いちろ く一路くんは生後 8 か月です。このこ ゆうき おな ろ、お姉ちゃんの優希ちゃんと同じ ようにすわれるようになりました。 せい ねえ しよくご マ優希ちゃんは、食後の歯みがきが大 ていこう きらい。手をあけて抵抗します。 ゆうき は
一「重症心身障害児」一 ゅうき はんぶん もの じゅうしよ、フしんしんしよう しようがい 優希ちゃんは、ふつうの赤ちゃんの半分く物をかんだりのみこむことも不自由です。ま ために障害をのこしましたが、重症心身障 たいじゅうう しよ、フカい がいげんいん らいの体重で生まれました。体重こそ少なか た、からだの障害のほかに、聞くことや見る害の原因には、ほかにもさまざまなものかあ もんだい おも ことにも障害があると思われています。聞い ります。 ったものの、生まれたときにはとくに問題は ふつかめ のうえん ありませんでした。でも生まれて二日目に、 たり、見たりすることに問題があると、こと たとえは、脳炎にかかったために、脳の働 しんぞう こきゅっ かたち 心臓と肺がうごかなくなり、呼吸が止まってばを聞きとることや、ものの形をとらえたり きがスムーズにいかなくなることもあります。 しゃ しよくりようぶそく せんそう 力がくぶつ しまいました。このため、お医者さんや看護することに障害がでてしまいます。このことひどい食糧不足や戦争につかわれる化学物 ゅ A つき かえ まな しつのう そだ 1 レよ、つ。かし 婦さんによって、優希ちゃんを生き返らせるもあって、いろいろなことをうまく学べない 質で脳がうまく育たす、障害をもっこともあ 4 っ . り・よっ ぎやく かのうせい こうつうじこ さいきんおや ための治療がおこなわれました。幸いにして可能性があります。 ります。また交通事故や、最近は親による虐 ゅうき のう しのちをとりとめることかで 優希ちゃんは、ゝ からたをうごかすこととともに、考えたり、 待のために脳をきずつけられ、重い障害をも さんそ ちてき きのう きました。でも、しばらくのあいだ、酸素か ってしまう子もふえています。 話をするといった、知的な機能にも重い障害 のう しょ , っ力い ・かんはりい じゅうしようしんしんしよ、つがいじ 障害など、まるで自分とは関係のないこと いかなくなった脳には、さまざまな障害がのをもっ子のことを「重症心身障害児」とい げんだい こることになりました。 います。 のように思いかちてすか、事故の多い現代で ゅうき 優希ちゃんは、歩くことだけでなく、食べ は、けっして人ごとではありません。 優希ちゃんは、脳に酸素がいかなくなった ゅうき じゅうしようしんしんしようかい さいわ かんご のうさんそ ふじゅう 十′し のうはたら
ゆうきおとうと 優希の弟は、小さいのになんでもできるので かんしん 感心しますが、優希は一生赤ちゃんみたいなも おも さき のだと思っています。だから、「優希より先に死ね おも せわ ないな」と思います。世話をしてやらなくてはい けないから。でも、それはむりだろうから、優希 が生きていける環境を、がんばってのこさないと いけないと考えています。 優希か生まれたときから何年かは、かなり落ち こみました。でも、小学生になったころから、優 しせん 希のことを自然にうけとめられるようになりま した。これからもみんなから好かれるような子に 育ってほしいなと思っています。 〈お父さん・お母さんの願い お父さん いっしよう かんきよう ゆうき なんねん ゆうき せいちょう v 優希ちゃんの成長とともに、お父さん・お母さんの つよ 心もすいふんと強く、たくましくなりました。 DAYS.
ばわたしたちは、目の前にジュ 1 スのコップ しぜん があれば、手を自然にうごかしてコップをと り、ジュースを飲むことがてきます。からだ しき の動きなど、なにも意識しなくても、ジュ 1 たんじゅん スを飲むという動きができます。これは単純 ふくざっはたら くつもの複雑な働きがあっ な動きですが、い てはしめてできることなのです。 あたら およかたなら たとえば水泳で、新しい泳ぎ方を習いはじ めたとき、頭では手足のうごかし方がわかっ じぶん ていても、自分の思うようにはうごかせませ んね。 人は、からだのカの人れぐあいや、うごか すこ し方を赤ちゃんのときから、少しずつ学び、 身につけていくといわれています。学んでい くことで、赤ちゃんは生まれてから一年と少 しで歩けるようになります。 でもなかには、運動の発達がすすまない子 どもたちがいます。病気や、けがなどのため に、自分のからだの感じゃ、うごかし方をう まく学べないからです。こういう子どもたち したいふじゅう ふじゅうじようたい のからだの不自由な状態を、肢体不自由とい います。 この学校で、運動の時間が多いのは、から まな だの感しゃうごかし方を学ぶのか、大きな目 ひょう 標になっているからです。 すいえい てあし はったっ かた もく かんかくあじ 先生といっしょに、ふしきな感覚が昧わえるボール はいゆうき じぶん かん のプー丿レに入る優希ちゃん。自分のからだの感じを やくだ つかむのに、役立ちます。 △トランポリンはノヾランスをとる感覚を養うだけではなく、か ぜんたい うんどう らだ全体の運動にもなります。 かんかくやしな 大きな八ルーンの上 せなか で、背中をのばし冫 首をもちあげる練 習です。 くび しゅう
かん うーん、 「はじめて車いすを押した感じ はざわ せいと ドキドキしちゃった」と羽沢小学校の生徒の こうりゆうが、くしう , ーきちょうたいけん : ーば かんそう 感想。交流学習は貴重な体験の場です。 おとな はやはりちがいます。また、たくさんの大人 の目かあれは、子どもたちどうしでいたすら したり、ふざけたりするのも少なくなるでし よう。それに、けんかすることだって、すぐ に止められてできないかもしれません。 ゅ、つき 優希ちゃんたちにとって、同じ年代の子た ちとふれあうことはとても大切なことです。 あそ たくさんの友だちと話をしたり、遊ぶなかか ら、ひとりひとりの考えのちがいを知ること かできます。また、い っしょに遊ぶなかて、 好きな歌や本のこと、おもちややゲ 1 ムの新 、じよ、つ」、つ ねんれい しい情報、同じ年齢の子たちのあいだで、は やっていること、おもしろいと感じているも のがわかります。 せだい 同じ世代のことはつかいや好みなどがわか しやかい そっぎよう らないと、学校を卒業したあと、社会で生活 するようになったときに、ほかの人たちと話 が合わなくなるかもしれません。だから、小 れあ ; っことは、ゝ しろいろなことを学ぶための たいせつきかい 大切な機会になっています。 おなねんだい たいせつ ねんれい この せいかっ
, 第を霻イ 4 久 :. い 第わは、 〈優希ちゃんのカ ~ ゅつき 優希ちゃんのことを知っている人は、学校 ちいき だけではなく、地域にもたくさんいます。優 希ちゃんは、ほんとうにいろいろな人たちに かこまれています。 ゅうき 優希ちゃんが外にでかけると、いろいろな 人が声をかけてくれます。外出のときに話し かけてくれるだけでなく、身のまわりのこと てつだ を手伝ってくれる人もいます。そういう人た ちは、お母さんともよくお話をして、優希ち ゃんのことを、いろいろとたずねます。いっ げんき しんばい も、元気かどうかを心配してくれます。 おも 話せす、思うようにからたをうごかせない ゅうき 優希ちゃんですが、こんなにもたくさんの人 からおばえてもらい ときにやさしく一つけい れられています。みんなは、優希ちゃんに少 しでも成長があれは、とてもよろこんでくれ ます。優希ちゃんに元気がないと、とても心 配にもなります。 ゅう せいちょう がいしゆっ ちから
よう ゆうき く優希ちゃん用にきざんだ食べ物を、お母さ んが、むせないようにゆっくり優希ちゃん はこ のロに運びます。 たもの いきふ マお母さんが息を吹きかけると、につこりす かぜす る優希ちゃん。優希ちゃんは風が好きです。 ゆうき
けんばん ゆうき れん く優希ちゃんは音楽が大好き。首をおこして鍵盤にさわれるように練 しゅう 習をしています。 ふじゅう ぜんぶ マ 2 年生のクラスは全部で悧人。からだの不自由なところはそれぞれ せいかく たの ちがいます。もちろん、みんなの性格もちがって楽しいクラスてす。 おんがくだいす 、、 . 宀ぶ 0 い 4 。ー がっき のをさがしています。それは楽器やおもちゃ あそ でもいいし、なにかの遊びでもいいのです。 ゅ》フき 優希ちゃんがおもしろかってくれ、その遊び のなかで、ほかの人のまねをしたり、お話に きょつみ 興味をもってくれないかなと思っているか らです。 かっし J 、つ だから、先生たちは、ゝ しろいろな活動のあ ゅうき ひょうじよう いたにも、いつも優希ちゃんの表情をよく見 うご ています。優希ちゃんの心の動きを、ちゃん と知りたいからです。 ゅ、つき 優希ちゃんの友だちのなかには、数の勉強 じゅう をしている子もいます。でも友だちも、自由 にからたをうごかすことかできません。また、 きんにくした ロのまわりの筋肉や舌をうまくうごかせなか ったりして、ことばをはっきりといえなかっ、「 / たりする子もいます。 みんな、たくさんのことを知りたい、学び たいと思っていても、それかうまくったえら れないこともあります。 先生たちは、運動したり、お話ししながら 子どもたちの学びたいことをさぐります。そ きょつみ して、子どもたちが興味をもったことが、も らく とくべっせいきようざい っと楽にできるようにと、特別製の教材をつ くってくれたりします。 、つんい J 、つ かず うんどう べんきよう 勉強や運動のあとの ひる お昼こはんのおいしい こと。優希ちゃんのお べんとうには、細かく したいろいろなおかす が入っています。 ゆうき こ
優希ちゃんは、ものをつくったり、また、 せわ かたち たれかの世話をしたりとか、目に見える形で は人になにかをあたえることはできません。 でも、目に見えない大きなものをあたえてい ます。それはたしかに、わたしたちの心のな かにとどけられています。わたしたちは、そ′イ のとどけられたものをきっかけとして、人間 のいのちのことや生きることを、心のなかで 考えるようになります。 心のなかで考えることは大切なことです。 まいにち でも、毎日をいそかしくすごしているうちに、 いつのまにかわすれてしまっていることでも あります。その大切なことを、優希ちゃんは 気づかせてくれます。思いださせてくれます。 そして、そのことをふかく考えさせてもくれ ます。 ゅうき たいせつ ひろしま ゆう マ広島からたすねてきた優 希ちゃんのおばあちゃん とおばさん。「優希ちゃん ががんばっているから、 わたしもがんはれる」と おばあちゃん。 パ、、ノ ゆうき げんき 「優希ちゃん、元気 ? 」おじいちゃんとお母さ さんぼちゅう きんじよ んと散歩中に、近所のおばさんが話しかけて きました。「わたし、元気よ」と、ことはでは ゆうき こたえられないけれど、おばさんには優希ち ゃんの気持ちがつうじたようです。
ゅうき ゅうき 優希ちゃんのおじいちゃんがこんな話をしんは学校にいったよ」と聞いたりすると、「こ えています。優希ちゃんとしつかりとっきあ てくれました。 んなことしてられない」と思いなおして、仕 っていると、だんだんそれがわかるようにな 事にでます。 ります。心かかよいあ一 , つよ一つになります。そ じしん もう、「優希かいない」ということは考えら わたし自身、あの子が生まれてから変わりして、優希ちゃんのまわりの人は、優希ちゃ れなくなりました。そういうことがもしもあました。もともとは、わがままだったんですんだけでなく、人の気持ちをよく察すること ゅ、フき ったら、生きていくはりあいがなくなるとも けれどもね。それか変わりました。優希かよ かできる力をもらいます。 かん ゅうき 思います。ただ、生きていてくれることだけ いほうにみちびいてくれていると、感じてい 優希ちゃんは、ストレ 1 トに、わたしたち あんしんかん ます。 で、安心感があります。 の心にむかって話しかけてくれます。みんな むがむちゅう かぞく げんき はじめのころは無我夢中でした。優希のひ あの子のおかげで、家族のきずなもしつか は、優希ちゃんに元気でいてほしいと思って いっきいちゅう とつひとつのことで、一喜一憂していました。 りしています。ひとりひとりが、 ほかの家族 います。できれはいつの日か、優希ちゃんと ほっさ そんざい なにしろ、なれないものですから、発作のとき にとってなくてはならない存在になっていま しっしょに歩いたり、お話ができたりすれば かおいろ など顔色が変わるだけでおろおろしていましす。 いいなと思っています。 むすめ ゅうき た。娘から「それくらいでおろおろしていたら 優希ちゃんは、話しかけてくれるだけでな さいきん ゅうき だめよ」と、よくしかられていました。最近に 優希ちゃんはほとんどうごけす、お話もでく、このように、まわりの人たちからやさし ずうずう しあわ ねが なって、やっとなれてきました。ただ、図々きないので、一見わたしたちになにもったえい気持ちやほかの人の幸せを願う心を、引き しくなってしまったのかもしれませんが られないように見えますが、そうてはありま だしてくれています。 し′」と へんか ゅうき わたしはいまでも仕事をしています。ときせん。ちょっとした声の変化や、ちょっとし優希ちゃんは、とてもふしぎな力をもって おも ひょうじようへんか どき休もうと思ったりもしますが、「優希ちゃ います。 た表情の変化で、さまざまな気持ちをつた ゅうき ゅ、つき ごと いつけん だいく きんじよ、す 近所に住むおレいちゃんは かんかく おし ー教えてあけたいと、ふたっては にかいだ ~ ける望階建てのはきものをつく りました。