プラック - みる会図書館


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1. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

まいりました」 「黒人だからプラックですか。覚えやすい。私はあなたと反対で、ホワイトといいます。本当 ( うしゃ はあなた方を校舎に入れるのなんて嫌なのですが、しかたありません。百聞は一見にしかずと いいますから、なぜⅡ万ランドの予算が必要なのか、見せて差し上げましよう」 白人学校のホワイト校長はそう一言うと、プラック校長の差し出した手を無視して歩き出した。 こうした白人の仕打ちはいつものことだったので、プラック校長はさして気にせず、おとなし く後ろからついて行った。 ホワイト校長が最初に案内したのは、広々とした校庭だった。丘の下にある黒人学校の庭と ちが 違って、日当たりもよければ、風通しもよい。この校庭を思い切り走り回ることができたら、 さぞかし気持ちいいだろう。 いったいこの校庭のどこに問題があるのだろう。首をひねるプラック校長に、ホワイト校長 は胸を張って告げた。 「私たちは、今回の予算を使って、ここに体育館を建てる予定なんですよ」 「なぜです ? これだけ立派な校庭があれば、わざわざ室内で運動する必要もないと思うので むね いや ひやくぶん 122

2. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

すが」 「あなた方と違って、私たちは繊細なんですよ。雨の日も暑い日も、生徒たちがきちんと運動 ができるようにするためには、屋根が必要なんです。あなた方には、想像もできないかもしれ ませんがね」 プラック校長は何も答えなかった。悲しそうにうつむく彼のことを、白人たちは誰一人とし て気にもとめなかった。 次にホワイト校長が案内したのは、図書室だった。一歩、中に足を踏み入れると同時に、古 ねんき い本のにおいがプラック校長を包んだ。ただ同じように年季の入った本を置いてあるといって ちが ものおき も、まるで物置のような黒人学校の図書室とは違う。ここでは、頑丈な本棚の端から端まで ぎっしりと本が並べられていた。 「ここにはいったい何冊の本があるのですか ? 素晴らしい品ぞろえですね」 しんそこ プラック校長が、心底うらやましそうな声を出す。その横で、ホワイト校長はフンツと不満 教そうに鼻を鳴らした。 ちが せんさい つつ がんじよう んだな 123

3. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

「この程度でうらやましがるなんて、おめでたい人ですね。私たちの学校では、子どもたちが 正しい決断のできる大人になるためには、もっとたくさんの本を読まなくてはならない、と考 えています。そこで、私たちは今回の予算を使って、図書室の本を 2 倍に増やすつもりです」 「ここの本を 2 倍に : : : 」 うぜん プラック校長が呆然として部屋を見回す。ホワイト校長は、彼の顔がくやしげにゆがんだこ むね とにも気づかずに、胸を張って続けた。 「あなた方の学校は予算の配分に不満があったようですが、もうおわかりでしよう ? 私たち の要求した額は決して不当なものではない。すべては教育のために必要な要求です。本棚すら きちんとそろっていないあなた方には、必要ないでしよう」 「教育、ですか : 「そうです」 ホワイト校長が、重々しくうなずく。プラック校長は何かを言いかけて、途中で言葉を飲み こんだ。 「どうしたんですか ? まだ不満があるんですか ? 」 おもおも んだな 124

4. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

教育の必要性 なっとく 「不満だなんて、そんな : ・ : 私はあなたのお考えに納得しただけです」 こうぎ もっといろいろと抗議してくるかと思いきや、予想外に素直な反応に、ホワイト校長は、や かた や肩すかしを食った気になった。しかし、それも一瞬のことで、「この学校を見学して、身の ほどを知ったのだろう」と考えた。 そんな得意げな彼の顔を正面から見すえて、プラック校長はきつばりと告げた。 「今回、案内していただけたおかげで、よくわかりました。あなたは、今回の予算をすべて、 白人の子どもたちの教育に使うおつもりなんですね ? 」 「当然です」 「それでしたら、私はもう何も言いますまい。教育費の配分は、ホワイト校長のおっしやると おりでけっこうです。なぜなら、『正しい人間』になるための、本当の教育が必要なのは私た ち黒人ではなく、あなたがた白人のほうだからです。あなた方が正しい教育を身につけるので あれば、今回の予算は、あなた方がすべて使うべきだと、私は思います」 いっしゅん 原案】欧米の小咄翻案】麻希一樹 125

5. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

しせつかいぜん そんなある日のことだった。州 政府からその町に、学校の施設改善のための予算が万ラン ドも計上された。その予算は、白人学校と黒人学校の 2 校で分けて使うようにと指示された。 がっこうかいぜん ニつの学校の校長は大喜びで、自分たちの学校改善に必要な予算を計算した。最初に計算を し終えたのは、白人学校の校長だった。彼は実にⅡ万ランドもの予算を提示した。予算の全額 がに万ランドだから、このままでは黒人学校に回される分はー万ランドしか残らない。黒人学 校の校長はもちろん不満だった。だから、予算の振り分けが確定する前に、彼は白人学校の校 長と話すため、白人学校に向かった。 はじめて会う白人学校の校長は、ヘビのような冷たい顔をした男だった。生まれてから一度 はだ も日焼けをしたことがないような、まっ白な肌をして、青い目を不機嫌そうに細めている。彼 と、彼が引き連れている白人の取り巻きたちを前にして、黒人学校の校長は、ひるみそうにな えんりよ る自分をしかった。黒人だからといって、遠慮する必要は何もない。今日は、黒人学校のため に予算を主張しなければならないのだ。 「こんにちは、私はプラックと申します。今日は予算の配分について、あなたがたとお話しに ふきイん