7 ・電流と磁場 ( 7.24 ) = な x お と表わされることがわかる . つまり , 電流 1 が流れている導線を磁束密度がお の磁場内におくと , 単位長さについて I x おという力が働く . このとお と I の関係はフレミングの左手の法則で表わすと便利である . 導線が 曲がっていたり , 磁場が一様でないときには , 導線を細かく分けて考え , 各徴 小部分ごとに⑦ 22 ) 式のような力が働くと思えばよい・ いま , 長方形で一巻きのコイル ABCD が一様な磁場 ( 磁束密度お ) のなか 246 C ・ D A B 7 ー 18 図コイルは磁場から偶力を受ける . に 7 ー 18 図のように置かれているとする . 0 はコイルの面の法線とおとのあ いだの角であり , AB と CD ( 長さのはおに垂直である . このコイルに強 さの電流が流れているとすると , DA と BC には等しい大きさで反対向き の力が働くが , これらは互いに打ち消し合ってしまう . AB と CD に働くカ は図の太い矢印のようになり , その大きさはともに矼召であるから , 偶力を つくる . そのモーメントの大きさは Ⅳ = 矼召 x 4 sin = 矼召 sin に等しい . 訪はコイルの面積であるからこれを S と記すと , N = SIB sin とかかれる . 上では長方形のコイルを考えたが , 面積が S の コイルならばどんな形 ( たとえば円形 ) でも , Ⅳ = SIB sin となることが証明される . そこで大きさ がおで , コイルの面に垂直で , 電流 1 の向きに右 ねじを回したときにそれが進む向きと一致するよう 1 7 ー 19 図コイルの磁気 モーメント
目 次 7 ・ 電流と磁場 7. 1 7. 2 7.3 7.4 7. 5 8. 1 8.2 8. 3 8. 4 8. 5 オームの法則 ジュール熱と起電力 キルヒホフの法則 磁石と磁場・ 磁性体・ 230 233 236 238 241 7. 7. 7.8 問 6 7 題・ 電流が磁場から受けるカ・ 電流のつくる磁場・ アンペールの法則 9. 9. 9. 9. 9. 9. 9. 9. 9. 9. 9. 9. 9. 9. 9. 9. 8. 9. 電磁誘導・ 相互誘導と自己誘導・ 交流・ 電気振動・ 変位電流・ ローレンツ変換 ローレンツ変換の諸性質 質量とエネルギー 加速系と等価原理・ 熱放射と量子仮説・ 光電効果とコンプトン効果 結晶と X 線・ 陰極線と電子・ 原子模型とポーアの量子論・ 10 電子の波動性・ 電磁誘導と電磁波 256 259 260 265 268 マクスウェルの方程式 電磁波・ 電磁波としての光の反射と 屈折・ 問題・ 8.8 8.7 8.6 現代物理学 1 2 4 5 6 7 8 9 9.3 283 288 290 293 295 299 301 303 304 308 問 11 シュレーディンガー方程式 12 エネルギー固有値の例 13 波動関数の意味と 不確定性原理・ 14 原子構造と周期律・ 高エネルギー物理学 17 素粒子と 16 原子核・ 15 物質と電子・ 題・ 244 247 249 253 279 275 273 270 326 323 319 316 314 312 309 330
ミ 7.8 アンペールの法則 なっている . ( 7.13 ) から求めた N/Wb を A/m に等しいとおけば , Wb= J/A が得られる . 7.8 アンべールの法則 メントをもった磁石と同じ偶力を磁場から受けることを 247 べージで知った 面積 S の平面閉曲線に沿って流れる電流 1 は , 大きさがおの磁気モー が , 実はつくる磁場も同じである . いま , 面積おの小さい閉曲線に沿って 流れる電流を 1 とすると , その磁気モーメ ントの大きさは″ 0 〃 S である . そこで , この閉曲線を周縁とした厚さん ( 小さくと る ) の板を考え , それの片側に正の磁荷 (N 極 ) , 反対側に等量の負の磁荷 (S 極 ) を一様に分布させた板磁石をつくったとす る . 磁荷の面密度を = ″。 1 / んにとれ ば , その磁気モーメントは〃 S となっ て , 電流のそれと一致する . この板磁石が っくる磁場の , 図の P 点における磁位は , ( 7. 17 ) 式 ( 240 ページ ) により IJS cos 0 4 2 0 のつくる磁場と同じになる . は , それを縁とする板磁石 7 ー 22 図小さい閉電流のつくる磁場 で与えられる . 2 は面の法線と r のあい だの角である . ところで , お cos の r2 というのは , 考えている点 P から電流 を見こむ立体角」 0 になっている . 立体角には符号を考え , 電流が反時計向き に見えるとき ( 7 ー 22 図ならェ > 0 の領域 ) には正 , 時計向きに見えるとき には負と約東する . そうすると , ( P ) = ( 〃 4 応 ) 」 0 と表わされることがわ かる . 電流 1 が小さくない閉曲線 平面上になくてもよい に沿って流れて
270 かえた形にかいてある . 8 ・電磁誘導と電磁波 [ 問 ] 正の点電荷が空間を動いているときに , そのまわりの空間に生じている変位電 流は大体どのようになるか . 「流線」を描いてみよ . 8.6 マクスウェルの方程式 いままでに調べた基本法則を整理してみると , まず電荷として真電荷だけを 考えると , ガウスの法則 ( 6.28 ) 長 以お = (S のなかにある真電荷 ) ( 8.17 ) は , 真電荷が電束密度のの湧き出し口になっていることを表わす . 電場をつくるのは電荷だけではない . 変化する磁場は電磁誘導によって渦状 ( 湧き出しロなし ) の電場をつくる . ( 8.1 ) 式の左辺は , コイルがっくる閉曲 線 C に沿って E ・を合計したものと考えられ , 右辺は C を周縁とする曲面 S を通る磁束に関するものであるから , 結局 ( 8.1 ) 式は ( 8.18 ) ない ( 7 ー 14 図参照 ). したがって , かってな閉曲面 S について常に 磁束線は必ず循環しており , ガウスの法則における電荷のような湧き出しロは 視的な磁束密度をならしたもの一一一は , その原因がすべて電流であるから , N 極から湧き出し , S 極に吸いこまれる . これに対しておーーー物質内では徴 つぎに磁場を考える . 磁場の強さ丑は , 7 ー 13 図からわかるように , 磁石の あり , C はコイルとは関係なしに , 勝手に考えてよい . あってもなくても , 磁場の変化によって電場ができていると考えるべき現象で という一般的な形に表わせることがわかるであろう . 電磁誘導はそこに導線が ( 8.19 ) が成り立つ . 磁荷は磁束線の湧き出しロでも吸い込みロでもないのである . 最後に前節で一般化したアンペールの法則を記すと , = 十 ( 8.2 の
304 9 ・現代物理学 陰極線が電場や磁場のなかを通ると , その進路は曲がり , その曲がり方か ら , これは負電荷をもった粒子の流れであることがわかった . この粒子が電 子である . 電子の静止質量を襯 , 電荷を一とすると , 一様な電場 E のな かでは電子は E と反対向きに大きさの一定の力を受けて放物線をえがく . また磁束密度がおの一様な磁場のなかでは , おおよび速度じの両方に垂直 な方向に , 大きさが e 。召の力を受けて円 ( またはらせん ) をえがく . J. J. ト ムソンは , 陰極線の電場・磁場による曲がりを研究して , 電子の比電荷を求 めた . 現在知られているその精密な値は ー 1. 7588196 x 1011C/kg である . 電子の電荷は , ミリカンが有名な油滴実験によって求めた . その値は , その 後の実験で精密化され , 現在では ど ー 1. 60217733 x 10 ー 19 C とされている . これと ( 9.22 ) 式とから , 襯 = 9. 1093897 x 10 ー 31 kg が得られる . ( 9.22 ) ( 9.23 ) ⑨ 24 ) 電子はまた , 高温に熱した金属の表面から飛び出したり ( 熱電子放射 . 真 空管に利用 ) , 光電効果によって飛び出すことから , 物質を構成する粒子の一 種であることがわかったが , その質量 ( 9.24 ) は , 原子のなかでも最も軽い水 素原子の質量の約 1 / 1837 にしかすぎない . [ 問 ] 方向の速度をもっ電子が , 方向の電場 E と方向の磁場おの共存する ところに入射して , 方向を変えずに直進したとすると , 速さはいくらか . 9.9 原子模型とポーアの量子論 物質は電気的に中性であるから , 電子以外に正電荷をもった構成要素がある にちがいない . そして , 原子は , 電子とそのような正電荷をもったものからで きているはずである . 水素原子ですら電子の約 1800 倍も重いのであるから , 原子の質量の大部分はその正電荷部分がになっているのであろう . 問題はその
258 8. 電磁誘導と電磁波 = 召ん はちょうど上に求めた誘導起電力の大きさ に等しい . 8 ー 1 図で , 回路を上向きに貫 く磁束が増すとき , 生じる起電力は A → D → C → B という向きであるが , これは 上向きを正の向きとしてそれと右ねじの関 8 ー 2 図 係にある回転を正の回る向きとしたとき , の = BS = BSo cos 0 S を通る磁束と So を通る磁束 反対向きになっている . このような向きま は等しい . で表わすため , この場合 ( イの / > のの起電力の向きは負であると考える . 逆に砌 / < 0 のとき一 - ーー AB を左向きに動かして面積を減らすとき には起電力は正の向き (A → B → C → D → A) である . これは負号をつけて = BI ( 8. 1 ) のように表わすことができる . 上の式は , 8 ー 1 図のような場合だけでなく , もっと一般に閉回路を貫く磁束 が何らかの方法で たとえば , コイルを磁場内で回転するのでもよい 変化する場合には , いつでも成り立っことがわかっている . 8 ー 1 図の場合は針 金が動いて磁束線を切るのであるが , 導線が静止していて磁石を近づけるよう なときには磁束線のほうが動くことになる . 相対的には同じことである . 閉回 路を貫く磁束が増すのは , 外から磁束線が集まってくるのだと考えればよく , 集まってくる磁束線は導線のところを通過するときに「切られる」形になるわ けである . 電磁誘導で流れる電流の向きは , その電流のつくる磁場が , 誘導の原因となった磁場 の変化にさからうように生じる . これをレンツの法則という . 上で考えた場合には , 生じた電流のつくる磁場は , ABCD の内部では下向きになり , 上向きののの増加を妨 げるようになっている . [ 問 ] 8 ー 1 図で AB の長さが 20cm , 磁束密度が IT (=10000gauss) であるとす ると , IV の起電力を得るにははいくらでなければならないか .
8.1 電磁誘導 場合として , 8 ー 1 図のように , 一様な磁場 のなかでこれに垂直に長方形の回路を置 き , その一辺 AB を速さ。で動かすとき を考えよう . 導線 AB 内には正の電荷を もった粒子と負の電荷をもった粒子がたく さん存在するが , AB が動けばそれらも磁 8 ー 1 図導線 AB を動かすと内部 場内で運動することになるから , 磁場から に電場ができる . ローレンツカを受けるはずである . このカ は , 正電荷に対しては B → A, 負電荷に対しては A → B の向きに働く . ど ちらも B → A の向きの電場刃によって表わされる . その強さは⑦ 22 ) 式 により , vB に等しい . この電場のために自由電子が A 仮に針金 AB だけが動いているとすると , これによって A → B の向きの → B の向きに動いて B の側にたまるので , 電場 E ′を生じ , これが上記の仮想的な「電場」刃とちょうど打ち消し合うよ うになったところで電子の移動は止む . 電子が B の側にたまれば B は A よ りも低電位になる . すぐわかるように A と B の電位差は VA ー = 召 I である . この電位差はローレンツカが作り出したものである . つまり , ローレ ンツカは起電力が窺の電池を A が陽極 , B が陰極側になるように入れた のと同じである . 電流を A → D → C → B → A の向きに流そうとする作用が 同じ大きさになるからである . したがって , 針金 AB の運動によって生じた 誘導起電力は vBl である , ということができる . いま , DA = CB = 工とおくと , 。 = / である . 長方形 ABCD の面積 は S= 肚であるが , 磁場のなかでそれに垂直な面積にそこの磁束密度おの 大きさを掛けたものを , その面を通る磁束とよぶ・磁場に垂直でない面の場 合には , 面の法線とおのあいだの角を 0 として田一と面積と cos0 との積を 磁束とよぶ . そうすると , 長方形 ABCD を通る磁束はの = 工というこ とになるから , 257
250 7 ・ 電流と磁場 P 7 ー 23 図左の大きな閉電流は右の小さな閉電流 の和と等価である . いるときには , その閉曲線を縁 とした適当な曲面を考えてそれ を細かく分け , その細片の縁に 沿って電流 1 を流したと考えれ ば , これら多数の微小閉電流を 合わせたものがもとの大きな閉 曲線に沿った電流と等価になる ことは明らかである . 細片の境 界では反対向きの電流が相殺するからである . そうすると , この電流のつくる 磁場は , この閉曲線を縁とした , 厚さがんで磁荷の面密度が士″ 01 / んに等し い板磁石がその外部につくる磁場と同じであり , 点 P における磁位は , P か らその閉曲線を見こむ立体角を 0 として 10 で与えられることがわかる . ところで , 磁位の定義により であるから , 4 ( 211 ページ ( 6.1 のに対応 ) ・イ r ( 7.29 ) ( 7.3 の 4 応 となる . もし積分が閉曲線についての 1 周ならば B と A が一致するから広 = OB となり , ( 7.3 のは 0 を与えそうである . 実際 , 閉曲線が電流を囲むよ うなことがなければ , その上の各点から電流を見こ む 0 は連続的に変化して , 一周でもとにもどるから 王 となる . ・ = 0 ( 電流を囲まないとき ) 7 ー 24 図 これに対し , 積分経路が電流を囲むときには事情はちがってくる . このとき
240 7. 電流と磁場 Ⅳ = x と表わされることがわかる . 電気の場合の電位に対応するものとして磁位という量を考えることができ る . 磁位を埃のとすると DVm öVm ( 7.16 ) öæ ' によって磁場が求められる . 磁気量 4 の孤立小磁極から距離 r の点の磁 位は / 4 応″ or ということになる . しかし , 実際にはモノボールは見つかっていないから , 正負の磁極と ーが接近して存在する磁気双極子 ( 小さな磁石 ) を , 電気の点電荷に対 応する磁気の「もと」と考えるほうがよいであろう . そうすると , 原点 ( 0 , 0 , のにある小磁極ーと , それに近い (), 0 , のにある小磁極 4 。から なる磁気双極子がェ 4 面内の位置 r につくる磁場の磁位は , 十 4 応 ( ェーの 2 十の ェ 2 十 となるが , ( > 0 とする ) が小さいとして , いつも使ってきた関係式 工 ( ェ + 」ェ ) ーエ ( ェ ) ア ( ェ ) 」ェを使うと 9 / 4 ″ 0 ( ェ , の ェ 2 十 3@ゆ) 4 応″ or ただし r = ェ 2 十の が得られる . 9 はこの磁気双極子の気 モーメントの大きさであるからこれをカ とし , 7 ー 10 図のようにを定めると カ cos ( 7. 17 ) 4 応″ or と表わされる . 磁気モーメントがの小 さい磁気双極子から r の点の磁位は , 座 7 ー 10 図原点にある磁気双極子のつくる磁 標軸のとり方と関係なく , この ( 7.17 ) 式 場 ( 白い線は丑を表わす磁カ線 ) ( 7.15 ) 1 P ( ェ 0 ) S N
259 8.2 相互誘導と自己誘導 2 つのコイル ( どちらもさしあたりは 1 巻きとする ) 1 , 2 があって , 1 を流 れる電流ムのつくる磁場によって 2 を貫く磁東 をの 2 とすると , の 2 は明らかにムに比例する . の 2 =MII そこで , ムを時間的に変化させるとの 2 も変化 するから , 電磁誘導によってコイル 2 に誘導起電 力を生じることになる . d の 2 dll ( 8.2 ) この現象を相互誘導とよび , 比例定数 M を相 互インダクタンスとよぶ . 1 を川巻きの コイルにすれば , 同じ電流を流しても生じる磁場はⅣ 1 倍になる . また , 2 を Ⅳ 2 巻きのコイルにすると , 1 巻きごとに上のときと同じ誘導起電力を生じ , コイル全体ではⅣ 2 倍の起電力になる . ( 8.2 ) 式はこのときも成り立つが , M はⅣ 2 倍になる . ーっの回路でも , その途中が 8 ー 4 図のような コイルになっていて , 流れる電流が変化する場合 には , その電流のつくる磁場が変化し , それが電 磁誘導で起電力を生じ , 電流自身を規制すること になる . これを自己誘導という . 電流を 1 と すると , 磁束は一に比例するから , 誘導起電力は ー砒 / 市に比例する . したがって , このような 1 ー 3 図電流ムのつくる磁 8 東の変化がコイル 2 に誘導起電力を生じ る . ん 8 ー 4 図自己誘導 回路では , コイルのところに dl という時間的に変化する起電力をもった電池を挿入したのと同じである . 負号 は , 誘導起電力が , 電流の変化を妨げる向きに生じることを表わしている . 比 例定数を , そのコイルの自己インダクタンス , または単にインダク