかにしてきたことは、 モンゴルで開かれた調停人 養成研修の講師を務める田 邊弁護士 ( 中央 ) 0 ベトナムの J ℃ A プロジェクトオフィスで実際の業務を 体験した坂本さん ( 中央 )

4. mundi 2016年9月号

JICA UPDATE SEPTEf11BER 2016 0 ー O< はコンゴ民主共和国における ー O < ボランティア事業の一部で ー O< の北岡伸一理事長は、 6 月開発の事例を紹介し、企業にとっても 3 黄熱の流行に対し、緊急支援を行いまし ある青年海外協力隊が「ラモン・マグ 四日、日経社主催の「東京サステ新たなビジネスチャンスになっている 0 ナブル会議」に登壇し、基調講演を行ことを示しました。 サイサイ賞」を受賞しました。 た。世界保健機関 (ÄO) をはじめ、複 アジアのノーベル賞とも呼ばれる同 数の機関も支援を開始しています いました。同会議には、企業などから さらに、開発途上国でもイノベーシ 遣 賞 コンゴ民主共和国では黄熱の感染が 賞は、フィリピンのラモン・マグサイサ 約 400 人が参加し、持続可能な開発ョンが進んでおり、現地のノウハウが 登 日本の課題解決にもつながる可能性が 受ィ大統領を記念して 1958 年に創設 目標 (ØOOØ) の目指すサステナブル 、、′拡大しており、 6 月日、同国政府は をされた賞で、アジア地域で社会貢献な を黄熱の流行を宣言しました。 6 月四日時 な社会の実現に向けて、日本企業がどあるとの考えを述べ、への貢 ム点で、疑い症例を含む 1307 人の患 どに傑出した功績を挙げた個人や団体 のように貢献できるか活発な議論が行献が国内でのビジネスチャンスにもな 賞 -- - ⅱわれました。 るだろ一つとまとめました。 に対し、毎年、マニラ市のラモン・マ 一者が報告されており、うち乃人か亡くな イ 会 グサイサイ賞財団から贈られるものでチっています 北岡理事長は講演で、ミレニアム開会議では他にも、国際航業代表取締 ゥーウエンショウ サ す。過去には、マザー・テレサやダライ・ ) 発目標 (>OOØ) の下で達成したゴー役会長の呉文繍氏が「 ocnc のみなら 策これを受けて、日本は同国での黄熱感 イ ラマ世の他、緒方貞子元ー 0 < 理 ルかある一方、成果には地域差があり ず本業を通じた企業の貢献をすべく、 対染拡大の状況を把握し、対応を検討する サ ナ 事長もこの賞を受賞しています。 一国内での格差も拡大していることに企業理念や事業方針の中心に社会課題 症ため、 7 月日に調査チームを派遣しま グ 一ア言及しました。 の解決を捉える必要がある」と講演 昨年周年を迎えた青年海外協力隊染した。調査結果と同国政府からの支援 マ ス また、 0 達成のためには、政企業からは日産自動車工イピーピー 事業は、現地の人々と共に生活し、共感要請を受け、日本は 7 月日、岸田文雄 外務大臣が国際緊急援助隊・感染症対 サ府に加え、企業、市民、研究機関などジャパン、富士通、ソニーが登壇し、 ノに働くという理念の下、長年にわたっ 隊 策チームの派遣を決定しました。¯' ー ~ 示との連携が必要であり、特に日本企業持続可能な社会に貢献する新しい製品 モてアジア地域の経済と社会の発展に貢 助 O< は翌日から、感染症専門家などか 一フ献してきました。今回の受賞は、その 東の持っ技術が果たす役割は大きいことやビジネスモデルなど、自社の取り組 援 ら成る感染症対策チームを派遣し、支 功績が認められたものです。 を強調。ー O< と日本企業の連携のみを発表しました。 カこれまでに派遣した青年海外協力隊急援にあたりました。 パネルディスカッションでは、長期 カ具体例として、味の素の栄養食品を活 は、全世界で累計延べ 4 万 1000 人緊 用したガーナでの栄養改善プロジェクビジョンの作り方と使い方をテーマ 事トや、質の高い教育が必要とされてい に、社員を巻き込んだビジョンの策定力を超えます。アジア地域には延べ 1 万際 2199 人を派遣しており現在はア国 王るバングラデシ、での公文式の導入のプロセスについて議論。多くの参加者協 岡 他、インドの地下鉄など大規模インフから、 coaoc.o はチャンスであるとの外ノア絽カ国で 581 人が活動中です ( 2016 年 7 月日現在 ) 。 国 海 ゴラ整備にきめ細かな配慮を行う日本の声が聞かれました。 年 和 共 護協 議外主 学青 ゴ す ン コ スと ス日し 害 カ ・障 ン 初員隊 フ隊カ 1 講演を行う北岡理事長 、いー第に . 第可第な開発目第 ( s 師引 日目言目 会場の様子 2 0 1 7 ワクチンキャンペーンでの聞き取り調査の様子 25 September2016

5. mundi 2016年9月号

・どんな成果が出ているの ? 日本が政府開発援助 (ODA) で最初に法整備支援を 実施した国はベトナムです。ベトナム政府は、 1986 年に ドイモイ ( 刷新 ) 政策を導入し、市場経済に転換するた めに法整備に着手しました。こうした流れの中、同国政 府の要請を受け、 96 年に引 CA による法整備支援が始ま ったのです。 日本は、ベトナムの民法・民事訴訟法の起草や、研修 員の受け入れなどにより法令を実際に運用する法曹実 務家の育成などの支援を行ってきました。このような 長年の支援が実を結んだ一例として、今年 4 月にベトナ ムの司法大臣に就任したレー・タイン・ロン氏がいま 天下の台所発″脱税できないレソ ら、徴税率が大幅に減少。国家 能も弱体化してしまったことか より経済活動が停滞し、政府機 続きました。その間、政治危機に 2014 年の初めまで暫定政権が クーデターが発生して以降、 マダガスカルでは、 2009 年に 29 mundi september2016 ( 在マダガスカル日本国大使館ニ等書記官小川大輔 ) 寄与することを願ってやみません。 くことが検討されています。日本の技術がマダガスカルの財政再建に 今後は、マダガスカル政府の主導で徴税機器を全国に設置してい です。 記念すべき 1 号店は、マダガスカル在住の日本人御用達のレストラン 機器を首都アンタナナリポ市内の店舗に設置することを決めました。 マダガスカル政府は日本の協力を通じて、試験的に 500 台の徴税 て世界 23 カ国に販路を広げています。 各店舗の納税額を把握することができるためこ脱税できないレジ " とし きたもの。店舗のレジに外付けで機器を設置するだけで、国税当局が 大阪の企業・株式会社ビー・エム・シーインターナショナルが開発して 第 5 回アフリカ開発会議 ( T ℃ AD V ) の商業イベントに出展していた 的とする、徴税機器を使った脱税防止システムです。このシステムは、 特にマダガスカル政府が目を付けたのが、付加価値税の徴収を目 に、税収増加に向けた改革に着手し始めています。 2014 年の新政権発足後、政府はこのような状況を立て直すため もままならない状況になってしまいました。 発政策に予算を割り当てることに設置された徴税レジ 歳入が悪化した結果、社会・開日本人会の会場としてもよく使われるレストラン す。ロン氏は、 99 年から引 CA の支援で名古屋大学に留 学し、 2003 年に博士号を取得しました。 また、自由な経済活動を支える法制度が整ったこと で、日本企業を含めた各国企業が現地で事業を展開し やすくなリました。法整備支援は相手国に加えて国際 社会全体にもメリットがあるのです。 日本政府は現在、ベトナムをはじめとするアジアの 8 カ国で重点的に法整備支援を展開しています。一方 で、アフリカ諸国に対しても、司法アドバイザーを派遣 したり、現地から法曹人材を招いて日本で研修を実施 したリするなどの支援を行っています。 第日本の法整備支援の特徴は 人材か育ち、ビジネスもしやすい環境に ODA による初の支援国ベトナムでは、 日本の法整備支援の特徴 相手国の制度や文化を踏まえた協力か 世界の平和・繁栄にも寄与する 法整備は相手国の発展のたあだけでなく、 が既にできつつあります。日本から派遣される専門家は、 しきたりが存在します。また、最近では、さまざまな法律 開発途上国には、その国の実情に基づく取引の慣習や 踏まえたきめ細やかな支援を展開しています。 ーナーシップ ) を最大限尊重し、その国の実情とニーズを 功モデルを押し付けるのではなく、相手国の主体性 ( オ さまざまな選択肢を相手国に提示できること。日本の成 日本の法整備支援の強みは、過去の法整備の経験から できる支援があるのです。 国家として急速に経済発展を遂げてきた日本だからこそ 変えながら、自国に合った法基盤を築き、戦後、民主主義 いるかもしれません。ですが、欧米諸国の法制度をつぐ丿 「他の国の法律をつくってもいいの ? 」と疑問に思う方が 法制度は国の根幹を成すものです。皆さんの中には、

6. mundi 2016年9月号

特集法整備支援 社会を支える「ルールっくり」への貢献 国ョ イ 4 ハンドブックは職員の法律理解の 公正な社会に向けて 大きな助けになっています」と語 若手法律家を育てる るシ 1 ワンさん。今回作成してい る & < 集によって、弁護士や地 若手法曹の育成に向けて、昨年 方の警官などの法律理解を深め、 から始動したのが、国立司法研修 る 意図しない違法捜査を減らすこと所だ。「これまで、法律専門職の志 て ができると見ている 望者が法律家の道を選んだ後に机 せ わ 合 最高人民検察院のスパシット・ を並べて学ぶ機会がありませんで す ローワンサイさんは、「ハンドブッ した。そこで、国立司法研修所では、 寄 クは、現在、法律学校や検察院の法学部の卒業生を対象に 4 カ月の ち 実習を含む 1 年間の研修を行って 研修所でも活用しています。以前 はこうした書籍がなく、ノウハウ います。実務能力が身に付くだけ 意 の でなく、他の法律家の立場につい も持ち合わせていなかったので、 て理解が深まり、協力して国民の 場作成には大変苦労しましたが、出 立 の来上がったハンドブックを地方のために尽くすことができるように ぞ 検察組織まで普及させたところ、 なるでしよう」と、民法典の起草 れ そ 大きな効果がありました。現在作 に関わり、教育研修改善ワーキン ググループのメンバ 1 も務めるプ 授成している & < 集や、今後のさ 学 ンクワン・タヴィサック最高人民 まざまな資料作成も、ぜひ成功さ 大 裁判所官房局長は話す。 せたいものです」と話す 護 弁 一方、ラオス国立大学法政治学部 今後は教員の育成や授業内容の で刑事法学科長を務めるセンタヴ改定などに取り組んでいく。「質の 察 ィー・インタヴォン教授は、「チャ高い法律家がいることで、法治国家 警 1 トを活用することで、現場の実務としての体制がより整い、社会の公 判 家が刑事訴訟の手続きを正しく理正と国民の利益を保証することが 裁 グ解できるようになりました。 C & < できます。法の支配の確立は、ビジ ネスがしやすい環境づくりでもあ テ集は、チャートやハンドブックの普 及活動の中で、現場の職員が見つけ り、経済発展には欠かせない条件 の め た疑問に答えるものでもあります」 なのです」と同研修所のセンパチャ の ン・ウオンポ 1 トーン副所長は語る。 と説明する。「日本は、ただ書籍を 集 制作するだけでなく、書籍を制作で 東南アジア諸国連合 ( ) る す の一員として、近隣各国と共にさ きるラオス側の人材を育てるように 関 らなる発展を目指すラオス。それ 配慮してくれています。いずれ私た 八ム らを裏から支えるべく、今日も法 訴ちだけになっても、法曹界を発展さ せていけるはすです」 律家たちが議論を重ねている 1 夕方になるとメコン川沿いで開かれるナイトマーケットは、 多くの人でにぎわう。さらなる発展を目指すラオス経済の 舞台裏で、日本の法律家たちが活躍している 1 1 September2016

7. mundi 2016年9月号

ネピドー 不変の法典からの脱却 長い軍政を経て、 2011 年に 新政府が発足したミャンマ 1 。市 場経済化の道を歩み始めた同国 は、アジアのクラストフロンティ アクとして、日本のみならす各国 企業の注目を集めている。しかし、 そこには課題が残されている。法・ 司法制度の改善だ ミャンマーで現在使われている 法律のほとんどは、 19 4 7 年の 独立以前、英国の植民地時代に制本定款クを変更する際に、裁判所 小松健太専門家だ 府を対象とするプロジェクトの主 定されたもの。 100 年以上も前 や大統領の許可を取らなければい 日本で弁護士として企業法務を な目標は二つ。一つ目は、法案の の法律が今もほとんど形を変えずけないとしているんです。これで担当していた小松さんは、 201 起草・審査能力を向上すること、 に使われているのだから、さまざ は、経済の状況に応じて会社が柔 3 年からの国際協力専門 もう一つは、法律を運用する人材 まな場面で不都合が生じることは軟に事業内容を変えることができ員として法整備支援に協力。現在、 の能力を向上することだ。最高裁 容易に想像がつくだろう なくなってしまいます」。そう指 ミャンマ 1 の首都ネピド 1 に駐在判所は、民事訴訟法や刑事訴訟法 「例えば、ミャンマーの既存の摘するのは、が同国で実して 3 年目になる などの法律を所管し、それらの 会社法は、会社の目的を定めるク基施する法整備支援プロジェクトの 連邦最高裁判所と連邦法務長官改正法を起草する権限を持ってい from 一 Myanmar ミャンマー 1 0 0 新たな時代を支える法律 軍政の終わりとともに、モノ・サービスが自由に取引される市場経済に移行したミャンマー 残された課題は、古いままの法制度と法律分野の人材育成の遅れだ。 新たな時代を歩み始めた同国の法整備に日本が協力している。 [ 写真上 ] 2014 年 7 月に最高裁判所の研修施設で行われた 新任判事補研修でのグループディスカッション September 2016 1 2

8. mundi 2016年9月号

社会が確立されているのだ。人々は米から作った酒を飲み、穏や かな表情で談笑していた。一緒になって酒を飲み、ご飯を食べる と、ロの中でみずみずしい大地の味が広がった。 マダガスカルの人々は 10 0 0 年以上前にインドネシアからや ってきたといわれているが、木彫文化と農耕社会を色濃く残すザ フィマニリ族の人々の生活は、その確かな証拠に思える。彼らと 時間を過ごしていると不思議な懐かしさがあったが、それもやは り、私自身の文化圏に近いアジアの香りを感じていたからかもし れない。 サカイプ村では、人々の共同体が機能し、自然の恵みを享受 し、大地の力を信じ畏れていた。初めて訪れたのにとても落ち着 く、心地よい滞在だった。 h. 稲わらを編み、入れ物や帽子を作 る。男性が農作業に行っている間、 女性は家で手工芸を営む i. 細かな彫刻が施された小さな腰掛 け。彼らはどこに行くときでも、自分 の腰掛けを持ち運ぶ j. 訪れた時期は田植えの季節。村人 たちは、歌を歌いながら楽しそうに 共同作業をしていた ′マダガスカル 竹沢一つるま ( たけざわうるま ) 1977 年生まれ。大学在学中、沖縄の海の美しさに衝撃 を受け、写真を学び始める。卒業後、水中撮影カメラマン を経てフリーに。日経ナショナルジオグラフィック写真賞 2 014 グランプリ受賞。著書に『 Walkabout 』 ( 小学館 ) 、 fThe Songlines 』 ( 小学館 ) など。

9. mundi 2016年9月号

い手を育てる 地域と 世界の① きずな 法整備支援を学問的な課題として探求している名古屋大学。 弁護士会や地元企業とも連携しながら、さまざまな法整備支援事業を展開するとともに アジアの発展に貢献するグローバルリーダーの育成を目指している。 愛知県 愛知県 愛知県 面積約 5 , 172km2 。人口は全国第 4 位の約 744 万人で、県庁所在地の名 古屋市の人口は約 228 万人 ( 2014 年 10 月 1 日現在 ) 。県内の総生産は 31 兆 8 , 815 億円で、全国第 3 位。自 動車に代表される輸送機械が有名 で、愛知のものづくりを国内外にアピ ールし、世界的ブランドへと展開する ための事業か推進されている。 〃ノみ 全国に先駆けて 新しい地平を切り開く ベトナムで O < による初めての 法整備支援プロジェクトが始まったの は、今から跚年前の 1996 年。名古 屋大学は、それ以前から日本とベトナ ムの法の研究を通じて国際交流を続け ていた。 「まだ日本政府として支援の動きが なかった囲年代の初め、民法が専門で 現在は名古屋大学名誉教授の森島昭夫 さんが、ベトナムへの法整備支援を検 語 」。 ( を←日討していました。私はベトナム憲法史 が専門なので、森島さんに協力する形 で何度か一緒にベトナムを訪れまし た」と説明するのは、同じく名古屋大 あいきようまさのり を ' ' 、第 ~ テ学の名誉教授である鮎京正訓さんだ。 ドイモイ政策によって市場経済化が進 んでいた当時のベトナム社会には、 人々の経済活動に不可欠な民法が整備 されていなかったため、森島さんが同 国初となる民法典の起草に協力するこ とになったのだ。程なくして O < の法整備支援プロジェクトが動き始 め、 2 人はプロジェクトの立ち上げ段 行階から関わり、ハノイで行われた調印 式にも出席した。 こうした経緯もあり、もともと法整 研備支援に取り組む下地が整っていた名 教古屋大学。 2002 年には、法学分野 の国際協力を推進するセンターとし て、「法政国際教育協力研究センタ 1 (0<<*-&2) 」が設立された。主な取り か組みの一つが、アジア 7 カ国の 8 つの September 2016 20

10. mundi 2016年9月号

単広室から 長かった夏休みも終わり、子どもたちが学校に戻る季 節となりました。 私事ですが、我が家の高校生の息子は、夏休みの期間中、 2 週間ほどタイでボランティア活動に参加しました。国 際 ZOO の活動をお手伝いするもので、学校の仲間人 と共に、ラオスとの国境の村に住む貧しい家族のために、 家をゼロから建設しました。地元の大工さんの助けを借 りながら、セメントを準備し、プロックを積み、汗みど ろになりながら全て手作業で作り上けたようです。最終 日には、その家族に無事に完成した家を引き渡すことが でき、非常に感謝されたそうです。 息子は幼いころ、私の海外駐在に帯同していました。 専門家や青年海外協力隊の方々との触れ合いを通じて、 何となく国際協力を理解していたようですが、今回現場 を経験したことで、発展著しい首都バンコクと貧困にあ えぐ農村部の格差、ひいては相互依存の関係にある世界 など、深く考えるものがあったようです。改めて、現場 に勝る教師はないと感じました。 今回の活動は、欧米の大学に進学する上で必要条件と なるボランティア活動の一環として、学校 ( インターナ ショナルスクール ) が企画しました。当初、息子はしぶ しぶ参加している様子でしたが、帰国したときの顔つき は全く違っていました。その様子は、 2 年間の隊員活動 せいかん を終え、自信に満ちた精悍な顔つきで帰国する青年海外 協力隊員に、少しばかり似たものがありました。 日本の高校生は、実社会と関わる機会が必すしも十分 にあるとはいえません。それならは、長期の休暇などを 利用して、国内外を問わす、社会貢献活動に参加してみ てはいかがでしようか。机上の学習に深みを与えるたけ でなく、自ら考え、行動に移す力がさらに増すことでし よう。 0—0< 広報室参事役江種利文 本誌へのこ意見・こ、感想や J ℃ A へのこ質問を き お寄せくたさい。 添付のアンケートはがき、 E メール、 FAX から、本誌に対す るご意見やご感想、また J ℃ A へのご質問を、氏名・住所・ 電話番号・職業・年齢・性別・ご希望のプレゼントを明記の 上、お送りください。ご記入いただいた個人情報は統計処 理およびプレゼント発送以外の目的で使用いたしません。 当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます。 ◎応募締切 : 2016 年 10 月 15 日 E メーノレ :jica@idj.co jp FAX : 03-3221-5584 ( mundi 』編集部宛 ) ①ラオスの雑貨 ②書籍『旅行マスター M 「 . タンの南米探求紀行 ~ カリブ海・ウユニ塩湖・コルコバードの丘・サン / ヾカーニバル ~ 』 ( P37 参照 ) 南米 探究 紀行才 都予立・ . ー ② 本誌をご希望の場合は 下記方法で お申し込みください。 ー法整備爰 申込方法 本誌をご希望の方には、送料をご負担いた だく形で送付いたします。巻末の払込取扱 票に、氏名・住所・電話番号・ご希望の送付 期間・送付開始月を明記の上、指定の金額 を郵便局でお支払いください。入金の確認後、発送を手配いたします ( 入金から 1 週間程度かかることもありますのでご了承ください ) 。複数冊、またはバックナンバー をご希望の方は送料が異なりますので、下記までお問い合わせください。 申込先 ( 株 ) 国際開発ジャーナル社総務部 ( 発送代行 ) 住所〒 102-0083 東京都千代田区麹町 3-2-4 麹町 HF ビル 9F T E L 03-3221 -5583 F A X 03-3221 -5584 E メール order@idj.co.jp 、物・ 1 - 行・ンの 冫欠号予告 2016 年 10 月 1 日発行予定 ) 留学生 近年、アジアやアフリカなどの開発途上国から日本に来る留学生が 増えています。その目的は、行政官の能力向上や産業人材の育成、 研究の促進などさまざま。多様化するニーズに応える日本の留学生 事業の実態や、留学生たちの声を紹介します。 ① SEPTEMBER 2016 No. 36 編集・発行 / 独立行政法人国際協力機構 Japan lnternational Cooperation Agency . JICA 〒 102-8012 東京都千代田区ニ番町 5-25 ニ番町センタービル TEL : 03-5226-9781 FAX : 03-5226-6396 URL : http://www.jica.go.jp/ バックナンバーは J ℃ A ホームページ (http://www.jica.go.jp/publication/mundi) でご覧いただけます。 本誌掲載の記事、写真、イラストなどの無断転載を禁じます。 September2016 mt-Jndi 38