0 会社として「あたたかさ」をスタッフに伝えたい 毎日、地道な努力でテッセイを支えてくれている人たちを大事にしたい に、ます私は、会社の「あたたかさ」をスタッフに伝えたいと考えました。 具体的には「会社のスタッフ支援力を高める」ということです。 目立たないところでも日々努力をし、一生懸命働いてくれるスタッフの気持ちを汲み 取り、その頑張りを支え、励まし続けること。 スタッフからあがってきた声には真摯に耳を傾け、彼らの思いを実現していくこと。 小さなことでも、スタッフに真剣に向き合っているのだという姿勢、会社の本気を伝 えていくことが大切なのです。 そのような考えをもとに、「喜び、楽しさ、誇りを目指すチャレンジを、さまざまな かたちに変えて実践していきました。 そのひとつが「スタッフや仲間を認め合うカーです。 そのため 168
CHAPTER 0 る 解説 02 多様なスタッフのカ 0 チームワークを支えるスタッフ一人ひとりの潜在能力 私がテッセイに入社したとき、それまで抱いていたテッセイへのイメージと、そこ で働くスタッフの能力やモチベーションに大きな開きがあったことは前述した通りです。 実際、スタッフたちが気づいていた改善点や新しいアイデアも、「本社は何をいってもわ かってくれない、「どうせ却下される、などモヤモヤと抱えていたことが多かったのです。 しかしそれらの一つひとつは、お客様目線に立った意見であり、サービスの質の向上 になくてはならないアイデアの宝庫でもありました。個々のスタッフのさまざまな「気 づき」がチームの機運を盛り上げ、チームワークにつながっていることは間違いありま せん。次ページにあげたのは、そんなスタッフたちから私が聞いた言葉の一例です。
CHAPTER 04 解説 02 0 「清掃をしないスタッフ」の増員 以前、東京駅を担当する事業所には、スタッフ教育を担当する 3 人のインストラクター がいました。しかし実際は、突発的に休んだスタッフの穴埋め要員として稼働せざるを えず、スタッフの指導に集中できないという悩みを抱えていました。そこで思い切って 制度を変え、インストラクタ 1 の人数を 3 人から 6 人に増員したうえで、教育の専門職 ーに緊急呼び出しをかけ としました。休んだスタッフの穴埋めは、ほかのチームメンバ て応援を頼むなどして、役割分担を明確にし、厳格に対応することにしました。 コスト削減が叫ばれる時代に、、 月さな清掃会社がわざわざ「清掃しないスタッフ」を 増員するのは珍しいかもしれません。しかし結果的には、インストラクターたちはその リーダーの条件 136
04 トップダウンとボトムアップ CHAPTER 0 現場の声を否定しない スタッフが活き活きと働き、成果を出すーーそんな環境づくりのために、特に意識し ているのは、スタッフの提言や提案に対して、「 ZO といわないー「現場の声を否定しない とい、つことで亠 9 。 こ、つい、つと、「とんでもないことをいい出すスタッフかいるのでは : もいますが、テッセイではそれは無用です。 なぜなら、明確なトップダウンが確立されているからです。 会社として「『さわやか、あんしん、あったか』なサービスを目指す」という意志を明 確に打ち出し、トップダウンで軸となる指針を共有している以上、その軸を大きく逸脱 した「とんでもないこと , をいい出すスタッフはいないと考えています。そのため、会 社の考え方をスタッフに理解してもらう努力は欠かしません。 とはいえ : : : 現実では稀に「とんでもないことーをいい出すスタッフがいないわけで はありません。では、そんなときにどうしたらいいでしよう ? テッセイでは、決して頭から否定せず、「なるほど面白い。できるかどうかは約東でき と心配する人
0 エンジェルリポートと表彰制度の本当の役割 エンジェルリポートと表彰制度は、スタッフのモチベーションを高めるためにありま す。見かけ上は実利的なモチベーション、金銭的なモチベ 1 ションですが、もっと重要 な役割もあります。それは「共有ーと「共感」を引き出すことです。 エンジェルリポート制度が始まったことで、スタッフたちは今まで以上に一緒に働く 仲間をよく観察するようになりました。仲間に関心を持ち、行動をよく見ていないと、 リポートをあげられないからです。スタッフのお尻を叩き続けて報告件数に口を出し、 無理にでもリポ 1 トをあげさせた目的は、スタッフ間でお互いをほめ合い、サポ 1 トし 合う習慣を身につけてもらうことにありました。意見を共有し、刺激し合うことで、会 社全体に認め合う文化を定着させるには、この制度が最適だと思ったからです。 実際、このエンジェルリポートができて以来、リポ 1 トを作成する側の主任たちの、 スタッフに対する意識は大幅に変わりました。活動を通じ、スタッフとの信頼関係が強 固になっていったのです。また見られる側、つまりスタッフたちも、自分たちの地味で 1 78
ひとつは「本社の管理体制 , です。 詳しくは後章で紹介しますが、つまると ころ本社は、「スタッフの頑張りに対してあ まりに無関心」だったのです。そのため、「努 力をしたって、どうせ認められることはな という無力感がスタッフの間で蔓延し ていました。結果、「与えられた清掃の仕事 だけを淡々とこなせば、 しいーとい、つ消極的 な姿勢が定着しやすい環境になっていたの です。 もうひとつは、「仕事に対する世間からの 一般的なイメージ」です。 前述の通り、かって清掃の仕事といえば 「 3 , のよ、つなイメージがっきまといネ 会的地位の高い仕事とは考えられていませ んでした。スタッフたちもまた、そんな世 当時のテッセイが抱えていた大きな問題 仕事に対する世間のイメーシ 本社がスタッフの頑張りに無関心 清掃 = 3K ( きつい・汚い・危険 ) スタッフが 自分の仕事に対して 誇りを持てない スタッフの間で無力感が蔓延 与えられた 仕事たけを淡々と こなせばいい 3
こうした小さな改革や変化が積み重なり、テッセイ内のスタッフの意識の変化はもち ろん、本社との間にあった壁が少しずつ薄くなっていったのです。この標語は、以後の テッセイの重要なキーワードとなっています。 0 スタッフ全員か参加する新幹線劇場へ 管理体制や雇用方法の改善、新しい制服の導入、新たな標語の設定と、さまざまな改 革を行い、スタッフのやる気を引き出していくことで、少しずつテッセイは変わってい きました。 お客様から直接感謝の言葉をいただくことが多くなれば、スタッフの気持ちも前向き な、積極的なものへと変化していきます。すると、さらにお客様はサ 1 ビスに満足し、 笑顔を見せていただくことが増えていく スタッフのやる気のスイッチをうまく押 してあげることで、正のスパイラルへと循環していくのです。 たった 7 分間で新幹線の車内を掃除し、手際よく磨き上げていくスタッフの姿は、ホ 1 ムのお客様からはすべて見えるため、緊張感もあります。前章でも述べましたが、いっ
0 周囲にも広がるチームワーク重視の仕組み 新幹線清掃を行うテッセイのほかにも、ワゴンでの車内販売などを行う株式会社日本 レストランエンタブライズ (zxæ) といった関連会社があります。 以前、テッセイのスタッフから声があがり、そういった企業が一堂に集まって、お互 いの問題や課題を発表しディスカッションする機会を設けたことがありました。 当時、新幹線に乗務する車掌は一人きりで、その業務が多いことが話し合われたので すが、それを聞いた z のスタッフが「私たちも列車のクルーです。一緒にやりましょ う」と声をかけ、現在ではのスタッフが車掌の業務を手伝う仕組みが出来上がり ました。 例えば運行中にトイレが汚れた場合、テッセイは新幹線に乗務することはできないの で、トイレットペ ーの予備の場所などを Z のスタッフに伝えておき、 z c.* の スタッフが対応してくれています。 102
~ 価値観の転換 0 新しいトータルサービスとは何か ? 私が入社した当初、現場スタッフは真面目に一生懸命、掃除に取り組んではいました が、基本的には「掃除だけをやっていればいし という消極的な考えの人が大半でした。 掃除の仕事は「きつい・汚い・危険ーの 3 の職場といわれ、「失業していて募集があっ たからーというような理由で応募してくる人のほうが多かったのです。 そんなテッセイの現場で「新しいトータルサービス」といっても、なかなかスタッフ には理解してもらえません。そこで、「私たちの商品は何なのか ? ーということを自分に もスタッフにも問いかけ、「新しいトータルサービスとは何か ? ーをスタッフと一緒に探 し始めたのです。
本物のチームワーク 解説礼の意味 ■ チームワークの第一歩は「挨拶。から C 工 APTER 03 疑問を重ね、探し続けた自分たちの「商品 テッセイにしかできないサーピス 新しい価値観の伝道師・コメットスー 際立っことは目立っこと 世の中と逆行する雇い方へ スタッフの心をひとつにする標語 「さわやか、あんしん、あったか スタッフ全員が参加する新幹線劇場へ クやってみようの声から生まれた習慣 バイサー 解説多様なスタッフのカ ■ チ 1 ムワ 1 クを支えるスタッフ一人ひとりの潜在能力 ■ スタッフの意見からコストダウン ■ 車両開発にまで及ぶテッセイのアイデア 周囲にも広がるチ】ムワーク重視の仕組み ■ テリトリー意識よりお客様を優先 ■徹底した規律と指揮命令 時には突き放すことも必要 コラムテッセイの研修 ・話す相手を固定化しない仕組み 礼に始まり、礼に終わる セーフティコールとしての挨拶 108