ンスリン感受性に大きく影響する。 ある医者たちが、六五歳以上で肥満体の一〇七人を一年以上にわたって調査し、グルコ 1 ス を経ロ投与するとインスリンに関してどのように反応するかを調べた。 研究者たちが調べようとしたのは、別々の三グループ間での違いだった。①食事療法プログ ラムを課されたグループ、②運動プログラムを課されたグループ、③食事療法プログラムと運 動プログラムを課されたグループだ。四番目のグループはさらなる比較のための対照として選 定されていた。 六カ月後の結果はどうだったろうか。①食事療法グループの人たちはインスリン感受性が四 〇パーセント上昇した。これは③食事療法プログラムと運動プログラムを両方課されたグル 1 プにも起こった。しかし②運動プログラムを課されたグル 1 プは、インスリン感受性の変化を 一小さなかった。 一年後、最終的に結論が出た。食事療法をした人たちにおいては、インスリン感受性が七〇 ーセント上 ーセント上昇していた。食事療法をしつつ運動をした人たちにおいては、八六パ 昇していた。しかし、運動だけを行なったグル 1 プはほかの二グル 1 プに遠くおよばなかった。 一年たってさえ、インスリン感受性は変化しなかったのだ。 1 94
、つ占だ。 炭水化物が豊富な食事、とくに混じりけのないグルコースが多い食事によって、すい臓はイ ンスリン分泌を増やし、細胞中に血糖を蓄積する。消化の過程で、炭水化物は分解され、糖質 は血中に取り込まれ、再びすい臓がインスリン分泌を増やし、グルコ 1 スは細胞に入り込む。 時間とともに、高血糖値のためにすい臓からのインスリン分泌量が増えるだろう。 血糖をもっとも急上昇させる炭水化物は、それゆえに人を大いに太らせる。 精製した粉類でつくったもの ( パン、シリアル、パスタ ) は何でもそうだし、米、ジャガイ モやコ 1 ンのようなデンプン、それに、ソ 1 ダやビ 1 ル、フルーツジュ 1 スのような液体状の 炭水化物も同じだ。 これらすべてがすばやく消化されるのは、血流にグルコースをたくさん流し込み、インスリ ンを急上昇させるため、そしてインスリンは過剰なカロリ 1 を脂肪としてため込んでしまうた めだ。 同じ炭水化物でも野菜に含まれるものはどうなのか。 プロッコリ 1 やホウレン草などの緑色の葉物野菜に含まれる炭水化物は、消化しにくい繊維 と結びつくので、分解されるまでに時間がかかる。そのために、グルコースは時間をかけて血 流に送り込まれる。加えて、野菜は水分がデンプンに比べて多く、血糖の反応はさらに鈍くな 169 脳を。糖 " でベトベトにするな
範ちゅうを超えてインスリン値を急上昇させる精白糖がたつぶり入った、過剰に加工された食べ 物を摂取しすぎたことによる ) 結果として細胞が常に高濃度のインスリンにさらされると、細胞 は、細胞膜表面のインスリンに反応する受容体の数を減らして順応する。 つまり、細胞はインスリンが過剰になると反応がにぶくなり、それがインスリン抵抗性の原因 となる。そしてインスリン抵抗性のせいで細胞はインスリンに反応しなくなり、血流からグルコ ースを取り入れられなくなる。すると細胞が糖質を取り入れるために、今度はすい臓が反応して インスリンをより多く分泌する。インスリン値はますます上昇してしまうのだ。 こうして問題は循環し、最終的には「二型糖尿病」に至る。糖尿病をわずらう人たちの血糖が 高いのは、糖質を細胞内に送り込めないからである。糖質が細胞内に入れさえすればエネルギー になるため、安全に蓄積される。 だか、糖質は血流中にあると多くの問題を引き起こす。あまりに多くて言及しきれないくらい だ。有毒な糖質は、。 カラスの破片のように、多くのダメージを与え、失明、感染症、神経損傷、 心臓疾患、それにアルッハイマー病などにいたる。こうしたことが連鎖し、体内で炎症が蔓延す るのだ。 悪影響はまだまだある。残念ながら、インスリンの役割はグルコースを細胞内へと送り込むだ けではない。インスリンはタンパク同化ホルモンでもあるのだ。すなわち成長をうながし、脂肪 イ / 頭の中で何が起きているのか
すい臓はインスリン分泌量を増やそうとするのだ。インスリン値が高まると、それが原因で、 細胞はインスリンシグナルにさらに反応しにくくなる。すると血糖値を下げるためにすい臓は 過剰に働き、インスリン分泌量を増やして再び血糖値を正常に保とうとする。たとえ血糖値が 正常であっても、インスリン値は上昇を続ける。 細胞はインスリンシグナルに抵抗するので、私たちは「インスリン抵抗性ーという一言葉を用 い、この状態を表現する。 状況が進展すると、すい臓は最終的に最大限のインスリン分泌を行なうが、それでも十分で はない。その時点で、細胞はインスリンシグナルに反応できなくなり、究極的には血糖値が上 がり始め、二型糖尿病に進行する。血糖値を体内でコントロールするしくみは本質的に崩壊し てしまい、血糖値のバランスを保っためには体外から、たとえば糖尿病治療薬などを取り入れ なくてはならなくなる。 私が医学関係者たちへの講義を行なうとき、四種類の食べ物を写した写真を見せる。 ①全粒小麦パン、②チョコバ 1 、③精白糖大さじ一杯、④バナナ、この四つの写真を見ても らい、もっとも血糖を急増させるのはどれか、あるいは、もっともグリセミックインデックス ()—値 ) が高いのはどれかを考えてもらう。 1 02
だから間違ってはいけない。インスリン抵抗性は、脳の変性や認知低下の強力なリスク要因 なのである。「自分は糖尿病ではないから脳の疾患のリスクが低い , と自信を持ったりするの は望ましくない。たとえ現在、血糖値が正常でも、インスリン抵抗性があるかどうかを知るに は空腹時インスリン値を検査してもらうしかない 数年前に実施された研究もある。糖尿病でもなく血糖値が高くもない七〇歳から九〇歳の五 二三人を調べたものだ。 糖尿病ではないこれらの人々のうちの多くはインスリン抵抗性があると、空腹時インスリン 値が示していた。そして、インスリン抵抗性がある人たちは、そうではない正常な人たちに比な す べて認知機能障害のリスクが劇的に上昇していることが明らかになったのである。 インスリン値は低ければ低いほどいいのだ。米国におけるインスリン値の平均は、成人男性べ で八・八 / 、成人女性で八・四 / だ。しかし肥満と炭水化物の摂りすぎから、こうし で た平均値は、理想的な値よりもはるかに高くなりがちである。 糖 炭水化物摂取に非常に気を配っている患者は、実験報告に記されたインスリン値が二・〇 を 未満程度だろう。 この数値は理想的な状況、つまりその人のすい臓が無理に働きすぎておらず、血糖値が見事 る。
すべての系統を混乱させやすい。それにレプチンとインスリンは、マイナスの影響を受けるもの も似ていて、両者にとって最大の罪人は炭水化物である。炭水化物が精製や加工をされればされ るほど、レプチンとインスリンは不健全な量になっていく。 体内のインスリンの放出や血糖のバランスに対して炭水化物の過剰摂取を続けると、ついには インスリン耐性になるが、同じことがレプチンでも起きる。レプチンを急増させ続ける物質が体 に負担になるほど増えると、レプチンの受容体が働かなくなり、レプチン耐性になるのだ。 ) 。図こ食べるのをやめる そのため、たとえその後、レプチンが増加しても、もはや機能しなしし ための満腹の信号も送らない。そして食欲を制御できなければ、体重が増えて肥満になるリスク が著しく ~ 咼まり、 ~ 凶もリスクにさらされる。 研究では、食事に炭水化物が多すぎることの証明でもあるトリグリセリドの値が上昇すると、 レプチン耐性か起きることも明らかになっている レプチン値のバランスを保ってくれる薬やサプリメントは存在しない。だか、よりよい睡眠 や食事は効く。ぜひ、実行してほしい。 292
ハナナ、チョコレート、砂糖より恐いもの 怖 恐 グルテンフリーを実践すると、すべてが素晴らしいほうへ変化する。 の 質 私にしてみれば、それは不思議なことではない。 ク 過去二六〇万年のうちのかなり長い間、私たちの祖先の食事は、野生の獲物、季節の植物や ン 野菜、ときに果実などだった。前章で取り上げたように、今日では穀物と炭水化物が中心の食る す 事をとる人がほとんどで、そういった食事の多くはグルテンを含む。 わ なぜ、これほどたくさんの穀物や炭水化物を平らげることが体にダメージを与えるかという わ と、穀物や炭水化物が肉や魚、野菜などといった食べ物とは違う方法で、血糖値を上昇させる せ からである さ と 血糖値が上昇すれば上昇するほど、インスリンはすい臓からどんどん分泌されて糖質を処理 ロ しなくてはならない。こうしてインスリンが増加すれば、細胞はインスリンシグナルに対する を 物 感受性がますます低くなる。 べ 食 要するに、細胞にはインスリンのメッセージが聞こえない。そのときすい臓はどうするだろ 0 、つか。メッセ 1 ジが相手に聞こえていないときは、大きな声で話そうとするだろう。同様に、
動をすると、最終的にインスリン感受性は改善され、ヘモグロビン <'*O を減らすことができ る。 また現在では、ヘモグロビン < 10 と将来のうつ病のリスクの直接的関係も示されている。 ある研究では、平均年齢六三歳の四〇〇〇人以上の男女の調査によって、ヘモグロビン と「うつ症状」の直接の相関関係が証明された。 グルコースの代謝がよくないことは、うつ病の発症リスク因子とされる。タンパク質の糖化 反応は脳にとってはよくないのである。 % ・内臓脂肪はそれ自体が悪い炎症を起こす つま 血糖値を正常にするためには、すい臓は長時間にわたって働き続けなくてはならない。 り糖尿病は、インスリン値が上がってからずいぶんと経ったのちに血糖値が上昇して発症する のがわかる。だから「空腹時血糖」だけではなく、「空腹時インスリン値」も調べることが非 常に重要なのだ。 空腹時インスリン値が上昇していれば、それはすい臓が血糖値を正常に保とうと必死にがん ばっているという証拠だ。おまけにあなたが炭水化物を摂りすぎていることも明確に示してい 1 86
えたステーキを比べてみれば違いはわかる。これで低炭水化物の食事によって、体重が減ること の説明がつく。 さらには、低炭水化物の食事が糖尿病患者の血糖値を下げ、インスリン感受性を改善させる。 実際、炭水化物を脂肪に置き換える方法が、「二型の糖尿病」の処置として勧められるようにな りつつある。 いつも炭水化物をたつぶり食べていれば、その結果、インスリン値は上がり続け、体脂肪を燃 料として消耗しない ( 完全に止まるとまではいかなくても ) 。 体は炭水化物からっくられるグルコースに燃料を依存し続け、グルコースも使い切るかもしれ ない。しかしインスリン値が高いために、本来は燃料として利用可能な脂肪は蓄積されたままで、 なおも苦しい思いをする。要するに、炭水化物の成分を含む食事のせいで肉体は飢餓状態なのだ。 皮らのインスリン値のた だから多くの肥満体の人たちは炭水化物を食べ続け、体重が減らない。彳 めに、体脂肪を蓄え続けるのだ。 139 「炭水化物中毒」や「脂肪恐怖症」に陥っていないか
糖尿病と脳が共通して持つものについて手短に学んでみよう。 進化の過程で、私たちの体は、食物から得た燃料を細胞が使うエネルギーに変える方法を考え 出した。人類の生活のほばすべては、グルコース ( ほとんどの細胞にとって、主要なエネルギー 源 ) が不足している。それゆえ、私たちはグルコースを蓄え、グルコースでないものをグルコー スに変換する方法を発達させるにいたった。体は必要に応じて、「糖新生 [ という過程を経て、 脂肪やタンパク質からグルコースをつくり出せる。ただし、そのためにはデンプンや糖質を分解 してグルコースを得るよりも多くのエネルギーを要する。デンプンや糖質の分解のほうがさらに ムダのない反応だ。 細胞がグルコースを受け入れ、利用する過程は複雑だ。細胞は血流の中でそばを流れるグルコ ースをただ吸収するのではない。 生命維持に必要なこの糖分子は、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンによって細 胞内に取り込まれる。インスリンはすでにご存じのように、細胞の代謝にとって欠くことのでき ない重要な生物学的物質の一つだ。その役目は、血流中から筋肉や脂肪、肝臓組織の細胞へとグ ルコースを送ることだ。 いったん送られたグルコースは燃料として利用される。通常、健康な細胞はインスリンに対し てすぐ反応する。しかし、継続的にグルコースを摂取した ( ほとんどの場合は、健康的と一言える