法整備支携 特集法整備支援 社会を支える「ルールづくり」への貢献 日本の法整備支援の弖 開発途上国で使われる法をつくり、それを連用する人材 研究者 支援の意義を客観的に検証する 大川謙蔵さん 摂南大学法学部講師 法務省法務総合研究所国際協力部法務教官 湯川売さん とがきっかけとなリ、」に A がラオスで実施してい 関係法制に関する調査を手伝いました。そのこ で、法務省の委託調査研究としてラオスの身分 代には、お世話になっていた先生の下 学・大学院での専攻は民法です。院生時 ンパイ・サイニャスックさん ( 左 ) 大川さん ( 右 ) と、ラオス最高人民裁判所研修研究所のカ 17 september2016 国際協力の一環として、アジア諸国に対して、法 ( に D ) に出向しています。て D は、法務省が行う 後、昨年から法務省法務総合研究所国際協力部 兵庫県の地方・家庭裁判所に赴任した 10 年に裁判官になった私は、長崎県と 法律家たちと民事保全制度について議論した 日本で実施した研修の様子。湯川さん ( 左奥 ) はカンポジアの る法整備支援プロジェクトに、 2014 年からアド バイサリーグループ委員として関わることにな リました。 このプロジェクトではいくつかの活動が展開 されており、その中で私が協力しているのは、民 法典の作成支援です。現地の法律家たちに日本 や外国の法律を紹介しながら、草案の内容を一 緒に検討しています。その際に心掛けているの は、日本の考え方を押し付けないということ。ラ オスにはラオスの考え方が存在しますので、た とえ日本側が良いと思ったことでもラオス側が 否定的な場合には、強制的にそのやり方で推し 進めないようにしています。また、外国の法律が ラオス社会の実態に必ずしも適しているとは限 りません。さまざまな国の法律をただ紹介すれ ばいいというわけではなく、相手国にとって伝 Law わりやすい説明の方法を考えなければならな い点は、法整備支援の難しさだと感じています。 法整備支援には、検察官や弁護士など、さま ざまな立場の人たちが関わっています。私が研 究者として果たすべき役割は、支援を進める上 での議論の過程や草案の内容を客観的に分 析・検討し、その意義や背景を探求しながら、広 く社会に普及させることだと思っています。ま た、活動内容を振リ返って改善点や反省点を検 証したリ、日本の法整備支援の内容や方針を、 他の国が行う支援の状況と比較しながら検証し たりすることも重要です。 民法典は完成に近づいています。完成した後 も、ラオスの経済や社会の発展に沿った形で、 中身の改正や問題点などについての指摘や助 言を続けていくつもリです。 法律家 法律家として同じ目線で伝える 律の起草や改正、法制度の整備、法曹関係者の 育成などを支援する部署です。」に A のプロジェ クトにも協力しており、現地調査を行ったり、現 地の法律家を対象にした研修やセミナーを企 画したリ、その講師を務めたりもしています。 日本はカンボジアの民法と民事訴訟法の起 草を支援してきましたが、中身は日本の法律に 近いため、私たちが現地の法律家に対して講義 をする機会も少なくありません。日本の考え方 を紹介したり、具体的な事例を挙げて問題点を 解説したリして、現地のニーズに沿った講義に なるように工夫しています。私は " 核となる部分 は分かりやすぐを心掛け、一番伝えたいことを 準備段階で明確にするようにしています。相手 は、事件が目の前にあって、何とか解決しなけれ ばならない状況にある実務家の方々なので、理 Law 想論だけではあまり意味がないと思っていま す。なるべく、自分が同じ立場だったら知リたい ことや、仕事ですぐに生かせることを伝えられる ようにしています。また、裁判は。結果 " だけでな ぐ過程 " が重要であることも、裁判官出身者とし て伝えるべきことだと感じています。 カンボジアの方々はとにかく熱心で、講義時 間の半分近くは質疑応答に充てているほどで す。それだけ、自分たち自身で法律や法制度を 適切に運用し、国を良くしていきたいという意 識が高いのだと思います。日本での研修に参加 していたカンボジアの裁判官と現地で再会した 際、「研修で同じような事件を取り上げていたこ とが役立った」と言われたときはうれしかったで すね。彼のような経験をする方が、これから一人 ニ人と増えていってほしいと思います。
特集法整備支援 社会を支える「ルールづくり」への貢献 開発途上国に対する法整備支援や法律分野の人材育成はなせ重要なのたろう ? それは、法律か国を支える最も基礎的なインフラの一つだからだ。 日常生活や経済活動を円滑化する法律は、 暮らしのあんな場面やこんな場面て役立っている ・民法・会社法などの起草支援 ・弁護士養成支援 きちんと 契約しているので 安心して取引できる ! ・知的財産権制度の整備支援 イラスト : 永江艶の 07 september 2016 法整備支援の全体の情報は、こちらの「法整備支援ポータルサイト」をご参照ください。 http://www.Jica.goop/activities/issues/governance/index.html
mundi SEPTEMBER 2016 No. 36 編集・発行 / 独立行政法人国際協力機構 Japan lnternational Cooperation Agency : J ICA 「 mundi 」はラテン語で。世界 " 。開発途 上国の現状や、現場で活動する人々の 姿を紹介する J ℃ A 広報誌です。 Contents 02 my phOtO 04 特集 法整備支援 社会を支える「ルールづくり」への貢献 日常生活の舞台裏法律をつくり、使い方を広めるラオス 新たな時代を支える法律 ャンマー 国境を越えた犯罪に立ち向かうコートジボワール 役割いろいろ ! 法整備支援を支える人たち 18 「普通に生きる」が当たり前の社会へ特定非営利活動法人メインストリーム協会 PLAYERS 20 地域と世界のきずな 次世代の担い手を育てる愛知県 22 教科横断で世界への関心を広げる岡山市立京山中学校 世界とつながる教室 金・田雅冫と産業開発・公共政策部ガバナンスグループ法・司法チーム 24 J ℃ A STAFF 25 J ℃ A UPDATE 26 特別レポート 大丈夫 ! なんとかなるから ! マラウイ 91m1 リ 井上きみどりさん 日本とアジアの絆をたどる旅 ~ ひとごとではない人身取引 ~ ベトナム編 アジアで 日本が 人身取引対策の プロジェクトを 支援していると 聞いて 画家の # 上キ、みどソびオ 取材に 行って きました 28 ココシリ 30 地球ギャラリー 「ここが知りたい」いろんなトピックを分かりやすく解説 ! マダガスカル 谷間にたなびく煙と絆 37 本・映画・イベント イチオシ ! メコンのほとり、時は緩やかに流れる 39 MONO 語り 真山仁小説家 40 私のなんとかしなきゃ ! ・ジャイカ ↓ ICA 山 C A のビジョン すべての人々が恩恵を受ける、 ダイナミックな開発を進めます lnclusive and Dynamic DeveIopment 表紙 ◎久野真一 アジアの国々で作成された法令集や解説 書。日本は開発途上国に対して、法案の起 草や法律家の育成などを支援してきた。公 正な社会のために必要な「ルールづくり」へ の協力が、各国の発展につながっている
特集法整備支援 社会を支える「ルールづくり」への貢献 る。一方の法務長官府は、各省庁常的な議論を通して、現地職員ら が、法案の作成段階で関係者から が起草した法案を審査する役割を 広く意見を聞くことの必要性を認 の問題意識を把握できるため、ニ人々のための法律を 日一、つ ーズに合った協力ができるのが 識し始めています」。さらに、最 取り組みの特徴は、法案の起草 の利点だという これまでの軍政下で、ミャンマー 高裁判所と進めている知的財産に や人材研修の在り方など、テーマ 加えて、日本の法整備の経験もの政治は時の権力者の意向に左右関する訴訟制度の改善などを目指 ごとに日本の専門家と現地職員が強みになっている。日本は明治維 されてきた。その上、 19 88 年すプロジェクトでは、が議論 ワーキンググループ (*c) を構新後、欧米諸国の法制度を比較検の民主化運動に法学部の学生が多した方策をインターネットで公開 成している点だ。「法案審査の討しながら取り入れてきた。その数関与していたことから、ヤンゴ し、パプリックコメントを募集す では、条文に不明確なところ ため、日本の専門家は、相対的な ン大学の法学部が閉鎖されるな る計画もあるという がないか、他の法律と整合性は取視点で各国の法制度を提示し、そど、法学教育は政府に警戒されて プロジェクトでは、日本での研 れているかなど、法務長官府の職れを国に合うようにカスタマイズ いた。「また、法律は人々を取り 修も実施している。昨年は、会社 員たちに問題を提起しながら議論することの必要性を伝えることが締まるための道具として認識され法を所管する国家経済開発省の投 できるのだ。 を促しています」と小松さん。日 ているため、法案は秘密裏に起草資企業管理局と、それを審査する され、議会に提出され法務長官府、将来的に会社法を適 た後で初めて利害関係用して裁判事務を行うことになる 者から意見が出されま最高裁判所の三つの機関職員を招 す。その調整に手間取き、法案への理解を深める場を設 ることも多々あります」 けた。研修に参加した法務長官府 と小松さん。 の職員は、「具体的な係争を想定 そんな同国に、民主した研修を通して、現在の条文案 的な手法で法案につい が適切かどうか考える機会になり て広く議論できる下地ました」と話す をつくり、十分な知識 ミャンマーの裁判官や政府職員 を持った人材を育てる の法に対する考え方は、プロジェ ことが、小松さんらプ クトを通じて徐々に変化してきて 月 ロジェクトチームの使 いる。「その変化をできるだけ大 年 昨 命だ きな流れにつなげていくことが今 ち 「赴任当初、法務長官の目標です。 7 月から新たに民事 府は、法案を私たちに紛争解決メカニズムを改革する取 専 見せることにも抵抗を り組みも始まりました。人々の権 る 示していました。でも、 利を保護するという裁判の重要な 文化的背景に配慮しつ機能に関わるこの活動も、やりが 在 駐 つ、忍耐強く新しい方 いあるものになるでしよ、つ」と小 4 一法を伝えていったとこ松さんは意気込みを新たにしてい ネ ろ、今では多くの職員る . - 、、・・ i•NlSTRY OF ℃ A日0日、、 lNFORMATm TECHNOLQGY ャンゴンの高等裁判所で、事件の記録を見ながら議論する小松さん ( 左から 2 人目 ) 0 The RepubIic 可 the Union of Myanmar Supreme Court the Union OUSC & JICA 0 ー、 T COORD ー、 A ・日、 G COMMIVI ・ EE MEVI'I 、 G 、町 PyiTaw February 20 ド 昨年 2 月にネピドーの最高裁判所で、 活動のレビューと年間計画を立てる ミーティングが行われた 13 September2016
を支える人たち 0 業務調整員 の一つは、支援を手掛ける人材層の厚さだ。 てるため、それぞれの専門性を生かして支援に協力する人たちを紹介しよう。 つぐのり 寺本二憲さん 専門家の円滑な活動をサポート 「 2020 年を目標とする法・司法改革支援プロジェクト」業務調整員 や、裁判所、検察院などの司法関係機関とそこ 切性、また、通訳・翻訳の質の確認など業務は多 で働く人材の能力向上に取リ組み、多くの成果 岐にわたり、さまざまな点への配慮が欠かせま を残してきました。現在のプロジェクトは、その せん。経験豊富な現地スタッフや運転手さんた 取リ組みを一層強化するものです。特に、ベトナ ちと、チームワークを大事にしながら日々業務 ムでは近年、法令間の不整合や法令を執行・運 にあたっています。 用する法律家間の理解の差が課題となってお ベトナムの新・旧司法大臣をはじめ、今では リ、それらを抑制・是正することで、法令の統一 」て A の支援を受けた多くの人が同国の法律分 的な適用を目指しています。 野の中核人材として活躍しています。日本の地 プロジェクトでは、日本で現役の裁判官、検察 道な協力がベトナムの人づく屮国づくりに生き 今年 4 月、専門家たちとロン司法大臣の就任を祝った寺本 さん ( 左から 3 人目 ) 官、弁護士として活躍する 4 人の専門家がベトナ ているのだと誇らしく思います。 ム国内を飛び回りながら、現地の司法省や首相 私は、大学卒業後から 30 年間、北海道の炭鉱 が業務調整員として携わっているのは、 府、最高人民裁判所などの司法関係機関を対象 会社で技術者として働いていたのですが、実は ベトナムの「 2020 年を目標とする法・司 にセミナーやワークショップを開催し、助言など そのころは、」に A の炭鉱安全技術協力プロジェ 法改革支援プロジェクト」です。日本は 1996 年 を行っています。そんな専門家の活動をバック クトの専門家としてベトナムで活動していまし アップするのが私の役割です。予算や会計の管 にベトナムに対する法整備の協力を始め、約 20 た。縁あって、再びベトナムでの技術協力に携わ 年間にわたって民法など基本法令の起草支援 理はもちろんのこと、出張日程や移動手段の適 れることをうれしく思っています。 寺ー 0 Law 通訳・研修監理員 天川芳恵さん 「カンポジア王国法整備支援プロジェクト」通訳・研修監理員 言葉がすべて、法律用語を正しく伝える ジア難民キャンプで通訳をしていました。 富な語彙が求められます。「認定」「認容」など、 日本に来たのは 84 年です。当時は、働きなが 日本語の微妙な違いを正確に伝えるためには、 ら語学教室に通い、大学を卒業しました来日 4 両言語での用語の意味合いを丹念に調べるこ 年目からはインドシナ三国からの難民を受け入 とが重要です。適切なカンボジア語の表現が見 れている団体で通訳を務めることに。その団体 つからない場合には、言葉の意味を説明し、研 の所長の勧めを受け、 92 年から引 CA の研修監 修員ら自身に適切な言葉を挙げてもらいます。 理員・通訳として働き始め、現在に至ります。 もちろん通訳には語彙力だけでなく、法律の内 」に A で初めて法律分野の研修を担当してか 容自体への理解も求められますので、事前の準 ら、約 20 年がたちました。 99 年にカンボジア政 備や学習には多大な時間を要します。 研修のために来日したカンポジア司法省次官補や日本の裁判 官であるプロジェクト専門家と談笑する天川さん ( 中央 ) 府の要請で始まった民法・民事訴訟法起草支援 印象深いのは、プロジェクト開始当初、カンボ のプロジェクトには現在も携わっています。カン ジアの公務員らが " 内戦で荒廃した国を立て直 はカンボジア難民として来日し、日本に す " という強い意志を持っていたことです。日本 ボジアの司法関係者を招いて実施する研修で 帰化しました。ポルポトの恐怖政権下か 通訳を務める他、現地でのセミナーの通訳や調 の長年の支援により、カンボジアの法制度は大 ら逃れるため、隣国ベトナムに避難した 1975 年 査業務も担当しています。 きく改善し、優秀な法律家が育ちつつあります。 当時、私は中学校卒業を間近に控えていまし 法律は、他の分野と異なり、図や写真などで その誇りを胸に、今後もプロジェクトにまい進し た。その後、ベトナム語を習得して現地のカンボ 内容を伝えることができないため、通訳では豊 たいと思います。 0 Law september 2016 16
The Magazine of the Japan'lnternationaI Cooperation Å genc 、第 , 、ト物を、 .0 ) 第、 [ ムンティ ] ー法整備支援 2016 September No. 36 0 、 " 。恒 0 00E2 、、、 0 6 、 0 ぃロ、者 ) ー 50 、日、 6 いい 2 徳市立文 ~ 一般 09 ゅおの一 1 ぃ員い、日い い、一戸、いお 0 社会を支える「ルール づくり」への貢献 2 0 - の 0 い -
特集法整備支援 社会を支える「ルールっくり」への貢献 国ョ イ 4 ハンドブックは職員の法律理解の 公正な社会に向けて 大きな助けになっています」と語 若手法律家を育てる るシ 1 ワンさん。今回作成してい る & < 集によって、弁護士や地 若手法曹の育成に向けて、昨年 方の警官などの法律理解を深め、 から始動したのが、国立司法研修 る 意図しない違法捜査を減らすこと所だ。「これまで、法律専門職の志 て ができると見ている 望者が法律家の道を選んだ後に机 せ わ 合 最高人民検察院のスパシット・ を並べて学ぶ機会がありませんで す ローワンサイさんは、「ハンドブッ した。そこで、国立司法研修所では、 寄 クは、現在、法律学校や検察院の法学部の卒業生を対象に 4 カ月の ち 実習を含む 1 年間の研修を行って 研修所でも活用しています。以前 はこうした書籍がなく、ノウハウ います。実務能力が身に付くだけ 意 の でなく、他の法律家の立場につい も持ち合わせていなかったので、 て理解が深まり、協力して国民の 場作成には大変苦労しましたが、出 立 の来上がったハンドブックを地方のために尽くすことができるように ぞ 検察組織まで普及させたところ、 なるでしよう」と、民法典の起草 れ そ 大きな効果がありました。現在作 に関わり、教育研修改善ワーキン ググループのメンバ 1 も務めるプ 授成している & < 集や、今後のさ 学 ンクワン・タヴィサック最高人民 まざまな資料作成も、ぜひ成功さ 大 裁判所官房局長は話す。 せたいものです」と話す 護 弁 一方、ラオス国立大学法政治学部 今後は教員の育成や授業内容の で刑事法学科長を務めるセンタヴ改定などに取り組んでいく。「質の 察 ィー・インタヴォン教授は、「チャ高い法律家がいることで、法治国家 警 1 トを活用することで、現場の実務としての体制がより整い、社会の公 判 家が刑事訴訟の手続きを正しく理正と国民の利益を保証することが 裁 グ解できるようになりました。 C & < できます。法の支配の確立は、ビジ ネスがしやすい環境づくりでもあ テ集は、チャートやハンドブックの普 及活動の中で、現場の職員が見つけ り、経済発展には欠かせない条件 の め た疑問に答えるものでもあります」 なのです」と同研修所のセンパチャ の ン・ウオンポ 1 トーン副所長は語る。 と説明する。「日本は、ただ書籍を 集 制作するだけでなく、書籍を制作で 東南アジア諸国連合 ( ) る す の一員として、近隣各国と共にさ きるラオス側の人材を育てるように 関 らなる発展を目指すラオス。それ 配慮してくれています。いずれ私た 八ム らを裏から支えるべく、今日も法 訴ちだけになっても、法曹界を発展さ せていけるはすです」 律家たちが議論を重ねている 1 夕方になるとメコン川沿いで開かれるナイトマーケットは、 多くの人でにぎわう。さらなる発展を目指すラオス経済の 舞台裏で、日本の法律家たちが活躍している 1 1 September2016
国際社会に生きる日本人としての自覚を 高めてほしいと思います」と話す 社会の時間にインターネットや資料集 などを使って事前にアフリカ諸国につい て下調べをしていたため、生徒たちは青 年海外協力隊が書いたモザンビークの 紹介文を事前知識と照らし合わせながら 読むことができた。また、美術の時間に、 1 枚の写真を多角的に鑑賞する方法を 学んだことで、写真の背景情報まで深く ちの生活とアフリカの生活の相違に気ものだ。 2011 年のー O< 教師海外類推して考える力やそれを発信する力も 付き、その良さを英語で表現しよう % 研修の際に知り合った他校の先生が、そ身に付いた。 「いろいろな教科を通して学習するこ 英語の授業だけでなく、他の教科ともの後、青年海外協力隊としてモザンビー とで、文化の大切さがよく分かった」「英 連携した横断的な授業の実践が特徴だ。 クに派遣されたことを受け、同じ研修仲 昨年は、社会の時間にアフリカ全体や 間と一緒に、その先生を訪ねてモザンビ 語の授業で他国についても学べるのは効 個別の国を取り上げて地理的なイメー 率的」「今まで暑いというイメージ ークまで足を運んだのだ。「生徒たちに、 しかなかったけれど、日本との共通点も ジをつかみ、美術の時間には、アフリ より現実味のある途上国の情報を伝えた 力の写真を鑑賞して現地の生活や文化 いと思い現地では授業に生かせる材料多いことが分かった」など、教科横断に への理解を深めるなど、 4 科目で計秬 を探しながら過ごしていました」と竹島よる国際教育は生徒たちからも好評だ。 授業を通じて、ク将来、国際協力の仕 時間の授業を行った。それらの学習を踏先生は話す こうして撮影された枚の写真を授業事をしたいと話すようになった生徒も まえて、生徒たちは英語の時間に日本 しるとい一つ とアフリカ・モザンビークを比較する で目にした生徒たちは、「写真に写って しし国なんだな 英文ェッセイを書き、発表したのだ。 いる人の多くか笑顔で、、、 「教え子が外国語系 他教科との連携による授業のプログラ と思った」「モザンビークには自然がたや国際系の大学に進 くさんあるだけでなく、スー ーマーケ学したという話を聞 ムは、竹島先生が計画全体の骨子を作り 他の先生に提案するかたちで進めたとい ットなどのにぎわっている場所もあるんくのは、本当にうれ しいものです。現在 う。「計画を共有する中で、他の先生方だなと思った」など、さまざまな気付き の赴任先の旭東中学 にも面白そうだ % と思ってもら - っこと を得たようだった。 が大切です。協力が得られた後は、それ さらに、授業では友人の青年海外協力校でも、国際協力に ぞれの専門的な観点から新たなアイデア隊員が英語で書いたモザンビーク紹介文取り組む ZOO など と連携しながら授業 が付け加えられていきました」 も教材として活用。こうした多様な教材 を使った授業について、竹島先生は、「英を実施していけるよ 語でアフリカの生活や文化に触れる中う、準備を進めてい 授業の材料は自分で集める で、言語や異文化に対する関心を高め ます」と竹島先生。 人脈を生かした国際教育 それらを尊重する心を育てることか狙い 国際教育にかける思 授業で使用したモザンビークの写真のです。また、青年海外協力隊の活動を知 いは確実に生徒に届 いている 多くは、竹島先生が現地で自ら撮影した ることで、世界の国々への理解を深め、 モザンビークの写真から読み取れる 内容を英語で発表する生徒たち。 1 枚の写真が、英文法を学びながら 外国を理解するための教材となる モザンビークの中学校を訪れた竹島先生。京山中学校の 1 年生 の取り組み内容は、青年海外協力隊を通じて現地の中学生にも 伝えられた 青年海外協力隊としてモザンビークで活動 中の友人を訪ねた竹島先生 ( 中央 ) 。竹島 先生は J ℃ A の開発教育指導者研修にも 参加し、他校の先生たちと国際教育の事・、 例を共有しながら授業に役立てている レい 2 モザンビークの首都マプトの様子。「生徒 たちにはこ結構、日本と似ているなあ " どや つばり違うなあ " の、どちらの感想も大切に してもらいたいと思います」と竹島先生 第 2 23 September2016
次世代の担 0 2 1 cambodia cambodia ンゴル弁護士会とは友好協定を結んで 大学に設置された「日本法教育研究セ いる。そのきっかけを作ったのが、 2 ンタ 1 」の運営だ。ここでは、現地の 学生が日本語で日本法の教育を受けて 004 年から 2 年間、モンゴルで法整 おり、 4 年間の課程を終えた学生の中備支援プロジェクトの専門家を務めた から、名古屋大学の修士課程への留学田邊正紀弁護士だ。 取り組みの一つが、調停制度の導入 生が選抜される。の小畑郁セ だ。「心掛けていたのは、日本のやり ンタ 1 長は、「特長は、現地大学で開 かれている現地法の講義と並行して、方を押し付けないことです。日本では、 当事者が別々に調停委員と面接する別 日本法を教えている点です。学生には、 日本法を比較材料として学びながら、席調停が基本ですが、モンゴルでは司 法に対する信頼が低く、自分がいない 現地法の課題にも気付いてもらいたい 場所で不正が行われているのではとい と考えています」と話す。 う疑念を抱かれる懸念がありました。大きな意味があります。また、日本の カンボジアの同センター第 1 期生の ム・リー 法学分野でも国際貢献が ホンさんは、現在は名古屋そのため、両方の当事者が同席の上で学生には、ク 大学の博士課程で日本などの司法制度話し合う方式としました」と田邊弁護できる道があるツという新しい認識を リ 1 ホンさんは、「将士。もともとモンゴルには調停という与えています」 を研究している 法整備支援を学ぶために名古屋大学 来は母国力ンボジアの大学で法学の先言葉すら無かったが、今では全国の裁 各 に入学したという法科大学院 1 年の坂 判所に調停制度が導入されている 生になり、法曹界の人材育成に貢献し 右 番 また、判例の公開にも取り組み、当本あずささんは、学部時代、大学の留 たいと思います」と目標を語る ん 初は年間 2 件ほどしか公開されていな学制度を利用してベトナム・ホーチミ さ一 ン クオール愛知で ホ かった判例が、今では全件インターネ ン市法科大学に半年間留学した。「留 支援や教育の現場を支える ット上に公開されている。「現地の裁学中、現地の 0 < プロジェクトオ 議行 会を フィスでインターンシップに参加させ 判を傍聴したり、法律事務所を回った 海外に進出する日本企業にとって、 全交 てもらいました。日本の法律家の方々 りして、自分の目で見て問題点を考え 経済活動の根幹となる相手国の法制 究意 が綿密な議論を行っている様子を目に 研て度。名古屋大学は、愛知県などの企業ました。若い世代の弁護士たちにも、 して、まずは日本法を習得しなければ、 で構成される中部経済連合会と定期的もっと海外を経験して視野を広げても らいたいと思っています」と田邊弁護他国の法整備支援の役に立てることは に意見交換や情報共有の場を設けるな ス 法 何もないと感じました」。そう話す坂 士は語る ど、産学連携の取り組みを推進してい ン 名古屋大学の鮎京さんは、法整備支本さんは、弁護士を目指して学業に励 る。また、愛知県弁護士会とも連携を てガ 図り、留学生向けの授業や特別セミナ援はその国の発展に貢献すると同時んでいる 行備 アジアの法に寄り添い続けてきた経 に、日本にも良い影響をもたらすと話 1 を現役の弁護士が受け持っている 愛知県弁護士会は、これまです。「明治以降の日本の法律学が対象験を、次の世代へ。そんな未来を見据 学生 大学 < の研修コースに協力するなど、法整としてこなかったアジア地域の法の歴えた循環が、ここ愛知県から生まれて 4 を屋留 いる 名国備支援にも積極的に関わっており、モ史や現状を明らかにしてきたことは、 モンゴルで開かれた調停人 養成研修の講師を務める田 邊弁護士 ( 中央 ) 0 ベトナムの J ℃ A プロジェクトオフィスで実際の業務を 体験した坂本さん ( 中央 )
に向けて取り組んできた。年にはメ よく、経済的余裕もあり、何より教育 者同様、そう考えていた彼女の生き方開したのだ。 を変えたのは、 2009 年に来日した 過酷な炎天下、日差しをさえぎるも インストリーム協会の協力で南部のべが充実しています。人権を守るという 際の研修で出会ったメインストリ 1 ム のが何もない道を歩き続ける日もあっ レスセレドンに障害者のための自立生意識が高く、障害者の自立センターも アフリーに たという今回の挑戦。マスコミの注目活センター「モルフォ」が設立され、増えてきていますが、バリ 協会の活動だった。 同協会は兵庫県西宮市で障害者自身が集まり、首都サン・ホセに到着した ウエンディさんもこのセンターで仲間関して地域格差が大きく、改善が必要 が運営する自立生活サポートセンター ときは行きかう車がクラクションを鳴たちと生活を始めた です」と廉田さんは話す。 障害者自立法では、介助者の資格な だ。 1989 年に設立され、地域社会らして応援し、道行く人々も水や果物 ウエンディさんを後押ししてくれた どについて、障害者団体の意見も反映 で障害者が自立した暮らしをすること などを提供して歓迎してくれたという のが、研修などに常に同行し、彼女を この活動の成果もあり、障害者自立法ずっと支えてくれた母のヤミレスさんされた。障害者自身の意見が法案に取 を、さまざまな形で支援している これまでコスタリカには公的介助制 は無事、成立する運びとなった。 だ。「ある晩、キッチンで両親が話してり入れられた事は、自立生活を目指す いるのを聞きました。私が家族と離れ に当たって大きな成果だ。ウエンディ 度がなく、障害者は家族やメイドなど て暮らすのを心配する父に対して、母さんも法学部で法律を学び、将来は弁 に頼って生活せざるを得ないことが多悲壮な闘いではなく がクあの子を愛して、尊重しているか護士として障害者の法律支援をしてい かった。「国会でも、以前から法改正が前向きに人生を楽しむ きたいという 必要との認識はあったのですが、他の らこそ、出て行くことを認めてあげな 「廉田さんは、ク 怖がっていないで、楽 兵庫県で障害者の自立センターを運ければクと答えていたのです」 法案に比べて優先順位が低いために、 審議が先送りされ続けてきました」と営するメインストリーム協会は、 19 現在、センターは日本の支援で運営しみながらチャレンジしなさいクと勇 ウエンディさんは話す。「そこで、多く 9 9 年にアジア 6 カ国から障害者の研されているが、いずれはコスタリカの気付けてくれました」と振り返るウェ ンディさん。障害者が自分の生き方を の人にこの法案に注目してもらうため修受け入れを開始。研修で終わらせる人たちだけで運営していくことになる 自分で決められる社会に向けて、これ に、マスコミや co Z を活用したキャ のではなく、各国での自立活動の継続障害者自立法は、そのための基盤とな からも前向きなチャレンジの毎日だ。 ンペーンを展開することにしたのです。的な支援を手掛けてきた。ネパールでるはずだ。「コスタリカは比較的治安も その時、ヒントになったのは、日本で自立センタ 1 設立のためのセミナーを 開催したときに——O< とのつながり 教えてもらった、という活動でし が生まれ、 2008 年からは中米各国第 は 1986 年から当初は国内の障害者の訪日研修を受け入れ、年 で、その後は海外でも断続的に行われまでに人が来日した。 こ、バリアフリーや障害者自立支援へ 研修の中で伝えているのが、アメリ の注目を集めるための活動だ。年当力などを中心に広がってきた新しい自 時、 バリアフリーの公共交通機関はほ立の考え方。自分の生き方を自分で決 とんどなく、障害者、特に車椅子を使定するク自己決定こそが自立の根幹で、 う人たちにとっては移動手段が限定さそのために介助者の力を借りるという れていた。そんな実情を知ってもらう ものだ。訪日研修では、障害者がメイ ンストリーム協会の活動を見て、自立 ために、廉田俊二さん ( 現・メインス の考え方を学んでいく。 トリーム協会理事長 ) は大阪から東京 ウエンディさんは帰国後、コスタリ までの自力走破を皮切りに、全国で障 害者が自ら長距離を歩き抜く活動を展力で地元の仲間たちと自立生活の実現 かどた メインストリーム協会で研修を受ける参加者たち。この日は全体会 議が行われていた ウエンディ氏 日本の障害者支援団体の全国会議で、コスタリカの活動を報告 するウェンディさん 19 September 2016