ナビゲーション - みる会図書館


検索対象: 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事
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1. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

☆星の言葉を読み解く ポリネシアやミクロネシアの人たちが、長年受け継いできたスターナビゲーション。これは、 星空の言葉を読み解いてきた人々の知の財産だ。けれども、戦争や侵略の歴史の中で、その伝 統を受け継げる人は、皆無になりかけ、彼らがその知の財産を持っていたことさえ歴史の中に うずもれそうになっていた。けれども、—ooo 年以上前の「スターナビゲーション」の存在 を力強く裏付けたのは、彼らが受け継いできた「星の歌」だった。彼らにとっての「星を見上 げる意味」。それを自分たちにつなぎとめておくために、神話やチャントはなくてはならない カロリン諸島に、クジラの星座を描く人たちがいることも教えてくれた。 クジラの星座がゆっくりと昇ってくるその姿にぼくははっと気づく。そのおつぼは、カシオ ペャ座だ。ぼくにとって面倒な宿題の対象でしかなかったカシオペャ座は、海の民にとって、 自分のいのちを預ける対象だったのだ。クジラの星座がのぼるとクジラは歌を歌いだした。切 なく、なっかしい歌。そしてクジラの温かい肌がぼくの体からすっと離れていた。 気づくと、ぼくは家の前にいた。カシオペャ座が真上に輝いている。ぼくはあわててクジラ の星座をたどり、こうつぶやく。「きみはぼくの守り星だったのか。」 6 星を頼りに -- ーーほくとクジラのものがたり

2. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

( 僕が最も感銘を受けるのは、祖先たちのバランスのどれた生き方てす。彼らは無限の字宙から ( 一海の水の一滴まて、すべてが大きな生命の一部分てあリ、すべてがつながって生きているこどを よく知っていました。土地や自然に対して、よいこどをしても悪いこどをしても、ず自分たら に邇ってくるこどを理解していました。 ナイノア・トンプソン※Ⅳ ☆自分たちのいる場所 星は、人々に時間という概念を与えたばかりでなく、「自分はどこにいるのか ? 」という空 間概念をも与えた。星を使って自分が今いる位置を知るための理論と技術は、中世の大航海時 代に急速に発達した。星の高さから位置を割り出す「天文航法」は、何の目印もない大海原を 旅していくのに、もっとも重要な航法の一つであった。 けれども、それより—ooo 年以上も昔から、人は、星を見て海を渡るすべを知ってい た※田。「スタ 1 ナビゲーション」と呼ばれる、特に太平洋のポリネシアの人々が積み上げてき た知恵である。彼らは、単なる漂着をしたのではなく、高度な知識と技術をもって海を渡って

3. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

☆星が武器になった時代 プラネタリウム番組「戦場に輝くべガー約東の星を見上げて」 ( 脚本【跡部浩一、高橋真理子 ) は、戦時中、星の高さを測って自分の位置を知る「天文航法ーが使われていたこと、そのため に必要な「高度方位暦ーを当時の勤労動員の女学生が計算していたこと、その事実に基づきな がら描いた星の物語である。あらすじを先に紹介したい。 時代は太平洋戦争末期。主人公である大学生の和夫とおさななじみで女学生の久子は、和夫 が第期海軍飛行予備学生として入隊する前夜、天の川を見上げながら、「寂しい時や苦しい ときにはあのベガ ( 織姫星 ) を見上げよう」と約束を交わす。その後、和夫は陸上爆撃機「銀 河ーに乗り込む偵察員 ( 飛行機のナビゲーションを担う人 ) になり、久子は勤労動員生として、 海軍水路部で、天文航法を素早く行うために必要な「高度方位暦」の計算に従事する。遠く離 れた一一人をつなぐ星。若き兵士たちが命を託す星。そして爆撃機を敵地へ導く目印になった星 和夫は、満天の星空に包まれながら、自分が爆撃した相手にさえ、どうしても会いたい 星が武器どしててはなく、希望の光どして輝ける日がくるこどを祈っています※。

4. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

によってであった。「地球交響曲 ( ガイアシンフォニー ) 」は、自然とともに、また、自然の一 部として生きる人々に丁寧にアプローチし、その生き方を描くドキュメンタリー映画。 199 7 年、一般公開されてすぐに「 3 番を見たのは、この映画の中心に、星野道夫さんがいたか らだったが、他の出演者の一人に、ホクレア号プロジェクトの中心にいたナイノア・トンプソ ン氏がいたのだ。ホクレア号の復活をきっかけに、ハワイの伝統文化を残していく活動を精力 的に行っている彼は、もともと航海士の血を受け継いでいたわけではなかった。「スターナビ ゲーション」に向き合った一つのきっかけは、ハワイのチャント ( 聖歌 ) にあたる「星の歌」 が、自分たちの祖先の遥かなる旅を歌っていることに気づいたこと。「私たちはどこからきた のかーを歌っていたのだ。彼らにとって、星の存在は、命綱だった。星は人のいのちを守って きたということを、何千年も伝わる歌が教えている。なんてすごいことだろう。 ☆星とクジラをつなぐ 映画を見てから長いこと「スターナビゲーションーは、プラネタリウム番組のテーマとして の憧れだった。伝統的航法の研究に長年携わり、「星空人類学」という分野を提唱する後藤明 先生に出逢ったのは、年。出逢って、そのときがきた、とすぐに思った。スターコン

5. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

ショップ」というアイデア。プラネタリウムはほぼ、一方的な知識伝達スタイルが典型的なも のであるが、そこに、相互作用やコミュニケーションが大前提である「ワークショップ」とい う相反する概念をつなげてみたのである。それを思いついた日、大阪にいる友人に興奮したメ ールを送っていて、そのメールがまだ手元にのこっているので、日付もばっちりわかる。二つ の一一一口葉を結びつけただけだったが、そこには副題があって「星と人の関係性を取りもどす、と いうものだった。そして、そのメールにあった一一一一口葉は、「自分の星座づくり、スライド & 朗読 ワーク、スターナビゲーション、音の持っ力、生命の根源とつながり、関係性の物語、自己表 現の場としてのプラネタリウム : 一見この意味不明な言葉の数々 : : : を理解してくれそう なのは、当時、このメールの相手ぐらいしかいなかったのだろう。けれども、日本中のプラネ タリウムのどこでもきっとやっていないことであり、それが全国に広がっていくかもしれない 様子を思い描いて興奮し、その夜は眠れないほどだった。プラネタリウムが受動的ではない、 人々が主体的に表現できる場になる。プラネタリウムというメディアを特徴づける「ドーム空 間・星空・暗闇・言葉・音楽・映像ーという場の力を使って、人々のコミュニケーションの場、 表現の場としていけるだろう、と思った。 前例のない、しかも概念さえないものを実行するのは、特に公共施設という場にあっては、 なかなか困難をともなう。しかし、幸いにも、当時の上司にあたる人は、この興奮を話せる相