超新星爆発 - みる会図書館


検索対象: 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事
7件見つかりました。

1. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

この超新星爆発という現象は、私たちが生きていることに密接な関わりを持つ。それは私た ちの体を構成している元素は、超新星爆発が生み出した、ということだ。宇宙の始まりには、 水素とヘリウムという軽い一兀素しかなかった。水素ガスが、だんだんと集まり、十分な重さを 持っ : : : つまり、高い圧力と温度という条件下、バラバラになった水素の中で、 4 個の陽子が たがいにくつつきへリウムへと変わる。このような核融合反応によって、光が放たれる。それ が星の誕生。大きくて重い星は、ヘリウム以外にも酸素や炭素をつくりあげ、星の内部ででき あがる最も重い元素である鉄もできる。鉄ができたところで、核融合反応が止まり、熱エネル ギ 1 、つまり星の内部から外に向かう力を失ってゆく。星は自分の重力を支えきれずに急速に 縮み、最後は大爆発を起こす。それが超新星爆発である。この爆発は、星の内部にできた元素 を宇宙空間にまき散らすのみならず、爆発時の衝撃によってあらたな元素を生み出す、元素製 造現象ということなのだ。現在、この世界にある鉄より重い元素はすべて、超新星爆発のとき ゆえん に生み出されたもの。「みんなみんな『星のかけら』」である所以はそこにある。 「私たちは星のかけら , という概念は、現代の天文学が全人類に与えてくれた、世紀最大の プレゼントといっても過言ではない。「私たちはどこからきて、どこに向かうのか」という人 間の根源的な問いに対して、人々は何か納得する答えがほしくて、神話を語り、学問の積み上 げをしてきたのだろう。そして、科学の成果で、ここまで私たち一人ひとりの「生ーに直結し 83 9 星から生まれる私たち

2. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

☆星の生と死 冬の代表的な星座、オリオン座。オリオン座の周辺には、星の一生に関わるドラマがつまっ ている。左上の赤い星・べテルギウスと、右下の白い星・リゲルは、紅白対照的な星。星の色 は、星の表面温度と直接的な関係がある。赤は、温度が低く coooo ℃程度、白は温度が高く て 1 万℃を超す。そして、その温度は、星が " 生まれて ~ 、 " 死んで ~ いくまでのプロセスの、 どんなステージにいるのかを教えてくれる。べテルギウスのような赤くて明るい赤色超巨星は、 まもなく超新星爆発を起こしてその最期を迎えるところだ。特に、べテルギウスの爆発は、人 類史上もっとも近いところで起きる超新星爆発になるので、天文学者たちはみなこの星に注目 している。 私たちだって例外てはあリません。もどはどいえば、みんな小さな光の粒の中にいました。や ( 一かて渦巻く水素の霧どしてただよい、銀河どなって、星になリ、星が一生かけてつくってくれた 元素たらから生命が生まれました。だからみんなみんなク星のかけらクなのてす。 佐治晴夫※

3. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

☆星が武器になった時代 プラネタリウム番組「戦場に輝くべガー約東の星を見上げて」 ( 脚本【跡部浩一、高橋真理子 ) は、戦時中、星の高さを測って自分の位置を知る「天文航法ーが使われていたこと、そのため に必要な「高度方位暦ーを当時の勤労動員の女学生が計算していたこと、その事実に基づきな がら描いた星の物語である。あらすじを先に紹介したい。 時代は太平洋戦争末期。主人公である大学生の和夫とおさななじみで女学生の久子は、和夫 が第期海軍飛行予備学生として入隊する前夜、天の川を見上げながら、「寂しい時や苦しい ときにはあのベガ ( 織姫星 ) を見上げよう」と約束を交わす。その後、和夫は陸上爆撃機「銀 河ーに乗り込む偵察員 ( 飛行機のナビゲーションを担う人 ) になり、久子は勤労動員生として、 海軍水路部で、天文航法を素早く行うために必要な「高度方位暦」の計算に従事する。遠く離 れた一一人をつなぐ星。若き兵士たちが命を託す星。そして爆撃機を敵地へ導く目印になった星 和夫は、満天の星空に包まれながら、自分が爆撃した相手にさえ、どうしても会いたい 星が武器どしててはなく、希望の光どして輝ける日がくるこどを祈っています※。

4. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

☆イベントからコミュニテイへ 年の初回のワークショップを終えて、自分はこういうことをとてもやりたいと思っ ていたのだ、としみじみしたことを覚えている。参加者同士が大人も子どもも対等で、刺激し あいながら、表現をし、共有する。だれが先生でも生徒でもない。おのずと、知りたいことや 考えたいことが生み出される場。これが、イベントで終わるのはもったいないと思い、初回ワ ークショップに参加した人たちに「企画して作品をつくりませんか」と呼びかけたところ、 5 なんともいとおしい。その心を知っての句だ。 2 番目の句は、毎年 1 月 4 日ごろをピークにやってくる「しぶんぎ座流星群」のこと。しぶ んぎ座流星群は、よく出現する年とそうでない年が極端にちがう。この年の「不発さ加減」が なんともいえず伝わってくる。 年に私の直観で始まったプラネタリウム・ワークショップは、私が科学館を退職し た 2016 年 3 月まで続いた。実施した回数は、回。言葉による表現以外にも、打楽器、オ ルゴール、ダンス、演劇、手話、絵本、粘土 : : : などあらゆる手段をつかって、宇宙や星を感 じながら「表現ーして「共有ーすることで、毎回、新しい驚きや感動を重ねてきたのである 43 4 心の中の星空をドームに一一プラネタリウム・ワークショップ

5. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

験記の一部と、陸上爆撃機「銀河」の特攻の様子が描かれる『梓特別攻撃隊』皛中の、学徒動 員女学生のことが書かれた 1 ページのコピー、そして—oo ページの「昭和年天測暦」だけ であった。『梓特別攻撃隊』の著者、神野正美さんの存在は大きく、彼に紹介された人に会い にいき、また次の人を紹介され、と芋づる式に取材は進んでいった。 取材で出逢った人たちのことは、「終わらない物語」をぜひ読んでほしい。私たちはこの取 材を通して、非常に多くのものを学んだ。天文航法という人間の知恵の集積も、海軍水路部が 独自の方法で高度な暦計算をしていたことなど驚きの連続であった。それ以上に心に刻まれた のは、人々はあの時代にも人間らしく生きたいとずっと願っていたこと、多くの人が戦争の記 憶を自分の中に閉じ込めていることであった。番組のシナリオには、実際にお話を聞かせてい ただいた方たちの言葉がちりばめられている。 ☆戦争体験者との対話 戦時中に「天文航法、や、「高度方位暦、の計算に携わった方を中心に、名以上の方を取 材したが、中でも、「天測 ( 天文測量の略 ) の神様ーと呼ばれた平山幸夫さんから、教えられた ことは数知れない。平山さんは、戦時中は、偵察機として使われていた一一式飛行艇の偵察員を 1 1 戦争と星空ーー戦場に輝くべガ

6. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

陽系の惑星たちは、キロメートルという距離単位を使ってもかろうじて表現しきれる範囲にあ るが、星 ( 恒星 ) までの距離となると、キロメートルでは数字が大きくなりすぎる。地球から 見て太陽の次に近い恒星ーーケンタウルス座の。星ーーまでの距離は、地球から太陽までの距 離のざっと万倍もある。そんな大きな距離を表すために使われるのが「光年、という単位。 光の速さ ( およそ S 万 / 秒 ) で進んで 1 年かかる距離が 1 光年。。ケンタウリまでの距離は 4 ・ 3 光年。その星を出発した光が 4 ・ 3 年かかってようやく私たちの目に届くというわけだ。 1 年のうちでもっとも、きらびやかな明るい星が輝く冬の星々の中で、私が一番好きなのは、 冬のダイヤモンド ( 章扉写真 ) 。こんなにも大きくて、こんなにも安いダイヤモンドは他にな と こ いからね、といつもプラネタリウムの解説の中で語っている。ダイヤモンドの六つの星がそれ る 見 を ぞれどれだけの距離にあるかというのが、おもしろい。シリウスは、 9 光年。つまり、 9 歳の 分 子どもが生まれたときの光を今、私たちは見る。プロキオンは光年、ポルックスは光年、 と こ カペラは光年、アルデバランは光年。アルデバランぐらいまでは、私たちは人生の長さに る 置き換えて、昔を懐かしむように見ることができる。けれども、リゲルは光年、同じオ リオン座にあるべテルギウスは 640 光年、夏の大三角の一つとして知られるはくちょう座の デネプは約光年 : : : だんだんピンとこなくなるが、それでもまだ人間の歴史の年表の 中に入る。そして、私たちが望遠鏡を使わずに、肉眼で見ることのできるもっとも遠い天体は、

7. 人はなぜ星を見上げるのか : 星と人をつなぐ仕事

映画「地球交響曲第 3 番」公式リーフレット ( 1996 年 ) 絽後藤明『海を渡ったモンゴロイドー太平洋と日本への道』 ( 講談社選書メチェ ) 覚和歌子『ゼロになるからだ』 ( 徳間書店 ) O 平原綾香音楽シングル 0 「星つむぎの歌」 (Dreamusic) サン日テグジュペリ、河野万里子 ( 訳 ) 『星の王子さま』 ( 新潮文庫 ) ダイアログ・イン・ザ・ダーク http://www.dialoginthedark.com/ ほしのかたりべ作 / みついやすし絵『ねえおそらのあれなあに ? 』 ( ュニバーサルデザイン絵本センタ 1 ) 佐治晴夫『ゆらぎの不思議ー宇宙創造の物語』 (æ文庫 ) 「 Memo ュ es ーほしにむすばれて」公式ウエプサイト http://www.memories-yamanashi.com/ 田沼靖一『ヒトはどうして死ぬのかー死の遺伝子の謎』 ( 幻冬舎新書 ) 清田愛未音楽 o アルバム「星の歌集 2 」 (Manamaru Records) ケヴィン・・ケリー『地球 / 母なる星ー宇宙飛行士が見た地球の荘厳と宇宙の神秘』 ( 小学館 ) 佐治晴夫『星へのプレリュード』 ( 黙出版 ) 池澤夏樹『星界からの報告』 ( 書肆山田 ) 池田綾子音楽アルバム「プラネタリウム番組『きみが住む星』オリジナルサウンドトラック」 ( 限定生産品 ) プラネタリウム番組「きみが住む星」公式サイト http://www.kimi-yamanashi.com/ 「戦場に輝くべガ」の中の和夫のセリフ 高橋真理子・跡部浩一「終わらない物語プラネタリウム番組『戦場に輝くべガー約束の星を見上げてー』」 っ 0 ( 『月刊星ナビ』 2 014 年 7 月号、 http://www.veganet.jp/ に Q L-t«で掲載 ) MiItonD ・ Heifetz 著 / 松森靖夫・岩上洋子・高橋真理子訳『星空散歩ができる本南半球版』 ( 恒星社厚生閣 ) 神野正美『梓特別攻撃隊ー爆撃機「銀河」三千キロの航跡』 ( 光人社 z 文庫 ) 鈴木一美・浅野ひろこ『戦場に輝くべガー約東の星を見上げて』 ( 一兎舎 ) ー 7 2