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物物鋼 1 、 客十ニまりと採な現そ至 秋船倍キ異をは用く実か高 つは、すて主に点 めです一 くあるゼてなむる、義ゆ やる大号社れか。幸。きす 、会てしす便馬わな そ さ木主、のなな鹿たわ ぐ の材義現千わ方につち 、で的代石ち法でて美 と も おな社の船 八、のきい そく会、や なる な らてのそ桶えついよれ き く鉄ソれ舟多をと信うが 船 の は材連ものとし仰で示 での江匂てだあ現 ゆ 、がるす れ 万で、戸い トきそのとよ石 ンたの封は は 月リ、名建遠口さ仰うい 後千ものくゆんととう わ の石オ市時れはし ば 近船ル井代 てろ仰 代にジととのれでのが 的数ョさ作船をは超ひ つ てもら係し も大な慄そい 、の、づててのきか ? れう ) にさで美 そが発け同お のす明て時く下。うあは学 によっ東ま 、的 でさい とにれう無りて洋くそそ装 に創 7 おな空ほは的収うの置 おりわら間か明卓まいとの いおつば的はの坤えるうきう てえた、時な陶 。閃西、え たた瞬人間い器遠光欧ゆで 。をくと近れ ちも間間た まのにのるあ発はは代では ちで、発もるせ殷、のるじ 発あこ明のいしのや美もめ 。はめ青は学のて 明るれし 、た銅りのはゆ し たと元もう無も器距寺何れ 人に来の少時のをる院かる 間気人でし間、生この の を付間あ人的とせと青新で 無か以り間空でしか屋しあ 化し外なに間もめな根きる しめのが関にいたりの戦 も を モンマノレトルのカフェ。 後方はサクレクウルの会堂
こではじつにケチなものであった。測もひっかけてもらえまえから詰めてあった。ヒースが半分以上のこっていたの ない。みじめということだろう。国助は足音をしのばせで、それがあとから流れこんで来たビースとまじって、ど の箱がどれとも見わけられなかった。あとからの箱にぶつ て、肩をほそくして梯子段をのぼった。 やっと自分の室にもどることができた。階下の気合はこかる公算のほうが大きいとしても、まえの箱にぶつかると う小さい公算もまたありえた。国助の手にわたったビー こまではったわって来ない。窓には、これはほんものの月い 影がおぼろにさしていゑ紙面の活字をそれと見さだめるスがどちらの箱であったか、判然としなかった。またそれ にはまだ暗い。国助は・ヘッドの上にぐったり腰をおとしが判然としないということを、国助は知らなかった。 た。そして、うしろの壁に背をもたらせて、しばらく呼吸国助はポケットからたばこの箱をとり出した。あ、その をしずめた。やがて、室内にいくらか光の色がひろがって箱は例の品物ではなくて、ふつうの。ヒースの意匠がほどこ 来た。窓のほうを見ると、活字がその位置からすこしずれされているやつであった。しかし、国助はそれを例の品物 て、どうやらうごきはじめたように目にうつった。そのととのみ信じきっていて、窓の活字がうごくほうに、すなわ き、国助はたばこのことをおもい出して、ポケットに手をち明日いかなる事件がおこるかということのほうにじっと 目をそそいでいたので、手の中の箱をあらためては見なか 入れた。そこに例に依ってビースの箱があった。 ところで、これは国助の気がっかなかったことだが、そった。そして、その箱から一本抜いたやつを、うつかりく のビースの箱が例の箱かどうかということに疑問があつわえて火をつけた。 た。というのは、きようたばこ屋の店でちょっとした手ち「あっ。」 たった一息すいこんだけむりで、のどが焦げくさくむせ がえがあったからである。店から出がけに国助はぎようも また店員が例の紙袋の。ヒースを壜の中にあけかえるのを見かえった。国助はべっと唾をはいた。ふところの小大が悲 鳴をあげて飛び出した。たちまち、けむりは悪臭をはなっ た。そして、そこで。ヒースを一つ買うことは買った。ただ ちょうどそのおりに、そばを駆けて通ったひとにどしんとて室内にたちこめた。けむりの中には煤のようなものがま 鷹突きあたられたので、国助は横をむくという失策を演じじっていて、その黒い斑点は天井にのぼり、壁にふれ、窓 にぶつかって、月の薄あかりを犯した。とたんに、活字は た。そのわずかのすきに店員は壜の中に手をさし入れて、 ビースの箱の一つを任意につかんだ。国助がむき直ったとうごくことをやめて、闇は物質のようにおもく垂れかかっ きには、その箱は目のまえに置かれていた。壜の中には、
みとらなければ、どこにそれが沸き出るであろ、つか か。字義通りである。握りしめていたのを開いたとき 観念ではなくて、落日を、そして事物を、「苦学」では のてのひらの、のせている空、ささえている空、うえ絽 なくて楽学のパリを、その事物を、眺め続けていなけの空、うわの空、そして同時に、てのひらのなかにひ ればならないわけである。おもてに風狂をよそおってろがっている空。そして、ここまでくれば、もう空を いなければ、到底バランス . のとれないわけである。すクウと発音しても、 しいかもしれない。てのひらの空、 なわち、「秋の海いそぐともなき船のゆれ」いそぐでも このそらは、観念の空ではない。 石川さんのてのひら ないのに、船はゆれていざるをえないわけである が、現実につかみとってきたパリ の空の一ひらである。 ところで、そろそろ、わたしもパ ) を引きあげねば そこにはおのすからまた、落日の光も、流れ通りしみ ならないころおいである。すでに石川さんの『西游日わたっているに違いオし しかし、それは同時に、つ 録』のガイドによるわたしの「あとの雁」の低空飛行 かみとり、にぎりしめられたすえに、 ふるさとひとに も終りに近づいたからであるひきあげて、どこへゅむかってひらくがゆえに、瞬間にして、虚妄となるで ・ 9 も、つしし くか。『西游日録』の末尾から二行目に石川さんはいうあろう。虚実皮膜の間 : 曾呂利は舞いの 「復帚ということは避けがたいものか他にゆくすべな ばった空から、たちまち落ちて大きな嚏一つしていっ ければ、一兀のところにかえるはかない」そ、つして、こ まだ地上に生きていたか。」しかし、空のほ のあとに、さきはどおもわせ、 に予告したわたしの 石川さんのてのひらから、いつまでも決して落 石川芸術における発見、それを行わしめた一行、いやちることはない。 落ちるのはいつも : 一首の「詩諧」があらわれる いや、石川さんの「おとしばなし」の末尾ならば、 きっとこ、フい、つオチがつけられるに一いない かへりゆきてふるさとびとになに見せむひらけばか 「いや、キツネが落ちる。」 なしてのひらの空 てのひらの空とは、もちろん、クウと発音すべきで はあるまい。そら。しかし、てのひらの空、とは、何
「さがれ。」 ないでいるものだ。」 今はみな息をひそめてスクリーンのみごとな絵様に見と叱咤をあびながら、音彦はたじろぎもしないで、女の影 がなおそこにとどまっているかのように、じっと白布を見 れているけはいであった。すべての怒号は底に沈んだ。 つめつづけた。 それにしても、この女はいったい何だろう。 ときに、ホ 1 ルの中ごろに、しわぶきの声がして、ぬっ おのずから洩れたためいきが、声をなすにも至らずに、 と立ちあがった仮面の人物があった。その人物は久太のほ ここに、けむりのようにただよった。 うにすすみ寄って、したしげなようすで、 いきなり、ホールの片隅から、高い声があがって、 「朽木君。今夜はおもしろい催しを見せてくれたな。わし 「その女は白痴だ。」 みな闇をすかして、その見えない片隅のほうに目をむけは気に入った。きみとふたりで、ゆっくり語りあってみた た。すがたはみとめられなかったが、久松音彦の声であっ 「どなたですか。おはなしがあるなら、ここでうかがいま 「こういう女のからだがいかなるものか、・ほくは今日までしよう。」 「いや、はなしの筋は他聞をはばかる。」 の体験に依って知っている。これは白痴のからだよりほか のものではない。たぐいなき甘美なからだ。一度抱いて寝久太は無遠慮に笑ってのけた。 てみたら、絶対に他人の手にわたせつこないようなもの「他聞をはばかりたがるのは、秘密警察かなにかでしょ だ。これは・ほくが全所有をなげうって買う。この女のからう。・ほくには、秘密というものはありません。・ほくの席は いつでも公開の場所に在るのです。いったい、ここのある ・こは、・ほくが買った。」 じの・ほくにむかって仮面のままの挨拶は無礼でしよう。そ とたんに、ばっと灯がついて、ホールは隈なくかがやい の野暮な目かくしはとったほうがよさそうですな。」 た。片隅に、音彦が立ちあがって、指をのばして、スクリ たちまち、仮面がおのずから落ちて、河越盛行のけわし ーンをさしていた。しかし、そこにはもう何の影もかすめ い目がそこにあからさまに光った。 虹落ちず、艶の抜けた白布がとりのこされているだけであっ そのとき、外の廊下のほうに、突然調子たのしく、歌を うたう女の声がきこえた。 「邪魔者。」 「うるさい。」 そこに、
に、ただ朽葉に似たものが地にのこった。そのけむりの色た。もちろん、・ほくは無際限にいい気になるという当然の の、白く散ったあとに、あたりはほのあかるく、風もいっ権利をフルに行使した。すなわち、俗なことばでいえば、 かしずまって、見あげれば星の影うすく、あかっきの空が・ほくはひとの錯覚のキンタマをつかんではなさなかった。 ほどなく晴れようとしていた。ひとびとのすがたも今はおこれはひとからどれほどお礼をいわれてもいわれすぎると おかた見わけられて、男も女もみな顔をほてらせながら、 いうことはない。せつかくの錯覚を註文以上に実証して、 足をふみ、歌をうたい、波をうってどよめいた。 人生観の幅をひろげてやるという恩恵をあたえたのは、こ 「どうです、諸君。」 のぼくだからね。もっとも、ほんものの札でも、・ほく発行 久太は・ハルコンから乗り出してさけんだ。 の紙きれでも、その価値のあるかなきかについては、じっ 「どういうことになりましたか。くさった木の葉のようなは似たようなものだということは、げんに諸君がこの場で もの。じつにたったそれだけですね。しかし、それがまた見とどけたとおりだ。 : 諸君はかって無かったものに火をつ じつに・ほくの全財産だ。ひとが勝手にあると錯覚していたけて焼くという著想をみごとに実現して見せてくれた。こ ぼくの所有は、たったそれだけなのだ。ほんの一つかみのれは・ほくのほうからお礼をいわなくちゃならない。錯覚の 燃えがら。それが・ほくの金庫の中にありえたものの全部キンタマの、はかない燃えがらがここにある。朽木金融機 だ。ぼくの金庫はおよそひとが錯覚しえたかぎりの途方も関の葬式のために、諸君が贈ってくれた花輪とでもいうも なく莫大な財宝をもっていつもいつばいだった。すなわのだろうね。この燃えがら、いや、花輪をして、せめて最 ち、その中みはいつもみごとにからつ。ほだった。それが・ほ後の光をはなたしめてもよさそうだな。」 くのおそるべき金力の明白すぎる秘密だ。というのは、ひ いうより早く、久太の手からきらきらした小さいものが ほうらっ との放埒な錯覚のあらんかぎりを、・ほくは・ほくの無尽蔵の飛んで、かの朽葉に似たものの上に落ちた。アメティスト 力の実体として、あくまでも濫用することができたからの指輪にちがいなかった。とたんに、一むらの青い炎がそ だ。現金を欲したときには、・ほくはほしいままにゼロのい こに立ちの・ほり、ものすごいまでに強烈な光をはなちなが ら、噴水のように高くふきあがって、いかなる花火よりも 虹くつもくっ附いた数字を紙きれに書きつければよかった。 すると、たちまちそれだけの現金が・ほくの金庫の中にあっはなやかに、宙に火の子の傘をひろげた。そして、ひとび た。いや、ひとがその紙きれに信用という不思議なしろもとがあっとふりあおぐまでもなく、炎はつい消えて、あと のをおまけにくっ附けて、現金以上にものをいわせてくれには朽葉に似たものも指輪も、なに一つ影をとどめず、す
れておるというではないか。都のうちですら、いずれが正らぬおもいっきじゃ。おいおい世にひろまろうな。」 「暦とともに、神宮の信仰もまた禁中からながれ出て、俗 朔を奉ずるものとも知れぬ。」 「まことに、ちかごろ禁裏仙洞に於ても、留守番衆のめん間にひろまって行くことになりましようか。」 めん、妻子を引き入れて住まわしめ、御所なお私宅のごと「うむ。仮名暦はよし。俗信はいかがなものか。伊勢は神 神の食いものの世話をやく神がおるところじゃ。暦こそ賤 きありさまなれば : ふせや 「なげくな、新左。暦に閏月のちがいはあっても、日月星がいもを作るときの役にもたとうが、神宮は伏屋の鍋にい しもにも米にも無用の俗信、末 辰の運行をさまたげるには至るまい。御所とても、ひとのもの煮えたのも知るまい。、 住むところじゃ。女こどもを引き入れて、いくさの難を避の世にはどうなり行くことか、そこまでは目がとどかぬ。」 けさせたのを、とがめることはない。狐狸が住まなくてさ「ものの崩れて行くすがたならば、末の世を待たずとも、 * おんみよう いわいよ。もっとも、うろたえものの陰陽博士なら、なんよきにつけ、あしきにつけ、今の世にさまざまのためしが とか星が紫微宮を犯したなんそと、あらぬことを口ばしつ見られますな。あれも、これも。」 て、一さわぎしてみせるところか。無用の気づかい、おま「その近いためしが : ・ 一休いいかければ、新左衛門うなずいて、 えにも似合わぬ。」 「ほい。これはおおせられた。この新左衛門もうろたえも「武家とおおせられる。」 「すぐ気がつくだけに、おまえはいくらかましのほうじ のの数に入りましたかな。」 そういいながら、他の一冊を手にとりあげて、 「おそれいりました。」 「こちらの暦は。」 とうりよう 「源氏の棟梁として、その位にそなわったのは、おもえば 「伊勢の暦じゃ。」 たかうじ 等持院殿 ( 尊氏 ) までであったな。一旗のもとに、諸国の 羅「伊勢。」 「かの神宮に仕えるものども、町人とあい謀って、京の暦源氏こぞって下知をあおげばこそ、棟梁とはいう。位すな * っちみかど 修の本家土御門家に請うて、暦の写しをゆずりうけた。町人わち力にほかならぬ。その位どりは系図に依 0 てさだめら の才覚、かの具注暦の堅きをやわらげて、ここに仮名暦をれた。すなわち、分家の義貞ごときもの、ついに本家の尊 ごだい tJ * おし つくる。これをば御師のみやげとしてくばったのが、ちか氏におよびえなかった所以じゃ。されば、後醍醐のみかど ごろは銭をとってたれにも売るようになったという。抜かも、味方の義貞を軽んじて、かえって敵の尊氏をば重く見 はか ゆえん しず
いるのだ。何をいうまいとして、ことばを呑みこんでいるに出ると、吹ぎ通しの川風の中で、金吾はたちまちほっと のだ・ : した顔つきになって、 車は上野広小路にかかっていた。すると、もう堪えかね「ああ、・ほくはさっき何をいったのでしよう。要するに、 たように金吾がいぎなりこういった。「ぼく目下結婚のこ・ほくは今仕事がまったく停頓した状態にいるのです。ちっ ごうまっ となど、だれかと結婚したいなそと、毫末も考えてはおりとも発展してくれない浮彫にぶつかって、腕をしびらせな ません。しかるに、先日たしかに『結婚』と申し上げてしがら、途方にくれているのです。どうしたらいいのか。の まいました。うつかりではいいわけの立たない、取りかえどにふさがっているものを吐き出してからでなければ、息 しのつかない逆上でした。だれに対しても、自分に対してのつきようがない塩梅です。そして、あなたの前では、す も、不誠実きわまる失言でした。そのくらいなら、、 しっそべてを許して下さりそうなあなたの前では、いわばいい気 ・ : 」そこで、ばったり声がとぎれて、またも黙りこんでになって、むちゃなことばを訂正しようとしながら、また まぶた しまった。そのとき、わかものの瞼に光った涙を眺めながむちゃなことを口ばしってしまったようです。」 ら、武吉はかって敬子の件でこの男にいささかの嫉妬も感車は橋の袂から南へ、大川端にそって速力を増して行っ じなかったということに、ふと気がついた。そして、いった。 「きみはさっきーと武吉は席に坐り直して、「「そのくらい たい自分は今この男をどこへつれて行くつもりであったの かと思った。車は山下に来ていた。運転手がこちらを見なら、いっそ : : : 」といいかけたね。いっそ、どうしたと いうんだ。」 て、「どのへんでお止めいたしましよう。」 しかし、車は止められなかった。山の上のレストランで「どうか、もうそのことは打切にしていただぎたいので 休んで行こうといい出した武吉のほうに、金吾は何も耳にす。・ほくはいっそあのひとを : : : 殺すべきだったといい出 入らぬていの横顔をしかむけていなかったが、たとえ聞えすかも知れません。しかし、もうすみました。今こんなふ 描 たにしても、それはこの際飲食のはなしなどをしかける者うにおはなしできるということが、もうそこに立ちもどら なくてもよい証拠です。あちこちに万遍なく気持をふりま 白に場所ちがえの無作法をさとらしめるような、まるでほか の星に住んでいるのだといったような、霞がかったけしき いているようなひまを、今・ほくはあたえられていません。 であった。武吉の合図にしたがって、車は浅草の方角へ無何をどういっても、不誠実な表現にしかならないでしょ 言のうちに走りつづけ、やがて吾妻橋をわたって向う河岸う。それほど、ぼくは浮彫のことで、いや、ちっとも彫り しっと たもと あんばい ていとん
示した。祝の席に盲は不吉であった。そのとき、さっと吹る大岩、こなごなに打ち砕かせましよう。そのところに き入る風に、あるかぎりの灯はみなゆらいで、ばたばたは、地をきよめて、われらの大神をあらたにいっき祭る。 と、あわや消えようとした。 かくて、神霊武威ならびおこなわれて、敵なる名なしの神 荒玉、さかずきをなげうって、 のごときは、すなわち宿なしとなり、もはやこの国土の中 「斬れ。」 にかくれるべき峰あろうともお・ほえませぬ。」 兵すなわち剣を抜いてすすめば、童子の首ふたっ、たち「たわけ。うろたえものが出すぎたまねをするな。」 どころに飛んだ。風おさまって、灯はまたあかあかと燃え はげしい声に、広虫は舌をちちめた。 た。その光今はむなしく、ひとびとすでに面色蒼ざめて、 「なんじのようなる不覚人が事をあやまるのじゃ。それな さかずきの酒は冷えきっていた。 ればこそ、わざと申し聞けるぞ。」 「宴はこれまで。」 荒玉のしらがの眉はつねよりひややかに冴えた。 荒玉は立って宮の奥に入った。腹心に広虫というもの、 「いっき祭らずばならぬのは、かの名なしの神じゃ。」 あとにしたがって、ひそかにようすをうかがうに、荒玉す「なんと、敵なる神を。」 こしも臆する色なく、ひとを遠ざけて、 「さきほどのあやかしを見て、おそれのこころを兆したと 「広虫。」 でも、おもいおるか。左にあらず。聞け、広虫。われら、わ 「は。」 ずかにこの尺寸の地をえたのみにて、小成にやすんじては 「なんじ、なにをおそれるぞ。うろたえたさまを見せるな。」ならぬ。国はまだまだひらけるそ。いや、ひらいて見しょ 逆にとがめられて、広虫、さかしげに、そばにすすみ寄う。国つくりはこれからじゃ。打ちしたがえるべき山山は 数かぎりない。行くところの地には、かならずやその地に 起「かの名なしの神のけしからぬ振舞、いかにお・ほしめされ古き神神はあろう。またその神神をふかく信ずるやからが るか。なおざりに捨ておいてはなりますまい。」 あろう。力なき神は取るにたらぬ。ひとに畏怖の念をいだ 八「捨ておけぬといって、何とする。」 かしめるほどの神ならば、取ってもってわが神とすべし。 「されば、かの山はほろぼしても、いまだわざわいの根をすなわち、その神を奉ずるやからのこころを取ると知れ。 断つには至りませぬ。夜があけたなら、こなたの霊峰に祀そのやからとても、ひらけ行くわれらの国の、あらたに附 って、ふたたび兵をつかわし、かのあやしの足跡をとどめく民じゃ。神も人も、殺すべきものは殺し、生かすべきも
なくとも、この絨毯の趣味はあなたとわたしとの先先代に そういって、小助はほっと息をついた。しかし、その息 は熱くさく、また別の興奮に燃えている顔つきであった。 於てま 0 たくおなじものです。あなたも、わたしも、おな じ絨毯の上にうまれ、産著のようにそこにくるまれて、場音彦のほうも常のけしきとはおもわれなかったが、これは 所は別別ながら、ひとしくあたたかい雰囲気の中にはぐくにわかにひどく蒼ざめて来て、今の早業にも似ず、寒けに おそわれたように声がふるえさえした。 まれて来ました。成人したわれわれにとっても、そこはい つまでも生活の地盤です。今この場所であなたにめぐりあ「いったい何のおはなしですか。あなたはこの絨毯のこと を『高貴』だの『生活の地盤』だのとおっしやったが、ぼ ったのは必然の成行というものでしよう。」 くはそれには完全に関係がありませんよ。現在は決定的に 初対面の年下の相手にむかっていうにしては、どうも丁 寧すぎたその挨拶は、またいささか見当ちがえの、滑稽なそうですが、そもそものむかしから、あなたのいう絨毯の セリフともきこえた。あるいは、小助は目前の青年のすが雰囲気の中でそだてられていた時分から、トルコ産やら人 たに於て、いわば二重うっしに、かって見たことのない大生観やら、そんなことはてんで知ろうともしなかった。そ むかしの顧客、久松家の先先代の像を見たようにおもったのおかげで、とんだミスをやってしまったのですが : ・ のかも知れない。その挨拶のあいだにも、当人おそらく気や、それはどうでもいい。不思議なのは今の矢のことで がっかずに、トルコ絨毯を靴のかかとでふかふか踏みしめす。いったいどうして・ほくはあの矢を払いおとすことがで て、あたかも両家の歴史の跡をそこにたしかめるというにきたのですか。どうすれば、そんな器用な芸当が・ほくにで 似たしぐさをくりかえしたが、それはむしろその敷物の今きたのか。・ほくの手は元来かみそりさえ使うことを知らな いように生れついた手です。自分の手ではネクタイもまん 日の相場を値ぶみしているというふうに見えないこともな ぞくに結べない。それが・ほくの『お手ぎわ』ですよ。その 力ー 手をもって、おまけに小大に吠えっかれてもおびえるよう 小助はさらにことばをつづけて、 「たった今、わたしとしておとなげなく一時の興奮にからな臆病の性分をもって、まったくおせつかいに、よくあの れて性急な矢をはなったのですが、おりよくあなたのお手いさましい手出しができたものだ。わるくすると、矢に射 ぎわのおかげで、われわれの高貴な絨毯を、しかも魔物のぬかれるのは・ほく自身でした。われながら、ぞっとします 血をもってけがさないですみました。あやういところでしね。いや、ぞっとするといえば、さっきこの家の門をくぐ って、中に一あし踏みこんだときから、・ほくは異様な身ぶ た。さいわいに、もうおちつきました。」