性犯罪 - みる会図書館


検索対象: 性犯罪被害にあうということ
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1. 性犯罪被害にあうということ

190 どんなに被害者に非がある、加害者が一〇〇パーセント悪いわけではないとい われても、その被害者が「イヤ ! 」と感じた気持ちは大切に汲みたい。 性犯罪の被害者が、名乗りを上げて権利を主張する場は、まだない。あっても、 出られないのかもしれない。だから、制度が変わろうとするとき、犯罪被害者支 援が取り上げられるとき、どうしてもその中に「性」犯罪被害者の声が、反映さ 一一〇〇七年三月。閣議決定によって刑事訴訟法の一部を改正する法案が国会に 提出された。この法案が通れば犯罪被害者が刑事裁判に参加できることになる、 と聞いて、 『私の犯人が捕まって裁判になったら、私も出たいと思うかな ? 』 と考えた。 いや、いまさら犯人になんて会いたくない 『誰のためにそんな権利が ? 』 と疑問に思っていると、片山さんが新聞に載っているのを目にした。片山さん

2. 性犯罪被害にあうということ

210 私にとって、 「シンちゃん」は、事件のときの私を「知っている人」。 りようちゃんが、本当に「理解してくれる人」。 片山さんは、「気づいている人」。 私はレイプされたんだ。 犯人がどうであれ、私のダメ 1 ジは変わらない。 当時もいまも、私は変わらずにそう思っている。 性犯罪の被害者を救えるものは何か まずは、周囲の理解 被害者は、ます自分に向き合う時間を与えられなくては。 加害者を罰する前に、被害者が救われなくては。 そのために、制度や法律や機関が整っていかなくてはならない

3. 性犯罪被害にあうということ

小林美佳 ( こばやし・みか ) 1975 年生まれ。東京都出身。 大学卒業後、 O*-Äを経て司法書士事務所、弁護士会に就職。 司法書士事務所に勤務していた 2000 年 8 月、性犯罪事件に巻き込まれる。 その経験を踏まえ、性犯罪被害者自助グループ運営に携わるなど、 犯罪被害者支援を考える。

4. 性犯罪被害にあうということ

るしか、自分を守る方法がない。感情や表現する力が凍っていることに気づいて はいるが、身体反応が先に出てくるため、「恐怖」という感情だけを強く感じてし まう。そしてそれによる身体反応が起こるという悪循環が繰り返されるのではな いたろ、つか 一方、地震災害や台風被害でを発症した人の場合、一般的に性犯罪被 害者より自責の気持ちは生じにくいといっていいだろう。その代わり、自然とい うどうしようもないものを相手に、怒りをぶつける先がないという無力感と、ぶ つけても仕方ないという諦めが共存しているのかもしれない 凶悪犯罪と自然災害。まったく性格を異にする一一つの事柄を契機に同じ症状が 出たとしても、そこには、大きな違いかあるように感じる なぜなら、自然災害は、誰もがその被害の内容を想像しやすく、周りの「理解」 を得やすいから。 性犯罪の被害者は、どうだろう : ・ 「言えない」から、被害の状況が分かりにくい社会ができあがっている。自責の 気持ちの有無の原因は、そこにあるのではないかと思う。

5. 性犯罪被害にあうということ

169 合流 『性犯罪被害者のことを知ってほしい』 と思う気持ちは、どんどん大きくなっていった。 たくさんの被害者に会える仕事へ転職を決めた。 法律相談に訪れる人の対応をする仕事。性犯罪の被害者ではなかったが、悩み を抱えた人たちが情報を求めて問い合わせたり、訪れてくるところ。 毎日、ひっきりなしに電話がかかってくる。 事件から四年半が経ち、こうして書き留めていくうちに、気持ちや事実の整理 かずいぶんできてきた。 何かが片づいた感じがして、自分に起こったことも、把握できてきた。

6. 性犯罪被害にあうということ

207 最後に伝えたいこと 二〇〇八年一月、私は転職し、法律相談にかかわることを辞めた。 理由を一口で説明するのは難しいが、ひとつには「区切りーがついたからだ。 多くの被害者に会い、いまの日本の法制度のなかで、彼らがどう遇されるかが見 えてきた。 という気持ちが膨らんできた。 時間的な余裕を持ち、私なりの活動がしたい、 性犯罪は、立件率がとても低い。それが法律相談の仕事や、性犯罪被害者のネ ットワークから得た私の印象だ。 加害者が特定されても証拠不十分で「不起訴ーのときもあれば、「事件性ナシ」 で捜査さえされないこともある

7. 性犯罪被害にあうということ

そんな自分と、うまくつき合っていくしかなかった。 私にできることを考えては行動し、同じ被害者の相談を受けているうちに、活 動の場が広がってきた。 気がつけば七年。 あるシンポジウムで、発言する機会を与えられた。 実名を出し、ニッコリと挨拶をして、犯罪被害者とは : 自然なことだと思っていたのに、なせかその反応は大きかった。 門い合わせをたくさんもらった。 新聞や雑誌、テレビ 「そんなに目新しいものなの ? 』 雑誌で大きく取り上げられると、性犯罪被害者からは「ありがとう」、友人から は「無理しないで」、兄弟からは「強いな」などと言われた。 両親からは : あいさっ ・ : と自分の経験を話し

8. 性犯罪被害にあうということ

そして日に日に、 『足りなかったものを補いたい』 『何かしたい』 という気持ちが大きくなっていった。 一人でも多くの被害者の声を聞きたいと思い、週に二回、仕事後に心理カウン セラ 1 育成の専門学校に通い始めた。 しかしここでも私は納得できないまま、むしろ反感を抱きつつ授業を受けるこ ととなる。 最初の授業。 「どんな人を相手にしたいか、どんな仕事をしたいか、どんなことに役立てたい か明確なものがある人いますか ? 」 という質問に、誰も手を挙げないので、私は、 「犯罪被害者、特に性犯罪の被害者の危機介入やカウンセリングをしたい。私自

9. 性犯罪被害にあうということ

155 放熱 「自分の母親のあんな姿は見たくない」 とコメントしていた。でも : 『パネルは必要 ? バッジは必要 ? 赤ちゃんの頃の写真が必要 ? 』 『このお母さんは、まだ講演をできるほどの心情ではないのでは ? 』 『それとも、″その判断がっかないほど、被害者の遺族は辛い思いをしていること〃 を訴えたかったのか』 その姿を見て、私はいろいろなことを考えた。 遺族はあくまでも遺族。辛い気持ちは察するが、当事者ではない。私は「犯罪 被害者」としてこの人とひとくくりにされることに、微妙な違和感を抱いてしま った。 私たち性犯罪の被害者はどうしたらいい ? レイプされる前の裸体をパネルにして、訴える ? 「こんなにきれいな身体でした」 「暴行を受ける前の顔です、

10. 性犯罪被害にあうということ

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