64 く家はど無の車だをが を にた のと を て や る て 。やく 、もや はて畜、れ蓋客 男 。霧 ふ っすと は し 、の隙、車車輛 し 、」東 思 り 思のたそカる つつ ナこ た 0 り 。れて た側とのう麻を運え間まを い中 もカ ・ち思 っ が袋竜搬がえ困連そ無むおたふ っ き よ に よほ で か ク ) 、だろ用多らる結れ蓋まり う出くう ら鉄 ナこ つは て様弯が か貨 、発 に人 く ばださ つら と に て きみ子すよきた してなろれら車後車 、低 人鉄 機はお らたをさ 、け 関 / 兵り う ろす すし と い てま のと 。たそお 。いた輛のる車隊だ 判ヒ豸カ ぎ 窓、 ぐと ガ れ フばある無 、うほ・の 音ぶ ら も し う の も っそこ る の 光 。蓋大 う い 、たばろ で風 ス な う か運 と か っ ・つ 客 型にと転 の あ あのる と の らだ の ま っかめ に い 話カ てな の車が の走思台と ほもな な だ る る で 。と は三有 いり う 積 し た いい五 いる り り つのは 声あ ん窓わ輛む輛蓋だてあ つも た明め をが 。る に 考なでか がう ・け のろあ貨し 、た備 て の 有なし で 有 つ車た久 り 員 の 入重 にあ 開 え ん , み 。列 の いあ蓋問て たほ るか る 二貨車 。う る車題 意は と みひ のて に 輛 あをに 車の に最 、外 列カ つは お の か 車 の下 やけ家 な後小に れ り小う っ っ の だ有 表を て畜 、型ちら尾型短てと は ら る 閂ぬ を き面く り 便で に 有 、て赤 っ利 どのかな し の を聞 はがぐ 大利は い二蓋列 堤し、カ、 うや ら たで し っ 、輛貨車防火 耳し、 も 型だな で畜 で 開ぎな っ車 オよ つカ : 体 だ く め てにた グ ) ・つ に 、機い あ運れ て 、貨 線 て箱 も ナこ 台を し しかてか つみ つ搬ばきあ のず 、のてかた 積おあ関た痛なな 車 路 り 0 ん 車 。んかく針 た 車 、て づ大一あ と り を し下 ら いわ 、前 でが のすだ開な金お で隠 、かを て か した つる の だ 後のな すて も もれ積る をま べ 力、 い ょに つで し て いる中 り 力なて 、お 荷だん急三 、に う腰けろ う と し ほ 。に れ 積 に 度 、にを な 壁 う の 力、し、め での み 力、の のろ お ふまハぎ / くあかあほ半た はら し 、一角 な 荷 せ作 ったて う う 分 い度た のあ し 、く る業か えける う ン オフ ナこ い の い フ 、を 0 で、 こ笑 だて に お こを に イく マ 冫こ ス し、 大 。よ いなかカた 空 安ー びをだ膝 は わ と ん く だ 声 が いのが っ 踏 。に 小こ扉 えを つは じ がら よ打たん のも て入 をは た まめま ま お 木でし見油 やずる い しかみれ にまみち り で る決扁 箱つめ たな にも 走カ と え る つ不 た ってな鼠。扉ま。と えそ身足 冷 カ : 目 に可ち ト ら のみひだら一 い 数ん 乗 能 つのを音 カ : 力、 。の ラ い つん 冷 手 個だ らが小 ど よが は て ま つで ツる し、 、便く え 閂 袋 、機 たあな ませ近 たど クな く 。はた 乱 マ空の近 そ るづ の いかどるす ほ る た体つ 他 。い 中 つま く 。の馬と 暴 う ッ の の 愛か 部チぼじ聞 ・車 に がたた に足て に いせ 。か え も っ立音ぎ 顔 品を う の ぎ な が 安 : が を う えそカ かちはた 全家うやと く し 、と く去 う つなつの り し、
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りゅうき のトレーニング・・ハンツをはいている者たちが、とくに筋かまえ、さっと上体を沈めて腕から肩ロへの筋肉を隆起さ 肉の発達状態も皮膚の桃色の輝やきもきわだって美事だっせて見せてくれた。この瞬間だけ、かれの若わかしい顔に た。ばくはすでに質問すべき言葉をうしなった。 いかめしさがみなぎった。・ほくは汗の匂いとともに、好ま わきが 「ずいぶん立派に躰をつくったんですねえ」とぼくはいっしい腋臭の匂いを嗅いだ。 そうぼうきん こ 0 「この肩のところが三角筋、その上のが僧帽筋、下のとこ 「まあ、ねえ、みんな永くやってるから」と青年はとくにろのが、誰でも知っているやっ、上腕三頭筋ですね」 けんそん 謙遜するというのでもなく落着いた自信を示していった。 「凄いなあ」とぼくは素直にいった。 「それに、・ほくらはいつも白血病の不安にみまわれている「いやいや、無意味ですよ」と照れかくしのように荒あら でしよう ? だから、すくなくとも、躰の、眼にみえる部しく筋肉をもとにもどし微笑を回復してかれはいった。 がんじよう ようさい 分だけでも、要塞みたいに頑丈にして、その不安に対抗しぼくは黙りこんで頭をふってみるだけだった。青年はぼ ようとしているんですね」 くの沈黙を見てとると、 「ええ」と・ほくが相槌をうっと、 「あなたは、あの人が・ほくらに保険をかけていることを知 「しかし無意味ですよ、白血病には」と青年は徴笑しながっているでしよう ? そのことでぼくらの誰かと話したい らもきつばりといった。 と君ったんじゃないですか ? 」といった。 「無意味ですか」と・ほくはしおたれた声で反問した、自分「ええ、まあ・ : : こと・ほくはますます自分が赤面してくる が赤面するのを感じながら。 のを感じながらいった。 「無意味です。しかし、・ほくらはみな、ボディ・ビルに熱「ほくらはねえ、ここでの生活に満足していますよ。あの 心ですね。この道場にくる、他の人たちにくら・ヘても、や人が・ほくらに保険をかけたにしても、その金は、・ほくらの はりちがいますね。この春、死んだ仲間も、とても熱心でここでの生活のために使われているんですからね。それ さんかくぎん したよ。かれは、うちの誰よりも立派な三角筋をもってい に、あの人がいなかったとしたら、・ほくらはさしずめ、浮 ました」 浪児にでもなったでしようよ。そしてやっとのことで成長 そういってから、青年は・ほくの当惑が、筋肉の名称へのしたとしても、ウサギみたいな筋肉をした役にたたない日 やとにんぶ 無知からきたものだと思いこんで、片腕にさげていたスプ傭い人夫にでもなったですね」 リングの運動具を床に置くと、・ほくを見つめたまま半果に そこから ・ほくはうなずいた。・ほくはかれにお礼をいい からだ あいづち みごと すご か にお
342 からだ は何ひとっ浮か・ヘていないのだ。気がつくと兎ロの犬は躰銃身はもとより油質の艶のある銃床まで打てば手を痺れさ をおどらせ、鳴きたてながら敷石道を駈けているところだせてはねかえす鉄に変質したように鈍く光り、僕らの貧し ぞうきばやしと った。それはすぐ雜木林に跳びこんで見えなくなった。兎い住居に一つの方向をあたえるのと、剥きだしの梁にたば ぼうぜん ロは追いかけようとした姿勢のままで呆然としていた。弟ねられてつりさがる乾燥した鼬の毛皮と、各種の罠。父は いのしし と僕は酒のように血をたぎらせて笑った。兎ロも口惜しが野兎や野鳥、雪のふりつもる冬には猪を撃っこと、それ りながら笑いを押さえきれないのだった。 に罠でとらえた鼬の皮を乾かして《町〉の役場へ渡すこと 僕らは兎ロと別れ、昏れた空気のなかで大きい獣のようで生計を支えていたのだ。 にうずくまっている倉庫へ駈け戻った。父は暗い土間で僕僕と弟は油布で銃身をみがきながら、板戸の隙間の向う らの食事の準備をしていた。 の暗い空を見あげていた。そこから飛行機の爆音が再び聞 「飛行機を見た」と弟が父の背へ叫んだ。「大きい敵の飛えてくるとでもいうように。しかし村の上の空を飛行機が 行機」 通りすぎるのはごくたまのことなのだ。銃を壁の木枠にか そうじ 父は唸るような声をあげ振りかえらなかった。僕は掃除けると僕らは寝台の上へ寝ころんで躰をおしつけあい、父 りようしゅう じゅうか ぞうすい なペ しておくために父の重い猟銃を土間の板壁の銃架からかが雑炊の入った鍋を連びあげて来るのを空腹におびやかさ つぎあげ、弟と腕をからみあって暗い階段を上った。 れながら待った。 かた 「あの犬惜しかったな」と僕はいった。 僕も弟も、硬い表皮と厚い果肉にしつかり包みこまれた 「飛行機も」と弟がいった。 小さな種子、柔かく水みずしく、外光にあたるだけでひり ふる あまかわ 僕らは村の中央にある共同倉庫の二階の、今は使用されひり慄えながら剥かれてしまう甘皮のこびりついた青い種 ない狭い養蚕部屋に住んでいた。厚い板の朽ちはじめてい子なのだった。そして硬い表皮の外、屋根に上ると遠く狭 きわく る床に筵と毛布を敷いて父が横たわり、養蚕用の木枠に板く光って見える海のほとり、波だち重なる山やまの向うの 戸を重ねて作った寝台に僕と弟が寝ると、壁紙にまだ生な都市には、長い間持ちこたえられ伝説のように壮大でぎこ てんじよう くさ くわ よど ましい悪臭をはなっしみを残し、天井の裸の欒に腐った桑ちなくなった戦争が澱んだ空気を吐きだしていたのだ。し かいこ の葉をこびりつけたまま大群になって移動して行「た蚕のかし戦争は、僕らにとって、村の若者たちの不在、時どき 旧居は人間で充満するのだった。 便配達夫が届けて来る戦死の通知ということにすぎなか しんとう 僕らは家具を何ひとっ持っていなかった。父の猟銃が、 った。戦争は硬い表皮と厚い果肉に浸透しなかった。最近 くや かにく いたち わな しび
「どこで兵隊を見つけたんだ ? 」と僕は仲間たちがくりか戸が突然開かれ、内側から頭を突きだした李が不機嫌な重 えす質問を、李の肩に腕をかけて強い語調でもう一度だけおもしい声で僕らをうながした。 「入れよ」 くりかえした。 むしろ 僕らは入って行き、土間に敷いた筵の上に寝そべってい 「なあ、いえよ」 た一人の人間がのろのろと上体を起すのを暗やみになれて 「俺もはっきり知らない」と李はロごもってからいった。 「もうずいぶん前から、俺たちの部落でかくまってる。昼来る眼で見た。僕らは土間へ入りきれなかったので、外側 のぞ はいこう から折りかさなって中を覗くものを含めて、みんながかた 間は廃坑で寝てるんだ、夜になると飯を食いに来る」 ずをのんでその男を見た。男は背後に立っている李を振り 「今も廃坑の中か」と南がねた。 つや ふしようひげ 「村の連中も部落の人間も逃げたから、今は俺んちに昼間かえった。僕らは男の艷の悪い無精髭におおわれた喉の皮 ぼうぜん 膚が昏がりのなかでひくひく動くのを茫然として見つめて もいる」 「何してる」と弟がうわずった声でいった。「ねえ、何し 「ああ」と李が男をカづけるようにいった。「こいつらは てる」 「今見せてやる」と李はむっとしていい口をつぐんだ。 友達なんだ、大丈夫なんだ。誰も密告しないといってる」 ひさし あっ 朝鮮人部落は、村の家よりもなお貧しく、なお低い庇を期待の熱いかたまりが僕の胸のなかで融け、苦い失望が ならべる納屋めいた建物からなっていた。そこには道に石じくじく鉢をひたした。男は予科練の兵隊のあらゆる輝か かわ はこり が敷かれていず、乾いた地面から埃があがった。そして家しさ、光彩に欠けていた。ひぎしまって小さく硬く欲望を しりたくま くびそ もみ 家の背はすぐ森のなかに続いているので、樅の深い樹枝がそそる制服のなかの尻、逞しい頸、剃りたてで青つ。ほい顎 ち 撃道の上まで伸びて来ていたりした。僕らは期待に喉を乾かを彼は持っていなかった。そのかわりに、し・ほみきってい る年齢があいまいな貧弱な顔に暗く疲れきった表情をたた せ、李に対して柔順になりながら埃をまきあげて歩いた。 し家並の端、かって僕らがそこに赤い旗を見た家の斜めにえてむつつり黙っているのだ。彼はしかもあの情欲にみち くぐ 芽ゆがんで虫に食いあらされている二枚続きの潜り戸の前でて極度にみだらな戦争の服のかわりに作業用の上衣をつけ 李がたちどまり、僕らもたちどまった。それから李はめだていた。 たない小さい合図をしてから、自分だけ狭い路地へ入り家「みんな早く見て、あとのやっとかわってくれ」と李が、 うさぎ のうしろへまわりこんで行った。僕らは待っていた。潛り自分の飼っている兎を友達に見せるときのように、大いそ なや のど くら かた
だされてはれ・ほったく、むくんでみえた。息をするたびに た。腰に紐がまきつけてあり、紐の端が長くうしろにのび かばん くちびる 唇の端がこまかくふるえ、つぶれた小鼻が横にふくらんてその先に鞄がむすびつけられている。一と足ごとに、左 だえき ちぢ だり縮んだりする。流れだした唾液が、白いつららになっ右にはねながら、地面をすべって、ついていく。 ぶしよう その鞄の音が、疲れきった二人の暗い心には、なにか虫 て、無精ひげの先に下っていた。かすかに、いびきさえか きはじめたようである。 の匐いずった跡のような、一本の線になって刻みこまれる 「起きなさいよー」っづけさまに、手の甲で、耳のうしろのだ。じっさい久三は繰返して、広い白布のうえを、端か のど を打ちすえる。声が干あがった喉の裏にはりついて、ひりら端にのろのろと匐っていく虫の姿を思いうかべ、それを ひりした。 自分になそらえてみたりしたものだ。すると不確かだった つぶや 高はわけの分らぬことを呟きながら、久三の手からのが自分の運命に、確かな裏づけがあたえられたような気がし れようとして、体をよじった。そのはずみに、傷ついた左てくる。あるいは、一歩の幅を五十センチと計算して、一 手を体の下にはさみこんで、しわがれた叫びをあげ、正気足ごとに百、百五十、二百、三百 : : : と加えていってみ オた をとりもどした。久三の腕につかまり、ぎくしやくと体をる。やがて、万の桁にちかづき、混乱しはじめでもする りようひざ 起こす。両膝で立って、首を左右にふらっかせながら、うと、それだけ希望に近づいたような安心が得られるのだっ ) 0 わずった声でわめいた。 「なぐってくれ、もっと : ・ : こ 高が鞄を手に持てなくなったのは、つい今朝がたのこと 小んく である。夜が明けると間もなく、丘のくぼみに細長い灌木 久三は両手で交互に打ちつづけた。感覚がにぶってい て、まるで綿を打っているようだ。しかし指先が折れるよの林があった。そこで火をおこした。しかし高は体をすく うに痛み、それが肩から耳までひびぎあがって、ただそのめ、血走った目だけを動かして、不安そうにあたりを見ま わし、休もうとはしないのだ。 痛みだけが自分の動作をたしかめさせてくれるのである。 「、もういし 行こう・ : : ・」 「地図をみせてくれ。」 高は喉をならし、不確かな手つきでさえぎって、白く背しばらく地図をのぞぎこんでいてから、前の小高い丘の をみせて光る荒野のうねりを恐怖にみちたまなざしで見ま頂上に登っていぎ、振向いて久三をまねく。南の方を指さ わした。「くそ、行くそ : : : 」杖をにぎりなおし、まだじして、疑わしげな口調でたずねた。 ゅうぶんに立上らない中腰のまま、ふらふらと歩きだし「なにか、見えるかね ? 」
ねら 彼が一撃で土間に倒されると、次の狙われた仔羊が立ちった清らかな温かい唾をのみこむ音と村人たちの重おもし い身動き。それは納屋の外にぎっしり集って内側の会議を あがって無気力な弁明をくりかえした。 「かんべんしてください。俺たちはどうしていいかわから覗きこもうと辛抱強い努力を続けている者たちへの重い波 動を伝えて行った。 なかったから」 ねむけ 僕らの仲間たちは一人ずっ立ちあがっては哀願し、突き僕らは疲れきり睡気におそわれながら、村人たちの注視 たおされたり蹴りつけられたりした。しかし誰一人抵抗すにかこまれてじっとしていた。僕らは待った。 るものはいなかった。僕らはうちのめされて屈服しきっ 長い時のあと、再び村長たちが戻って来た。僕らは村長 て、ただ村長だけが実に長いあいだ叫びつづけ暴れくるつ の眼や脣から熱のような怒りが去っているのを見あげた。 「お前ら、よく考えてみたか」と村長はいった。「自分た それから村長はふいに怒号を中絶し、振りまわしていた 腕の動きをとめてがっしりした腰に支えた。彼は僕らを見ちのやったひどいことをよく考えてみたか」 こうかっ つめ、頭をゆすると村人たちを押しわけて外へ出て行っ村長は黙っている僕らを見まわしてから、注意深く狡猾 ほとん な低い声で殆どささやくようにいった。「お前たちのやっ た。僕らは躰をこわばらせていた。村人たちもまた躰をか ようす たくして村長のかえってくることを期待している様子だったことはもうどうすることもできないだろう。俺たちはそ た。それから外側の呼び声にしたがって数人の村人が出てれを許してやる」 あんど 行き、そのあとで狭い入口に一かたまりの新しい顔があら不思議な冊らしさに・〈とべとする安堵、ぎこちなくし 0 くりしないしこりを残した未成育な安堵が僕らの中へ入り われると李がますます躰をちぢめた。新しい顔たちは村人 きようがく 撃たちより妙に白っぽくすべすべした頬を持っていた。彼らこもうとした。そのあとで始めて驚愕が来た。僕らはまっ 仔 は僕らへあいまいな無気力さにみちた眼をむけ、僕らをとたくあっけにとられていた。僕の仲間の中に神経質にしゃ しかん くりあげながら弛緩した泣き声へのめりこんで行く者がい しがめてはいなかった。 まゆ た。しかも彼はしつかり小さい顎をあげて、汚れた狭い眉 しわ 芽「お前の仲間か」と僕は李の耳に口をよせていったが彼は のあいだに皺をよせ、徴笑をうかべようとさえしているの 答えなかった。 僕は李の耳の内がわに血がこごってかたまりを作ってい るのを見た。そして長い沈黙とその中での幼い喉にからま「明日の朝、お前たちの感化院の教官が残りの生徒を連れ こ 0 こひつじ のぞ なや
・、」すると紳士の長男がその後をつづけて言いました。をかいていました。その左側に、・ほくの蒲団を占領した老 じんえい したあごふりこ 「ヒューマニズムの陣営を武装することだ。」っづけて次男婆が、突出した下顎を振子のように規則正しく左右に動か たたか が、「暴力には正義の力をもって闘わなけれやならない。」して睡っていました。そのわきに並んで、片手と片足を老 突然紳士と、長男と、次男とが、 ・ほくのまわりをぐるつ婆の蒲団につつこむように、婦人が大の字になっていまし いしよう と取囲みました。「私は柔道五段で、警察学校の指導をし た。そのひらひらした衣裳は、白昼見ると、ひどく奇怪な ていたことがある。」と紳士が言いました。「おれは大学でものでした。オ。ヘラの、外国人 ( どこの国民から見ても ) レスリングの選手だったな。」と長男が言い、「おれはボクを代表する、特別な衣裳のようでした。緑の、ひだの多い シングの選手だったつけ。」と次男が言いました。長男と ドレスに、桃色の小片が、ところきらわずぶら下って、下 すそ 次男が左右から・ほくの腕をとり、紳士が・ほくのみぞおちに手にはいだ魚のうろこのように見えるのでした。着物の裾 大ぎな握りこぶしを突込みました。ズボンがずり落ち、そが高くめくれて、それがいかにもわざとめくったように思 くつじよくてき の屈辱的な姿勢のまま、・ほくは気を失ってしまいました。 われ、ひどく気になって困りました。紳士の右側に、紳士 の腹に頭をつつこむようにして、次男と長男が、向い合わ せにいびきをかいていました。いびきのたびに、相手の髪 気がついたときはもう朝でした。 がゆれました。紳士の足元に、「く」の字型になって、お おりたた ゅ ぼくは折畳まれたようになって、机の下に押込まれて いさげに結った十七歳前後の少女が、赤ン坊をだいて寝てい ました。 ました。少女は可愛らしい顔をしていました。紳士の頭の ちんにゆうしゃ はちあ 闖入者どもはまだ誰も目を覚していませんでした。部屋上、すなわち・ほくが押込まれた机のすぐ前に、鉢合わせに ふとん はなは 中に、ありったけの蒲団や衣類がしきひろげられ、その上なっていたずらざかりの男の子と女の子が、甚だしく複雑 者に折重なっていびきをかいているのでした。窓に木の葉をな姿勢でうつぶせに寝ていました。男の子は、走っている とうふ 入もれた朝日がキラキラと泳ぎ、その下を豆腐売りのラッパ 夢でも見ているのでしよう、時折り電気にかかったように 闖がひびき、そうした現実の生活感情と、目のあたり結びつ足首をふるわせ、女の子は、絶えず口をもぐもぐ動かし いた闖入者たちのふてぶてしい存在は、あまりにも現実的て、これはよほどいやしい子にちがいありません。 で、・ほくは恐ろしくなってしまいました。 ひとわたり見廻して、「夢ではないんだ。」心からそう思 うわぎ ひしまくら あんたん 中央に紳士が、上衣を脱いで腹にのせ、肘枕していびき 、暗澹とした気持で机の下からい出すと、全身が。へキ ま ねむ
256 また再び僕らを用心深く見はりながらついて来るのだ。 は、やりがいのある良い仕事の匂いがした。らは期待に びこう 朝だった、冬のよく晴れた良い朝だった。砕いた礫を敷鼻孔をふくらませて冷たい空気をいつばい吸いこみ、身震 いた道の中央の、羊の背のように盛りあがった部分は乾き きって埃をあげたが、茎の黄色く枯れた雑草がはびこって「犬が死んでる」と弟が叫んだ。「ほら、まだ仔大だ」 あんす いるその両端には踏むとぎしぎし抵抗してから不意にあっ弟が駈けよった杏の根もと、背の低い雑草のしげみのな くす けなく崩れる霜柱が残っていた。そして硬く凍っている馬かを、歩きながら僕らも見た。 糞、そのわずかな臭気のある寒さが矢のようにあたり一面「こいっ腹を悪くしてやられたんだ」と弟がほてった頬を の空気へ突きささっていた。 ふりむいて叫ぶと年少の仲間たちの二三人がそこへ駈けよ かどまめつ 坂を下りきると角が磨滅した煉瓦ほどの大きさの石を敷った。「腹がふくれてる」 ほどう いた、やや広い鋪道と小さな低い家々。それらは夜ふけに 「おい」と鍛冶屋が無表情なまま弟たちへ意味のない腕を 僕らが暗い空気の向うに見たものだった。しかしいまそれ振りまわしてどなった。「勝手に列を離れるな」 わら ろうば、 らには午前の陽があふれて藁ぶきの屋根、粗土の壁は柔ら弟たちは狼狽をあらわにしてそこから列に戻って来よう かい金色の艶のある光を照りかえしていた。そして、夜のとした。僕は弟が昨夜鍛冶屋に対して抱いた親近を裏切ら あいだ僕らをおびえさせた山、谷からの道がそこをつらぬれて不満をかくしきれないでいるのを感じた。 わんきよく ぞうき く浅い森とそれに連らなり彎曲して村を囲む急傾斜の雑木「その犬を引きずって来てくれ」と駈け戻る弟へ別に特別 かっしよく 林は、青あおした光をあふれさせ、あるいは淡い褐色に輝な判断をへない、ごくあいまいな声で鍛冶屋がいった。僕 き、そしてそれらすべてから小鳥の声がおしよせた。僕ららは笑い弟が狼狽した。しかし鍛冶屋はまじめにくりかえ - 」うよう すのだ。「縄きれをかけて引きずって来い」 の感情は少しずつ昻揚しはじめ、それは突然盛りあがり、 ほとん 殆ど僕らは歌いたかった。僕らは自分たちが冬の残りとそ弟はもうためらわず、大いそぎで草むらから凍てついて れにつづくいくつかの季節をすごす村に着き、働こうとし固い縄きれを拾いあげ、死んだ大へ屈みこんだ。喚声をあ ていた。働くことは良いことだった。ただいままで僕らへげて年少の仲間たちがそれを加勢しに行った。 提供された仕事はつねに、具の下ごしらえ、不毛な土地「あれを焼いて俺たちに食わせるんだろう」と南が意気銷 ばれいしょ ちん への無益な馬鈴薯植えつけ、そしてせい・せい板底スリツ・ハ沈した身ぶりを誇張しながら低い声でいった。「ひでえこ かが の製造だ 0 たのだ。背を屈め急いで歩く野驥の沈黙にとになる・せ」 ばやし ふん ほこり れんが かた かわ にお こいぬ かんせい