第 5 夜素数の秘密 5 にれをさ、逆にすると」 3 5 品イ 5 イ 5 + 3 「これくらいのことなら、数の悪魔がいなくったって、 47 なまいき ばうす ロは見つからなかった。 には、どうすればいい ? 洞穴のなかを見まわしたが、出 なんとかして逃げ出したかった。だが、夢から逃げ出す 「そういうのを親切って言うわけ ? 」 生意気になる」 来てやっているのに、わたしが話をはじめると、たちまち 「親切心から、右も左もわからん坊主のところに教えに かると、怒るんだ。 ッドから引きずりおろしてさ、わり算する気がないってわ そら、はじまったぞ。ロバートは思った。まずばくをベ そんなの屁みたいなもんじゃ」 知ってるくらいで、なんでもできると思ってるようだが 「なんにもわかっとらんな」。老人はさけんだ。「九九を るえ、鼻がまっ赤になり、顔がふくれてきたようだ。 をぐいとべッドから引きずりおろした。ひげがピクピクふ しかし、言ってはならない言葉だった。老人はロバ ひとりでできるよ」
「おなじじゃないか」とロバートが言った。 「いまにわかる。こんどは 8 が来る。ホップするのを忘 れるな」 そういうことだったのか。突然わかったので、こう書い 8 x イ 0 = ぎ 0 「わかったよ。どうやるのか」。ロバートは、悪魔に口を はさまれるまえにさけんだ。「 9 のときは、 10 で 2 回ホッ 40 こうでしよ」 にれをたすと、 こんどは 5 回ホップした。 イ x 4000 ニイ 000 それから 9 x づ 00 ニ 90 0 プするんだ」。そして、こう書いた
第 2 夜 0 はえらい 「さあ、やるんだ」。悪魔はうなり声をあげた。「さ、は やく」 ありや、またはじまっちゃった。怒ると、この悪魔、手 がつけられないよ。ポッケル先生よりたちが悪いんだから。 恐る恐るロバートは大きく 1 と空に書いた。 「ちがう」。数の悪魔がさけんだ。「まったく、話になら ん。なんでまた、こんな間抜けの相手をすることになった んだ。おい、あほう、数をつくるんだぞ。気楽に書くんじ ゃない」 できることならロバートは、すぐに夢からさめたかった。 なんでこんな目にあわなくちゃならないんだよ。そう思い ながら、数の悪魔の頭がどんどん赤く大きくなっていくの を、見つめていた 「後ろからだ」と老人がさけんだ。 ートはばかんと口をあけたまま、老人をじっと見た。 ロノヾ 「後ろからはじめるんだ。前からじゃない」 「そう言うんだったら・・ ートは老人に逆らうつもりはなかった。 1 を消して、 ロノヾ 6 を書いた 「よし。ようやくわかったか。これで先に進めるぞ」 「いいけど」。ロバートはムッとした。「あのさ、いちい ちこまかいことでそんなに怒らないでほしいんだけど」 しようぶん 「悪かったな」と老人が言った。「これが性分でな。数の 悪魔はサンタクロースじゃないんだ」 「 6 って書いたけど、これでいいの ? 」 老人は首をふって、その下にこう書いた。 きらく 39
「 5 回ホップさせると、 こうなる」 イ 03 イ 0 0 0 「 5 回ホップさせると」とロバートがさけんだ。「 100 000 だ。 6 回ホップさせると、 100 万だよ」 「そうやって、はてしなく大きな数になる」と数の悪魔 が言った。「とっても簡単だろ。それが 0 のすごいところ だ。任意の数ェがどの位にあるかによって、数の大きさが すぐわかる。前にいくほど大きい数で、後ろにいくほど小 さい数。 555 と書けば、最後の 5 は、 5 であって、それ以 上ではない。後ろから 2 番目の 5 は、 5 の 10 倍で、 50 。 番前のは 5 の 100 倍で、 500 。どうしてか。ホップして前 に動いてるからだ。ところが昔のローマ人の 5 は、ずっと 5 のままだった。ローマ人はホッフできなかった。ホッフ できなかったのは、 0 をもってなかったから。だから、 MCMLXXXVI なんていう、ややっこしい数の書き方しかで きなかった。ところがロバート、おまえはちがう。うれし いことに、すいぶん進歩したからな。 0 に助けてもらって、 ふつう ちょっとホップすれば、普通の数なら大小どんな数でも、 自分でつくることができる。たとえば 786 だって」 くらい 58 きようはく いるキノコも、おなじようにふくれはじめた。 老人は脅迫するように、またふくれはじめた。すわって まえの生まれた年にしよう。 1986 だ」 「なあんだ。もうちょっと賢いと思ってたが 「 786 なんて、使うことないよ」 じゃ、お
んなふうに書く」 5 イ じよう 第 2 夜 0 はえらい 「やめて」とロバートはさけんだ 「大きな数が出てくると、どうしてそんなにビクビクす るんだ。かみついたりなんかしないのに」 しんばい 「心配になるんだ」とロバートが言った。「それにさ、お めんどう なじ 5 ばっかり、くり返しかけるなんて、面倒じゃないか」 「たしかにね。だから数の悪魔としては、いつもおなじ ことは書かない。あんまり退屈だからな。そのかわり、 = 5 52 = 25 = イ 2 5 「 5 の 1 乗、 5 の 2 乗、 5 の 5 乗。これをな、 5 をホップさ せる、と言うんじゃ。わかったかな。おなじことを 10 で やると、もっと簡単だ。計算機なんかなくったって、すら すらできる。 10 を 1 回ホップさせれば、そのまま 10 だ」 イ 0 ィー 「 2 回ホップさせると」 102 57 イ 0 イ 00
イ x 4 4 x 4 x 4 イ 4 x 4 xzt = 4 「何回かけても、いいが、いつも答は 1 だ」 「うん。で、それから ? 」 「よし、それを 2 でやってごらん」 「うん」とロバートは言った。 2 x 2 ニ 4 2 x 2 2 = 8 2 x ~ 2 x 2 ニイも 2 x 2 ズ 2 x2 メ 2 = 32 「すごい。どんどん大きな数になってく。もっと先まで やるんだったら、電卓がいるよ」 「いや、そんなもの、いらん。 5 でやると、もっと早く 大きな数になるぞ」 5 5 = 25 5 x 5x 5 = イ 25 5 凶 5 x 5 5 ら 2 5 x 5 x 5 * 5 x 5 ニ 3 ィ之 5 5 x 5 x 5 x 5 x 5 み 5 ニイ 5 ( 25 56
第 2 夜 0 はえらい なら 「ちがうよ」。ロバートがさけんだ。「 1 プラス 0 なんて、 んだい。 1 たす 0 は 10 にはならんぞ」 「どうして」と数の悪魔がたずねた。「どうして 1 と 0 な ちんもく 正確にいうと、 1 かける 1 でだが」 「よろしい。一番いいのは、また 1 ではじめることだ。 た。「じゃ、教えてよ。ホップするって、どういうこと ? 」 「わかった、わかったよ」と、ロバートは悪魔をなだめ をやってるわけじゃないんだぞ」 ではだれがえらいか、忘れるな。いいか、だてに数の悪魔 「このわたしがそう呼ぶから、ホップするという。ここ こと ? いつから数がホップするようになったの ? 」 どういう意味 ? ホップ、ステッフ、ジャンプのホップの 「ホップする ? 」と、ロバートはあきれた。「それって、 「簡単だよ。ホップすればいい」 「じゃ、教えてよ」 ートは我慢できなくなった。 がまん ちよさそうにふんぞりかえった。長い沈黙に、とうとうロ 「知りたくないのかね」。数の悪魔は、キノコの上で気持 ロノヾー トはうなった。 「どうして、どうして、どうして・・ うるさいなあ」。 「じゃ、どうしてそう書くのかね。説明してもらいたい」 「だって、そう書くでしようが」 「じゃ、どうしてそれが 10 なのかね」 ら、 10 なんだよ」 どこにも書いてないでしよ。 1 のとなりに 0 が並んでるか
0 がもってるほんとうのトリックは、もっと別のところに ある。そのためには頭を使わなくちゃ。どうだ、まだ、や れるか。それとも疲れたかね」 から、うれしいよ。キノコも、なかなかすわり心地がいい 「よろしい。では、もうひとつ、簡単な問題を出させて いただきましよう」 とつぜん れいぎ どうして突然、数の悪魔のやっ、礼儀正しくなっちゃっ たんだろう。なにか罠にはめるつもりだな。 「さあ、どうぞ」とロバートは言った。 数の悪魔が出した問題は、 こういうものだった。 つか 「ううん」とロバートは言った。「すべり落ちなくていい わな 「罠がないんだったら」。ロバートは矢のようにすばやく 答えた。「 10 だ」 「じゃ、それをどう書くかな ? 」 「ポールペン、もってないから」 「だいじようぶ。空に書けばいい。ほら、 このステッキ 9 + イ ライラック色の雲の文字をロバートが空に書いた 54 = イ 0
第 2 夜 () はえらい ないんだから、書く必要ないわけでしよ。ないものをあら わす変な数字は、なんのためにあるの ? 」 「じゃ、これ計算してごらん」 2 「 1 ひく 2 はマイナス 1 」 「そうだ。さて、 0 がないと、おまえの考える数はこんな 行列になっちゃうぞ」 「 4 と 5 の差は 1 だろ。 5 と 2 の差も 1 だ。 2 と 1 の差も 1 。 ところが、 1 と一 1 の差はどうなる ? 」 むね 「 2 だよ」。ロバートは胸をはって答えた 「だったら、 1 と一 1 のあいだにも、ちゃんと数が必要に なるだろうが」 「ちえ、しやくだな、 0 のやっ」。ロバートはさけんだ。 「だから言ったろうが、 0 がないと、うまくいかん。だ がローマ人はかわいそうに、 0 なんかいらないと思ってた だから、簡単に 1986 と書けなかったので、 M と C と L と しくはっく x と v とで四苦八苦した」 「ところでそれって、ガムやマイナスとどんな関係があ るの ? 」ロバートはいらいらしてきた。 「ガムのことは忘れよう。マイナスのことも忘れよう
1 「でも、どうして、なんにもないものが数になっちゃう わけ ? なんにもないなら、かぞえられないわけでしょ ? 」 「かもね。 0 を手に入れるのは、簡単じゃない。だが、 やってみよう。おぼえてるかな。大きなガムを何十億とい う人で分けただろう。ネズミはこのさい考えないことにし て。もらえるガムは、どんどん小さくなっていった。目で けんびきよう はぜんぜん見えないほどにな。顕微鏡でも見えないくらい 小さくなっていった。そんなに小さくなっても、まだガム をわることができたが、ガムがすっかりなくなったわけじ ゃない。 0 にはならん。だいたいのところ 0 だが、ちゃん とした 0 じゃない」 「それで ? 」 「で、ちがったふうに考えることにするんだ。マイナス を使ってやってみよう。マイナスを使えば、簡単になる」 老人はステッキをのばして、そばにあった背の高い木登 りポールの頭をコツンとたたいた。するとその数字の 1 は 縮んで、ロバートの手のとどく高さになった。 「よし、じゃ、計算してごらん」 「計算できないよ」。ロバートは抵抗した。 「そんなバカな」 「 1 ひく 1 は 0 」とロバートが言った。「あたりまえじゃ ない、こんなの」 「ほうらな。 0 がないとやれないだろ」 「でも、なんで 0 を書かなきゃならないの ? 52 なんにも