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1. 月刊 C MAGAZINE 1991年6月号

⑥特許法と類似の裁定制度の設置 これに前後して , ゲーム用プログラムの ⑦あっせん , 調停 , 仲裁などの裁判外て、 侵害事件が多発した。その中て、 , 昭和 57 年 の紛争解決手段を設ける ( 1982 年 ) 12 月 6 日 , 日本て、初めてプログラム に著作物性を認める東京地裁判決が下され , を骨子とする「プログラム権法」が提唱され 以後同様の判決が相次いだ。 これらの判決を契機に , ソフトウェアの 前述のように , ソフトウェアは著作権法 法的保護の議論が活発になり , 著作権法の [ 文化庁の主張 ] によって保護されることとなり , これは世 改正て、対処するか新規立法とするかについ 昭和 59 年 ( 1984 年 ) 1 月 , 文化庁著作権審議 界的な潮流となっている ( Table 2 参照 ) 。し て , 文化庁と通産省の間て、議論が対立した。 会第 6 小委員会の報告書て、 , 著作権法による かし , 文学 , 音楽などの文化的創作物の保 それぞれの主張の骨子は以下のとおりて、あ 保護の問題点への対応策として , 護が大きな目的て、あった著作権法の考え方 ① プログラム保護の明確化のために , 著 て、 , 技術製品としての優劣が競われるソフ 作権法に例示規定 ( 著作権法 10 条 ) とし トウェアを同様に扱っても問題はないのか [ 通産省の主張 ] てプログラムを明示し , プログラムの という不安が残る。この点は , ソフトウェ 昭和 58 年 ( 1983 年 ) 12 月 , 産業構造審議会 定義規定を設けるべき ア関連ビジネスに携わる人々がいちばん感 情報産業部会の中間答申て、 , プログラムの ② 法人著作の規定 ( 15 条 ) を実態に即する じていることて、はないだろうか。以下 , 現 保護は , 経済財としての特質から工業所有 よう整備すべき 在の著作権法の簡単な説明とソフトウェア 権的な観点に立つべきて、あるとし , ③ バーションアップなどについて , 同一 を著作権法て、保護した場合のおもな問題点 ① ソフトウェアの特質 , 取引の実態に即 性保持権 ( 20 条 ) を制限すべき を紹介する。 した制度 ④ プログラムの実行に関する権利につい ② 権利の保護と利用の促進を 2 大目的とし 著作権法の概要 ては , 新たな権利は認めないが , 情を た制度 知って違法に複製されたプログラムを 著作権法て、保護されるものは著作物て、あ ③ ソフトウェアの機能向上を促進する制 実行すれば侵害とみなす旨の規定を設 る。著作物とは「思想または感情を創作的に 度 ける 表現したものて、あって , 文芸 , 学術 , 美術 , ④ ューザの利益を考慮した制度 ⑤ プログラムの複製物の正当な所持者に 又は音楽の範囲に属するもの」 ( 2 条 1 項 1 号 ) ⑤ 技術進歩に対応し得る制度 よる , 実行・保存のための複製・翻案 て、ある。つまり , 保護の対象は表現そのも ⑥ ソフトウェア保護の国際性を考慮した を認める のて、あって , その背後にあるアイデアて、は 制度 ⑥ プログラムにおける翻案の解釈につい ないというのが著作権法の大前提て、ある。 の基本的視点に立ち , ての明確化 そして , この「著作物を創作する者」が著作 ① 保護の対象は , ソースプログラムとオ この 2 案について , 両省庁間て、協議の結 者て、ある ( 2 条 1 項 2 号 ) 。著作者は著作権とし プジェクトプログラム 果 , わが国においてもソフトウェアの保護 て次の各権利を排他的・独占的に支配する ② プログラムは使用されて初めて価値を は著作権法の改正によることて、決着がっき , ことがて、きる。 発揮するものて、あり , 実務上て、も使用 昭和 60 年 ( 1985 年 ) 6 月に国会を通過 , 翌年 1 著作権は , 著作者がその著作物に関して 権が定着しているため , 著作権法にな 月 1 日より施行されることとなった。この背 有する経済的利益を確保する権利の総称て、 , い使用権と , バージョンアップなどに 景には , すて、に諸外国て、も著作権法による 他人に譲り渡すことがて、きる。一方 , 著作 対応するための改変権 , 無断貸与を禁 保護の検討がなされていた ( 米国て、は 1980 年 止するための貸与権 , 無断コヒ。ーを禁 者人格権とは , その著作者の人格的利益を に著作権法を改正し , プログラムの保護を 保持する権利の総称て、 , 他人に譲り渡すこ 止する複製権の創設が必要 明確にしている ) ことや , 著作権法による判 とはて、きない。一般に「著作権」という場合 ③ 作成者の一身専属的な権利となる人格 例があったことがあげられる。 は , 財産権としての著作権と著作者人格権 権は設けない しかし , 著作権法改正による保護が選択 の両者をあわせて呼んて、いる ( Fig. 1 ) 。 ④ 権利発生の時期を明確にするために , されたより直接的な背景には , 当時 , 日米 著作権の発生にはなんらの要件も必要と 権利発生要件の登録制度とし , 公示機 貿易摩擦問題の深刻化に伴い , ソフトウェ せず ( 無方式主義 ) , 著作物の創作時に発生 ア保護問題がこれに巻き込まれた形となり , 能を設ける する。したがって , プログラムをいつ , 誰 ⑤ 15 年を保護期間とする 結局は政治的判断が大きく作用したこ 36 C MAGAZINE 1991 6 あるといわれている。 著作権法による保護

2. 月刊 C MAGAZINE 1991年6月号

知的財産権 概論 著作権法に見る知的財産権 特集プログラマのための 拡大するソフトウェア保護の実態と問題点 財ソフトウェア情報センター , ソフトウェアはいったいどのように法的に保護一、産物であるソプトウェアは絵画や小説と異なる されるべきなのだろうかよ上こまでプログラマ、のばいうまでもなくまた般的な工業製品 とも異なるよの独特な存在形態故ににソフト の創意が認められるのであろうかよ知的財産権 ウェアの法的保護には難問がつきまとうよ現在 は知的・精神的創作物保護を目的とする諸権利 の総称であり引現在ソフトウェアはこの知的財のシフウ土アの法的保護の実態とその問題点 産権によって保護されている。しかし 3 知的生 を考察しあるべき知的財産権の姿を模索する。 P R T A 4 「著作権法によってソフトウェアは保護される」というのか世界的潮流で ある。しかし文学や音楽などの著作物を保護する著作権法によって , ソフトウェアを法的に保護するには無理かありはしないか。著作権法か ら見たソフトウェアの知的財産権保護の実態を紹介する。 ついて成立する諸権利の総称て、ある。知的 法 , 商標法 , 著作権法 , 不正競争防止法 , 財産権は大別すると , 産業上の諸権利の保 トレードシークレット法 , 半導体集積回路 知的財産権の概要 護を目的とした工業所有権と , 文化的創作 保護法 , 種苗法などがある (TabIe 1 参照 ) 。 物の権利の保護をおもな目的とした著作権 トレードシークレット法は英米法系の国 知的財産権とは , 産業上経済的価値のあ とにわかれ , それぞれ個別の法律に基づい て、採用しており , 米国て、は州法に定めてい る発明・考案のような技術思想 , 商品や包 て保護を受け , 各対象となっている知的財 る。トレードシークレットとは , 技術ノウ 装紙のデザインのような意匠 , 商品名 , / 産を排他的に支配・利用て、きる権利が保障 ハウや顧客名簿などを含む経済的価値をも ウハウを含む企業秘密などから , 文化的価 っ秘密情報て、ある。わが国てはこの法律に される。 値のある文芸 , 芸術分野などの創作物にお 代わるものとして , 平成 2 年 ( 1990 年 ) 6 月 22 それぞれの具体的な保護の根拠となるお よぶ人類の知的・精神的創作活動の産物に もな法律には , 特許法 , 実用新案法 , 意匠 日に不正競争防止法が改正され , 生産・販 34 C MAGAZINE 1991 6

3. 月刊 C MAGAZINE 1991年6月号

特集・プログラマのための 知的財産権 著作権法と特許法 が , システムサイエンスの開発した CA- 格て、あるから , 電子計算機を機能させて , わせて、あること より効果的に一つの結果を得ることを企図 7 Ⅱプログラムの翻案か否かて、争われた ) ③サプルーチンのスタックエリアを , 区 すれば , 指令の組み合わせが必然的に類似 切りのよい 4100H にセットすることは常 して , これらを搭載した装置を販売した。 識的て、あること することを免れない部分が少なくないもの これに対しシステムサイエンスは , 相手 を認定して , 「 CA-7 Ⅱプログラムのうち抗 て、ある。したがって , プログラム著作物に 方らの行為は複製権および翻案権の侵害 告人が指摘する部分の指令の組み合わせに ついての著作権侵害の認定は慎重になされ として , これらの禁止の仮処分申請を出 なければならない」と述べた。 創作性を認めることは困難て、あることに加 具体的な創作性および類似性の検討とし え , CA ー 7 Ⅱプログラムが 12K バイトて、ある [ 争点 ] のに対し , CA ー 9 プログラムは 763 バイトて、 著作権の譲渡の有無なども争われたが , て , あり , しかも抗告人が両プログラムの類似 ① CA-9 プログラムあるいは CA-7 Ⅱプロ プログラムの保護範囲からみて , 最大の論 部分としてあげるのは , 極めてわずかなバ グラムが担当すべき作業は , プリンタ 点は , CA ー 9 プログラムが CA ー 711 プログラ イトにすぎないこともあわせ考えれば , CA 部分 ( 計測データなどが共有メモリに書 ムの翻案か否かて、あった。 き込まれるのを待ってこれを読み出し , ー 9 プログラムが CA ー 7 Ⅱプログラムを翻案し [ 裁判所の判断 ] たものて、あるとの疎明の心証を得ることは プリンタ用コードに変換して出力する ) 裁判所は , プログラムの著作権侵害の要 到底て、きない」とした。 のみて、 , 「本体側よりデータ入力後の処 件は , 「プログラム著作物の指令の組み合わ 理ルーチン」の指令の組み合わせは , ハ また , 「プログラムにおける『処理の流れ』 せに創作性を認める部分があり , かっ , 後 ードウェアに規制されるのて、本来的に 自体は , アルゴリズム , すなわち著作権法 に作成されたプログラムの指令の組み合わ 第 10 条第 3 項第 3 号に規定されている『解法』 同様の組み合わせにならざるをえない せがプログラム著作物の創作性を認め得る て、あって著作物としての保護を受けない部 部分に類似していることが必要て、ある」と 分て、ある」として , プログラムの処理の流れ ② プリンタ動作不能時の処理ルーチンは , し , プログラムの類似性を判断する場合の は「解法」にあたり , 保護されないことを明 CA-7 Ⅱプログラムも CA-9 プログラム 注意として「プログラムはこれを表現する記 もともに極めて一般的な指令の組み合 確に述べている。 号が極めて制限され , その体系 ( 文法 ) も厳 P A R 2 ソフトウェアの知的財産権は「表現を保護する著作権法」によって保護 されるべきなのか , あるいは「発明を保護する特許法」によって保護さ れるべきなのであろうか。ニつの保護法制の狭間に存在するソフトウェ アの知的財産権のニ面性について考察する。 保護法制 ( 著作権法 , 特許 法 ) に関する基本認識 ムが著作権法て、保護されることになった経 一方 , 最近て、は , 特許法による保護も急 緯 , 並びにその主要議題 , 動向については 増しつつあるといわれている。著作権法に Part 1 て、述べたとおりて、ある。 よる保護の総本山〃て、ある米国においても , また , これが国際的な潮流て、あることも 特許による保護の増大傾向が法律専門家に よってしばしば指摘されている。この問題 あわせて述べた。 わが国において , コンヒ。ュータブログラ 特集プログラマのための知的財産権概論 41

4. 月刊 C MAGAZINE 1991年6月号

が作ったかを客観的に証明するには困難を 伴うことが多い。その対応としてプログラ ムの登録制度 ( 登録するしないは任意 ) の利 用がある。保護される期間は , 原則として 著作者の生存期間とその死後 50 年て、ある。 これに対して , 特許権などの工業所有権は 特許庁に登録することによって権利が発生 する ( 方式主義 ) 。 なお , 国際間て、著作権を保護するための 条約に , ベルヌ条約と万国著作権条約があ Table 2 世界におけるソフトウェアの法的保護 り , わが国は両条約に加盟している。これ らの各条約加盟国間の著作物は相互に保護 ①保護の対象 主要な問題点 される。 るには , 前述のように著作物 ( 思想または感 ープログラムが著作権法によって保護され 特集・プログラマのための 口ロ ロロ 情を創作的に表現したもの ) て、なければなら ない。すなわち , 著作物性がなければなら これについて , 改正著作権法は , 第 2 条 1 項 10 号の 2 て、「電子計算機を機能させて一の 結果を得ることがて、きるようにこれに対す る指令を組み合わせたものとして表現した もの」と定義した上て、 , 第 10 条 1 項 9 号にプロ グラムを著作物として明示した。そして , 同条第 3 項て、「プログラム言語」「規約」「解法」 国名 ルクセンプル 日本 イタリア イスラエル アイルランド インドネシア インド 八ンガリー 香港 グアテマラ ギリシア 西ドイツ 東ドイツ フランス フィンランド エジプト 工クアドル ドミニカ共和国 テンマーク チェコスロパキア コスタリカ コロンビア 中華人民共和国 チリ カナダ プルガリア プルネイ フ、ラジル ベルギー オーストリア オーストラリア アルゼンチン 著作権 おそらく はい たぶん たぶん はい 不明 はい はい たぶん いいえ はい たぶん いいえ はい はい たぶん たぶん たぶん はい いいえ はい 不明 不明 はい はい はい はい たぶん はい おそらく はい たふん 加盟条約 国名 マカオ マレーシア メキシコ オランダ ーユーシーランド ナイジェリア ノルウェー オマーン パキスタン ノヾナマ ベルー フィリピン ポーランド ポルトガル ルーマニア サウジアラピア シンガポール 南アフリカ共和国 大韓民国 スペイン スウェーテン スイス 台湾 ユーゴスラピア ベネズエラ ウルグアイ アメリカ イギリス アラブ首長国連邦 ソ連 トルコ タイ 著作権 いいえ はい おそらく おそらく おそらく はい おそらく いいえ 不明 不明 たぶん はい たぶん たぶん たぶん いいえ はい おそらく はい はい おそらく いいえ はい いいえ たぶん いいえ いいえ はい はい はい たぶん いいえ 加盟条約 「はい」 : 法律てソフトウェア保護を明示している 「おそらく」 : 主要な判例が著作権による保護を支持している 「たぶん」 : 下級裁判所の意見 , 評論家の見解または当該国の著作権関係官庁へのソフトウェア登録の可能性からみて , 保護を受けられるかもしれない 「いいえ」 : ソフトウェアの保護を実質的に示すものがない 「不明」 : 情報がない 「 B 」 : ベルヌ条約 / 「 IJ 」 : 万国著作権条約 / 「 P 」 : ノヾリ条約 ( 米国フェンウィック & ウェスト法律事務所発行 flnte 「 national Leagal p 「 otection Fo 「 Softwa 「 e 」 1 991 年より ) 特集 プログラマのための知的財産権概論 37

5. 月刊 C MAGAZINE 1991年6月号

に関する会議などても中心的テーマの一つ として取り上げられ , 関係論文も目立って きている。 その実態については詳細な資料を得てい ないのて、全容を紹介することはて、きないが , 部分的な情報によっても , 特許によるプロ グラムの法的保護問題が , 従来のようにレ アケースとして放置しえない段階に到達し ていることは明らかて、ある。 いずれにせよ , 著作権と特許権は互いに 排斥しあうのて、はなく , 異なった形態の知 的財産権に関する LegaI System として , 併 存していくてあろうと思われる。 本バートて、は , 著作権法による保護の世 界 , 特許法による保護の世界を概観する。 著作権法の世界 42 C MAGAZINE 1991 6 にならざるをえない。米国 1980 年改正著作 る保護は実際問題として不安定ということ 律専門家も指摘するように , 著作権法によ とアイデアの境界設定が難しく , 米国の法 プログラムについては , その性質上 , 表現 とくに 考え方や方法があるわけて、はない うことになると , 一般的もしくは標準的な デアとをどのようにして二分するのかとい が , それて、は現実の問題として表現とアイ 原則は原則として , それ自体明確て、ある を確認している。 保護しない旨の確認規定を設けてその立場 ラムについては , 第 10 条 3 項て、 , アイデアは いう」と規定し , さらにコンヒ。ュータブログ 学術 , 美術又は音楽の範囲に属するものを を創作的に表現したものて、あって , 文学 , 保護の対象となる著作物とは「思想又は感情 かにしている。日本の著作権法第 2 条て、も , 米国著作権法て、は , 第 102 条て、これを明ら 国際的にも認められている基本原則て、ある。 護し , アイデアは保護しないというのが , 著作権法て、は , 表現 expression のみを保 なことは何か。 まず , 著作権による保護の世界て、特徴的 権法の基礎となった 1978 年 CONTU (NationaI Commission on New Tech nological Uses 0f Copyrighted Works) 最終報告書には , 次のように記述されてい "AIthough the distinction tries to achieve the separation Of idea from form Of expression , that objective is better realized through the courts exercising their judgement in particu lar cases. つまり , 「コンヒ。ュータブログラムの何が 表現て、 , 何がアイデアなのかの区分は , 争 いが起きたとき , 裁判所が個々のケースて、 判断し , 裁判所の判決を積み重ねながら明 確化していくのがよい」ということて、あっ た。結局 , ケースパイケースて、裁判所が判 断するということて、あって , 通俗的にいえ ば , 裁判をやってみなければわからないと いうことて、あろう。 米国の著作権法学者 PauI GoIdstein 教授 ( スタンフォード大学 ) はその著書 [fC 叩 y right 』の中て、 , コンピュータブログラムの 表現とアイデアの二分について , "Separating protectible expression from unprotectible ideas in computer programs in inevitably calls for deli cate policy judgements" と述べている。表現とアイデアの理論的一 分の難しさを端的にいわれたのて、はないか と思われる。 いずれにせよ , ケースパイケースて、判断 されるのて、あり , 米国の動向を知るために は , 実際の裁判て、裁判所が何をアイデアと みなし , 何を表現とみなしたか , またその 判断理由は何かなどについて , ーっーっの 判例をたんねんにフォローする以外にない 継続的に米国判例を研究することの必要性 はここにあるといえよう ( 米国の最新動向は 後述する ) 。 周知のとおり , 日本と違い , 米国にはプ ログラムの権利保護に関する判例が数多い が , そのなかて、も看過て、きないのは , 1986 年の WheIan 対 JasIow 事件て、ある。 事件の概要を一言て、いえば , EDL 言語て、 書かれたプログラムを BASIC 言語に書き換 えたというものて、ある。単純に考えると , 表現が違っているのだから問題ないと考え られるが , 現実には被告の著作権侵害が認 定されている。裁判所はどのような手法を 用いて表現とアイデアを二分し , 侵害の認 定に至ったのて、あろうか , 興味のあるとこ ろてある。 1930 年 , 米国て、 , Nichols 対 Universal Picture Corp. という , 劇と映画に関する事 件があった。この事件を担当したラー ・ハンド判事が採用したのは , 前項て、述へ た抽象化テストと呼ばれる手法て、あった。 この手法は二つの著作物から付属的な事項 を取り除く抽象化をつづけていく段階て、 , それらがもはや保護されなくなる点を確定 し , 表現とアイデアの間に線を引くという 方法て、ある。 WheIan 対 JasIow 事件において , 裁判所 は , プログラムにこの方法を適用した。そ の結果 , プログラムのような Utilitarian Work の機能の目的はアイデアて、あり , 機能 の目的に必要て、ないものはすべて表現て、あ るとの結論に達し , この考え方に基づいて , コンヒ。ュータブログラムの著作権法による 保護範囲は , コードだけて、なく , その構造 , 手順 , 構成 ( SSO ) にまて、およぶという判断を 示したのて、ある。 これは従来の伝統的な解釈から考えると , 相当な拡大解釈て、はないかと思われる。抽 象化テストは , 著作権法がプログラムとい うものをまったく想定していなかったはる か昔の文芸作品に用いられた手法て、あって , プログラムという技術製品に無批判に適用 されてよいものかどうか , 常識的に割り切 れないものを感じざるをえない さらに米国の司法判断は , 1988 年の pearl Systems ヌ寸 Competition lnc. 事件におい て , システムデザインも著作権保護の対象 て、あると判断している。保護範囲の拡大傾 向が進んだといえよう。

6. 月刊 C MAGAZINE 1991年6月号

特集・プログラマのための 知的財産権 売方法など技術および営業上の情報 ( 財産的 正競争防止法 , 独占禁止法などとの関連を ① 基本的視点として , ソフトウェアの流 情報 ) に対する保護が明確に定められ , 保護 考慮する必要があると考えられる。 通を図るという立場をとり , そのため されるために必要な要件が明示された。平 なお , 知的財産権の新領域に対する保護 の条件を整備することを目的とする。 成 3 年 ( 1991 年 ) 5 月前後に施行されることと の検討や各国間の調整などについては , それには , 概要書のある程度の公開が なっている。 WIPO ( 世界知的所有権機構 ) や貿易面て、の 必要て、ある 知的財産権は , 前述したものばかりて、は 交渉を行う GATT ( 関税貿易一般協定 ) の各 ② ソフトウェアの不正な使用や盜用を禁 なく , 科学技術の発達や情報化社会の進展 国際機関がある。 止すれば足りることとし , プログラム に伴って新しい領域が出現して一 , それらが のアイデアまて、は独占させるべきて、は 著作権法による 現在の私たちの文化 , 経済 , 社会生活上の ない。つまり第三者が同じようなもの 多くの側面に国際的規模て深く関係してき 保護にいたった経緯 を独自に作ることは認められるべきて ている。そして , 新領域に対して法的に明 ある 昭和 47 年 ( 1972 年 ) 5 月 , わが国て、通産省重 ③ 確な区別をすることは困難になっている。 訴訟における立証の容易化のために登 とくに , 各国の経済活動に重要な役割を果 工業局「ソフトウェア法的保護調査委員会」 録制度を作るべきて、ある たすコンヒ。ュータブログラムの保護につい の中間報告が出された。同報告書は次のと ④ 損害賠償額の推定と差し止め請求の規 ては , 著作権法をはじめとする特許法 , 不 おり提唱している。 定が必要て、ある ⑤ 簡易 , 迅速な訴訟制度として , 仲裁ま TabIe 1 わが国の知的財産権制度 たは調停制度検討の必要がある 法律名 ⑥ 保護期間は 10 年が適当て、ある これに対し , 昭和 48 年 ( 1973 年 ) 6 月に文化 特許 法 庁「著作権審議会第 2 小委員会 ( コンピュータ 関係 ) 」が中間報告を出した。この報告の中 て、 , ソフトウェアは学術的な著作物て、あり , 著作権法て、保護し得るとし , ソフトウェア 保護ついて著作権法て、の問題点を検討した。 次いて、 , 昭和 50 年 ( 1975 年 ) 12 月 , 特許庁 から「コンヒ。ュータブログラムに関する発明 についての審査基準 ( その 1 ) 」が発表された。 こて、いうところのプログラムとは , 「計算 機に所望の作業を指令するための手順を精 密に記述したものて、 , これは技術的思想の ーっ」て、あることから , ハー、ドウェアと一体 となったソフトウェアなどについては特許 が認められることが示された。なお , プロ グラミング言語 , データ , ドキュメントに は発明性はないとしている。 上記のように昭和 40 年 ( 1965 年 ) 代からソ フトウェアの法的保護問題に関する議論は 行われていたが , 具体的にトラブルが表面 化するのは昭和 57 年 ( 1982 年 ) に入ってから て、ある。この年 6 月に発生した日立ー IBM 事 件は , わが国のコンビュータ業界に大きな 衝撃を与え , ソフトウェアの法的保護問題 が一躍脚光を浴びることになった。 特集プログラマのための知的財産権概論 35 内 ・自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの。 ・出願公告の日から 15 年間。ただし , 出願の日から 20 年を超 えない。 ・自然法則を利用した技術的思想の創作であって物品の形状 , 構造または組み合わせにかかるもの。 ・出願公告の日から 10 年間。ただし , 出願の日から 15 年を越 えない。 ・物品の形状 , 模様もしくは色彩またはこれらの結合であっ て視覚を通じて美感をおこさせるもの。 ・設定登録の日から 15 年間。 ・文字 , 図形もしくは記号 , もしくはこれらの結合またはこ れらと色彩との結合であって , 業として商品を生産し加工 し証明しまたは譲渡する者がその商品について使用するも の。 ・設定登録の日から 10 年間。ただし , 更新登録可能。 ・独自に開発された半導体集積回路の回路配置 ( 回路素子お よびこれらを接続する導線の配置 ) 。 ・設定登録の日から 10 年間。 ・農産物 , 林産物 , 水産物の生産のために栽培される植物。 ・品種登録の日から 15 年間 ( 果樹 , 材木などの永年性植物は 18 年間 ) 。 ・民法の不法行為の規定に基づく救済 , 契約法 , 不正競争防 止法 , 刑法などの運用で保護している。 ・著作者人格権一公表権 , 氏名表示権 , 同一性保持権からな り , 著作者の気持ち , 感情 , 良心を保護。 保護の期間は永久であるが , 財産的 , 金銭 的利益は伴わない。 ・著作者財産権一複製権 , 放送権 , 上映権などからなり , 保 護期間は 50 年。 ・著作権の発生については , 登録を必要としない無方式主義 を採用 ( ベルヌ条約に加盟しているため , 自動的に無方式 主義が採用される ) 。 工 実用新案法 業 有 意 匠 法 権 商 標 法 半導体集積回路の回路 配置に関する法律 法 種 トレードシークレット 苗 著 作 権 法 経済企画庁総合計画局編 : 知的所有権 - より

7. 月刊 C MAGAZINE 1991年6月号

護範囲の区分て、はなく , 権利行使の段階て、 公共政策を実現しようとした。 Ashton-Tate Corp. 対 Richard Ross ーっのプログラム製品 , とくにゲームソ フトなどの開発などて、は , しばしば , ユー ザインタフェイス画面部分とコンヒ。ュータ プログラム部分を分担して作成することが ある。本件は , そのような共同開発者らの 著作権の権利帰属が問題となった。 ロス氏と訴外ウイギントン氏は , ロス氏 が計算工ンジン ( プログラム ) 部分を , ウィ ギントン氏がユーザインタフェイス部分を おのおの担当して , スプレッドシートプロ グラムの共同開発を進めた。その際ロス氏 は , ユーザインタフェイスに含めるべきコ マンドリストをメモ書きして , ウイギント ン氏に渡した。その後両氏は対立。ウイギ ントン氏はアシュトンテイト社に入社し , 自身が開発していたユーザインタフェイス 部分とアシュトンテイト社の計算工ンジン 部分とを結合させて「 FulI lmpact 」と呼ばれ るスプレッドシートプログラムを完成させ 争いは , ロス氏の主張から始まった。 Full lmpact のユーザインタフェイスには自分に も著作権の持ち分があると主張して , 訴え を起こしたのて、ある。問題は , ロス氏が共 同著作者と認められるためにはどの程度の 寄なが必要なのかという点て、あったが , 裁 判所はほば以下のような判旨て、ロス氏の主 張をしりぞけた。 ・共同著作の要件は , おのおのが独立して それ自体著作物性のある寄をなすこと。 ・ロス氏のコマンドリストのメモ書きは , 著作権保護に値しない ロス氏のメモ書きを入手したが , 素人目 にもあまり役に立つものとは思えないもの て、あった。したがって , 裁判所がロス氏の 貢献を低くみなした点は理解て、きる。現在 のソフトウェア開発て、は , ューザインタフ ェイスとプログラムの開発が別々に行われ たり , ューザインタフェイス開発だけて、も , 数人が共同て、行ったり , ューザの意見やノ ウハウを取り入れたりする場合がある。そ の場合の権利帰属については契約だけて、は 対処て、きない場合も起こり得るて、あろう。 そういった点て、 , 非常におもしろい論点を 提示した事件といえよう。 周知のとおり , この種の問題に対する米 国の活動は活発て、ある。情報産業に多数の 企業が参入していること , 紛争の多いこと , 知的所有権問題を政策問題としてとらえて いることなどから , 当然 , 産業 , 法曹 , 学 界や政府機関の調査研究は盛んて、あり , そ の国際的な影響力は大きい。なかて、も , 判 例のもつ意味は大きいのて、 , 今後も継続し てウォッチする必要があるだろう。 ティレクテイプをめぐる EC の動向 市場統合を 1992 年に控え , ヨーロッパ共 同体の動きは政治・経済両面において活発 化している。コンヒ。ュータブログラム法的 保護問題についても例外て、なく , 加盟各国 の法制度の調和を目的として , コンヒ。ュー タブログラムの保護に関するディレクティ プ ( 理事会指令 ) を起草中て、ある。ディレク テイプは , EC 条約を根拠とする文書て、あ り , 通達された場合 , 各国政府はその規定 48 C MAGAZINE 1991 6 を遵守する必要がある。また , 場合によっ ては法改正も義務づけられる。したがって , 草案中のディレクテイプが正式に採択され た後は , EC 域内て、のコンヒ。ュータブログラ ム法的保護に関する基本スタンスが確立す るて、あろうといわれている。 さて , 今回のプログラムに関するディレ クテイプは , 著作権による保護のハーモナ イズを企図しているが , プログラムの著作 権保護上の諸問題がさかんに叫ばれている 中て、の著作権立法て、あること , さらに統合 による EC の経済力 , 政治力の増大という背 景から , ディレクテイプ条文の一字一句に 世界の耳目が集まっている。 ョーロッパ先進国にも興味深い判例が数 多くあるが , 上述のように , 現在法制度を めぐる議論の真最中て、あるのて、 , ここては , ディレクテイプそのものを最新動向として 摘記する。なお , こて、紹介するのは , 現 時点て、の最終案となっている ' 91 年 12 月 13 日 に採択された「 Common Position 」て、ある。 全 11 条からなる Common Position て、は , まず , 第 1 条て、 , 保護の客体が規定されてい こて、は , 「コンヒ。ュータブログラム 設け , ある程度の指針を示している。 規約および解法にはおよばない」との規定を 物を作成するために用いるプログラム言語 , て、に第 10 条 3 項「保護は , ( プログラム ) 著作 なお , 日本著作権法て、は 1985 年改正て、 , す テム時代の立法を象徴するものといえよう。 ュータ利用の高度化 , マルチベンダーシス てて、あり , ネットワーク相互接続 , コンヒ。 象外として明記した条文は , おそらく初め いる。プログラムインタフェイスを保護対 インタフェイスは保護されない」と規定して の基礎となるアイデアや原則 , プログラム グラムのあらゆる表現が保護されるが , そ 第 1 条て、は , さらに 「コンヒ。ュータブロ ろう。 といわれており , 比較検討の必要があるだ 射程は , 詳細設計より抽象度の高いレベル 米国判例 WheIan 事件 , PerIsystem 事件の 則の詳細設計レベルと理解し得る。前項の かれていることから , コーディングー歩手 ヒ。ュータブログラムが出来あがるもの」と書 条文の前書きに「後にその準備作業からコン 資科が , どの程度のものかが問題て、あるが , 葉に含まれるとしている。準備段階の設計 計資料もコンヒ。ュータブログラムという言 が明記されている。さらに , 準備段階の設 語の著作物 ) として著作権保護される」こと は , ベルヌ条約上のリテラリワーク ( 文字言

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特集・プログラマのための 知的財産権 ロロ るかぎりて、は , 特許制度の根本的特徴は , Deihr 事件て、 , 連邦最高裁は , コンヒ。ュータ 下級審はこの最高裁の判断に従っていると いわれている。 プログラムて、あるがゆえにその特許性がな 権利の独占的性格にあるということがて、き 米国のある法律専門家は , 「特許庁は新規 る。ある発明に特許権があるのを知らずに いとはいいえない旨を明確にしている。と 性と非自明性の基準を満たすソフトウェア くに Diamond 対 Deihr 事件て、 , 特許を受け まったく独自に開発しても , それは特許侵 関連発明については , 通常特許を認めてい ることのて、きないものの基準を大幅に狭く 害と見なされ , 損害賠償については過失が る。たとえば , 人工知能 , 翻訳機 , ビデオ したため , 単に数学上のアルゴリズム ( mathe - あったものと推定される。このような「独占 ゲーム , 事業 / 経営 / 投資システム , ワード 性」は , 果して現段階のプログラム開発実態 matical algorithm), 数学式 (mathemati- プロセシング , ロポット , CAD/CAM, そ あるいは産業実態に即応したものかどうか , cal formula), 計算方法 (method 0f calcu- のほか多くのコンヒ。ュータ用途の分野て , lati 。 n ) だけを請求する特許クレームは基本 また , 毎年作り出されるおびただしい数の ソフトウェア関連発明に対する特許が発行 的に特許を受けることのて、きない主題て、あ プログラムを考えると , 審査に必要な文献 されている」と述べている。米国て、の特許増 ることが明確にされたが , 一方 , 数学的て、 が整備て、きるのかどうかなど , 保護強化と ないアルゴリズムの特許性を明示的に認め いう単純な側面からて、は解明て、きない諸間 加傾向がうかがえる。 , こて、 , プログラムの保護手段として見 ることにもなった。この判決以後 , 米国の 題があることも忘れてはならない P A R 米欧に見るソフトウェア保護の実態 ソフトウェアは , 主として著作権法と特許法などの法制によって保護さ れているが , 現実的な保護実態は個々の判例に求めざるをえない。本バ ートでは情報先進国である米欧の最新判例を追いながら , ソフトウェア 保護の動向を検証する。 著作権判例にみる米国の動向 ・スクリーンディスプレイは編集著作物と して著作権保護される ・スクリーンディスプレイのフローと推移 のシーケンスは著作権保護対象てある ・ MTI 社のスクリーンディスプレイのフロ 際のコストを見積もるためのソフトウェア 前項の CONTU 最終報告書にもみられるよ て、ある。原告の MTI 社が , 「 COSTIMATOR 」 ーと推移のシーケンスは著作物性のある うに , 判例法を採用している米国て、は , 裁 という部品機械加工見積ソフトウェアを開 表現て、ある 判所判決の蓄積が重要な意味をもつ。それ 発した。 CAMS 社は , かって MTI 社の販売 ・ CAMS 社は , MTI 社のスクリーンディス て、は現実にどのような判断が下されている 代理店として「 COSTIMATOR 」の販売に従 プレイの見積作成のシーケンスとフロー のて、あろうか。若干のコメントを加えなが 現状情報をスクリーン上に映し出す決ま 事していたが , 後に同種ソフトウェアの市 ら , 最近の著作権判例を紹介しよう。 場に参入したため , MTI 社が著作権などを りやジョブ情報を複製した Manufactures TechnoIogies, 侵害されたとして訴えを起こした。裁判所 こて、はプログラムてはなく , ユ さて , 旧 c. 対 CAMS, 旧 c. ーザインタフェイスが争いの対象となった。 は , 大略以下の理由て、 MTI 社の主張を認 機械加工の工程にあわせてコストを見積る 問題となったのは , 部品を機械加工する め , CAMS 社の著作権侵害を認定した。 特集プログラマのための知的財産権概論 45

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て、ある。最終条文の採択は , 本年未がリミ ットて、ある 0Common Position がそのまま 採択されるのか , 部分的に変更されるのか , 技術新を宿命づけられたプログラミン グ活動に , はたして法制は追いつけるのだ ろうか。この種の問題に対する理解を深め , あるべき法制度を実現するためには , 今何 が必要て、あろうか。 ソラトウェア技術の進歩に に法は対応できるか コンヒ。ュータブログラムを著作権法て、保 護するために主要各国における立法が行わ れ始めてから , すて、に 10 年余りが経過した。 わが国て、は , 1986 年に著作権法改正が行わ れており , 6 年目ということになる。この 間 , 著作権法保護上のさまざまな間題点に ついて , 国際的に活発な議論が行われてき また , ソフトウェア関連産業がここ 10 年 間て、大きな進歩をとげ , ューザの利用形態 も飛躍的に高度化するにつれ , さらに議論 内容が拡大してきている。 当初は , 先行開発者の技術にタダ乗りす る行為 , すなわちデッドコヒ。ーが間題の中 もちろん現在も , 発展途 心となっていた 上国における海賊版作成や社内コヒ。ーなど の問題が依然存在しているが , この時代に は , プログラムのコード部分が複製されて いるか否かが争点て、あった。 その次に , プログラムの設計レベルの侵 害が問題となった。いわゆる SSO 間題て、あ 一方 , ューザの利用形態との関わりにお いても , 問題が起こってきた。ューザが , もっとも使いやすいユーザインタフェイス 設計 , 高度情報システム構築のためのマル チベンディングなどを求め , UNIX にみられ る標準化の動きが進展するなかて、 , 開発者 50 C MAGAZINE 1991 6 諸問題の解決へ向けて されるとすればどの部分か , 動向を注目し インには , 計算機て、処理されるデータには て、も , わが国の昭和 50 年 ( 1975 年 ) ガイドラ は保護されないのて、あろうか。特許法の下 エキスノヾ ートシステムは , 著作権法の下て、 的要素とプログラム的要素を組み合わせた となれば , データ ータ自体を保護しない たとえば , 著作権法は一般に , 事実やデ 産権法て、適正に保護し得るて、あろうか。 て、あるが , これらははたして現行の知的財 割を扣うのは , 知識べースと推論工ンジン がある。エキスパートシステムて、重要な役 ような保護がえられるべきかという問題 まずはじめに , そのような技術にはどの システムを例にとって話を進める。 医療診断や会社経営などのエキスパート れている。 みて以下のような問題を抱えているといわ ムなどが登場しているが , そこには法的に ーションについては , エキスパートシステ させてきた。その結果 , ある特定アプリケ うなユーザニーズに応えるべく技術を進展 とて、あり , コンヒ。ュータ関連産業もこのよ も人の手をわずらわすことなく実現するこ アプリケーションを高度かっ迅速に , しか コンビュータ利用の終局的目的は , 特定 るかという疑間て、ある。 代表される技術進歩に対し , 法が対応て、き ーロコンヒ。ュータ , 第 5 世代コンピュータに がもち上がってきた。 AI ( 人工知能 ) やニュ ない。一方最近て、は , いっそう複雑な間題 後もさらに国際的に論じられなければなら 以上の間題はいまだ解決しておらず , 今 問題が顕在化したのて、ある。 には , リバースエンジニアリングの当否の プログラム間インタフェイスの保護 , さら 間て、は , ューザインタフェイスの保護や , 発明が成立しないことが明記されており , システムの機能や方法は保護される場合が あるだろうが , かんじんの知識べースまて、 はカバーされないと思われる。 それて、は , トレードシークレットとして 保護するのはどうかということになるが , 現在のエキスパートシステムは , ユーザが データをつけ加えたり , どのようにして解 にいたったかを確認しながらシステムの性 能を向上させていくものて、あり , shell 全体 をプラックポックス化するのは不可能て、あ る。また , 元となるデータが事実そのもの て、あったり , 公表された教本からとったも のて、あれば , トレードシークレット性には 疑問がある。 第 2 として , なんらかの権利性があるとし て , 誰に権利がえられるのかという間題 がある。知識べースに貢献のあった医者や 経営コンサルタントなどの専門家て、あろう か , システム化したコンヒ。ュータ企業なの か。システムと応答を繰り返して特定アプ リケーションシステムを完成させたユーザ も権利を主張するかもしれない。システム の機能や方法はともかく , 知識べースを重 視するとすれば , 関者は多い。法的保護 に値する寄与・を行った者は誰なのか , 全員 なのか , その判断は困難なものとなろう。 第 3 に , システムの利用によって得られる 成果物の権利者が誰なのかという問題も指 摘されている。たとえば , 高度な音楽の作 曲マシンを使うューザは , 作曲に必要な知 識をもたなくても単純なデータをインブッ トするだけて、抽象音楽を作曲て、きる。絵画 の世界て、も , 同様のことがいえよう。これ も , 上記と同様に誰を権利者と見なせばよ いのて、あろうか。 この間題は , コンヒ。ュータ創作物の権利 問題として , 従前より議論されており , 英 国て、は , 1988 年改正著作権法に「コンヒ。ュー タにより生成される文芸 , 演劇 , 音楽又は 美術の著作物の場合 , 著作物の創作に必要 な手筈を整える者が , 権利者と見なされる」 という規定を設けている。

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ため , 「 COSTIMATOR 」の個々のユーザイ ンタフェイス画面は作業工程の一場面ー場 面を , ユーザインタフェイス画面の流れは 一連の作業工程を , それぞれ反映していた。 はたして , このようなユーザアプリケーシ ョンは保護されるものて、あろうか。機械加 工において職人芸的 , 効率的作業そのもの , および作業の流れを保護することになりは しないか。これはソフトウェアが達成しよ うとする機能・目的 ( つまりアイデア ) て、は ないだろうか。 ューザインタフェイス画面がユーザ業務 を反映している場合 , 同種業務用ソフトウ ェアて、は似たような画面 ( 類似性が認定され る ) にならざるをえないて、あろう。この判決 のように個々の画面の推移を保護すれば , 独自著作の抗弁は役に立たないのて、はない か , 同様の機能・目的を実現するプログラ ムを後発者が開発しにくい状況が生まれる のてはないだろうか。 Johnson Cont 「 0 c. 対 Phoenix ControI Systems,Inc. これは , 1986 年のウェラン判決以来つづ いている SSO 保護の流れを踏襲した内容の 判決て、ある。ジョンソン社は , 汚水処理プ ラントを制御するプログラム「 JC ー 5000S 」を 開発し , これをユーザごとにカスタマイズ して販売していた。フィーニックス社は , ジョンソン社の元社員て、組織された会社て、 , ジョンソン社と競業した。ジョンソン社が ニックス社を著作権侵害 , トレード シークレット侵害などて、訴えた。裁判所は , ジョンソン社有利の判決を下した。 ・コンヒ。ュータブログラムの構成要素には , 「ソースコード , オプジェクトコード , SSO ( ストラクチャ , シーケンス , オーガニゼ イション ) , ユーザインタフェイス , 機能 または目的」がある。 ・プログラムのノンリテラル要素 (SSO, ュ ーザインタフェイス ) が保護されるか否か は , 各事件の特定の事実に基づいて , 問 題となっている要素が表現てあるかアイ 46 C MAGAZINE 1991 6 デアそのものてあるかにかかっている。 ・ JC ー 5000S の SSO は表現て、ある。その理由 としては , ューザごとにカスタマイズし ているということは , 個別的表現の余地 があることを示すものて、 , JC ー 5000S は過 去のデータ集積 , データ集積のための統 合・平均化スキームをポイントタイプと して実現しているが , これは一般的なや り方て、はなく , 若干の裁量範囲や機会が あることを示す。 著作権法て、は , ーっのアイデアに対して , いくつもの表現の余地がある場合と , ーっ しか表現方法がない場合とて、は , 保護され るか否かの判断が異なったものとなる。表 現方法が一つしかない場合は , アイデアと 表現が merge( 融合 ) しているとして , その場 合の表現は保護されないという考え方て、あ る。ならば , 数個のやり方しかない場合は どうなのかという疑問が生じるが , これは 程度問題としてとらえているのて、あろう。 本件裁判所は , 個別的表現の余地 , 若干の 裁量範囲や機会があれば表現といえると判 断した。 小説や絵画には一つのアイデアに対して 無数の表現手段があるのに対し , プログラ ムは効率的処理を求めれば求めるほど最適 手段の表現に収斂する可能性がある。また , そうすべき技術製品て、あることは明らかて、 あり , このケースにおける裁判所の判断が 妥当なものかどうか , 技術者の立場からの American Expree Bank Ltd. Bull HM lnformation 対 検討が必要て、あろう。 働していたが , その後 , アメックス社が SBS 援した。 SBS はプル社のハードウェアて、稼 ション SBS ( TPS6 環境下て、稼働 ) の開発を支 もに , アメックス社の国際金融アプリケー 開発しアメックス社にライセンスするとと Screenwrite て、記述したプログラム TPS6 を て、ある。プル社は自社のコンヒ。ュータ言語 ーザて、ある大手金融アメックス社との争い メインフレーマて、あるプル社と , そのユ を IBM ハードウェアて、も稼働させたことか ら争いとなり , プル社は Screenwrite 言語と TPS6 プログラムの著作権が侵害されたと訴 えた。プル社の訴えに対し , アメックス社 は却下申し立てを行った。今回の判決は , アメックス社の却下申し立てに対する判断 て、ある。 まず , Screenwrite 言語の問題について , 裁判所は , 以下の理由によってプル社の主 張が訴えるに足るものて、はないとした。 ・プル社は ScreenwriteÄ語に関する著作権 登録をしていないのて、 , 訴えを起こすこ とがて、きない この侵害請求の却下は , プル社が Screenwrite 言語に関する著作権登録をし ていないことを法的根拠とするものて、あ り , コンピュータ言語の著作物性の問題 とは関係のないものて、ある。 一方 , TPS6 プログラムの問題について は , アメックス社の却下申し立てをしりぞ け , 本訴に持ち込まれることとなった。載 判所は , いちおう以下のような考え方を示 している。 ・ TPS6 と同じ目的や機能を達成するオペレ ーティング環境は , ほかにもあり得る。 ・アメックス社がプル社の著作権を侵害し たかどうかは , アメックス社ソフトウェ アが TPS6 の目的や機能に必然的て、ない程 度まて、 , TPS6 オペレーティング環境を複 製したかどうかによる。 日本著作権法第 10 条 3 項は , コンヒ。ュータ 言語を保護対象から除外しているが , 米国 法にはこのような規定はない。現在のソフ トウェア開発技術の進歩は , オプジェクト 指向言語などのようなソフトウェア開発に 効果的な言語を用いることて、実現される場 合があり , それは開発方法論として各社が 競っている分野て、もある。本件て、はこのよ うなコンヒ。ュータ言語が著作権て、保護され るのかどうかについての判断が期待された が , 裁判所は判断を回避した感がある。な お , 米国て、は著作権登録が訴訟要件となっ ているため , 前記のような判決理由が可能