響を与えているということだ。 ・カロリーを何パーセント減らせば脳にいいのか てよいまのあなたはカロリー摂取を何パーセント減らせばいい、。 次のデータを見れば、「三〇パーセント」といえるだろう。 ( 7 ) 私たちは一日平均、一九七〇年に比べて五二三カロリー以上を多く摂取している。多くの人 が正常なカロリー消費量は、女性が一日におよそ二〇〇〇カロリー、 男性は一日におよそ二五 五〇カロリ 1 ( 活動や運動のレベルによってはもっと必要になる ) だと考えている。しかし、 国連の食糧農業機関 (=<0) のデータによれば、平均的なアメリカの成人の消費量は一日に ( 8 ) 三七七〇カロリーだ。一日平均の三七七〇カロリーから三〇パ 1 セントを減らせば、二六四〇 カロ丿 1 になる 増えてしまったカロリ 1 の多くは、糖質が原因だ 平均的な米国人は一年間に一〇〇 5 一六〇ポンド ( 約四五 5 約七三キログラム ) の精製糖を ( 9 ) 消費しており、これは三〇年間で二五パーセントも増えるという急上昇ぶりを示している。そ のため、ただ糖質の摂取を減らすだけでも摂取カロリーを減らすには大いに役に立つだろう。 2 イ 1 最良の「脳のための食習慣とサプリメント」
それは明らかにダイエットのためになる。 だが、カロリ 1 制限は私たちにとって目新しいものではない。大昔から認識されていたのだ。 てんかん カロリー制限は、癲癇の発作をめぐる医学的歴史の中では、一番の効果的な処置だった。現 在では、それがどのように、そしてなぜそれほど効果的なのかもわかっている。カロリ 1 を制 限すると、神経細胞が保護され、新しい脳細胞の成長が進み、既存の神経回路網の影響範囲を 拡大することができる。 線虫類をはじめ、サルなどのさまざまな種において、カロリー摂取が少ないことと、長生き は大いに関係があると立証されている。そしてカロリー摂取を減らすと、アルッハイマー病や ーキンソン病にかかる率も減ることがわかっている。 消費するカロリーをごく少なくするとフリーラジカルの産生も減り、同時にミトコンドリアか らのエネルギー生成が高まる。 ミトコンドリアとは、細胞内の、ごく小さい細胞小器官で、化学的エネルギーを ( アデ ノシン 3 リン酸分解酵素 ) という形で生成する。ミトコンドリアはそれ自体の QZ< を持ち、さ らに現在ではミトコンドリアがアルッハイマー病やがんなどの変性疾戡において重要な役割を果 242
( 4 ) 新たな予防と処置方法が開発できるかもしれない」と結論づけた。 脳を強化し、変性疾患への抵抗性を高めるカロリ 1 制限の役割を示すさらなる証拠を提示し たのは、米国国立老化研究所のマ 1 ク・・マットソン博士だ。 多くの人が、アルッハイマー病は遺伝として QZ< から受け継がれるものだと思い込んでい る。しかし、この研究でそうではないことが判明した。 「疫学的データからわかるのは、摂取カロリーが少ない人は脳卒中や神経変性疾患のリスクが 軽減するかもしれないということだ。食物消費とアルッハイマー病や脳卒中のリスクの間には 強い相関関係かある。データからは、日常的に摂取カロリーかとりわけ少ない人は、アルッハ イマー病やパ 1 キンソン病のリスクが極めて低いということがわかる」 マットソン博士はナイジェリア人の家族を対象にした研究についても述べている。一家のう ち何人かが米国に移住した家族を対象にした研究だ。米国に居住しているナイジェリア移民に おけるアルッハイマー病罹患率は、ナイジェリアに残った親族に比べて増えていた。遺伝子上 ( 6 ) は移住したナイジェリア人もナイジェリアに残った親族も同じだった。変わったのは環境、こ とにカロリー摂取だけだ。研究で明らかになったのは、高カロリー消費が脳の健康に有害な影 2 イ 0
紹介している ラスティグがとくに問題視しているのは、糖質によって代謝のされ方が、それぞれ違ってい るとい、つ点だ。 ラスティグは、「カロリーは同じでも代謝が同じとは言えないーとい、つ言い回しを好んで使 糖質のもっとも単純な形である純粋なグルコースと、グルコ 1 スとフルクトースが結合し たグラニュ 1 糖との違いを説明している ( フルクト 1 スについてはこのあと述べるが、これは 自然由来の糖質の一種で、フル 1 ツやハチミツだけに含まれる ) 。 私たちが、たとえばジャガイモから一〇〇カロリー分のグルコ 1 スを摂取するのと、同じ一 〇〇カロリー分でも半分がグルコース、半分がフルクト 1 スでできている糖質を代謝して起こ る体への影響とは違う。 肝臓では、糖質のうちフルクト 1 スを処理する。一方、ほかの炭水化物やデンプン由来のグ ルコ 1 スは体内のすべての細胞で処理される。したがって、両タイプの糖質 ( フルクト 1 スと グルコース ) を同時に消費すれば、グルコースだけから同じ量のカロリーを消費するよりも肝 臓はより懸命に働かなくてはならないとい、つことになる。 そうした糖質をソーダやフル 1 ッジュースといった液体という形で消費する場合も、やはり 肝臓は酷使されるだろう。液体の糖質を飲むことは、たとえば丸一個のリンゴと同量の糖質を 165 脳を糖 " でベトベトにするな
たすことがわかっている。 カロリー市ド ( リ艮よ、アポトーシス ( 細胞がプログラムに従って死ぬプロセス ) を減らすことにも 大きな効果がある。 アポトーシスは、細胞内にある遺伝子のメカニズムのスイッチが入ったときに起こり、その細 胞は死にいたる。この現象は、極めて自然な働きである。アポトーシスは、生命のために重要な 細胞の機能だ。あらかじめプログラムされた細胞の死は、すべての生体組織にとって正常かっ不 可欠な部分だ。 ノランスが取れていなくては しかし、効果的なアポトーシスと破壊的なアポトーシスの間は、ヾ ならない。加えて、カロリー制限がきっかけとなり、炎症要因が減少し、神経細胞保護因子、と くにが増加する。また、過剰なフリーラジカルを抑制する際に重要な酵素や分子が増え ることにより、体の自然な酸化防御機構が強化されることも判明している。 二〇〇八年、チリ大学のヴェロニカ・アラヤ博士は自身の研究について報告を行なった。その 研究の間、肥満体の被験者に三カ月のカロリー制限食事療法を課し、併せてカロリーの二五パ ( 川 ) セントを減らした。 アラヤ博士たちが測定したところ、被験者の生成が並外れて増加しており、これが食 欲を大きく減らすことにつながっていた。またその逆、つまり糖質の多い食事を与えた動物にお 243 最良の「脳のための食習慣とサプリメント」
いて CQ Q Z 生成が減ってしまうことがわかった。 カロリー制限と新しい脳細胞成長に関連してもっともよく研究された分子の一つが、サーチュ イン 1 (n—xe—) という、遺伝子の発現を調整する酵素だ。 サルの場合、 e 1 の活性が上昇するとアミロイド ( 蓄積するとアルッハイマー病のよう な疾患の特徴となる、デンプンのようなタンパク質 ) を分解する酵素が増える。加えて、 の活性化は細胞上のある受容体を変化させ、炎症の抑制を導く。 おそらくもっとも重要なのは、カロリー市ドし リ艮こよる— 1 の反応経路を活性化すると Q が増えることだ。は脳細胞の数を増やすだけではなく、機能的なニューロンへの分 化を強化する ( これもカロリ 1 制限によって ) 。この理由から、が学習と記憶を向上さ せるというのだ。 断食は炎症を抑え、脳を保護する抗酸化物質を増やす。 断食によって脳は燃料としてブドウ糖を使うのをやめ、肝臓でつくられるケトンを使うよう になる。脳が燃料としてケトンを代謝しているときは、細胞自殺 ( アポトーシス ) も減り、一 方、ミトコンドリアの遺伝子は始動して、ミトコンドリアが複製される。つまり、断食で脳が よりクリアに働くよ、つになるのだ。 2 イイ
、つながすとしている。 研究ではカロリ 1 制限によって活性化される、脳にも体にもよい効果をもたらす遺伝経路の ( 3 ) 多くが、たとえ短期間の断食でも同じように機能することか証明されている。 これは従来の「断食をすると代謝が低下し、体が飢餓モードに入るため、脂肪を保ち続け る」という考え方とはまったく逆だ。断食は実際には減量をうながし、脳の健康も高めるとい う全身への効果がある 二〇〇九年一月、『米国科学アカデミー紀要』に、ある研究論文が掲載された。 その研究は、ドイツの研究者たちが二つの高齢者グループの比較を行なったものだ。 片方はカロリーを三〇パ 1 セント減らし、もう片方は何でも好きなものを食べてよしとした。 研究者たちは二つのグループの記憶機能に差が出るかを調べ、三カ月の実験を終えての結論は 次のとおりだった。 カロリ 1 制限食事療法のグループの記憶機能はかなりの向上が認められた。一方、制限なし で自由に食べられる人たちは、小幅ながら記憶機能低下の特徴がはっきりと見られたのである。 研究者たちは、脳の健康に対する、現在の薬によるアプロ 1 チが非常にかぎられていること に触れた上で、「この研究結果を利用すれば、高齢化に際して認知面の健康を維持するための、 239 最良の「脳のための食習慣とサプリメント」
・・糖質ーーこの特定の炭水化物 糖質ーーーこの特定の炭水化物は、過剰に摂取したり、精白あるいは加工した形で摂取したり し成分とは言えないことは誰もが知っている。それは、 する場合にはとくに、さほど健康にい、 棒つきキャンデイから摂ろうか、シナモンレーズンパンから摂ろうが変わりはない。 さらに、糖質は肥満、食欲、血糖コントロール、二型糖尿病、インスリン抵抗性などにかか わる原因の一つだともわかっている。それでは糖質と脳についてはどうだろうか トーベス 『よいカロリ 1 、 亜いカロリー (Good Calories. Bad Calories) 』の著者、ゲ ( 3 ) は、二〇一一年、『ニュ 1 ヨーク・タイムズ』紙に「糖質は毒かというタイトルの秀逸な記 事を寄せた。 その中で、人類の生活や食物加工品における糖質の歴史や、糖質が私たちの体にどのような 影響を与えるのかについてもくわしく述べている。 さらに、カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学大学院における小児肥満の第一人者で あり、糖質が「毒素」あるいは「毒薬ーであると主張しているロバート・ラスティグの著作を ( 2 ) 1 64
②自分が知るかぎりではグルテン過敏症ではない。 かもく 断言しよう。本書はあらゆる人に関係するものだ。なぜなら、グルテンはまさしく「寡黙な 病原菌ーであり、あなたが気づかないうちに大きなダメージを与えてしまうからである。 食べ物は、カロリ 1 、脂肪、タンパク質、それに微量栄養素である以上に、一一一一口うなれば、私 たちの QZ< をよくも悪くも変えてしま、つ。食べ物は単にカロリー、 タンパク質、脂肪の源と して与えられるにとどまらず、実際に多くの遺伝子の発現を制御している。こういったことが 発見されたのは、ごく最近のことである。 なぜ、「脳を健康に保つ方法」を考えないのか 医学上の問題が生じたときには、医者にかかって手早く治すために、最新のよく効く薬を処 方してもらえよ、、 ( ししと思い込んでいる人が多い。この都合のいい筋書きは、薬を処方する際に ク病気を第一に考えたクアプロ 1 チをとるよう医者を助長してしまう。 しかしこのアプローチには二つの点で非常に恐ろしい瑕疵がある。ます、注目しているのが 「病気」であって、「健康」ではないことだ。次に、処置自体が危険な結果を伴う場合も少なく ないことだ。 例をあげよう。米国医師会が発行する信頼のおける『アーカイプスオプインターナル 1 9 プロローグ
・第 1 週【「食」に集中 矚ペ 1 ジから、最初の週の毎日のメニュー計画を掲載してある。これはその後の三週間の献 立を考える際のモデルになるだろう。 ム ほかの食事療法と違って、ここではカロリー 4¯ 言算や脂肪摂取量の制限を求められることも、 グ ロ 一人前の分量について思い悩む必要もない。特大サイズの料理と通常量の違いは当然わかるだ 週 ろう。摂取する飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の対比量を気にすることも求めない。 4 この食事療法のいいところは、自然と「自動調節」されていくことである。 す 出 つまり、意識しなくても食べすぎなくなり、次の食事までの数時間、満腹感を味わっていら 抜 れるようになる。体がおもに炭水化物を燃料としているときは、ブドウ糖インスリンのジェッ トコ ] スターに乗っているようなもので、血糖が急落すると強烈な空腹感を覚え、満腹感は長質 と 続きしない。 物 だが、炭水化物が少なく、脂肪の多い食事をすると、これとは反対の効果がある。 水 炭 食欲が小さくなり、炭水化物中心の食事ではよく起きていたタ方前の精神的な落ち込みもな くなる。自然に ( 考えもしなくても ) カロリ 1 制限ができ、脂肪をもっと燃やし、無分別に食