めも お このゼロの目盛りにあわせてボタンを押せばいゝ しのです」 き せつめい 団長はとくいそうに説明した。聞いているうちに男は身を乗り出し、男 めかがや の目は輝いてきた。 「それさえあれば、だれでもすぐサ 1 カスが持てるというわけだ。ぜひ そうち その装置をわたしにゆずって下さい」 くしん 「だめです。わたしが苦心して作ったものだ。これだけは、 ) しくらお金を たにん わた もらっても、他人には渡せません」 だんちょう 団長はことわったが、男はあきらめなかった。 わた 「欲しくて欲しくて、たまらなくなった。どうしても渡さないのなら : : : 」 だ 男はポケットからナイフを出し、振りまわそうとした。しかし、団長が そうち お だんちょうそうち 装置のボタンを押すほうが早かった。それから、団長は装置をしまいなが らつぶやいた。 らんぼうひと ばっ 「やれやれ、乱暴な人もいるものだ。罰としては、しばらくそのままでい だんちょう おとこ おとこ はや つく ・も おとこみ の だんちょう かね おとこ 148
とお のはらみちある エヌ氏は友人といっしょに、町から遠くはなれた野原の道を歩いていた。 ふたりきゅうじつりよう たの け・んこ、つ 二人は休日を利用し、キャンプを楽しもうとして出かけてきたのだ。健康 こころ にもいいし、心もすがすがしくなる。 きぶん と力い わす 「いい気分だな。都会のあわただしさを忘れてしまう。このへんで、ちょ っと休も一つ」 告 しあし みち いしかき とエヌ氏は足をとめ、道ばたに腰をおろした。近くにはくずれた石垣な ゅうじんあんないしょちずだ どがあった。友人は案内書の地図を出し、それを見ながら言った。 ゅめ 夢のお告げ やす しゅうじん まち こし ちか
ほんと、つ するウサギなど、はじめて見ました。本当にすばらしい」 き だんちょうわる はやかえ こう一言われると、団長も悪い気はしない。疲れているから早く帰って下 さいとも一一一口えない 「そうですか。みなさんに面白がっていただければ、こんなうれしいこと はありません」 よろこ 「だれでも喜びますよ。強そうなトラも、ネコのようにおとなしかった。 し くんれん どんな方法を使うのか知りませんが、これほどまでに訓練なさったあなた よ は、偉大な天才と呼ぶべきでしよう」 き あまりほめられたため、団長はいい気になって、その方法をしゃべって しまった。 そうち どうぶつくんれん 「動物を訓練するのは、たいしたことではありません。しかし、この装置 なんど くしん を作りあげるのには、ずいぶん苦心しましたよ。長い年月をかけ、何度も 失敗をくりかえしました」 つく しつばい し十 ~ し ほ、つほ、つつか てんさい つよ だんちょう おもしろ み つか としつき ほ、つほ、つ くだ 145 サーカスの秘密
し ちしき まな ものった くなり、勉強することを知り、学んだ知識をべつな者に伝えるようになっ み た。このようすを見て、博士は言った。 ぶんめい じぶん 「さて、文明も順調に発展しはじめたようだ。これからは、自分たちでカ しゆっぱっ をあわせてやるだろう。そろそろここを出発し、べつな星をめざすとしょ 一つ力」 「はい。そういたしましよう」 こた じゅんび ロポットは答え、その準備にとりかかった。 じゅうみん きった あっ しゆっぱっひ その出発の日。聞き伝えて集まった住民たちは、ロぐちにお礼の言葉を のべた。 いぜん 「おかげさまで、わたしたちは以前にくらべ、見ちがえるように向上しま 」・も かんしゃ わす ッ おんわす した。、 こ恩は忘れません。この感謝の気持ちをいつまでも忘れないように ロ レ」 くだ かえ きねんぞうつく と、記念の像を作りました。お帰りになる前に、せひごらんになって下さ博 し」 べんきよう じゅんちょう はってん はかせ まえ み くち ツ」、つじよう ちから
0 が、これでは困る。も 力いりよう っと改良しなさい」 「そういたします」 せいねん 青年はひきさがった。 なんにち せいねん 何日かたって、青年 ・も はまた持ってきた。 「こんどは大丈夫です。 はんのう ちい ひ 小さな火には反応しな 力いりよう しょ一つに、改良しまし たから」 「では、みせてもらおう」 まどあ せいねん 青年はヘやの窓を開 だいじようぶ こま い 9 火の用心
さ′、しゃ 作者星新 う ねんとうきよう とうきようだい 一九二六年、東京に生まれる。東京大 がくのうがくふそっぎよう ねんにほんさいしょエス 学農学部卒業。五七年に日本最初の エフどうじんし うちゅうじん さんかく 同人誌「宇宙塵」に参画。ショート よ たんべんしんぶんやかく ショートと呼ばれる短編の新分野を確 せんいじようさくひんはっぴょう 立し、千以上の作品を発表する。六八 もうそうぎんこう かいにほんすいり 年に、『妄想銀行』で第幻回日本推理 さつかきようかいしようじゅしよう ねんぼつおもちょ 作家協会賞を受賞。九七年没。主な著 うちゅうこえ 書に、『ポッコちゃん』『宇宙の声』『よ ちきゅう うこそ地球さん』『。フランコのむこう で』などがある。 りつ ねん ほししんいち わだまこと 画家和田誠 ねんおおさかう たまび 一九三六年、大阪に生まれる。多摩美 しゆっだいがくそっぎよう 術大学卒業。グラフィック・デザイ そうてい ナー、イラストレーターとして、装丁、 さしえ えほん ほししんいちし 挿絵、絵本などを手がける。星新一氏 さくひんさしえかずおお えほん の作品の挿絵も数多い。絵本は『花と ほししんいちさく ひみつ』 ( 星新一作 ) 、『けんはヘっ たにかわしゅんたろうさく ちゃら』『あな』 ( 谷川俊太郎作 ) など じさく のほか、自作の『ことばのこばこ』 『かいぞくのうた』『ねこのシジミ』な たすう ど多数。 て はな
とちゅう たい 、っちゅうせん ほしばしたび フロル星人たちの乗った一台の宇宙船は、星々の旅をつづける途中、ち あ よ じんるい ち - きゅう た よっと地球へも立ち寄った。しかし、人類と会うことはできなかった。な しゆっげん むかし じんるい ぜなら、人類が出現するよりずっと昔のことだったのだ。 ちょうさ とお 、っちゅうせんちゃくりく せいじん フロル星人たちは宇宙船を着陸させ、ひと通りの調査をしてから、こん み な意味のことを話しあった。 「どうやら、わたしたちのやってくるのが、早すぎたようですね。この星 もっとちのう せいぶつ ぶんめい には、まだ、文明らしきものはない。最も知能のある生物といったら、サ おみやげ せいじん の はや 79 おみやげ
二人は目を輝かせ、折ってきた木の枝で掘りはじめた。はたして手ごた っち おなてつはこ ゅめみ えがあり、夢で見たのと同じ鉄の箱があらわれた。しかし、土のなかに長 いあいだあったため、さびてばろばろになっていた。 かね 箱は、たやすくあけることができた。だが、そこにはいっていたのは金 ゅうじん ではなく、なにかをしるした紙だった。友人はため息をついた。 しよるい 「なんだ、つまらない。ただの書類じゃないか」 しな きちょう はや 「まだ、がっかりするのは早い。武士があんなに貴重そうにかくした品だ。 しら ばしょ ずめん ぐんようきん 軍用金のかくし場所を書いた図面だろう。よく調べてみよう」 かおみ ふたり 二人は紙をひろげ、書かれていることを読んだ。そして、顔を見あわせ ほんと、つ てにが笑いし、こんどは本当にがっかりした。 かやく しるされてあったのは、火薬の作り方だったのだ。たしかに、むかしは ひみつ 重大な秘密だったにちがいないが、いまではとくにさわぐほどのものでは よゝ。 オし じゅうだい ふたりめかがや わら かみ かみ きえだ かた
ばしょ 「このあたりには、むかし城があり、はげしい戦いがおこなわれた場所だ そうだよ」 かん すこ 「しかし、落ち着いたながめで、そんな感じは少しもしないな。どうだろ こんや う、今夜はここでキャンプをしよう」 わる 「ああ、悪くないな」 おがわ みず いけん 意見はまとまり、そこにテントをはった。近くの小川から水をくんでき よるおとず しず て、夕食を作った。やがて静かな夜が訪れてきて、二人は眠りについた。 とき ゅめ ゅめみ ねむ 眠っている時、エヌ氏は夢を見た。しかも、はっきりした夢だった。 りつば それにはヨロイを着て、立派なカプトをかぶった武士があらわれた。ど はこお・も きず こか傷をうけているようだし、手には鉄でできた箱を重そうにかかえてい ノ、る ある あし る。そのため、苦しそうに息をきらし、足をひきすりながら歩いてきた。 武士はあたりを見まわしていたが、そばにだれもいないことをたしかめ じめんあな ると、地面に穴を掘り、箱をなかに人れた。それから、上に土をかぶせて ゅ、つしよく つく しろ てつ ちか たたか ふたりねむ うえっち
、夜には月や星の光を受けて静かに輝いていた。あけられる時を待ちな がら。 しんか ながとしつき ちきゅうどうぶつ すこ 長い長い年月がたっていった。地球の動物たちも少しずつ進化し、サル じんるい どうぐひっかしゅぞく のなかまのなかから道具や火を使う種族、つまり人類があらわれてきた。 きみ なかには、これを見つけた者があったかもしれない。たが、気味わるが ちか しようたい って近よろうとはしなかったろうし、近づいたところで、正体を知ること はできなかったにちがいない。 さは ~ 、ちほ、つ 銀色のタマゴはずっと待ちつづけていた。砂漠地方なので、めったに雨 は降らなかった。もっとも、雨でぬれてもさびることのない金属でできて とき つよかぜふ かぜすな 時どき強い風が吹いた。風は砂を飛ばし、タマゴを埋めたりもした。し ちじよう かぜ べつな風によって、地上にあらわれる かし、埋めつばなしでもなかった。、 こともある。これが何度となく、くりかえされていたのだった。 ぎんいろ よる ちか つきほしひかり なんど もの あめ しず かがや きんぞく とき あめ