は特性論に基づく性格検査としては、日本で最も古い。前述したように就職試験や教員採 用の時の適性検査としても利用されているので、受検者はかなりの数に上る。 色々な人と知り合いになるのが楽しみである。 などの質問に対して「はい」「 ? 「いいえ」で回答させる。この質問に対して「はい」と答え るとすぐに外向的と判断されると思うかもしれない。しかし、心理学では性格とはさまざまな行 動特徴を集めたものであると考える。だから、このような外向性に関係する類似の質問をたくさ 知ん用意して、被験者がどれだけ回答したかを集計しなければならない。 丈 大 え」で の場合は各性格特性ごとに川の質問項目がある。「はいで 2 点となる場合、「いい 2 点となる場合がある。これは質問項目ごとに決まっている。合計得点が尺度得点である。この ス 翫尺度得点を日本人の基準と比較して偏差値に換算し、高得点か低得点かを判断する。 性 る あ 評 定 章 第 * 2 【辻岡美延「矢田部・ 。性格検査」心理学評論、 イ 1 LO ー 11 11 -0 -0 149
第 1 章なぜかみんなの好きな ABO 4 査問 に イ主 バ を の 識 グ で J 9 9 年対項調 8 松 * 松 ン 分 調 N 8 ク ) 分象 目 査 査 虹 ク 析 血 2 井 5 13 N 8 フ 計者 を イ乍 し 液 デ年 年 を に は ン 5 で の は 含血実 為 た 型 と は 1 ダ 59 大 抽 万 約 め 液施 ム 歳 と タ 4 1 9 規 し 出 の 全 J ↑生 3 た 型 バ 回 2 9 8 N 本各 と サ男 国 て ン に 8 0 各 ン 女 0 研 ↑生 都 い し の ク 6 わ N 1 6 のた 年 : 年 0 年 格 プ を 市 た て デ 関 8 名 名 リ 対 連協っ 部 の の 質 ン 象 性 カて そ : 意 タ で調 居 の 1 ( 表新 3 ) 血液型と性格の関連性を分析した松井の 4 回の意識調査 調査の度に有意になったり、ならなかったりと一貫性が見られない。 質問内容 1980 年 1982 年 1986 年藝 988 1. 誰とでも気軽につきあう 2. 目標を決めて努力する 3- 先頭に立つのが好き 4. 物事にこだわらない 5. 気晴らしの仕方を知らない 6. ものごとにけじめをつける 7. 冗談を言いよく人を笑わす 8. 言い出したら後へ引かない 9. 人に言われたことを長く気にかけない 10. 友達は多い 11. くよくよ心配する 12. 空想にふける 13. 人づきあいが苦手 14. 家にお客を呼びパーティをするのが好き 15. 何かをするときは準備して慎重にやる 16. よくほろりとする 17 、気がかわりやすい 18. あきらめがよい 19. しんばう強い 20. うれしくなるとついはしゃいでしまう 21. 引っ込み思案 22. がまん強いが時には爆発する 23. 話をするよりだまって考え込む 、 24. 人を訪問するのにてぶらではかっこうが悪い * p く .05 * * p く 01 1 25
式や習慣に : : : 」は型の人数が多いはずだ が、事実は O 型が多い。つまり、血液型人間 学の仮説は一つも支持されなかった。 みんなが同じように答える質問 卒論をまとめていた当時は気づかなかった が、各血液型で肯定率 ( あるいは否定率 ) が 7 割を超えた質問がかなりあった。 ・集中力は目的の有無によってムラがあ る。 ・現実的な面とロマンチックな面をもっ ている ・思い出を大切にする。 ・堅実な暮らしを望む。 ・社会の秩序やルールを尊重する ( 表ー ) 血液型で意味 ( 有意差 ) のあった質問項目 各血液型の「はい」の回答数はすべてが同じではないという結論。ただし、どの血液型同士の違 いに意味があるかまではわからない。 有意だった質問項目 感激屋だが、感情は後に 引かない方である 天気屋である 形式や習慣には そうこだわらない = 「はい」の % 0 型 ) A 型 ' 日型 ~ AB 型 : カイ自乗値 67.5 72.7 48.4 28.1 16.6 ☆☆ 74.2 65.6 55.0 20.6 ☆☆ 78.8 67.5 57.6 58.1 34.4 14
などがある。性格特性がいくつか集まったものが性格である。こういう考え方が特性論である。 性格検査はすべて特性論に基づいて作られている。そうすると、そういう共通の特性をいくっ仮 定すれば、 しいかが大問題である。 100 年以上前から、多くの心理学者が研究を続けている。 ギルフアドは開発されたばかりの因子分析法 ( 前述の変数のまとめ方の手法 ) を使って、さま ざまな質問項目を少数のグループにまとめようとした。 1940 年代にはコンピューターがなか ったので、セントロイド法という近似計算であったが、それでも、 1 回計算するためには数週間 が必要だった。因子分析の結果、順次、因子性格検査、因子性格検査、 因子性格検査が編成された。名称のアルファベットは因子の頭文字である。ギルフアドらによる との性格因子になったが、すべての質問項目の相関関係を分析したものではない。 はそのうち男性性因子を省略し、肥の因子から項目を抜粋して翻訳したものである。暫 夫 大定版の 240 項目の質問紙を大学生 200 名に実施し、各因子ごとに高得点者名、低得点者 名を選んだ。そして、二つの群の質問項目に対する回答を比較し、統計的に有意差のある項目を ス テ 格選んだのが 156 項目の旧である。この旧を 120 項目に縮小したのが現である 性 る この手続きは、暫定版質問紙の合計得点と整合性のある質問項目を残す手法で、項目分析とい あ 1 ワ」 0 X 評う。項目分析からは、 120 項目のが因子で構成されるという証明はできない。 120 の相関行列を作り、因子分析して、実際にのグル 1 プに分かれることを実証しないとい 章 第 けない。 >-q(.-D は本当に肥因子なのだろうか 171
と項目の質問紙を作成した。これが血液型人間学に基づいた個の仮説である。 O 型の人は O 型の仮説が該当する質問に「はいーと答え、他の血液型の人はそれほど「はい とは答えない はずだ。同様に、 < 型の人は < 型の質問に「はいーと答え、他の血液型の人はそれほど「はい」 とは答えないはずだーーーとなるはずである。 調査対象者は O 型名、型名、型引名、型芻名の計 136 名だった。各血液型の人 数は似通っていた。 型は ・生活の安定と社会における役割の両方を望む。 ・合理的で機能的な生活を望む。 型は ・興味や関心の強く向くままに生きる ・形式にとらわれず、自由の多い生活を望む。
作成方法を見てみよう。まず、ギルフアドらの四つの性格検査の各因子からⅡ個ずつ質問項目 を抜粋し、翻訳して 168 項目の予備検査を作った。それを中学生 123 名に実施し、尺度ごと に高得点者と低得点者の弁別力が劣る質問項目を一一つ削除すると検査のできあがりである。 でも 240 項目から出発しているし、項目分析の人数も 200 名である。 1970 年代の は 1950 年代のの猿まね以下である 1 ー 0 年代ならコンピューター環境も整備されていたので、と同じ方法で作成する理由 はまったくない。續たちの研究で見たように、全質問項目を因子分析することも可能だった。た だ、もし、そのような分析をすると、 3 因子しか出なかっただろうし、行き詰まることは目に見 えていた。だからものまねに終始したという訳だ。それにしても、翻訳した項目数や項目分析の 知被験者数を見ると、いかに手抜きをしたかがわかる。 大その代わり、標準化の人数は頑張って 2682 名である。中学生、高校生が対象である。しか し、多ければ、 しいという訳でもない。の流行を横目で眺め、タ 1 ゲットを学校教育に絞り、 ス テ 格素早く、安直に作成したのがである。肝心の作成方法は非常に貧弱である。 るの解説書・ 105 ) には面白いデ 1 タがある。正常者群と非行群を比較したデータだ。 定 年。 * 9 【村上宣寛・村上千恵子「性格は五次元だった」培風館、 章 * 川】本明寛・久米稔・織田正美「本明・ギルフォ 1 ド性格検査手引き」日本図書文化協会、 1976 第 年。 スロ 175
ない。続いて話題を転換する。 「の正式名称は、本明ギルフォ 1 ド性格検査。早稲田大学の本明寛という人がやはりギルフ アドの性格検査から抜粋して作ったものです。こちらは、 156 項目と質問が少し多いですね。 本明という人は、かなり昔から心理テストの世界で活躍しているんですが、どうも仕事が信頼 できないとい、つ印象があるんです。大昔にはロールシャッハの本を出版しているんですが、オリ ジナリティが無かったし、その後、に取り組んで、早稲田式 e-*<te 図版という物も販売し ているんです。今は誰も使っていませんね。アメリカの原版の方が圧倒的にきれいで芸術的なん です。その後、の類似品を作ったんです。年遅れで、作り方はまったく同じ。基本的に質 問紙法をあまりわかっていないんでしようね。ただ、頭の切れる人で、時流には敏感なんです。 夫川年ほど前にはストレスの有名な本を翻訳しています。ただ、開けてびつくり。引用文献をばっ 大さり削った日本版を出版しています。調べようとしても文献が探せないし、翻訳も意味がわから トない個所がある。結局、原著を読まないとわからないという素晴らしい翻訳です。今では日本健 テ 格康心理学会の会長。すごーく偉い人なんだけど、研究者としては疑問に思っています」 性 る ここまで一気に話すと学生の集中力が続かない。表情が緩んでしまう。実際の心理テストの作 あ 定 章 第 スロ * 1 】絵画統覚検査。映画の場面のような絵を川 5 枚見せて、被験者に面白い物語を作ってもらう心理 検査。物語を分析してさまざまな欲求が測定できるという。かなり主観的な心理検査。 141
入れ替わっています。『埠スパイのよう 「まだ、あります。いつの間にか、検査項目が 3 問、 な人がたくさんいる』という項目は『人から触れられたくない秘密がある』という項目の替わり に入ってきました。『引・親友でもほんとうに信用することはできない』という項目は『もっと 違う境遇に生まれたかったと思う』の替わりです。『 103 ・自分はいつも運がわるい』は『わ ざとのけものにされたことがたびたびある』の替わりに入ってきました。すべて 0 。 ( 協調性 ) の項目です。項目を入れ替えたのなら、標準化もやり直すべきなんです。こんなことが許されて いいんでしようか。まだまだ、あります。の形式の中に次のような項目があります。 『銃に実弾が入っていると弾を抜くまで気が気でない』です。冗談じゃありません。暴力団 組員の専用の性格検査なんでしようか。ナンセンスのきわみです。こんなことが許されるんでし よ、つか。日本版では : ・・ : 」 大村先生の独演会はまだまだ続いた すり替えられた質問項目 の問題点については、村上宣寛「最新コンピュータ診断性格テストー ( 日刊工業新聞社、 1993 年 ) で指摘済みだった。今まで信頼できると信じていたテストが、実は虚妄であると論 証した本なので、一部、専門家の間では評判になったが、 同時に衝撃も走った。しかし、採点カ ーポンの印刷ミスや質問項目の入れ替えまでは知らなかった。 160
と感じる質問 誰もが「当たっているー 木地さんの卒論研究の個所で説明したように、どの血液型の人でも肯定率 ( あるいは否定率 ) が 7 割を超えた質問がかなりあった。例えば「集中力は目的の有無によってムラがある」「現実 : など、誰でもハイと答え 的な面とロマンチックな面をもっている」「思い出を大切にする」・ るに決まっている。血液型が < でもでも、同じである。ただ、 < 型の人は < 型性格の解説文し こういう文章があれば、自分だけに当てはまると感じてしまう。 か読まないので、そこに、 同じテスト結果にみんなが満足 アメリカの心理学者フォアはちょっとしたデモンストレ 1 ションを行った。一般的な性格記述 を利用すると、いかに簡単に人々をだませるか、という実験だった。彼は心理学受講生名に興 味診断テストを実施し、 1 週間後にテストの結果を知らせた。 内容は、各個人の名前をタイプし、新聞や雑誌の占星術の本から抜き出したの文章を並べた ものだった。フォアは学生全員にまったく同じ結果を手渡した。その日は小テストが行われる予 定で、学生はそれぞれ離れた席に座っていたので、お互いの結果を見比べることはできなかった。 フォアの作成した文章を示しておこう。どこか、血液型人間学の文章と似ている。
* 8 この基本的な問題に焦点を当てたのが、續・織田・鈴木の研究である。を高校生と大学生 合計 600 名に実施し、 120 項目の相関行列を作成し、因子分析を行った。因子は最大七つ求 められたが、 第三因子までで・ 2 % が説明できた。つまり、の質問項目を分類すると 3 グ ループとなった。質問項目の内容を検討すると、「対人関係」「劣等感」「活動性」に関する尺度 になる A 」い、つ 結局、のの性格特性は幻想にすぎなかった。研究論文が掲載されたのは、教育心理学研 究という有名な学術誌である。専門家なら誰でも読めるはずだ。この程度のことも知らない研究 者や人事担当者が多過ぎる。人の採用にを使うのは無知の証明にほかならない 性格特性論の世界のすう勢 特性論の歴史を簡単にまとめておこう。 ・オ 1 ルポ 1 トとオドバ ートは 1936 年にウエプスターの新国際辞典から性格特性用語を 4504 語抽出した。同時に、特性論を提案し、大きな影響を与えた。 ・ギルフアドは 1930 年頃から因子分析法で性格因子を探求し、因子性格検査 ( 1940 年 ) 、因子性格検査、—因子性格検査 ( 19 4 3 年 ) 、ギルフアド・ ツイママーン気質調査 ( 年 ) などを作成した。↓日本では前三者から抜粋して 172