( プラネタリウム番組「 Memo ュ es ーほしにむすばれて※より〈章参照〉 ) ☆ 138 億年目の誕生日 私たちの始まりが、星であるならば、星はどのようにしてできたのか、星を生んだ宇宙はど のようにして始まったのか : : : それはさらに根源性をもって、私たちの好奇心を掻き立てる問 いである。少し乱暴な言い方ではあるが、そうやって、私たちのいのちは、宇宙の始まりにさ えつながっている。そう思うと、私たちはみな共通の誕生日を持っていることになる。そんな 想いで、年に「 137 億年目の誕生日ーというプラネタリウム番組をつくった。この ビッグバンから間もないころに放たれた、宇 ころ、宇宙の年齢は 137 億歳と言われていた。、 宙最古の光が電波となって伝わってくる宇宙背景放射を詳しく調べることで、その年齢が推定 される。さらに詳細な観測データを得られたことで、 2013 年には 138 億歳に書き換えら れた。まだこの先も変わるかもしれない この番組のシナリオは、冒頭の文章を書いた理論物理学者の佐治晴夫先生のさまざまな仕事 と言葉に助けられたものだった。彼を山梨にお呼びして講演をしていただいたとき、その番組 を参加者のみなさんと見る前に、佐治先生のお誕生日の星空をドームに映し出した。キリスト 9 星から生まれる私たち
映画「地球交響曲第 3 番」公式リーフレット ( 1996 年 ) 絽後藤明『海を渡ったモンゴロイドー太平洋と日本への道』 ( 講談社選書メチェ ) 覚和歌子『ゼロになるからだ』 ( 徳間書店 ) O 平原綾香音楽シングル 0 「星つむぎの歌」 (Dreamusic) サン日テグジュペリ、河野万里子 ( 訳 ) 『星の王子さま』 ( 新潮文庫 ) ダイアログ・イン・ザ・ダーク http://www.dialoginthedark.com/ ほしのかたりべ作 / みついやすし絵『ねえおそらのあれなあに ? 』 ( ュニバーサルデザイン絵本センタ 1 ) 佐治晴夫『ゆらぎの不思議ー宇宙創造の物語』 (æ文庫 ) 「 Memo ュ es ーほしにむすばれて」公式ウエプサイト http://www.memories-yamanashi.com/ 田沼靖一『ヒトはどうして死ぬのかー死の遺伝子の謎』 ( 幻冬舎新書 ) 清田愛未音楽 o アルバム「星の歌集 2 」 (Manamaru Records) ケヴィン・・ケリー『地球 / 母なる星ー宇宙飛行士が見た地球の荘厳と宇宙の神秘』 ( 小学館 ) 佐治晴夫『星へのプレリュード』 ( 黙出版 ) 池澤夏樹『星界からの報告』 ( 書肆山田 ) 池田綾子音楽アルバム「プラネタリウム番組『きみが住む星』オリジナルサウンドトラック」 ( 限定生産品 ) プラネタリウム番組「きみが住む星」公式サイト http://www.kimi-yamanashi.com/ 「戦場に輝くべガ」の中の和夫のセリフ 高橋真理子・跡部浩一「終わらない物語プラネタリウム番組『戦場に輝くべガー約束の星を見上げてー』」 っ 0 ( 『月刊星ナビ』 2 014 年 7 月号、 http://www.veganet.jp/ に Q L-t«で掲載 ) MiItonD ・ Heifetz 著 / 松森靖夫・岩上洋子・高橋真理子訳『星空散歩ができる本南半球版』 ( 恒星社厚生閣 ) 神野正美『梓特別攻撃隊ー爆撃機「銀河」三千キロの航跡』 ( 光人社 z 文庫 ) 鈴木一美・浅野ひろこ『戦場に輝くべガー約東の星を見上げて』 ( 一兎舎 ) ー 7 2
☆星の生と死 冬の代表的な星座、オリオン座。オリオン座の周辺には、星の一生に関わるドラマがつまっ ている。左上の赤い星・べテルギウスと、右下の白い星・リゲルは、紅白対照的な星。星の色 は、星の表面温度と直接的な関係がある。赤は、温度が低く coooo ℃程度、白は温度が高く て 1 万℃を超す。そして、その温度は、星が " 生まれて ~ 、 " 死んで ~ いくまでのプロセスの、 どんなステージにいるのかを教えてくれる。べテルギウスのような赤くて明るい赤色超巨星は、 まもなく超新星爆発を起こしてその最期を迎えるところだ。特に、べテルギウスの爆発は、人 類史上もっとも近いところで起きる超新星爆発になるので、天文学者たちはみなこの星に注目 している。 私たちだって例外てはあリません。もどはどいえば、みんな小さな光の粒の中にいました。や ( 一かて渦巻く水素の霧どしてただよい、銀河どなって、星になリ、星が一生かけてつくってくれた 元素たらから生命が生まれました。だからみんなみんなク星のかけらクなのてす。 佐治晴夫※
☆目に見える時間 時間というのは、不思議な存在である。過去というのはいったいどこへ行ってしまうのか 時間は、無限の過去から無限の未来に一直線に伸びていくものなのか : 理論物理学者の佐治晴夫先生は、その著書『凵歳のための時間論』※凵の冒頭でこう問いかけ る。「ここで、わかっていることは、″、 しま ~ という、この瞬間に、過去や未来について考えて いるあなたがいる、ということだけです。 / そういってみても、『 " いま ~ という瞬間』とは、 どういうことでしようか。 ( 中略 ) 『時間というモノ』、つまり、『瞬間というような時間の 粒々』があるのでしようか。」 そんな、とらえどころのない「時間」。それを人々は、「見えない『時間』の流れを、『空間』 の姿におきかえて測ってきた」 ( 同著 ) のだ。つまり無限の過去から無限の未来に伸びていく かのような「時間を、人間は何かで規定する必要があった。そのとき、一番の手助けになっ たのは太陽・月・星がめぐってもとに戻るというその周期である。太陽は毎日、昇っては沈み、 再び昇る。月は満ち欠けをくりかえし、新月から毎日少しずつ太り、満ちてふたたび新月に向 かう。星座は、毎日 1 度ずつ西へとずれながら、正確な季節を刻み、 1 年たって同じ位置に戻 ってくる。人々は、それらをつぶさに観測し、 1 日、 1 か月、 1 年というその " ものさし ~ を 0
いう人々や万種以上の生き物が漆黒の闇に浮かぶ青く小さな星にへばりつくように生 きていることにあらためて想いを馳せる。 1977 年に地球を飛びたったアメリカの宇宙探査機・ポイジャー 1 号は、木星と土星の大 迫力の写真撮影に成功したのち、海王星軌道よりももっと遠くに到達した年 2 月凵日、進行 方向から「振り返ってー、太陽系全体の「家族写真ーを撮った。理論物理学者の佐治晴夫先生 は、 Z<Ø< / の研究所長から聞いたことを、こう表現している。「ポイジャーが振り 返って撮ってくれた一枚の写真。 / そこには、太陽のまばゆいばかりの光の中に針の先ほどの 地球が写っていました。そこで研究所長が言っていたことが、とても印象的でしたね。 / 『 ( 中 略 ) あの写真は、科学のために撮ったのではない』では、何のためだったのでしようか。 / 彼 は、『詩や芸術のためだ』と答えたのです。 / ( 中略 ) ポイジャーがしたことの意味は、 ( 中略 ) われわれ人間が、今ここに存在しているということの、存在の意味を確認してくれた、という ことだと思います。ー※四 はるか遠い宇宙から地球をのぞむ。その視点は、私たちが小さな星に住む確かさと不思議さ をどこまでも与えてくれる。 IO 遠くを見ること、自分を見ること
魂や肉体の調和を示す。そして「ムジカ・インストウルメンタリース。が、私たちの耳に届く、 いわゆる今の「音楽」につながっている。そして、その音楽を支えるのは、数学である。この ような思想は、ギリシャ時代のリべラル・アーツ、つまり自由になるための教養・学問の基本 に、天文学、幾何学、数論、音楽があったことに現れている。 私たちが日常使う一言葉には、どうしても国境がある。けれども、音楽や数学には国境はなく、 おそらくこれらには、国境どころか、 " 星境 ~ さえもないのだろう。地球人が他の星の生命と コンタクトするのであれば、それにはもっとも音楽と数学が有効なのだろう。 それを、体現しているのが、アメリカの宇宙探査機・ポイジャーが抱えるゴールデンレコー ドである。ポイジャーは、科学的な成果を次々に見せつけた惑星探査機であったが、もし宇宙 人にあえたら、地球はこんな星、と差し出せるように、地球の情報を入れ込んだそのレコード を抱えて出かけていった旅人そのものでもあった。 理論物理学者の佐治晴夫先生は、ゴールデンレコードの責任者であったカール・セーガン氏 と 楽 に、レコードにバッハのプレリュードを入れるように提案したそうだ。この曲は、数学の美し さをそのまま音楽にしたようなものだから、だそうだ。私たちが聴いて心地よいと思える和音 の音の波長 ( 振動数 ) はきれいな整数比になることが多い。たとえば、ド・ミ・ソの和音は、 振動数が 4 【 5 【 6 の比率となり、フア・ラ・ド、ソ・シ・レもそうである。その一番の基本 ー 45
参考・引用資料一覧 星野道夫『アークティック・オデッセイー遥かなる極北の記憶』 ( 新潮社 ) 2 星野道夫『アラスカ光と風』 ( 福音館書店 ) 3 赤祖父俊一『オーロラ写真集』 ( 朝倉書店 ) 4 稲本正『森からの発想ーサイエンスとアートをむすぶもの』 ( プリタニカ ) 5 弓場隆編 / 訳「アインシュタインの言葉ェッセンシャル版」 ( ディスカヴァー・ トウエンテイワン ) 正確には カントの言葉「ふたつのものが私に畏敬の念を抱かせる。満天の星と私の中にある道徳法測である」をアインシュ タインが引用したらしい 6 星野道夫『森と氷河と鯨ーワタリガラスの伝説を求めて』 ( 世界文化社 ) 7 「特集・星野道夫の世界」『ュリイカ』 2003 年月号 ( 青土社 ) 8 小林真人オリジナルサウンドトラック OQ 「オーロラストーリ 15 9 覚和歌子本書のための書き下ろし 中野民夫『ワークショップー新しい学びと創造の場』 ( 岩波新書 ) 星の語り部サイト 2004 年のレポート http://hoshitsumugi.main.jp/kataribe/index.php?repo 「 (2004 「ほしのうた」 http://hoshinouta.livedoo 「 . biz/a 「 chives/2()09-05. html 星野道夫『旅をする木』 ( 文藝春秋 ) 佐治晴夫『凵歳のための時間論』 ( 春秋社 ) 清田愛未音楽 o アルバム「星の歌集ー (Manamaru Records) Julius D. W. StaaI 著『 The New patte 「 ns in the Sky: Myths and Legends 0 「 the stars. 一 988 』 (The McDonald and Woodward PubIishing Company, Blacksburg) 星野道夫・宙との対話 5 ー ( インディ 1 ズ )
☆死は生へのエネルギー 星の " 生と死 ~ を考えたとき、ある一点において、地球上の生命の生死に重なることがある。 それは、死というものが新しいものを生み出すエネルギーになっているということ。そもそも なぜ、生命には死がプログラムされたのだろうか。今から億年前、海の中で生命が誕生して からおよそ一一十数億年の間は、コピーをつくりつづける原核生物で、それは死を知らない生物 だった。そこに QZ< を収納する核を持っ真核生物が現れ、親から一組ずつの QZ< を受け継 ぐ「性ーが現れた。これによって、生命は多様性への道を歩み始め、バクテリアやウイルスに 抵抗できるものをつくり、進化できるようになったのである。新しいものを生み出した古い個 体は、消滅したほうがより進化ができることを知り、生命は「自死ーというプログラムを持っ 誕生のときの「べツレヘムの星」かと思うほどの、惑星が大集合した星空だった。佐治先生は そのことに感激し、全国で講演をする先々で、その嬉しさを語ってくださった。 誕生日は、誰にとっても祝福されるべきその日。その誕生日の一番のもとをたどっていけば、 私たちはみな同じ誕生日を持っている。それらを祝える毎日だったら、どんなにか楽しいこと だろう
一人はなせ、歌うのだろう。 ( 中略 ) 人が、こどばにリスムを村け、メロディーに乗せ、 ニーを重ねて歌うこどをこんなに愛するのは、なせだろうか たぶんそれは、字宙そのものがうただからだ。宇宙の時間を打っリスムど、字宙の歴史をて るメロディー、 そして宇宙の空間に満ちるハーモニーの幸福な三位一体によ「て、字宙は今も歌 ・つている。 晴佐久昌英※ ☆音楽と星空は高めあう ある中学校での講演後にこんな感想をもらったことがある。「ぼくはある一つの考えにたど り着きました。それは宇宙と音楽は似ているということです。美しいこと、人々に安らぎを与 えること、時代や方法によってとらえ方が変わること : : : 」。私は講演の中で、いつもの演出 として音楽をフル活用していたが、特に音楽の説明をしたわけではなかった。「似ている」と いった彼の感性がとても素敵だ。彼が書いてくれたとおり、美しいことや心に訴えかけてくる こと以外にも、音楽を楽しむことと星を見上げることはどちらも、ほとんどの人が体験をして ー 42
神野正美『聖マーガレット礼拝堂に祈りが途絶えた日ー戦時下、星の軌跡を計算した女学生たち』 ( 潮書房光人社 ) 小林真人音楽アルバム「約束の星ー星といのちの物語ー」 (calm forest) 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』 ( 角川文庫 ) 菅原千恵子『宮沢賢治の青春ー″ただ一人の友。保阪嘉内をめぐって』 ( 角川文庫 ) 4 江宮隆之『二人の銀河鉄道ー嘉内と賢治』河出書房新社 宮沢賢治著 / 保阪庸夫・小澤俊郎編著『宮澤賢治友への手紙』 ( 筑摩書房 ) 山梨県立文学館編『宮沢賢治若き日の手紙ー保阪嘉内宛七十一一一通ー』 ( 山梨県立文学館 2 0 0 7 ) 妬大明敦編『心友宮沢賢治と保阪嘉内ー花園農村の理想をかかげてー』 ( 山梨ふるさと文庫 ) 個人所蔵の資料による 谷川俊太郎作 / えびなみつる絵『ほしにむすばれて』 ( 文研出版 ) 菊地里帆子「希望の光 5 世界への感謝」 http://ameblo.jp/rebirth20 一 0 一 02 、 en ( ニ 0969269957. h ( m 一 覚和歌子と丸尾めぐみ音楽シングル「ほしぞらとてのひらと , (><-æ) 坂村真民『詩集一一度とない人生だから』 ( サンマーク出版 ) から作品の一部を抜粋 晴佐久昌英『星言葉』 ( 女子バウロ会 ) 桜井進・坂口博樹『音楽と数学の交差』 ( 大月書店 ) 日本ホスピス・在宅ケア研究会山梨支部「宙を見ていのちを想う 5 オーロラとともに」記録集 谷川俊太郎・松本美枝子『生きる』 ( ナナロク社 ) 大平貴之ララネタリウム男』 ( 講談社現代新書 ) 星つむぎの村公式サイト http://hoshitsumugi.main 」マ 本書に登場するプラネタリウム番組の著作権は、すべて山梨県立科学館が持っています。 ロ 3 参考・引用資料一覧