ピッチング - みる会図書館


検索対象: 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂
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1. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

「いい投手というのは、その場その場の状況に合わせたピッチングができる。松坂君は、 そういう感覚をハダで知っているんですよ。」 試合の展開や相手のレベルに合わせて投げられること。つまり、どうカの配分をすれ ばいいのか、よく知っているというのだ。 しかし、他人から見れば、 「なんで、もっと全力投球しないのか。」 「同点に追いっかれてから三振の山をきずくくらいなら、なせもっと早く、そういうピ ッチングをしないのか」 とい、つことになる。か、それはじっさいに投げていないからい、んることで、マウンドに 立った者でないとわからないこともあるのではないだろうか けつきよく、その試合は延長回、大輔は二死満塁からおし出しの四球を与えて、春 季大会での優勝を果たすことはできなかった。 かれ 結果は敗北に終わったが、この試合中、彼の投球をすっと見つづけていた一人の男が おぐらせいいちろう いた。横浜高校の小倉清一郎部長である よこはま たいすけ じよ、つ」よ、つ まっざか

2. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

0 試錬 6 先にっ ( いたも 6 この時期からだろうか、大輔のピッチングが少しずつ変化していく。カまかせの投球 が変化球を取り入れたピッチングになっていったのだ。個人の成績よりも、チームが勝 しいって、つい、つ っことに重点をおく。たとえヒットを打たれても、点さえやらなければ、 考え方が芽ばえはじめたからだろうか。 五月三十日のダイエー戦もそうだった。球速の最高が 148 キロ、奪った三振はたっ たの 3 個である。大輔にしてはものたりない数字であった。しかし、首位を走るダイエ ーに勝っこと。それがチ 1 ムの最大の目標だったからである。 だいすけ 六月の声を聞き、ロッテ戦で 6 勝目を上げた大輔は、新人にとっていちばん調整のむ ずかしい梅雨の時期をむかえていた。 大輔は、まるで学校の先生にほめられたかのように、うれしそうにペコリと頭を下げ たのだった。 だいすけ しれれ っゅ 、つば

3. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

練習後、大枝監督のところへやってきて、こう告げたのだ。あれほど野球の大好きな 大輔が、ここまでいうからには、よほどのことがあったのだろう。いったい、なにがあ ったのだろうか 考えられることは二つあった。一つは、上級生の中に入って、はじめて先輩後輩のき びしい上下関係を味わったこと。もう一つはほかの投手がどんどん投げているのに、大 輔だけはサードと外野手の練習をやらされていたこと。 ようやくピッチングの楽しさをおばえ、マウンドに立っ喜びを感じはじめていただけ - かん A 、 に、そのショックは相当のものだった。もしかすると、自分は、監督にきらわれている のではないか、そんな気さえしてくる。 「母ちゃん、オレ、ほされているんだー よわね むすこ めったに弱音をはいたことがない息子が、めすらしく母親の前でこうグチをこばした A 」い、つ しよ、つらい いつぼう、大枝監督には、それなりの考えがあった。将来、かならず大物になるであ ろう大輔に対して、いまから勝っためだけのピッチングをおばえ、小さくまとまってほ だいすけ おおえだかんとく せんばいこうはい

4. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

☆一九九九・四・一四対近鉄 2 回戦 ( 西武ド 1 ム ) に先発。 9 回完投・ 2 失点で初黒 星 ( 0 対 2 ) 。ただし被安打 3 ・自責点 0 「スライダーでストライクが取れなかったし、調子はよくありませんでした。でも悪い なりになんとか 3 安打ですから。次につながるピッチングができたかなと。」 はつかんぶう ☆一九九九・四・二七対ロッテ 4 回戦 ( 西武ドーム ) に先発し、初完封 ( 1 対 0 ) で 2 勝目。被安打 3 ・奪三振川。 「今日は投けててひじように苦しいピッチングだったんですけど。打線が点を取ってく れるといってくれてたので、点を取ってくれるまで、自分は 0 点におさえようと思って 投けました。まあ自分の投ける試合は、いつもこういう展開なんで、もうなれました。同 じ相手に連敗するのはいやだったんで、今日はどうしても勝ちたかったです。」 ☆一九九九・五・一六対オリックス 9 回戦 ( 西武ドーム ) に先発。 8 回を 0 点におさ え、 3 勝目。被安打 3 ・奪三振 「 ( イチローは ) ぼくが入ったときからすっとやりたかったバッターなので : : : 。ぼく も対戦すれは、できるかきり三振をねらっていきたいと思います。いままでイマイチ自 信が持てなかったのが、今日で自信から確信に変わったと思います。」 だっ きんてつ せいぶ 158

5. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

「やったあー きんちょうかん と声をあげて喜ぶ選手たち。決勝戦を前にして緊張感をほぐすには、最高のプレゼント だった。選手たちは、リラックスムードにつつまれた。 それが、翌日の試合にそのまま現れた。味方打線が 2 回に 1 点、 7 回に 2 点を奪うと、 けいよ、つし おざきかんとく だいすけ 大輔が相手をシャットアウト。関大一高の尾崎監督に「形容詞をつけるならば、超、超 よこはま 高校生級」といわせるほどのピッチングで、横浜高校に二十九年ぶり、二度目のセンバ ッ優勝をもたらしたのである まっざかだいすけ 松坂大輔の名前は全国に知れわたり、いちゃく人気者になった。そんな世間をよそに、 彼の胸の中に、ある目標が広がりつつあった。 ごかく のも 「できれば、大リ 1 グでやりたいのです。野茂投手が、大リーグで互角にやっているの を見て、自分もいっかは、と思っています : : : 。」 かれむね 0

6. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

ピーエル 選手たちにきびしい口調で話した。 」もりもとかんと / 、 相手の森本監督は、 「試合前、松坂君が奪三振を取りたいといっていたので、みんなにくやしくないのか とハッパをかけたんです。三十六年間の監督生活の中で、あんなピッチングを見たのは くわた 学園の桑田君以来です。もっともスピ 1 ドでは松坂君のほうが上ですが : : : 。」 こういうと、サバサバした表情で、球場をあとにしたのである。 いつほう、大輔自身は、味方がまずい攻撃をくり返す中で、こんなことを思っていた。 「がまんだ、がまんがだいじだ。あせって負けたことがあるじゃないか。」 よこはましよ、つぎよ、つ 前年の夏の県大会で横浜商業に敗れた場面を思い出していた。 「大輔、冷静になれ ! 」 もう一人の自分が、あせる心をおさえていた。 ( 松坂だけのチームではないといい聞かせていたけれど、やつばり、松坂一人のチーム になってしまった : 帰りのバスの中で、渡辺監督はこんなことを思っていた。 ′、ち一よ、つ だっ

7. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

の転換をすすめた。 「せつかく、個人の限界がわかりかけてきたのだし、いままでのカまかせの投球を考え なおしてもいいのではないか。」 渡辺監督の言葉をいいかえれば、カでねじふせるのではなく、コントロ 1 ルを主体に したピッチングをおばえろということだ。それには、ストレートだけでなく変化球をお ばえることが、ど、つしても必要になる 秋の声を聞きはじめるころ、プルペンには一本の糸が張られた。その糸にかするよう にボ 1 ルを投げること。そこまでコントロールをみがけ、というのが監督の命令であっ そのとき、監督からもう一つ提案されたことがあった。それは連投にも持ちこたえら れるような強い体、つまり、肉体改造のすすめである これにも、大輔はすぐに反応した。練習が終わると、京浜急行と山手線を乗りついで、 えびす 東京恵比寿にあるスポーツジムに通いはじめたのだ。 あれほどトレーニングぎらいだった大輔が、週三回、学校から一時間半かけて通いっ てんかん

8. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

さけたプルペンで、もくもくと投げつづけた。一日、 250 球におよぶ日もあった。半 こうしえん 年前の甲子園で、学園を相手に投げた球数と同じであった。 最初は、、 しつもうまくいかない野球人生。それを乗りこえるには練習しかないことを よくわかっていた。 「投げこんでフォームを作るしかないー かつろ 大輔は必死に活路を見いだそうとしていた。 そして、完成した西武ド 1 ムのこけら落としの日がきた。相手は、前回いたい目にあ っている巨人だ。 まつい 堤オーナーが見守る中、とちゅうからマウンドに立った大輔は、松井選手・後藤選手 きょはら にホームランを打たれたものの、清原選手に対しては、すべてストレートで勝負。その を」は′、 気迫のこもったピッチングを見て、東尾監督は投手としてのセンスのよさに感心したの である。 いつほう、リべンジを果たせなかった大輔は、 「オ 1 プン戦でしよ、記録に残らなくてよかった。」 つつみ ピーエル せいぶ ごと、つ 125

9. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

制されるも 9 回を投げぬき、チームはサヨナラ勝ち。被安打 3 ・奪三振 「 1 点先制されたあとは、もうとにかく追いついて逆転してくれるのを待って、すっと投 けつづけました。勝つのがあたりまえっていう期待を、ぼくも裏切らないようにとは思 ってたんで、本当によかったです。」 ☆一九九九・九・一六シドニー五輪への出場が決定。 「目標が達成できてよかったです。チームが一丸となった結果だと思います。 ( 本大会へ の参加は ) まだわかりません。」 ☆一九九九・九・二九対ロッテ回戦 ( 千葉マリンスタジアム ) に先発。 7 回 1 失点 で最多勝当確の勝目。被安打 2 ・奪三振 5 「 7 回はちょっとあぶないピッチングをしてましたし、自分でも ( 交代は ) しようがな いなっていう感じですけど。 ( 勝は ) いろいろ周りの人にささえられながらここまで勝 よくじっ うてんじゅんえん ち星をつみ重ねることができたんで、よかったと思います。 ( 翌日の最終戦が雨天順延の 場合勝をねらえるが ? との質問に ) いえ、もう明日で終わりたいです。」 ☆一九九九・一〇・一二最多勝が確定。 だっ いちがん きたい だっ 164

10. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

たんひざに置いたミットを、も、つ一度下げてかまえたとき、かならすストレートかくる ということだった。その動作を見ぬくと、 「ストレートをねらっていけ ! 」 三塁コ 1 チボックスから大声を上げる。それが、みごとに的中。 2 回裏、集中打で 3 点を上げ、先行するのである 「どうも球種が読まれているみたいだ。」 べンチにもどってから、小山捕手がもらす。が、先行されたからといって、あきらめ るような横浜ナインではない。その小山捕手の一発で 1 点差にせまると、ここから両チ しと、つ ームの、まさに追いっ追われつの「死闘ーが始まるのだ。 4 回裏に 1 点を取られ 2 点差と広げられたものの、 5 回にまたもや小山捕手がタイム 丿ーを打って、試合をふりだしにもどす。 あとは、大輔の力投を待っしかない。 そんなナインの気持ちだったが、大輔のピッチングの調子はいっこうに上がってこな 7 回、ふたたび 1 点を先行されてしまうのだ。いままでの大輔には考えられないこ川 だいすけ