ところにあらねばならぬのであります : ・ : こ しばらく我慢していたあとで安吉は目につかぬように席 すべ をはずして会場を滑り出た。「ケッタクソのわるい といった言い方は従兄の酒屋にいて覚えたものだったが、 りくっ 文句をつければ理窟で負けるだろうと思えるだけいっそう 平井と安吉とは並んで文学部の教室の方へあるいて行っ 安吉はそんなことをいった学生が不愉快だった。 た。かれらを追いこして行くものがたくさんある。すれち えしやく 「あれから例の全集を持ってって、平井・平田の平井をつがうもののなかには、平井にだけ会釈して行く安吉のまっ れてって、それを質に入れて塾を出たのだったナ。あれたくみしらぬ顔もある。日ざしは伸びて行くところで、時 で、ま、合宿へはいる直接のきっかけができたようなもん刻はわからぬながらまだまだ講義している教室がいくつも だったんだ : : : 」 あるらしい。構内全体が、芽ぶいてきた林といった感じを 背の高い、非常にわかくて腰がそびえるようだった女のあたえるなかで、大がかりな再建築がすすんでいて、もち 記憶と、ケッタクソの悪い雄弁口調のいやらしさの記憶と前のはじけるような音響が高いところで交錯している。ど をふりおとすためのように安吉は目をあげた。その彼に、 こかの教室から連れだって出てきた女の聴講生が二人、 正門をはいってくる平井の姿が見えると、安吉は急に快活二人とも美しい顔で、かれらより背の高い平井と安吉とへ になって「来た。来た : : : 」と一人で声に出していった。見おろすような目をくれて鉄門の方へ斜めに切れて行く。 「平井のやっ、また歓迎会を胸忘れしたナ : : : 手の指をそそれを無意識によけて縫いながら、平井は相かわらずの声 ろえて頬っぺたにあてて、『しもうたアー』といって口をで・ほそ・ほそとさっきからの話を続けた。 とが ぶしよう 尖らすのだろう。不精ひげの伸びたロを。あの不精ひげ「だからネ、おれとしちやネ、今年卒業しなけれやいよい が、年中同じくらいの長さなのはどうしてあんななんだろよまずいんだよ : ・ : こ う ? 」 「いよいよ」というのが、平井が使うと「決定的に」とい う意味できこえてくる。 安にまだ気のつかぬらしい平井の歩きつぶりを見なが ら、罠をしかけて隠れてるようなくすぐったさで安吉は待「それや、おれたちの方は、田中さんやなんかがいてくれ ペんぎ るから翻訳の便宜なんかはあるんだよ。そこは、君の方の ドイツ文学なんかとは違ってるんサ・ : : こ とこ
132 像の部分図の下書きといったところにそれが見える。つま吉は知っていた。おばさんのいちばん幸福な瞬間の笑い声 り大勢がおそわれて、大勢が逮捕されて、それを画家が目 ・ : そんなときの彼女は、筒つぼの腕をあげて、それ以上 へきが で見たのだったろう。それからクリスチアニア大学の壁画幸福に見えるのを遠慮するかのように両手でロのハタを囲 の下絵が出てきた。そこでも労働と生活とが正面に出てい ってしまう。合宿のかれらは青年らしくよく食った。合宿 る。何というちがいかー実物はまだ見ていないが、大講としての会計は彼らを満足させなかった。何を菜にして小 びる そな 堂の小杉未醒の絵はとてもこんな風ではなかったはずだ。昼を食うか ? 太田の発案でトロロコンプを具えることに わん かつおふし でも、あれは、どこでその写真を見たのだったろう ? あして、何もないときは、トロロコンプを椀に入れて、鰹節 しようゆ すこでは、水がめを頭にのせた娘が肥えてみち足りた顔をと葱のきざんだのとを入れて、それに塩と醤油を入れて熱 していた。ここでは、人相も構図も忍苦の表情で欠乏をう湯をそそいだだけでかれらは二三杯も冷めしをかきこん ったえている。そして、これこそが順直なプロセスなのだ。そのトロロコンプを、太田がいちばんによく食ってし だ。「異端」と見えたものはここへとたどって行くのだ。 よっちゅうトロロコンプ、トロロコン・フという。おばさんが そしてそのことが、いくらか甘やかし気味に彼自身のコー昆布の罐を出してきたらしく、太田がカまかせにかしつか スを肯定してくれるもののようにも彼に見えたのだっしっと鰹節をかく音がする。安吉は、その音が音に似げなく 牧歌的な思いにひき入れるを不思議に思った。あたりに物 音のないせいの上、おばさんと太田とが、ものを食うとい 「ごはん、もうないんでしようネ ? 」 うことのために余念なく身を入れているのがわかるせいと ドタドタと降りて行った太田とおばさんとの問答が下か らぎこえてきた。 安吉は解釈した。いったいおばさんが、食事をつくって青年 たちに食わせるのを楽しんでいる様子には、安吉を感動さ 「おひるあがらんとおっしやってでしたから : : : 」 せるような何かがあった。はじめ安吉は、佐伯哲夫が彼女 「何かありますか ? 」 の息子だということさえ知らずにいた。何かの研究会で、 「クサヤがありますよ。」 連中が「おばさん」といって呼ぶこの人を、佐伯が「おっ 「トロロコンプありませんか ? 」 「うッほっほ : : : 」という声があがってきて安吉も笑顔をかさん : : : 」と呼ぶのを見て彼ははじめてそれに気づいた した。それが、「トロロコンプを、わたしが、切らしておくのだった。誰から聞いたとなしに知ったかぎりでは、彼女 もんですか : : : 」といった意味の笑い声だということを安は若くて子供一人あって後家になり、そのときを境に家産 えがお こんぶ ねぎ かん
あげあし いう学生がひょんな揚足を取られたことからかえって議論 れるのだろうか ? 今までのところからすると、どうやら かれらにしても、その点では、安吉ほどではないにしてもが発展しかけたように安吉には見えた。 「それやアむろん研究は大切サ。だけどほんといえア実践 おつつかつつらしかった。少しつつこんで訊いてみると、 ゆくえ : こといって「第 話がみんな行方不明になってしまう。ただかれらは、ちゃの方が根本的だよ。だからここんとこ : んと知っていないらしいのに問題だけは呑みこんで行ける一版の後書き」というところを末次が持ちだしていた、 らしかった。その呼吸がどうにもわかりかねるが、何かの「ここんとこ gespe 「「 ( だろう ? 活字をあけてるだろう、 関係からーー大袈裟にいえば、つまり実践的立場というとネ ? 革命の諸経験をしたしく共にすることの方が、それ かれらには、歴史関係での常について書くよりかも、より愉快でもありより有益でもあ ころから来るのだろう。 識のようなものが一と通りできているのらしい。それが安るっていってるんだ。おれたちにしてもサ、社会変革の実 吉にはなく、またどうしたらそれができるのやらいくらた践にはいってくんでなかったら、『国家と革命』の研究会 っても見当がっかないのだった。もう一つは、学者の名やをやるってことが第一おかしなことになるじゃないか ? 」 なるほど安吉が見ると、「共にする」という言葉と「書 学説について同じことがあり、オーストリヤ学派というよ うな言葉がとびだしてきても安吉にはさつばりわからなか く」という言葉との二つが活字をあけて印刷してあった。 った。・フレンターノ主義だのゾン・ハルト主義だのという言 つまりレ 1 ニンは、十月革命が目の前にやってきたものだ 葉が出てきて、哲学のことかと思っているとそうでないら から、研究を書くという仕事を放りだしたといっているの しい点があり、それでは何として扱われているのかという だろう。「ここには深い意味がある。仕事として文学をや とそれがてんで安吉にはわからないのだった。ビスマルクるにしても、つまりおれのことだが、ここんところはよく というような人間、永久に無縁だと長いこと考えてきた人よく腿に入れなければならぬのだろう。」と安吉は考えた。 物が、文学を仕事としてやるために、つまり安吉自身のた同時に安吉には、より愉快でなくより有益でもないものと めに、ほ・ほ完全にそれを知らなければならぬらしいのに安してーーーそんな意味でないとどれほど思われるにしろ 吉は途まどった。 文学につきものの「書く」という言葉が出ているのがつら その晩はレーニンの「国家と革命」をみんなでやったのく受けとられた。 「しかしそれア君ちょっと問題じゃないかな ? 」と別の学 だったが、安吉にとってはおもしろい話が出た。研究会は 閉じていた。雑談がはじまっていた。その雑談で、末次と生が口を入れた。セッルメントで働いている男とだけは安
とかやめぬとか、それを決めるとか何とかなしに事実とし尊重して扱っているのが安吉によくわかる。同時に、それ けねん ばくん てやめてしまっている。卒業試験の懸念が自然に安吉から だけでもないという気も安吉に漠然とする。どうそれを名 吹きはらわれて行った。 づけていいか ? しかしそれは、多分、文学のヒで、佐伯 「どうだ ? おもしろいことあったか ? 」 の名がどれだけかの程度で確定されてるということに関係 「あったナ : : : 」といって安吉はスキャップにまちがわれするらしい。仁義とか礼儀とかいってしまっては喰いちが た少年のことを話した。話して行くうちに自分でも感動しってくる。しかしそこに、文学の世界ので、創造という て安吉は話した。 無で、侵しても侵されてもならぬ可、 ィーカ・人の , もの A 」い - つ、も 「そうか : : : そのときになって泣き出したかーネ ? 」とのがあるために見える。そのことを、佐伯自身漠然とした いって佐伯も感動した。 ままの形で感じているのだろう。そんな気がしたが、それ 「それ、君、書くか ? 」 以上考えとしてはそれは安吉のなかで進まなかった。佐伯 「いや、書かん : : : 」 が訊くままに、安吉は翻訳の進行のことを話した。ゴーリ 「おれ、書いていいか ? 」 キーあてのレーニンの手紙集があるということをそもそも 「いいよ。書けよ。」 教えてくれた高村の世話で、安吉は経済学部の小森田助教 「「無産者新聞』へ短いものをいわれてるんだ。だけど、 授にあった。学部の関係で、それまで何の関係もなかった しいカネ ? 」 小森田が思いがけず肩を入れてくれて安達書房に話してく やく - 一う 「いいよ。 しいよ。手ごろじゃないか ? 」 れた。その安達がまた、思いがけず乗りきになって訳稿も 「うん。だけど悪いなア : : : 」 見ずに出版を約東してくれた。安吉は、二三枚ちぎって入 「悪かないサ。それにおれや今翻訳やってるんだ : : : 」 れたドイツ語訳のテキストをポケットから出して、安物の 「『手紙』か ? 」 ポケット辞書と鉛筆とで電車のなかでも翻訳を続けた。 「そうだ。今最後んとこなんだよ : : : 」 満員電車では手放しで立ったままで手帳に書いた。ひどい 旨づめのため、誰もかえって安吉の手元をのぞかなかっ どっちかといえば無遠慮な方の佐伯が、少年の話のこと魚 た。それで金がはいれば、卒業直後の生活費が一部分でき でひどく遠慮勝ちなのが安吉にうれしく受けとれた。ただ の遠慮ぶかさというのとは違って受けとれる。佐伯が、安るだろう。それよりも、あまりにひどすぎて、「土くれ』 かなえ 吉もものを書くのだということを知っていて、そのことをでも鶴来にしか話してない斎藤鼎からの四十円の借金がそ
おれは又もや気がふさぐ 4 そうしておれは思い出す おれの先祖のだれ一人 おれに書物はくれなんだと なるほどお経は伝わったが あれはお経で本じゃない けれどもおれはやるだろう おれがじじいになっちまい 息子があるいは娘が大ぎくなった時 「これはとつつあんが若い時 こんなわけあいで手に入れて 胸ときめかせて読んだもの 受けた影響かぞえれば まずこれこれといったとこ お前にや向かぬか知れないが まあ持ってって読んでみな」 息子の拒絶おそれつつ いささか照れて言いながら 史にもおれは慾ばって その上こんなに考える おれの息子も孫を生み そいつが大きくなった時 じじいになった息子めが ある日孫めをつかまえて 「これはとつつあんが若い時 じさまがわしをつかまえて こんな説教鳴らしつつ このとつつあんにくれたもの そしてやつばりとつつあんが 胸ときめかせて読んだもの 受けた影響かぞえれば まずこれこれといったとこ お前にや向かぬか知れないが まあ持ってって読んでみな」 孫めの拒絶おそれつつ いささか照れて言いながら 例の本をば出すだろう してみれや本はやすいもの 世間のおやじよおふくろよ または息子よ娘らよ 高い本なそっい買って お前の気分がふさいだら たとえ子持ちでなくっても お前をとつつあん又はかあちゃんに仕立て上げ 息子や娘を配置して そして気分を直すがいい それがほんとの本好きの
や、駄目さ。頭で考えるってこともあるけども、数でこな やひどいんだ。九十・ ( ーセントはインチャだよ。インチキ げり す課目、労働だね、それが多いんだ。計算でわかっちまうっていっても、それで結構やれるんだよ。風邪ひきや下痢 んだよ。四十点取って、あと二十点取って六十点にするな なんか結構それでまにあうんだ。だけどもね、たとえば んてこと駄目なのがうんとこさとあるんだ。逆なんだよ。者が来るだろう ? それが何か普通とちがったとこがある 試験の満点が六十点で、それ以前の、何ていうかな、日勤だろう ? そうすると新しい注射なんかやるんだよ。それ だな、それが十点とするだろう ? しかし日勤十点の奴にで癒ることもあるよ。たいてい癒るね。しかしね、注射し 試験の満点なんてありつこないからね。 いいとこ四十五六 なくても癒ったかもしれないんだ。そして注射したのとし 」う力、 点だろう。合計、だから、五十五六点さ。だからよした ないのと、同じ癒ってもどっちがいいかってこと、当該患 よ。やけしゃないんだ。事理明白だからね。だけどね、そ者の生涯にとってだね、どっちがいいかってことは考えな しように んなこと、ほんとうはどっちだっていいんだよ。おれや考 いんだ。小児科なんかそれやひどいんだよ。対象が子供か えたんだよ。それやア、ドッペるときまったから考えたんら親へ移転してるんだ。いい ころ加減ひねくりまわされ だけどね。とてもおれにや、医者なんかにゃなれないよ。て、それで子供が死んじゃっても、親たちさえよろしくや 今んとこ文学をやろうと思ってもないけどもね。とにか ってれば、どうもありがとうございました、とうとういけ 医者にやア向いてないんだ。医者なんて、わりにいし ませんでしたが、あれだけお世話を願った上ですから、親 仕事だとは思うけどもね。君なら医者になれるかもしれんとして心残りはございませんなんてお礼に来るんだから ね。 いや、医者は駄目だ。医学ならいいよ。医学ならまだい 「ふむ。」と安吉は答えた。彼らは、香林坊の交番前から いけど、しかしやつばりほかの科学がいいなア : : : とにか ・フラジルの前を通って、いっか桐山に出逢った瀬戸物屋の むさしがつじ へんを武蔵ケ辻のほうへ歩いて行った。 くね、おれは医者に向かないんだ。しかし養家先じや開業 「いやね、医者にはなれなくても自然科学者にならなれる医を望んでるんだ、きめてるんだよ。でなけや高等学校な だろう : : : おれだって、自然科学はやりたいんだ。普通にんか出しやしないさ。純粋の資本投下だからね。しかし駄 ならやれると思うよ。しかし、医者だけは駄目だ。だけ目なんだ。それやね、ひとにくらべてみるとよくわかるん とらたろう ど、養家先じや開業医にしようってんだからね。開業医なだ。宮田虎太郎ってのいるの知ってるだろう ? 」 んて、おれや自分の家がそうだったから知ってるが、それ安吉にも見当だけはついた。小柄な生徒で、「端然」と だめ やっ なお たん娶ん
222 はこり 知らなかった。ある土曜の夕方、埃だらけになって辿りつな話でもあるが、農閑期でもあって泊めてやることにし た。たちまち納得した少年は、不思議な空気のなかで いた少年は、わが家の模様がわりにはっとして気がついた。 なんど 見知らぬ人間が七八人も居間から納戸にかけていて、はい変化した空気が、手でさわれるものとしてあるように少年 あく ってきた少年の方へいっせいに目を向けた。いくつもの顔は感じた。 一友眠って翌る日中学のある町へ戻って行 をみなまで目に入れたわけではなかったが、かれらが顔色った。 一つ変えずに目を戻したのが少年の目に異様に映った。 土曜日土曜日の帰省につれて、いっか平井は十人ちかく せんわん 膳椀の模様から、彼らは晩めしをすましたところらしく平他人をかかえこんだわが家というものに慣れて行った。同 井は想像した。見なれた百姓たちの姿とちがって、かれら勢すべてひとりもののなかで、親方の請負師だけが家族づ は何となく居ぎたなく・ほそっとしていた。自分たちの家れでいた。親方夫婦に手ん・ほうの息子で全家族だったが、 が、よそから来た侵入者に占領されているという感じで、 この息子の名が亀ちゃんというのだった。 まうす くちひげ 平井は囲炉裏ばたに坐ってそっちをうかがうようにした。 親方は、頭を坊主がりにして赤くて太い口髭を立ててい かっこう 当時父親は神戸の方につとめていて、家は祖父母と母とで た。細君は汚い恰好をしていつみても髪の毛をばさばさに やっていたため、いっそう「父の留守に占領された。」としていた。息子は父にも母にも似ていなかった。痩せぎす いう吹っきれぬ少年の思いだった。そこへ、納戸の方からの小柄な少年で、小学校五年へ通っていたがーーーっまり彼 小さい男の子が出てきて、平井を見つけるなり、はにかんは、親たちに連れてこられてこの村の小学校へ転学したの つっそで だようにくるりと向きかえってまた納戸に隠れたのが少年・こっこ。 オナーー筒袖の左腕をぶらぶらさしたまま利巧そうな の気持ちをいっそう変にした。 目で学校教科書を読んでいた。 しかし祖父と母とから話をきくと、少年はすっかり少年屋敷うちにはいつのまにかレールなそが積んであるよう なっとく になった。二本のレールを木の横棒でつないだその恰好、 らしくその場で納得してしまった。 いよいよ軽使の工事がはじまることになった。土方仕事レール道として三町も五町も続いているのでなくて、二間 がはじまる。土方にはこのへんの村々から青年が出る。し半ぐらいの長さで区切られた一組の鉄の軌条が、その恰好 どろ かし「親方」はよそから来る。これは厄介な仕事で、「親で、横木に泥をくつつけたまま幾組も積まれている傍で平 うけおいし 方」は「手下」をつれて請負師としてまわってくるのだ。井は亀ちゃんと話したりした。一一人の親しみには、一週間 この親方の請負師がここの家に泊まることになった。迷惑一週間でぶち切られるところからくる不連続の感じ、親し ろり やっかい
359 千こ行ん んや 力、月リ のら つおたん つや いも っと い式汽別期な やてかも 元と じのら人 れ . し けし、 アん 。てはさ じて てが さち のん 。に 売も じのやノ、 気だ って やじ香分 し かか どか いう いん っ込はれわう アと お召三 い何 い復 でて 。も 。う や円ん金まも ぁ度 しカ そてんら や山か借うれ じも しで て出 でら こ屋こたも型 ツも る百 れで どん らん通整 んと う次そが路たしれ アな きで 。も じあ っ金用かてだ もこ手日用 こ九 じゃ 来に おれんも にが そ し仕 でや ん府リ 父でな取 械孫 せら はれ的蔵 や家 : と屋 ゃんんく 。と らん行がには じわなでなと 思待 父ア おし えの うず ゃん らん 人行 アかるて だい てて ある いん っ変さと やい つ現てほ あ い顔 しが いそ やて をかれの のれ んで ど起 : もや 色タ でのれオ つ水どう したれて しの いて てんんも か転 てる つる続ゃれやそう いだあれじら たて 。し父く 報や しこ やの じき つイ たれ すミ 0 ち 、な やた ナ度 い大う尋 0 と の取 の年る報田ど さん コ父 し文 村 と つ り 三母むずやかで言れ土一れだ円ん 父 あ ん く つ も へやて せ ん テ何も じせじ いなイ や う に さ や お さ / し . い う のてん み 、ナこ も る つ面目 に 行・ 目リ に が議る タ ツ ネ イ。 さ ん そ 十し 聞 く と 日 く し、 も も し の や 0 ん と タ ノ う を 出 う し て う で 。食れ ば っ らにかがに り な じ や て あ会にあ顔 会 - い知と や決お て 、そ て と しんう い の し かそた の、 買 り 、たる そ つ あ 。でも の よ う か 甲 じ手ら く じ れ カ : し て ( と 、に 力、 家 じ や ら に も や紙ん養も 土わ い地ん の り理ん で 。し し やたら おッ っ グ ) つ て 。だそ あんん 、つじなれ や なかば し、 も つもが な ら う んこ来 キ ョ や 持がん 0 ー私、 や や見ね も ら ん そ いが地 わ せか上 つらて と と 、やいいんそ う カ : し し や サ フ し せ の り ・つ 。て ん つ 、も り じ つ 。れたお 、し向 電 が カ フ しズお イ 顔が車 の や奠 : もな七 0 カ : 入 円て じ十 ろじと や おろへ 神力 : し ネな楽らしき 円 、葬でた半ん や タ 、土 : さ う い十こ サのだ ややデ ま で 、勝た算銭た産げき ら じかど飲ち う じ し、 し 。前 じ 今 は つ て え / し - やの さ何五 よ 。ち は よ し、 飲 ん だ が ま た 大 き く 飲 だ 勉 次 も のかだ円ん の じ アれ五 と . ナこ 違 さ 力、 。い よ ら つ出く 、か金 。ろなやし に ナこ じたほ円よあ里んでかも ア 。いに し、 、機て方 も 力、 は絹家やの う し : て ん っ て・ 。崎の 、十 じ や れ お ・ん カ : な ば ーや っ と で ん な 十いる のじじし出 0 そ う 。病んな時さ ア金を や山が質か ン い い な の び ) やでは や ろ し 人 、いもや う ア 0 力、 と 。んろれか た し 0 百・ や カ : カ : し のれも も しける う 、んした常てら何みる じたと科もれもすう やもこ出聞るな足ち や ろ崎高 0 屋 . 、 十 り 第 の き、 に 力、 月 々 く いらかなて ら う 0 し お 父 へ し、 っ めたお 、の じ食も 。かこむ離な も は気ほ し れ と う も う や し、 ら 。ん の 。込をんら せ ん や 。いでかみの やと金 。安う る な じ方円 ア 。けれ 、 ' ・売三 い く じとけ 、にすあ う 、や か し ら 日 じ し、 や ど が
もいうた。天保の饑饉みたいにならにやええが。あの時や 一人前の米でないんじやでのお。」 「それでもこれやこなたの田で出来た米じゃが : : : 」 野原の草の芽まで取って食べたげな。ああ、ああ、年に一 まめかす げた 「それを不合格にしたのはお前さまの方が悪いんじゃ。」度の鉄の下駄も買うてやれず、豆糟や油糟の代はどうして それをむりやり頼んでーーお袋があのガサガサの手の平払うんじやろ ? 」 をさそこすり合わせたことだろう 持って来た米だけは そのあくる日兄貴がふいに死んだ。 さえぐさ 取ってもらうことにしこ。 「三枝、家から呼びに来たぞ。」 「そんなら一つ書いたもんを一枚入れてもらおうかの先生にいわれて学校の玄関に出ると隣りの親父が待って 「書いたもん ? 」 「兄ちゃんが急に容態がわるなったんじゃ。」 「つまり不合格の米はなみの米と見るわけにいかん。そう俺が家に着いたとき兄貴は死んでいた。 かというて頭から受け取らんとなればこれも無理のかかる 熱が出て、哀弱しきった心臓が堪えられなかったのだ。 か・んいト・′ノ 話で、とにかく貰うことは貰う。そこで、差引き勘定し こういう板野先生 ( 川田先生だがみんな板野先生といっ らいくらというものを来年の借銭にまわすという証文を一ていた。 ) と川田の檀那とから出た話だからお袋や親父の 本入れておもらい中したいんじゃ。」 心配したも無理がない。二言目には川田の檀那が「大変な 古い手さ。この頃の地主はずっと近代的にやる。二人は名誉でわしまで鼻が高い。」というのでなおさら気味が悪 持って来た米に借金の証文をつけておいてきた。 かったのだろう。 お袋は途中姉の家へ寄った。姉が貰い泣き始めた。 俺は毎日居残って「義勇公ニ奉ジ」と古した。 「お前とこもか 2 ・わしとこも一札入れた。」そして恐ろ 八 いよいよ御前揮毫の日になった 話しさに堪えぬもののように嘆いた、「今に村にいられんよ くめん のうになるそね。」 俺は兄貴の葬式の費用をふた親がどこで工面したか知ら お袋は馬鹿のようになった。 。もちろん、俺はあわれな親父とお袋とが、どこをど だんな かたき 「いよいよ川田の檀那に仇を取られるんじゃ。地主と小米うして、新しい帽子、新しい、新しい下駄を工面したか しよう とにかく俺はそれらを身につけていた。汽車賃 とはさき生までの仇同士じゃ。これは仇討たれの手始めじ知らない。 ゃ。先々どうなるやら。村にいられんようになると姉さんまで握っていた。かわいそうな親父、かわいそうなお袋。 ひら
死亡診断書、埋葬許可証その他の届書類の手続がなされは胃出血だといった。それを拭きながら母親は大きな衰弱 を感じ、しばしば絶え入りそうになった。 それが済んで話が家賃のことに移りかけると付添いの者夜になって坊主が来た。 が横からロを入れた。 母親は警察の者のところへ行っていった。 「ほかの話はいっさい遠慮して頂きたいのですが : : : 」 「今夜はお通夜をしてやりたいと思います。それであなた 二人は顔を見合わした。 方にいて頂きたくないのです。帰って頂けないでしよう 「では、あなたの方は引取って下さい。それから村田さん カ ? 」 なみだ の方はこれつきりですから。」 それを言い終えると母親の眼から泪が落ちた。 袖を引かんばかりであった。 「承知しました。」 母親は父親が扉の向うに消えるのを見た。 家の中からはじめて警察の影が消えた。 それは永久に消えるように思われた。 読経があり、位牌のつくり方で相談があった。 母親は、この二日間にした父親を逃がすためのすべての 赤ん坊にも誰にも別に宗旨というものはなかった。いろ そうとうしゅう 努力を思い出した。そのために母親は赤ん坊の手当の不十いろ話した揚句、父方は曹洞宗、母方は浄土真宗とわかっ 力いみト - ろ・ 分になることも厭わなかった。それはみな徒労に帰した。 て、戒名は結局どっちつかずの「釈ーー・童女」とすること よみがえ 母親の胸に赤ん坊と父親とに対する愛情が一時に蘇っ てぎた。それを人に見られるのを隠すために母親は黙りこ 小さな柩に添寝して母親は夜明けまで眠った。 くって帰って行った。 十八日の朝九時頃、赤ん坊と母親と母親の義理の妹と三 葬式万端は来てくれた父親の妹と葬儀屋とに任せた。 人、三哩一円の円タクを葬儀場へ飛ばした。 風 小さな箱の中に菰を敷いて寝かせーー・、頭が非常に重かっ 非常に寒い日で風が吹いていた。 かさっえそうり たび の きたーーじゅず、笠、杖、草履、足袋、おしゃぶりを入れ事務所でいろいろの手続や説明を聞いてから、かめ、 しろかなきんふろしき MJ こ 0 箱、白金巾の風呂敷なぞを買った。 ひつぎ 母親は柩に入れてから、長いあいだ赤ん坊のロのはたを柩は母親の手を去ってもはや完全に火葬場の機構の中に 四拭いていた。よだれみたいな黒い液が後から後から出てくあった。 るのだった。それは堪えられないばかりに臭かった。医者火葬は夕方を待って始められた。 こ 0 そで とびら