魚師 - みる会図書館


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1. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

で一人の若い漁師を見かけた。廡師は小船に乗って、わずかばかりの魚や貝を手に、家に帰ろ うみ うとしているところであった。大きくて新鮮な魚介類。おいしい海の幸は、この島の名産でも あった。ポプは魚師に話しかけた。 「やあ、立派な魚だね」 「ありがとうよ。だが、この島じゃこのくらいの魚はふつうに獲れるのさ」 じまん 日焼けした顔で自慢げに語る魚師は、地元の海を愛しているようだ。これから沖に出ようと ぎもん していたポプは、ふと頭に浮かんだ疑問を、魚師にぶつけてみた。 「朝は早かったんだろう ? どのくらいの時間、廡をしてきたんだ ? 」 魚師は答えた。 「廡に出たのは、ついさっきさ。ほんの数時間ってとこだな」 続けてポプは尋ねる。 「もしかして、今日の仕事はそれで終わりなのかい ? 」 魚師は「そうだ」と答えた。 まだ昼前だ。いくら何でも、こんな時間に仕事を切り上げてしまうなんて、もったいなさす しんせん ぎよかいるい さち おき

2. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

魚師はポプに尋ねた。 「そうなるまでに、どのくらいかかるんだい ? 」 ポプは少し考えてから、魚師に言った。 がんば 「そうだな、年ほど : いや頑張れば、囲年で実現できるかもしれない」 魚師は、さらにポプに尋ねた。 「それから : : : どうなるんだい ? 」 ポプは、漁師が幸福になるための、最後の仕上げの方法を教えた。 ばいきやく 「会社がそこまでの規模になったら、君は株を売却し、億万長者になって引退するのさ。はは は、ご心配なく。君が億万長者になっても、アドバイス料なんて要求しないよ」 魚師にとって、億万長者という言葉も、あまり興味がわくものではなかったが、魚師はポプ に問した。 「億万長者になれば、何ができるんだい ? 」 ポプは、少し呆れた。ここまで教えてもらっただけではあきたらず、引退したあとのことま で助言を求めてくるとは : しかし、そんなアドバイスを惜しむ自分ではない。ポプはゆっ あき かぶ 154

3. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

ポプの言葉に、魚師はほんの少しだけ興味をもった。 いいかい、まず君は、その気ままな生活をやめて、もっと長い時間、漁をするんだ。当殀、 今よりもたくさんの魚を獲ることができるだろう。そうして獲れた魚を売って、貯金をするん うでどけい 分かるかい ? といったしぐさで、ピカピカ光る腕時計をつけた右手の人差し指を立てて、 ポプは自信たっぷりにレクチャーを続けた。 ぎよかくりよう 「お金が貯まったら、もっと大きな漁船を買って、ハイテク機器を漁に投入すれば、漁獲量も 増え、さらにたくさんのお金を手にすることになるだろう。儲けたお金で船を増やして、同時 に人も雇い、大きな漁船団にするんだ」 身振り手振りをまじえ、ポプの話に熱がこもってきた。 「漁船団の売り上げがあれば、今度は、水産加工の工場を建てることができる。そこで、獲っ た魚をさまざまな食料品に加工して、いよいよ、世界各国に向けて輸出するのさ。そのころに そうだな、ニューヨークのマンハッタンあたりの は君は会社を設立し、アメリカに進出・ すんぼう 報オフィスから、自分の会社の指揮をとるって寸法さ」 やと ちよきん 153

4. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

ぎる。チャンスを無駄にしている。ふだん、ビジネスの世界でー分ー秒を惜しんで働いている ポプは、魚師に尋ねた。 「これから寝るまでの時間は、どうやって過ごしているんだ ? 」 そんな質問は、これまでに幾度となく受けてきたのだろうか。漁師は「こいつもまた、あた り前のことを聞いてくるのか」と思ったが、聞かれたことに素直に答えた。 「そうだな、子どもたちと遊んで、それから女房と一緒にゆっくり昼寝をして、起きればもう 夕方さ。それから行きつけの店に行って、友だちと一杯飲んで、気持ちよくなってきたらギ ターを弾きながら歌でも歌って、眠くなったら家に帰って寝るのさ」 これを聞いたポプは、思わず両手を上に向け、首を振った。なんてルーズな生活を送ってい いなか るんだ。もっと幸せになれる方法を、この田舎の島に住む漁師に教えてやろうとポプは考えた。 ーバード大学で 「自慢じゃないが、私はアメリカで、幅広くビジネスにたずさわっている。 経営学を学び、という経営管理学修士の資格も取得している。そんな私が、もっと儲け ゅうえき ることができて、幸せになれる方法を教えてあげよう。この私と出会い、有益なアドバイスを もらえる君は、本当にラッキーだよ」 いくど にようう いつばい 152

5. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

いても立ってもいられず、弟に電話をした。 「やあ、ジョン。クリスティーヌの様子はどうだい ? 」 「元気だよ」 弟の答えは短かったけれど、いつものことだったので、リチャードは気にしなかった。 「クリスティーヌが元気なら、それはよかった。クリスティーヌは生魚が大好きだから、 2 日 にー回は魚を与えてほしい。 それから : : : 」 リチャードはひとしきりエサについての注意を語ると、安心して電話を切った。 次の日もリチャードは寝る前に、弟に電話をかけた。 「やあ、ジョン。クリスティーヌの様子はどうだい ? 」 「元気だよ」 「そうか、そうか、元気にしているか。それならよかった。今日、クリスティーヌのためにマ タタビって呼ばれている草を買って、そっちに送っておいたよ。マタタビは猫にとってのお酒 みたいなもので、かじると酔ったようないい気分になるらしい。僕はワインを飲むから、クリ スティーヌと一緒に、これで一杯やりたいよ ! 」 いつばい なまざかな ねこ 146

6. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

「夏と秋はまだいいじやろう。山に分け入って、山菜や果物を採ることができるからな。問題 いね 老人は途中で言葉を飲みこんだが、それでも男たちにはわかった。このまま稲が実らなかっ た場合、何人の村人が今年の冬を越せるだろうか。 「あそこには、たんと米があるってのに ! 」 ばちが 男がうらめしげににらんだ先には、場違いなまでに立派な屋敷が建っていた。それは、ここ おさ ら一帯を治める殿様の屋敷で、彼の家では毎日山盛りの白いご飯を食べているという。 との 「殿を頼りにしたってだめじゃ。なにしろあのお方は、魚の骨を猫にやるのすら嫌がるような つつくばりじやからな」 「なら、せめて若様にお会いできれば : とのま」ま - むかしやまい 殿様の息子はたいそうやさしい青年で、なんでもその昔、病で倒れた使用人のために高価な とのさま しぶ 薬を買うよう、渋る殿様を説得したこともあるという。ただ体が弱いため、屋敷の外に出てく ることはあまりなかった。 「さあさあ、らちもないことを考えていたってしようがない。雨がやむことを祈って、おとな たよ との」ま - やしき さんさい くだもの やしき たお やしき いの いや 067

7. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

しせつかいぜん そんなある日のことだった。州 政府からその町に、学校の施設改善のための予算が万ラン ドも計上された。その予算は、白人学校と黒人学校の 2 校で分けて使うようにと指示された。 がっこうかいぜん ニつの学校の校長は大喜びで、自分たちの学校改善に必要な予算を計算した。最初に計算を し終えたのは、白人学校の校長だった。彼は実にⅡ万ランドもの予算を提示した。予算の全額 がに万ランドだから、このままでは黒人学校に回される分はー万ランドしか残らない。黒人学 校の校長はもちろん不満だった。だから、予算の振り分けが確定する前に、彼は白人学校の校 長と話すため、白人学校に向かった。 はじめて会う白人学校の校長は、ヘビのような冷たい顔をした男だった。生まれてから一度 はだ も日焼けをしたことがないような、まっ白な肌をして、青い目を不機嫌そうに細めている。彼 と、彼が引き連れている白人の取り巻きたちを前にして、黒人学校の校長は、ひるみそうにな えんりよ る自分をしかった。黒人だからといって、遠慮する必要は何もない。今日は、黒人学校のため に予算を主張しなければならないのだ。 「こんにちは、私はプラックと申します。今日は予算の配分について、あなたがたとお話しに ふきイん

8. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

やっとの思いでデパートの入り口まで来たが、荷物の重さによろけて、ドアの溝につま先 だいふどう を引っかけて転んだ。その拍子に、大富豪は足の骨を折ってしまった。 だいふごう こっせつ 夫人はすぐに駆け寄った。しかしそれは大富豪を心配してのことではなかった。夫人は骨折 だいふどう した大富豪を押しのけて、地面に落ちた箱のふたをあけた。中に入っていたのは、割れたクリ だれふどう スタルのグラス。夫人はそのかけらを大富豪に投げつけて、こう言い放った。 「この役立たず、大事なグラスが割れちゃったじゃないか ! 荷物運びすらできないなんて、 なんてドジなの、このウスノロ ! 」 だいふごう すると大富豪は、夫人に対して不満を言うどころか、「すまない、すまない」と夫人に謝っ こっせつ た。そればかりか落ちた荷物をかつぎあげ、骨折した足を引きずりながら、ふたたび歩きはじ めたのである。こんなエピソードは、枚挙にいとまがなかった。 だいふごう とにかく大富豪は、夫人からどんなにバカにされようと、いっさい不満を言わなかった。 けっして怒らずいつもにこにこと笑っていた。まして夫人の悪口など、絶対にロにしなかった。 だいふどう 「あの大富豪は、なんてだらしないんだ。夫人を甘やかすにもほどがある ! 」 だいふどう そんなふうに大富豪のことを悪く一言う人もいた。しかし、それは少数派だった。多くの人の ひょうし わら まいきょ あま あやま

9. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

奇跡は起こる しかしジャックはひるまず、こう言った。 「神さま、私は生まれた時からずっとあなたを信じてきました。それなのに、あなたは私を見 放しました。なぜですか」 神が答えた。 「本当にそう思っているのか ? 」 ジャックがうなずくと、神は深くため息をついた。 「気づかなかったのか ? 」 「何をです ? 」 「私は船を 2 回、ヘリコプターをー回送ったではないか ! 」 ジャックはとても信心深い男だ。とてもまじめな男だ。 しかし、残念なことに、とてもにぶい男だった。 原案】欧米の小咄翻案】桑畑絹子 113

10. 5分後に意外な結末 1赤い悪夢

奇跡は起こる 「きっと神さまは現れる。神さまが私を助けてくれるのだ」 すると、空から大きな音が聞こえてきた。 ハッと見上げると、それはヘリコプターだった。 ぐうぜん これも偶然ここを通りかかったのだ。 ジャックの頭上高くにホバリングしたヘリから、縄ばしごが降りてきた。 ハイロットは「早くつかまれ ! 」と叫んだ。 しかしジャックは手を伸ばそうともしない。その時「助けてくれ 5 」と声がした。 海に流された別の乗客のようだ。ヘリコプターは声のするほうへ飛び去って行った。 しず 船は沈み続けた。 もうジャックの足も水に浸りはじめていたが、かまわず祈り続けた。 「もうすぐ神が現れるはずだ ! 」 その時、何かが近づいてくる音がした。ジャックは音がする方向を探した。しかし、それは 高速船だった。 しず 高速船は沈もうとする船に接近した。 さけ なわ いの