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検索対象: 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)
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1. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

ゅうまやま ええいもう思うまいとしても木綿間山を越えて行ったあの方が思われて ならない あらい かさしま 集 ( 草陰の ) 荒藺の崎の笠島を見ながら夫は山路を越えていることだろうか 葉〈また「み坂を越えていることだろうか」〉 しまくまやま 萬 ( 玉かつま ) 島熊山の夕暮れにひとりで夫は山路を越えていることだろう か〈また「タ霧に包まれずっと恋い焦れて眠ることもできない」〉 引命がけでわたしが思う夫は ( 鶏が鳴く ) 東国の坂を今日あたり越えている ことだろうか こぬみ いわきやま 磐城山をまっすぐ越えていらっしゃい磯崎の許奴美の浜にわたしは立っ てお待ちしていましよう 3191 3195 よしゑやし↓一三夫。ここは、どうに 引でもなれ、という捨鉢な気持を表す 感動詞として用いた。〇木綿間山ー所在 未詳。三四七五の「遊布麻夜万」と同じ山か。 草陰のー荒藺の枕詞であろうが、か かり方未詳。〇荒藺の崎ー所在未詳。 いりあらい 一説に、東京都大田区人新井の辺か、と いう。〇笠島ー所在末詳。一説に、東京 都品川区鈴ケ森の辺か、とする。〇「み 坂」ー旅人を迫害する恐ろしい神の住む 坂の意か。 ◆類歌一七三 0 。 玉かつま↓ = 九一六。ここは島熊山の枕 引詞。ただし、かかり方末詳。〇島熊 山ー大阪府豊中市緑丘にある小山。高さ 一二。〇「タ霧に」ーこのニは場所を 表し、タ霧の中で、の意を表すのであろ ◆原歌は留守の妻の作であるが、「一に 云ふ」の方は旅にある夫の歌と思われる。 4 息の緒↓一三堯。〇鶏が鳴くーアヅマ あづま 引の枕詞。鶏が鳴くぞ起きょ吾夫、の 3192

2. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

341 巻第十二 3141 ~ 3144 3144 の旅 この ろ夜よ の 久 し く な れ さ に ら ふ 紐 f 解 き 放さ け る こ 3143 引 41 引 42 くさまくら 草枕旅の悲しくあるなへに妹を相見て後恋ひむかも 旅愁をいう。ナへ ( ニ ) は、、すると共に、 、するにつれて、の意だが、前後の文脈 に応じて、、しているところへ、、する のに、などの順接ないし逆接の接続助詞 の或る場合に相当すると思われる意味用 法のこともある。ここはその前者に当る。 万葉仮名で「奈倍」「奈倍尓」などとあり、 その「倍」は本来濁音字であるため、ナベ ただ ( ニ ) と読まれることが多かったが、この 国遠み直には逢はず夢にだに我に見えこそ逢はむ日ま歌をはじめとして「苗尓」「苗」と書かれ た例も多く、中古でも『古今集』の写本で そのヘを清音に読むように指示した声符 でに を見る。〇妹を相見てーこの妹は旅先で 逢った見知らぬ女をいう。 2 国遠みーこの国は故郷をいう。〇夢 ことと わぎもこ かく恋ひむものと知りせば我妹子に言問はましを今し悔引にだにーせめて夢にでも。↓一三。 〇我に見えこそーコソは希求の終助詞。 かく恋ひむものと知りせばー知リセ しも ・ハ↓一一全四。家に居た時には現在の恋 しさが予想できなかったことをいう。 0 言問はましをー十分に語り合っておけば よかったのに。 さにつらふ↓一一五 = 一 ( につらふ ) 。赤み 引を帯びた。ここは妻の下紐の色の描 写。〇紐解き放けずーサクは放つ意。五 0 九にもこの二句と同じ語句がある。妻と 共に寝ない淋しさを表す。 へば あ いめ いもあひみ われ のち あ くや

3. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

引心まで捧げたあなたに何をいったい言わないのに言ったなどとわたしは ワ朝 0 だましましようか おもわす 集引面忘れだけでもできようかとげんこつで打っても懲りない恋という奴め 葉は まゆか 萬めったに逢えない君を見よとて左手の弓を持っ方の眉を掻いたのに うわさ あしがきご すきを見て葦垣越しにあの娘にちょ 0 と逢 0 ただけで噂がほんとに高い 引今だけでも存分に逢ってください逢えないで恋しく思う年月が長いこと でしようから てまくら 朝寝髪をわたしは櫛でとくまい愛している君の手枕に触れたのだもの 2578 やっ 3 心さヘー心までも。心は身に対して 乃用いている。〇言はずて言ひしー実 際に言っていないのに言ったなど。誰が 何と言ったのか不明。あるいは、作者が これまで愛した男は居ない、などと言っ たことをいうか。〇我がぬすまはむーヌ スマフ↓一一四七 0 ( ぬすまはず ) 。ここは、ご まかし隠す意。 4 面忘れだにもえすやー面忘レ↓一一五三三。 ダニは、せめて、なりとも、の意の 副助詞。恋の苦しみが癒せないのは仕方 ないが、の意。工は可能を表す副詞。上 代語では必ずしも打消を伴わず用いられ しようこ る。〇恋といふ奴ー恋を憎み、性懲りな いや

4. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

すずかがはやそせ 鈴鹿川八十瀬渡りて誰が故か夜越えに越えむ妻もあらな甲賀郡の山中に発し、争塒市と野洲郡野 洲町との間を北流し、琵琶湖に注ぐ。以 上三句、ヤスの同音繰返しによって「安 くに 眠」を起す序。序中に序があり、二重序 をなす。 8 白波ー岸に寄せた波がまた沖に戻る あふみ やすかはやすい 引勢いを見せる、そのような律動に、 我妹子にまたも近江の安の川安眠も寝ずに恋ひ渡るかも 見知らぬ女性に言い寄るべきか見過すべ きか、あれこれ思い悩む自分の気持をた とえたもの。〇辺にも沖にも寄るとはな しにー旅先で見かけた女に働きかける決 おき 旅にありて物をそ思ふ白波の辺にも沖にも寄るとはな断がっかない気持を表す。 湊廻ーミナト↓一一四六〈 ( 湊葦 ) 。ミは、 引まわる、巡る、の意の上一段動詞ミ しに ルの名詞形。ここは周辺部の意。この後 の「荒磯廻」 ( 三一六三 ) のミも同じ。 0 満ち来 る潮のー以上二句、イヤ増シニを起す序。 みなとみ 湊廻に満ち来る潮のいや増しに恋ひは余れど忘らえぬ「葦辺より満ち来る潮の」 ( 毫 ) と類想。 〇いや増しに↓一一全一一。〇恋ひは余れどー 恋ヒ余ル↓三 0 一三 ( 下ゅ恋ひ余り ) 。このド 力も は逆接性が少ない。↓一一究七 ( 恋は増され ど忘らえなくに ) 。 十 貞の浦のー貞ノ浦は所在未詳。「左 第 巻 さだうら 引太の浦」 ( 一一当一 l) と同地か。以上三句、 沖っ波辺波の来寄る貞の浦のこのさだ過ぎて後恋ひむ同音によ。てサダを起す序。〇このさだ 過ぎて↓一蓍三。 カ 1 も ◆一一当一一に重出。 3158 引 57 わぎもこ へなみきょ しほ ゅゑ へ のち こうか

5. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

萬葉集 78 引雷がちょっとだけ鳴り雨など降らなくてもわたしは留まるよあなたが留 めるなら 2515 2516 右の二首 まくら ( しきたへの ) 枕が動いて夜もろくに寝ていないだろうねでも思う人には あ あとで逢えるものだよ こけは ( しきたへの ) 枕が人に物を言うものですかその枕には苔が生えています 右の一一首 かきのもとのあそんひとまろ 以上の百四十九首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出ている。 おもい じかに心緒を述べた歌 引 ( たらちねの ) お母さんに反対されたらだいなしにあなたもわたしも話が よ なるでしよう 4 しましとよもしー以上二句、前の問 歌の語句をそのまま繰り返したもの。 贈答の答歌は前の歌の語句を借りて詠み 込むことが多い。 5 しきたへの↓一一四一 0 。〇枕動きてー眠 てんてん 乃れなくて輾転反側するため、枕の位 置が安定しないことをいう。この枕は相

6. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

うわさ 近くにいる間噂だけでも聞いて気を紛らしていた今夜から恋しさがます ますつのろう 集旅先で恋い焦れるのは苦しいいつになったら都に行ってあの方に逢える 葉だろうか 萬遠くに居るので姿は見えない普段のように妻の笑顔がまぼろしとなって 年内に帰って来ればよいのにと朝影のように痩せ細って待っているであろ う妻がまぼろしとなって見える ( 玉桙の ) 旅に出かけて別れて来た日からずっと思っているので忘れる時 がない Ⅷなんとまあこうもせつない恋であったのか君に旅立たれて恋しいことを 思うと 3135 引 39 あ 名のみも聞きてーこの名は相手の噂 引をいう。〇今夜ゅ恋のいや増さりな むー恋ノのノは主格を示す。文の主格が 格助詞ノ・ガをとることは一般にない。 ここは今夜ュの下に疑問の係助詞ヤ・カ の類があるべきところだが、音数の都合 で省略されているのであろう。

7. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

門立てて戸もさしたるをいづくゆか妹が人り来て夢に見 十えつる 巻 3116 3115 3114 こと きは われあ 極まりて我も逢はむと思へども人の言こそ繁き君にあれ則的な構成となっている。もっとも、こ の歌を模したと思われる大伴坂上郎女の 歌にも「心には忘るる日なく思へども人 右の一一首 の言こそ繁き君にあれ」 ( 六四七 ) というのが ある。 5 息の緒にー息ノ緒↓一三究。相手のこ いきを 引とを思う心がわずかに命の支えとな 息の緒に我が息づきし味すらを人妻なりと聞けば悲しも っている状態で、の意。〇我が息づきし ー恋しさにため息をつき続けた。〇妺す らをースラは一般に軽いものを取り上げ て言外に重いものの場合を類推させる働 わ のち 我が故にいたくなわびそ後つひに逢はじと言ひしこともきの副助詞だが、スラヲは、、だが、 だというのに、のような逆接の気持が認 められ、意味にかなりの差がある。 あらなくに 6 いたくなわびそーワプ↓一一六三四 ( 恋ひ 引わびにけり ) 。〇逢はじと言ひしこ ともあらなくにーそのうちきっと逢いま しようと言ったはずなのに。ただし、か かる所が禁止であるため、順接と解する こ A 」、も可北 ふた 門立ててーこの立ツは、蓋をする、 引閉める、の意。〇戸もさしたるをー このサスは錠を閉める意。↓一一九一一一 ( 屋戸 さすなゅめ ) 。 盗人の掘れる穴よりー戯れの表現。 掘ルの使用から土壁が想像されるが、 門立てて戸はさしたれど盗人の掘れる穴より人りて見えトンネル坑とも考えられる。 かど ゅゑ 右の一一首 あ いも ぬすびと い き しげ いめ 3118

8. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

0 こ AJ + ありありて後も逢はむと言のみを堅く言ひつつ逢ふとは 巻 なしに 3112 3111 3110 き ころも さきだ 夢に見て衣を取り着装ふ間に妹が使ひそ先立ちにける 右の一一首 ひとごと 人言の繁くしあらば君も我も絶えむと言ひて逢ひしものても絶えまいと言って逢い始めたはずで す、という気持。 すべもなき↓一一三交 ( すべなきこと ) 。 、力も 引どうすればよいかわからないほどに つらい。〇片恋をすとートは本来意図や 目的を示すが、時には「物思ふと隠らひ 居りて」 ( 一一一究 ) のように、状態を表すテ に近い用法もあり、さらには三 0 九四の「物 かたこひ 思ふと寝ねず起きたるーのように、原因 すべもなき片恋をすとこのころに我が死ぬべきは夢に見を表す用法さえある。ここもその一例。 〇我が死ぬべきはーこのペシは、見るか らにその推定が確実そうな状態であるこ えきや とを示す。〇夢に見えきゃー心から思え ば相手の夢に見える、という俗信によっ て言う。 装ふ間にーヨソフは何らかの事をす 引るために準備を整えること。ここは 相手の女の所に出かける身支度をするこ とをいう。〇妹が使ひー三一二の歌を伝え た使いの者。〇先立ちにけるー先立ツは 順序が前になる意。 3 ありありてーずっとこのような状態 引を続けて。このアリは逢うことがで きないでいる現在の状態をさす。〇後も 逢はむ↓一一八四七。以上、相手の女が以前に 言った言葉。〇堅く言ひつつーこの言フ は約束する意。 いめ しげ 右の二首 のち よそま あれ いも あ あ いめ

9. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

325 巻第十二 3106 ~ 3109 あひみ 相見まく欲しきがためは君よりも我そまさりていふかしホリスレ・ ( 。ソなどの読み添え案もある。 タメは本来、目的・便益を表し、原因・ 理由を表すュヱとは混同しないといわれ みする るが、漢文訓読体などで紛らわしい場合 もある。〇いふかしみするーイフカシは、 不審だ、の意であるが、疑う気持は少な く、相手の生活をあれこれ思いやること を表す。フは清音。↓六哭 ( いふかし ) 。 ◆前の男の歌に、女が逢おうとしないか ら恋死にしそうだ、とあったのを受けて、 逢いたい気持はむしろ私の方が上である が、将来のことを考えて逢いたいのを堪 えているのです、と答えた女の返歌。 うっせみー生きてこの世に在る人。 引〇生けりともなし↓一一九八 0 。 8 人目繁くはー繁クハは仮定条件。こ 引こは前の歌の第一一句を受け、そうい う事情なら、と言ったもの。〇夜の夢に をーこのヲは命令や希求を表す文の中に 置かれ、強めを表す間投助詞。〇継ぎて 見えこそーコソは希求の終助詞。 ねもころに↓一三査 ( ねもころの ) 。〇 引思ふ我妹をーこのヲは、、なるもの ひとごと を、の逆接的な意味に用いたもの。〇淀 ねもころに思ふ我妹を人言の繁きによりて淀むころかもむころかもーこの淀ムは通うことを差し 控える意。原文も「不通比日可聞ーと書か れている。 よるいめ ~ うっせみの人目繁くはぬばたまの夜の夢にをぎて見え こそ 引 07 うっせみの人目を繁み逢はずして年の経ぬれば生けりと もなし 右の二首 右の一一首 ひとめ わぎも しげ あ あれ へ よど い

10. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

357 巻第十二 3181 ~ 3186 3185 手 に 取 り 持 ち て 見 れ ど 飽あ ぬ 君 に 後 れ て 生い け り と あ したびもわれ けふ 白たへの君が下紐我さへに今日結びてな逢はむ日のためを止めて、手放す意。ここは旅に出よう とする男の希望を容認することを表す。 君は去にしをーヲは逆接の接続助詞。 引ここに居ない夫が自分の紐を解くわ けがないのに、という気持。〇誰が解け かー疑問条件。〇結ふ手たゆきもータュ キは、ものうい、おっくうだ、の意の形 容詞タュシの連体形。力の結び。紐が自 然に解けるのは恋人が自分に逢いたがっ ているしるし、という俗信によって言う。 何度結んでもすぐ紐が解ける、そのうち に結び直すのもおっくうになった、よほ ど夫が恋しがっているのだろう、という 気持を詠んだもの。 旅行く君をーこのヲは、、に向って、 引の意。〇あまた↓ = 九哭。 5 まそ鏡ー「手に取り持ちて見る」の枕 引詞。一一お一・一一査三に類例がある。〇君 に後れてーオクルは、あとに残される、 の意。〇生けりともなし↓一一九合。 跖曇り夜のータドキモ知ラズ、迷フな 引どの枕詞。月がおぼろで物の形状や 所在がはっきりしないことによってかけ た。〇たどきも知らぬータドキ↓一三八八。 ここは、様子、見当、の意で、不案内な 山坂を勝手もわからず行くことをいう。 曇り夜のたどきも知らぬ山越えています君をば何時とか〇何時とか待たむ↓一一奐。 3183 3181 3182 くもよ くさまくら ゅ ~ 草枕旅行く君を人目多み袖振らずしてあまた悔しも しろ 白たへの袖の別れは惜しけども思ひ乱れて許しつるかも ゅ た 都辺に君は去にしを誰が解けか我が紐の緒の結ふ手たゆ を」も みやこへ そぞ い ひとめ を と そぞふ わ ひもを くや いっ