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検索対象: 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事
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1. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

ひとのかたちしたよろこびで 青ざめた星を満たすため 私たちはもう何度もひとりきりになって ふるえる炎に向かい合った このからだひとつあればまた生きていけ る 寄り添うあなたの手を握って 私たちはもう何度も全てを失くして そのたび灯りをさがしあてた このからだひとつあればまた生きていけ る 出会う誰かの手を握って ー 32

2. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

( 無窮の彼方へ流れゆく時を、めぐる節て確かに感じるこどがてきる。自然どは、何ど粋な ( はからいをするのだろうど思います。一年に一度、名残惜しく過ぎてゆくものに、 この世て何度一 めぐリ合えるのか。その回数をかぞえるほど、人の一生の短さを知るこどはないのかもしれませ 星野道夫※ ☆一晩の気づき これまで、何度となく星を見上げる体験をしてきたが、プラネタリウムの仕事に携わるよう になって間もないころ、自身にとって大きな体験があった。 1998 年のしし座流星群の夜、 星がひとっふたっと現れるタ暮れの時間から、夜明けが来るまで、寝転んでひたすら空を見つ づけた体験。このとき、たくさんの流れ星が出現するだろうとメディアで報道され、多くの人 が屋外に出向き、夜空を見上げた。私は、八ヶ岳山麓の明野村 ( 現在の北杜市明野 ) の農道に 車を止め、車のポンネットに乗って寝袋にくるまりながら一晩を過ごした。 普及がはじまって間もなかった携帯電話を持って、科学館によく来ていた天文好きの高校生 むきゅう 4

3. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

の子たちとともに東京での科学イベントで大合唱をし、「科学イベントでこんなに感動したの ははじめて」という声をいただいた。その映像を見た人たちから、学校や地域で手話つきの合 唱をするところが現れた。年を経ても、見知らぬ学校から、素敵な歌をつくってくださってあ りかと , つ、とい , っ便りが届くこともある こんな出逢いもある。兵庫県の支援学校の教員である定行俊次先生が、生徒たちの文化祭に 行う劇を何にしようかと考えていたときに、「星つむぎの歌」の絵本を見つけ、気持ちを抑え きれない様子でメールを書いていらした。それを原作にし、先生が演出をした劇は、その会場 全体を「僕らは一人では生きていけない」という共感で満たすものになった。定行先生とのお つきあいは、その後何年も続き、何度か学校で星の話をさせてもらっている。その度に、障害 を持っ子どもたちが、星に出逢うことで変わっていく姿を見せてもらい、一人ひとりの成長を どこまでも見守っていきたい気分になる。 たかが星、されど星。あんなに遠くにあり、そこで瞬いているだけなのに、人を生かす。自 身が星に携わるようになって、このプロジェクトほど、「星のカーを感じ、星は人をつなぐ、 ということに確信を持つようになったものは他になかった。 「星つむぎの歌」が生み出した幸せの連鎖は、星につながれて、どこまでもつづいていく。 0

4. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

賢治「ああ、きっと」 〈汽車の汽笛〉 やみ 朗読「僕もうあんな大きな暗の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいを 癶」カしに一丁 / 。、 とこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。 朗読部分はもちろん、「銀河鉄道の夜ー※である。賢治は、晩年、何度も「銀河鉄道の夜ー を書き直しながら、きっとあの夜の天の川を思い出していたのだろうと思う。 内 嘉 保 と ☆ほんとうの幸せ 沢 その後、嘉内が退学処分になったことや、宗教観のずれによって、一一人の間には距離が生ま 情 れる。賢治の法華経への強い想いについていけなくなり、賢治から離れようとする嘉内に、賢 む 治は、「我を捨てるな」と手紙に何度もくりかえし求める。彼らが訣別したままだったのか、 星 あるいは賢治の生前に再び話をすることがあったのか、それはまだ謎が残ったままだ。 それはどうであれ、あの一晩の、砂礫のような天の川のもとで誓った彼らの想いを、想像し、 そして受け継いでいきたい。この美しい星空が、自分たちだけではなく、自分の生きる地域の、

5. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

☆星空書簡 「星つむぎの歌」を一緒につくった詩人・音楽家の覚和歌子さんたちと、「星空書簡」という ワークショップを何度か行った。きっかけは東日本大震災だった。震災の夜の満天の星空を見 上げていた人たちのエピソードに、何度も心が震えた。その星空を語ることが、心の解放につ ながるのでは、と思い、「星を見上げ、誰かに手紙をかく」という企画を考えたのだ。。 こ縁の あった陸前高田で、「星空書簡」ワークショップを行った。 決して誘導しているわけではないが、亡くなった誰かにあてる手紙を書く方が多いそれは 被災地という土地でなくてもそうである。「人は死んだら星になるーという一一 = ロ葉は、ずっと昔 からあって、人は魂として生き続けることができるという、人々の願いでもあるのだろう。肉 体を失った大切な誰かを星にすることで、いつでも見守ってもらうことができる。見上げれば 対話をすることができる。 手紙は、一人ひとりの人生が見え隠れする、とても個人的なもの。けれども、このワークシ ョップでは、読んでもいいよ、という人が、だんだんと手をあげ、一人ひとり読みはじめる。 僕も大きな力の中にあなたを見ます。」 ( 吉田広大 ) ー 38

6. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

いる、という共通点がある。おそらく長い人間の歴史の中でずっと。 プラネタリウムという場にとっても、講演をするときも、音楽はなくてはならない存在であ る。言葉を超えて、魂を揺さぶる力を、音楽は持っている。プラネタリウム番組の制作や講演 の出来の半分ほどは、共感できる音楽家とともに仕事ができたかどうか、が鍵を握っている。 宇宙や星空の深淵さは、音楽家の表現の源泉になり、音楽は映像や言葉を立ち上がらせる。そ れは互いに引き合うもの。出逢いながら、互いに生み出し、生み出しては出逢いということが、 自身の人生でずっとつづいている。 作曲家・ピアニストの小林真人さんに逢ったのは年。最初に聞いたコンサートに衝 撃を受け、それから毎日くりかえし彼のピアノを聴いていた。何度聴いても飽きることのない 音楽。山梨県出身の彼の音楽の原点には、八ヶ岳の自然があり、生きている意味への問いかけ がある。いくつかのプラネタリウム番組を共につくる経験を経て、「 space Fantasy LIVE 」と いう宇宙の映像と音楽と語りが融合した新しい公演スタイルが生まれたのも、彼の物語性あふ」 と 楽 れる音楽のおかげである。 音 何度も公演をくりかえす中で、 Space Fantasy LIVE のためのオリジナル曲がたくさん生まれ た。私の半生をなぞって描いてくれた「星の道をーについて、これが収録されたアルバム「約 束の星ー星といのちの物語」※のライナーノートに私はこのような想いを寄せた。 ー 43

7. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

空が広がったという。「地震で宇宙までなにかが起きたのかと思った」と振り返る方もいるほ どだ。人々は、津波に流されながら、寒さにふるえながら、不安にたえながら、その星空を見 上げていた。毎日メールを交わしていた坪田さんが、震災から 2 週間たってこんなメールを送 ってきた。 「バタバタしてずっと言うのをわすれてた。あの夜、携帯の電波を探して外に出たとき、とん でもない満天の星空が広がって、それを見た瞬間、『ああ、私、生きてる : ・』って思ったんだ よね。それをすごく伝えたいと思ってた。ー一瞬にして鳥肌がたって涙が出てしまった。あれ だけの大混乱の中、人に「生きているーと体で感じさせてくれる星空。これはいったい何なの だろう その後、プログや新聞の投書や記事から、あの日、恐ろしいばかりの満天の星空に人々は何 を見たのか、それを垣間みる機会がたびたびあった。それまでずっと感じてきた人々の心の中 にある宇宙、星空、それが内包する力というものを、これほど見せつけられたときはなかった。 ☆エピソードのいくつか 「何度もよみがえるのは、 3 月Ⅱ日夜の、あの美し過ぎるほどの星空である。地上の惨劇 1 4 震災の日の星空 ー 27

8. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

手だった。一人と一一人はだいぶ違う。正直なところ、彼も私が何に興奮しているのか理解でき なかった、という。ただ、「高橋さんがこんなにうれしそうにしゃべっているのだから、きっ と何か面白い企画になるのだろう」と思った、と。この企画を後押ししてもらったことが、の プ ちの大きな仕事の数々に結びついていった。 シ ク ワ ☆星を見て何を想う ム ウ これを、あらためダ 人々にとって「星を見上げるということは、どういうことなのか : プ て考えさせてくれたのは、このワークショップから出てきた、参加者の一一一一口葉によるものが大き 。「思い出の星空を語ろう」というテーマで行ったワークショップでは、まずは、二人一組 ム で星を見上げた記憶をひきだし合い、その思い出の日の星空を映し出しながら、皆の前で語る を 空 という時間を持った。中学生の男の子が、友達と見た流星群がわすれられず、その友達とは一 星 生つきあっていけると確信した話。母親と一緒に富士山のふもとで満天の星を見て、そこに流 れた星が死んだお父さんだったね、と確認しあった話。全盲の女性が富士山に登ったとき、一 4 緒にいた友人が、その頭上に広がる満天の星を見て「すごい星。とにかく、すつごい星ーと何 4 度も言うのを聞き、彼女をそこまで感動させる星っていったいどんなものなんだろうと思った、

9. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

がっているような気がした。 けれども、人間がもし本当に知りたいことを知ってしまったら、私たちは生きてゆく力を得 るのだろうか。それとも失ってゆくのだろうか。そのことを知ろうとする想いが人間を支えな がら、それが知り得ないことで私たちは生かされているのではないだろうか」※ 6 。 来館者の感想の一つを紹介したい。「『科学とは』ということを、とても根源的な『人とは』 『いのちとは』という視点を見失うことなく語っていると思った。表現するときに一番大切な ことは『想い』だと思う。それが心の深みまで届いてきた。」とてもありがたい言葉だった。 ☆生きている不思議、死んでいく不思議、出逢う不思議 「オーロラスト 1 リ 1 」の制作は、自身の一つの時代の終わりであり、そして始まりだった。 この番組のおかげで、ある雑誌の「星野道夫特集ー※ 7 に、寄稿させていただいた。 「少し唐突だが、映画『千と千尋の神隠し』の主題歌『いつも何度でも』の中に、『生きてい る不思議、死んでいく不思議、花も風も街もみんな同じ』というくだりがある。これを聞くた びに、私は星野道夫を思う。生きていることの不思議さを思う、探究する、考える : : : このこ とは、 " 生命の大切さ ~ を説くより、何倍も、他者のいのちの存在を感じ、謙虚に生きること 3 「オーロラストーリー」が生み出したもの 5 3

10. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

と、見えた ? 見えないね ? という会話を何度かやりとりした。星って、はなれていても一 緒に見られるんだな、ということも、このとき改めて実感したのかもしれない 研究者たちの予想に反して、流れ星の大出現はなかったが、明け方に、大きな火球 ( 流れ星 の大きなもの ) が流れ、その流星痕は、いつまでも空に残り、この年のしし座流星群のハイラ イトを飾った。翌朝の新聞には、その流星痕のカラー写真とともに、大きな流れ星に感動した 一般の方のコメントが載っていたが、私がこの一晩で学んだことは、何よりも「星はひたすら めぐっていく」ということだった。 「星の動き、は、小学校で習う。そして、宿題でノートにカシオペャ座の位置などを書く。地 上の目印を書きなさいと言われるが、それと空にあるものがうまく一枚に収まらない故、私の 場合、その単一兀は全然面白くなかった記憶しかない ところが、一晩寝転びながら星を見つづけた体験によって、「私たちは宇宙の中の小さな地 め る 球にへばりついて、地球と一緒にまわっている存在なのだ」ということを、生まれてはじめて え 教 体で知ることができた。地球全体に流れる「時間」を感じたのだろう。「私、生まれ変わった 空 星 かも , という気持ちが湧き出るほどの、「はじめての朝。を迎えた気分だった。朝日がとても まぶしかった。 4