指標 - みる会図書館


検索対象: 「心理テスト」はウソでした。
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1. 「心理テスト」はウソでした。

ながら、関連研究をレビュ 1 すると、は支持されない。は の抑うつ尺度やべック抑うつ尺度などの抑うつの客観的な指標とはほとんど相関がない。 と述べている。論争は続いているが、の妥当性の根拠はほとんどないことは確かであ 鏡を見る人はみんな自己中心的なのか 抑うつ指標に組み込まれている自己中心性指標はもっと不確かである。計算の元とな るのは反射反応とペア反応という記号カテゴリーで、もともとは精神分析でいう自己愛 ( ナルシ シズム ) の指標として考案された。 この言葉はギリシャ神話の美少年ナルキッソスという名前に由来する。彼は多くのニンフから 求愛されたが、すべてを退けたために、これを恨んだ一人が復讐の女神に訴えた。ナルキッソス は泉に映った自分の姿に恋し、想いが満たされぬまま、やつれはてて水仙の花に化したという。 精神分析家に言わせると、水面に映る自分の姿を見る人は自己愛的、自己中心的である。だか ら、ロールシャッハでも、インクプロットの対称性に基づく反射反応は自己中心性を表す重要な 指標だとみなされる。また、二つの物を見るべア反応もありふれているが、インクプロットの対 称性に基づいているので、やはり自己中心性を示すものにちがいないとみなされる。 る。 132

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第 3 章インクのシミで心を占う ェクスナは反射反応の方がペア反応よりも 3 倍ほど重要だと考えたのだろう。反射反応の数を 3 倍し、ペア反応の数を加え、全反応数に対する比率を求めた。これが自己中心性指標である。 では、この指標が高いと本当に自己中心的なのか。ェクスナの 1986 年の専門書を見るかぎ り、根拠は薄弱である。ェクスナは文章完成テストの自己中心性得点と高い相関があったと漠然 と報告しているだけである。ところが、文章完成テストは主観的なテストで、アメリカでは妥当 性が乏しいと評価されている。ェクスナはそのテストと相関が高いと主張しているのだから、自 己中心性指標の妥当性が高いはずはない。 事実、ネズワースキーとウッドは 1993 年からの研究をレビューし、反射反応やペア反応に 基づく自己中心性指標が自己中心性や自尊心と何の関係も無かったと結論を下した。 先のカンプルのホ 1 ムページ「法廷心理学の問題ーでも、 最近、報告されたデータは、エクスナ法を支持しない。理論的な仮定にもかかわらず、 それとは反対に、例えば、エクスナの″自己中心性指標〃は自己への関心、自尊心、ナル シシズムなどの性格特徴と無関係なのは明らかである。 * 片】水谷智洋「ナルシス」世界大百科事典、平凡社、 1998 ー 2000 年。 * 【 Teresa Nezworski . 年 Wood. J. M. Narcissism in the comprehensive system for the Rorschach. CIinicaI 0 一 00 ・ Science d Practice. 1995. 2. 179 ・ 199. 133

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こころの風邪と呼ばれるくらい頻度が高い。風邪と同様、たいていは時間がたてば自然治癒に至 るが、自殺など不幸な結果を招くことも多い。そのため、うつ病の診断と治療は重要である。 抑うつ指標—を、エクスナの 19 8 6 年の分厚い専門書で見てみよう。彼は、抑うつ症 状を見せる患者約 800 名のロールシャッハ記録をコンピュ 1 タ 1 で分析して、大うつ病とその 他の感情障害を区別する変数を七つ見いだした。そのうち、五つの変数でという指標を 構成した。 ェクスナは自信満々に「日 5 なら、結論は明白である。なぜなら、誤ってうつ病と判 定される確率はほとんどないからである」と主張した。しかし、すぐに改訂に着手し、 1990 年に変数が含まれたルール形式のの改訂版を発表した。ェクスナによると、 5 点は抑 うつの兆候、 6 点以上は重大な抑うっとされる。非常に複雑なルールだが、それぞれの根拠はは つきりしない。そもそも、素晴らしいヒット率を示したという最初のをわざわざ改訂す るところが少しおかしい ウッドは「事実、過去川年以上のすべての研究は、がほとんど抑うつ状態と関連しな いことを示している」と述べている。本当だろうか。少し検索すると、簡単に研究論文が見つか る。 例えば、 19 9 7 年、ウイスコンシン大学のカールソンたちは、大うつ病患者名と、抑うつ を伴う境界性パーソナリティ障害の患者名で、改訂版のとコ 1 ピング欠陥指標 OQ— 130

4. 「心理テスト」はウソでした。

あった。また、ロ 1 ルシャツ、 ノ・テストには標準得点の考え方がなく、世界中で同じ解釈基準を 適用することになっていた。しかし、アメリカ人と日本人では平均がまったく違う指標も多かっ た。これは明らかに間違っていた。どうして誰も指摘しないのだろうかと思った。 「ロールシャッハ採点システム」の事例解釈は、量的比率を標準化してル 1 ルべ 1 スの観点から 解釈することにした。私が予想していた通り、ロ 1 ルシャッハの集計ソフトは 1 年でたった三つ 売れただけだった。それでも出版社は平気だった。パ ソコンばっ興期のことで、文化を生み出し ているという自負、いに酔いしれていた。 売れ行きを上げるには自動解釈しかない。私はこう考えて取り組んだ。出版直前から解釈ル 1 ルの収集を始め、半年あまりで 260 のルールを執筆した。今、思えば、売れ行きを心配してい たのは私だけだっただろう。編集者のは別会社を立ち上げていたし、社長はあぶく銭を山ほど 持っていた。もっとも怪しげな仕事が得意だったから、後に絵画取引で監獄にぶち込まれた。し 占 をかし、文化的貢献は彼の生き甲斐だった。決して真の悪人ではなかった。 で ソフトをバージョン 2 とし、名称を「ロ 1 ルシャッハ自動診断システム」と変更して 19 8 7 シ の年川月から売り出した。自動的に 2000 文字程度のレポ 1 トが出力されるというスグレモノで ク ンある。で 8000 行を超えた。ソフトは売れ始めた。といっても数十だったが、世界 にたった一つのエキスパ 1 ト・システムである。関係者は鼻高々だった。売れても、売れなくて 章 第も、そんなことはどうでも良かったのだ。

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象を情緒不安定の証拠だとして解釈してしまう。これは大きな根本的な誤りである。なぜ、こん な馬鹿げた誤りを半世紀も続けられたのか。それは、内田勇三郎の、本は読まない、論文も書か ないという′研究生活〃の伝統のためだろう。内田クレベリン検査という世界でもユニークな心 理検査は、無知という土台の上に組み立てられた砂上の楼閣である。 では、なぜアイゼンクらはプロッキング現象を外向性ー内向性の指標に用いなかったのか。性 格の指標として使うには、デ 1 タが不安定で、信頼できなかったからである。これは内田クレベ リン検査の信頼性を調べればすぐにわかる。 信頼性と妥当性を吟味する 心理テストは当たらないといけない。当たらない心理テストは占いと同じである。また、当た つまり、テストはタ 1 ってもバ 1 ナムのように誰にでも当てはまるテストは使い物にならない ゲットにしつかり当たること、そして、外れた時は外れたとわかることが大事である。 ターゲットに当たるということ、これがテストの妥当性である。測定しようとする対象をとら えられることが大事だ。当たったか否かはそれを観察していた人の評価や本人の評価を基に判断 する。仲間評定とか、他者評定と呼ばれる。他者評定との相関係数は 0 ・ 5 以上は欲しいところ 210

6. 「心理テスト」はウソでした。

時に実施し、定型パタンと非定型パタンの人の比較をしたものである。 ・定型パタンの人は、自己防衛的な受検態度を示し、妄想傾向とうぬほれの強い傾向がある。 平凡で同調的で、社会的慣習に従う。 ・非定型パタンの人は、自分の欠点を誇示する、風変わりな受検態度を示し、思考と行動が 分離する傾向、活動過多の傾向があり、抑うつ傾向、心気症的傾向も見られる。 つまり、定型パタンも非定型パタンも平均的な正常者ではない。定型パタンを示せば正常者で ス あるとは一一一一口えないし、非定型パタンを示せば異常者であるとも言えない 変動量の信頼性係数が テ 理 低いので、どんな人でも定型になったり、非定型になったりする。ただ、それだけのことである。 観 る作業量と誤答の意味 用 作業量の信頼性係数は 0 ・ 9 程度はあり、安定した指標である。それでは、この指標は何を意 多 験味するか。簡単である。算数の足し算能力を示している。足し算がたくさんできる人は一般的に 用 章 第 * 【日本・精神技術研究所「内田クレベリン精神検査・基礎テキスト」 ( 株 ) 日本・精神技術研究所、 215

7. 「心理テスト」はウソでした。

■予測力とは 血液型と性格が関係するとすれば、どの程度の予測力があるかわからなければ利用価値は ない。項目 4 「物事にこだわらない」に限定し、血液型を型と、その他の 2 種類に分けて、 連関係数 ( 相関係数とほば同じ、 ) ) 一一つのものの関係の程度を表す指標 ) を計算すると、 0 ・ * 7 0825 。・ 148 の間であった平均で 0 」 1 とすると影響力は相関の二乗なので 1 % で ある次ペ 1 ジ図 1 ・ 1 は「型」と「物事にこだわらない」が 0 ・ 1 の相関関係があった 場合の模式図である。「物事にこだわらない」程度が偏差値で表されているとして、横軸の 値から縦軸の値が予測できるだろうか。予測力が 1 % では何の意味もないことがわかる。 の ん み * 5 〕松井豊「血液型による性格の相違に関する統計的検討」東京都立立川短期大学紀要、 1991 、 * 6 】をキー局とする全国社のテレピ局 (—ZZ 系列 ) が、毎年共同で行っている総合ライフス タイル調査のこと。 章 * 7 【統計学では決定係数と呼ばれている。予測値の当てはまりの良さを示す指標で、予測値と観測値の 第 相関の二乗と一致する。 した結果が得られないので、血液型人間学が主張する血液型と性格の関係はやはり確認できない さらに理屈の好きな方は

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のか、少し違うのか、。それはわからない 3 ・平均値の違いの場合は「、まずい 2 群の平均値が等しいという帰無仮説を立てるごの仮 説の下で「 ~ ある指標を計算する。一やはり理論分布から計算結果が 1 % ( 5 % ) 以下の確 率であれば、、帰無仮説が否定できる。そして、 2 群の平均値は等しくない ( 意味のある , 違いがある ) と結論する「ニつの平均値がものすごく違うのか、少し違うのか、その程 、度はわからない。 ・相関係数の場合ーーー計算されるのはサンプル ( 例えば ( 大学生 200 名 ) 。の相関係数で 一ある。 ( 「ごれが母集団 ( あらゆる大学生 ) 一の相関係数とみなせるかはわからない。 , そこで、 , 母相関係数がゼロであるという帰無仮説を立てる。→。ごの仮説の下で「「ある指標を計算す 夫 る。理論分布から判断して計算結果が 1 % ( 5 % ) 以下の確率であれば、帰無仮説が 丈 大 否定できる。。つまり、一」母相関はゼロでないと結論する。相関係数がものすごく大きいの か、」、ゼロより少し大きいだけかいそれはわからないア ス テ 格 性 る 次に、、妥当性の復習もしておこう 3 あ 評 定 ・妥当性が高いとはテストがよく当たるということである。どの程度当たるかは、 ( 例えば、 第 社交性尺度を実施した結果と、親しい友人がその人の社交性を評価した結果を、比較す 165

9. 「心理テスト」はウソでした。

第 3 章インクのシミで心を占う の妥当性 ( 正しさ ) を調べた。はエクスナが新たに作った対人関係の対処能力の指標で、 で見逃した抑うつ患者の四 % が捕捉できるという。カールソンたちの研究によると、 で抑うっと診断されたのは、大うつ病患者で 7 名 ( 肪 % ) 、境界性パーソナリティ障害で 4 名 ( % ) であった。で対処能力なしと診断されたのは、大うつ病患者で 7 名 ( 肪 % ) 、 境界性パーソナリティ障害で 2 名 (2*) であった。ェクスナは 1400 名以上の患者で確認し たと主張しているが、どちらもあまりにも的中率が低かった。カールソンたちはは出版 時の約東を満たしていないし、は対人関係の対処能力とは何の関係もないと結論を下した。 実際に法廷で活躍しているテランス・カンプルの「法廷心理学の問題」というホームページを 見ると、 ェクスナの抑うつ指標は臨床的な抑うつ患者を識別するかもしれない。しかし * 【 Exner. J. E. Jr. lhe Ro ) ミゝ co き、、斗 e e e ミ . volume 1. second edition. New York: John WiIey 年 Sons. 1986. * 【 Carlson. C. F.. Kula. M. L. Laurent. C. M. St. Rorschach Revised DEPI and CDI with inpatient major depressives and borde ュ ine personality disorder with major depression: Validity issues. 70 rn ミ、 C 一ミ Ps. 20 . 1997.53. 5L58. * 】 CampbeII, T. W. lssues in forensic psychology: Rorschach technique. http://www.campsych.com/rorschach.htm 1999. 131

10. 「心理テスト」はウソでした。

される確率が増える。 ・定型パタンが正常者、非定型パタンが異常者という証拠はない。 内田クレベリン検査が適性検査として有用に見えるのは、作業量が極端に低い人を不適格者と して排除できるからである。定型パタンや非定型パタンの指標は不安定なので、妥当性の高い解 釈はできない。できないのに、無理に性格を解釈する点が問題である。お茶の葉で今日の運命を 占、つよ、つなものである。 内田クレベリン検査は、半世紀にわたる恥ずべき逸話だった。そろそろ、このような古代の遺 物に別れを告げた方がいいだろう。 220