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検索対象: 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂
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1. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

スタンドに向かってジャンプして喜ぶ平馬選手。そのうしろ姿をうれしそうに見つめ る大輔。日本選手全員が二人をとり囲み、祝福したのであった。 「勝つのがあたりまえと思われていただけに、期待をうらぎらなくてよかった。」 ふるた 、バッテリーを組んだヤクルトの古田 そういって、ホッとする大輔を横目にしながら 捕手がいった。 かんきわ 「感極まりました。うーん、これも『松坂伝説』ですね。」 その後、日本チームは中国にも勝ち、シドニ 1 五輪の出場権を手に入れた。大輔は疲 れきっていたが、その頭のかたすみに、 ( もしゆるされるなら、来年のオリンピック決 戦にも出てみたい ) 、そんな思いをめぐらせながら、帰国の途についたのである 0 @q 記録ま、ほしいも 6 ガあつをー、 しせんとして 1 ・ 5 ゲ 1 ム差であった。 大輔が帰ってみると、首位ダイエ 1 との差は、 : 「これならひっくり返せる。」 だいすけ ま しゆくふノ、 レ」 すがた 0 つか 152

2. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

とであった。 その後、横浜高校が 8 回に同点、試合は延長戦に入った。まさに両チ 1 ムあげての戦 いだ。全員が一丸となってぶつかりあう、まれにみる好ゲ 1 ムとなった。 ピーエル 「学園は、うちにおとらずいいチームだと思った。」 だいすけ 大輔は試合後、こう語っている。その彼も延長に入ってからは見ちがえるようなピッ チングになった。延長Ⅱ回、横浜高校は柴選手のヒットで、この試合ではじめて勝ちこ した。 しかし、なんとい、つしぶとさだ。学園も必死にねばる。あと一人とい、つところま で追いこまれながら、これが最後の打者になるのかと思われたとたん、大西選手のタイ ば、つ 1 レ ムリーがでるのだ。大輔はなんとも情けない顔をしてべンチにもどってくると、帽子を とってあやまった。 肥回からは、横浜高校がおし気味に試合を進めていくが、なかなか点にならない。延 ときわ 長回、気力と気力の戦いも限界にきていた。横浜高校はとちゅう出場の常盤選手がヒ わたなべかんとく 6 つもと ットで出た。松本・小池両選手の幸運なヒットがつづき、一死満塁である。渡辺監督と よこは士 6 かれ おおにし 106

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ことがあるが、横浜はない。オレたちで春夏と国体の『三冠』を達成しよう ! 」 えどがわみなみ おおえだかんとく 「江戸川南シニア」の大枝監督も、横浜高校への進学に熱心だった。というのも、大輔 えどがわがくえんとりで おおえだかんとく が生れた昭和五十五年 ( 一九八〇年 ) 、大枝監督は江戸川学園取手高校の選手として甲 しえん わたなべもとのりかんとくおぐらせいいちろう 子園に出場。そのときに対戦したのが、渡辺元智監督と小倉清一郎野球部長率いる横浜 高校である。二人の名コンビの前に脱帽した大枝監督は、 ( 大輔をこの二人にあずけれ ばだいじようぶ ) と確信をしていたからだ。 夏の全国大会後、横浜高校の練習を見におとすれたときのことである。 こ、つしえん 「野手はそろった。あとはきみさえきてくれれば、甲子園でかならず優勝できる。」 大輔の顔を見るなり、小倉部長はこういったという そのひと言が決め手となった。横浜高校への進学を決めた夜、大輔は「調布シニア」 せき の関選手にあてて手紙を書いた ていきよう 「帝京に行くといっておきながら、横浜に行くことに決めた。甲子園で会おう。」 さとる まっざかけ そのころ、松坂家には大変なことが持ちあがっていた。父親の諭さんが勤めていた運 送会社が倒産。社宅を出なければならないはめに立たされていたのだ。家計が苦しいと よこはま たつばう 0 さんかん こ、つしえん ちょうふ ひき

4. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

あるとき、小倉部長に「なんでボクだけ、こんなにやらされるのですか」と聞いたこ とがあった。その答えは、じつにあっさりとしていた。 「だって、おまえ、プロ野球に入って、将来も野球をやりたいのだろ。そういうやつで なければ、こんな練習はしないよ。」 そういわれた以上、だまって練習をつづけるしかなかった。 かつやく シニアで活躍したからといって、いきなり高校野球で通用するほど、野球はあまくな 、 0 同級生の中では後藤選手だけが、補欠としてユニホ 1 ムを着ることが許された。そ こ、つしえん して一年生の夏、チ 1 ムは甲子園に出場することになった。 だいすけ 大輔は、捕手の小山選手とともに練習の手伝い要員として、甲子園に行くことが許さ おうえん れた。スタンドから見た甲子園。大輔はとなりで応援している小山選手にささやいた。 「でつけえなア、こんどはグラウンドの中に入ろうな。」 その大輔が、初めて公式戦に出場したのは、一年生の秋の新人戦であった。神奈川 かわさき 県大会での対県立川崎高校戦だった。リリ 1 フで 1 回を投げ、打者三人をおさえたが、 わたなべかんとく 渡辺監督の評価はまだそれほど高くはなかった。 こやま ) 」と、つ しようらい かながわ

5. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

に、はじめて買ってもらった自転車についていたのが「レオマ 1 ク」。こうしてみると、 だいすけせいぶ 大輔と西武との間は、生まれながらにして赤い糸で結ばれていたのかもしれない 「大輔は、とうせん『 1 』がもらえると思っていたでしよう。でも、『 1 』を与えてし まうと、それに満足してしまうかもしれない。負けん気の強い子だけに、もらえなかっ たくやしさをバネに、成長してくれると思ったのです。」 おおえだかんとく 大枝監督は「幻」の理由をこう説明している。 えどがわみなみ その効果が現れたのか、大輔の快調なピッチングがつづく。「江戸川南シニア」は秋 はちお、つじ ちょ、つふ の東・東京支部大会を勝ちぬき、関東大会に出場すると、名門・調布シニア、八王子シ ニアを破ってみごと優勝を果たしてしまうのである。 せんばっ この関東大会の優勝は、翌年春に行われる第一回全国選抜大会への出場を確実なもの にしていた。大輔にとってはじめての全国レベルの大会であり、「松坂」の名を高める ぶたい かっこうのひのき舞台になるはずだった。 はたの かながわ 全国大会にそなえて、神奈川県の秦野シニアと練習試合をやっていたときである。工 ラ 1 で出塁した大輔が、味方のヒットでホ 1 ムにすべりこんだときだ。 まっざか

6. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

「ようし、最初はストレ 1 トを見せておいて、決め球はスライダーだ。」 中嶋捕手はそう決めて、サインを出した。第 1 球、 149 キロのストレートが高めに 浮いた。 2 球目、イチロー選手はそのストレートに的をしばった。「どうどうと勝負し てくる」と確信したからだ。そのねらいどおりの球がきた。バットをすばやく振ったが、 一ゅ、つい 153 キロの球威におされて、ファ 1 ルするのがやっとだった。第 3 球は、スライダ 1 ここまでのイチロ 1 選手の振りを見て、中嶋捕手はぎやくに勝負球をストレートに切り かえたのだ。 第 4 球目もスライダ 1 。カウントは 2 ー 2 になる。ここでバッテリ 1 は勝負に出た。 151 キロのストレートだ。イチロ 1 選手が待ってましたとばかりにバットを出したが、 またもや振りおくれて、ファ 1 ルだ。意地とプライドをかけたぶつかり合い。まさに平 成の名勝負である。 からぶ 「スライダーでおちよくれば、空振りだろうな。」 ひがしおかんとく べンチの中の東尾監督は思ったが、若い大輔の頭には、そんな気はさらさらなかった。 第 5 球、外角低めをねらったストレートが、カんだ分、高めに浮いた。内角を待って まと 133

7. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

こうしえん 「先輩の最後の甲子園のチャンスなのに、それができずに申しわけない。」 昨秋、センバツの出場をかけた県大会で敗れたとき、大輔は上級生最後の夏の甲子園 には、自分ががんばって連れていくのだとちかっていただけに、そのショックは大きか った。 泣きくすれる大輔に、三年生の一人がこう声をかけた。 「おまえはよく投げたよ。追加点を取れなかったオレたちの責任だよ。」 そういって、肩をそっとたたくのであった。 いまでも、いちばんくやしい試合を上げろと聞かれると、大輔は高二の夏の県予選、 よこはましようぎよう 準決勝で戦った横浜商業との試合を上げるのである。 0 ( やしい一宅意義ある一に変クる しかし、人間は負けて大きくなる。大輔の練習に対する姿勢が明らかに変わったのは、 この時期からだ。それまでは、どこか野球をなめていたところがあった。 せんばい だいすけ しせい 4

8. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

ルスター戦初出場の結果であった。高卒ルーキーの「 5 奪三振」というのは、大輔がは じめてである。それが評価されて、最優秀選手賞を獲得。その賞金 100 万円の使い方 をマスコミに聞かれて、 おうえん 「いつも応援してくれる友だちと食事にいきます。」 まだあどけなさの残る笑顔が、いちだんとかがやいて見えたのだった。 朝位戦に向 ( 6 柔意 後半戦が始まると、はげしい首位争いがつづいた。オ 1 ルスタ 1 戦をはさんで 6 連勝 と絶好調の大輔が、首位ダイエーを相手にマウンドにあがったのは、もう秋の声が聞こ えようかという、八月二十七日のことだった。 「リズムがおかしい。」 連勝中ではあったが、大輔の気持ちの中には、なにかしつくりこないものがあった。 さすがの怪物も、夏の疲れがじわじわとおしよせてきたのだろうか かいぶつ つか こうそっ だっ だいすけ 144

9. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

ところが、大輔が投げたのは、前の打席とまったく同じ外角からのスライダーである いいバッターほど、見送りの三振はいやがる。少々、ボール気味ではあっても、ここは 手を出すしかない。振らすに、ストライクと判定されたのでは、プライドが許さないか からぶ らだ。が、 結果は空振りの三振だった。 第四打席、 2 対 0 とリードしての 8 回、無心で投げていた大輔に色気が出た。あきら かに三振をねらいにいった球が高めにはずれ、ストレートの四球になった。これが、最 初の大輔とイチロ 1 選手との対決だった。この試合で 3 勝目を上げた大輔は、試合後、 「これまでやれると思っていた自信が、確信に変わりました。 という言葉を残している。いつほうのイチロー選手は、 「勝ち負けはべつに、打っていてひさしぶりに楽しい相手にめぐり会えた。リべンジは 大輔だけのものではない。」 せいぶ それから一か月後、西武ド 1 ムで練習をする大輔のところに、イチロー選手が歩みよ って、手を差しだした。 「これからもいい対決をしよう。」 だいすけ 135

10. 目標にいどむ青春 : 大輔のベースボール魂

った。前日からのラッキ 1 ポーイ・柴選手がセンター前に打って、サヨナラ勝ちをおさ めてしまうのだ。 「 6 点差になったとき、選手たちに、おまえたちの最後の甲子園だ。最後ぐらい楽しめと ふんいき いったとたん、『ウォーツ』という雰囲気になったのです。野球はなにが起こるかわか らないということを、あらためて選手たちに教わりました。」 わたなべかんとく 試合が終わってから、渡辺監督はそういった。 きようとせいしよう 翌日の決勝の相手は京都成章である。大輔は、京都という名前を聞き、ふるいたった。 せんばっ 中学二年のとき、はじめて出場した、全国選抜リトルシニアの大会の決勝で敗れた相手 が「京都北 . であった。そういう経験があるだけに、どうしても負けられないしかも、 だいすけ めいとくぎじゅくてらもと 昨日グラウンドを去るとき、戦ったばかりの明徳義塾の寺本選手に、大輔はこう約東し ていたからだ。 「おまえの分まで優勝をするよ。どうせ優勝するなら、でつかいことをやって勝ちた 、 0 こうしえん 110