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検索対象: 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)
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1. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

27 巻第十一 2385 ~ 2389 2388 2389 も立 来こち ずて 居ゐ て た ど き も 知 ら ど も に 「コ げ ね 日 2385 のちくい ~ 巌すら行き通るべきますらをも恋といふことは後の悔 あり 2387 怪あ た ま の 五 年 経 れ ど 我あ が ふ る 跡 な き ノじひ の ま な く ひなら けふ 日並べば人知りぬべし今日の日は千年のごともありこせ ぬかも いはほ りない、はかない、の意。〇止まなくー 止マズのク語法。 巌すら行き通るべきー巨岩をも踏み 2 破って通るほどの。マスラヲ ( 一一三五四 ) の気負いの具体的表現。 7 日並べばー幾日も重ねて逢っていた 為ら、の意。原文は、底本に「日促ーと あるが、非仙覚本一本に「日位」とあるの による。「位」は『万象名義』に「列也」とあ 、並ぶ意。〇今日の日はー久しぶりに 逢えた今日一日は、の意。〇ありこせぬ かもーコセヌカモ↓一三 ( あひこすなゅ め ) 。 8 立ちて居てー居ルはすわる意。心が 2 落ち着かないことを示す常套句。〇 たどきー手がかり、手段。また、様子、 見当、などの意にも用いられることがあ る。タヅキとも。タは手の交替形。『日 本書紀』神代下に「沖っ鳥鴨ヅク島にーと ある歌が、『古事記』では「沖っ鳥鴨ドク 島にーとなっている。〇間使ひー相手と 自分との間の連絡をする使者。 9 ぬばたまのー黒・夜などの枕詞。ヌ ・ハタマはあやめ科の多年草ひおうぎ の真っ黒な実をいう。〇あからひくー日 ・朝の枕詞。明るく輝く、の意。↓一三究。 あさゆ ぬばたまのこの夜な明けそあからひく朝行く君を待たば〇待たば苦しも↓ 3 一一一〈『。 いっとせふ よ ちとせ

2. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

かきのもとのあそんひとまろ 右の四首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出ている。 た 来月まであの方に逢えないと思うからだろうか一日も経たないでしきり 集に恋しい 葉行かないでと引き留めに来ないかと振り返りながら行くけれど留めに来な 萬いこれから長い道のりだのに 旅先であなたを思い出しはっきりと人が知るほどに嘆くのではなかろう ・カ 里を離れて遠く出かけたわけでもないのに ( 草枕 ) 旅だと思うとやはり家 が恋しい 3133 ↓一三六一一左注。 月変へて君をば見むー月変へテは、 引月が改るのを待って、の意。この歌 が「羈旅」の部に人っているのは、夫の旅 が翌月にまたがるからであろう。〇思へ かもー疑問条件。〇日も変へずして恋の 繁けむー日モ変へズシテは、出発したそ の日のうちに、の意。出発早々でもうこ んなに絶え間なく恋しいことの原因を推 量して言う。

3. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

( ぬばたまの ) 夢の中ぐらいは続けて見えてくださいよ涙で袖の乾く日もな いほどにわたしは恋しく思っていますのに 集現実にはじかに逢えません夢でなりとほんとに逢っているように見えてく 葉ださいわたしは恋しく思っていますのに 萬 物に寄せて思いを述べた歌 ひも 人の目に触れる上着の紐は結んで人の見ない下紐を解いて恋い慕う日が 多い 人の噂のこんなにも高い時はあの娘がもし衣であったらじかに着ように ( ま玉つく ) 先まで見通して思うからこそ一重の衣をひとり寂しく着て寝 ているのです 2851 2853 2852 うわさ そぞ 9 その夢にだに見え継げやーこのソノ 2 は語調を整えるために挿人したもの。 見工継ゲヤは、命令形に詠嘆のヤが付い た形。この見ュは相手が自分の夢に見え ることをいう。思えば相手の夢に見える という俗信によって、ひたすらわたしの ことを思ってください、という気持で言 ったのであろう。原文に「彼夢見継哉」と あり、訓義に諸説がある。〇袖乾る日な くー涙で濡れた袖が乾く日とてないばか りに。 直には逢はずー原文に「直不相」とあ 囲 り、一一会八「或本の歌」に合せて、ここ も直ニ逢ハサズなどと読むこともできる。

4. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

我が恋は慰めかねつま日長く夢に見えずて年の経ぬればーあなたがわたしを捨てても。 6 うらぶれてーしょんぼりとうなだれ 囲て。ウラブル↓一一四 0 九 ( うらぶれ居れ ば ) 。〇天雲のータュタフの枕詞。〇た かたこひ ゆたふ心ー動揺して不安定な心。 川ま日長く夢にも見えず絶えぬとも我が片恋は止む時もあ 7 水無瀬川↓一一七一一一 ( 水無し川 ) 。表面は 囲さりげなく装いながら、心の中では らじ 絶えず思っている自分の気持をたとえた もの。〇ありてもーこのアリは、ずっと このままの状態を保つ、の意。川の水が 絶えず流れ続けることと人知れず思い続 けることをかけていう。〇行くといふも のをーこのモノヲは単なる文末的用法。 あまくも わおも かきつはた↓一一吾一。ここは咲キの意 うらぶれて物な思ひそ天雲のたゆたふ心我が思はなくに 囲で地名佐紀にかけた枕詞。「をみな へし佐紀沢ー ( 六 ) 、「をみなへし佐紀野ー ( 一九 9 ) などの類例がある。咲キのキは甲 みなせがは 川うらぶれて物は思はじ水無瀬川ありても水は行くといふ類、佐紀のキは乙類で、厳密には発音が 異なるが、掛詞の場合多少の差は無視さ れる。〇佐紀沼ー奈良市佐紀町一帯の沼 -8 ものを 沢地。平城宮址の北部に当る。〇笠に縫 ひ↓一一七七一一 ( 小菅を笠に縫はずして ) 。ここ 十 も女性と関係を結ぶことの比喩。連用中 第 巻 止だが、内容的には逆接的に続き、次句 の待ツにかかっている。〇着む日ー正式 0 に結婚する日の比喩。この着ルは笠や帽 さきぬすげ 川かきつはた佐紀沼の菅を笠に縫ひ着む日を待つに年そ経の類をかぶる意。 け 右の一一首 右の一一首 いめ かさ いめ き あ や へ

5. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

反歌 け あおも 天なるや月日のごとく我が思へる君が日に異に老ゆらく 十惜しも 巻 00 3245 持でいう。〇月読ー月の異名。「月読を 反歌 とこ」とも。〇持てるをち水ーヲチ水は 阿胡の海の荒磯の上のさざれ波我が恋ふらくは止む時も若返りの水。ヲツは、元に戻る、若返る、 の意の上二段動詞。ヲトコ・ヲトメのヲ トと同源。欠けてもまた満ちる月を不死 なし なるもの、永遠に若い男子と解し、月に その不老の霊水があると考えて言う。〇 い取り来てーイは接頭語。〇君ー作者と の関係は不明。君主、親、夫、年長の友 人などいろいろ考えられる。反歌や三一一四七 のそれも同じ。〇をち得てしかもー原文 つくよみ あまはし たかやま 天橋も長くもがも高山も高くもがも月読の持てるをちは底本など大部分の古写本に「越得之早 物」とあるが、元暦校本に「早」を「旱」に まっ 作るのによる。ただし、テシカ ( モ ) は話 水い取り来て君に奉りてをち得てしかも し手自身のことに関する願望を表すのが 例で、他者に、、してあげたい、という 場合には用いない点に難がある。 天なるやーこのナルはニ在ルの約。 ヤは連体格の下に用いる間投助詞。 〇月日のごとくーこの月日は天体のそれ をいう。一般には、暦の場合「月日」、天 空のそれは「日月ーというが、時には暦の 上の月日を一六七・一一 8 などのように、「日 月 [ ということがあり、ここも例外。〇 日に異にー日を経るに従って一段と。ケ ニ↓一三究 ( 心を異には我が思はなくに ) 。 〇老ゆらくー老ュのク語法。 を あめ 右の一一首 右の一一首 ありそ ひ お

6. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

おのがじし人死にすらし妹に恋ひ日に異に痩せぬ人に知た用法。自分は恋で死にそうだ、という 気持で言う。〇日に異に痩せぬー日ニ異 ニ↓一一八全 ( いや日に異には ) 。〇人に知ら らえず えずーこのヒトは「味」の言い換えであろ う。倒置して上にかかるが、かかり先は 第三句。 けだしくもーあるいは。もしかして。 四ケダシクはケダシ ( 一一六吾 l) に同じ。 恋といふものをー恋トイフモノとい 四う表現は、作者がこれまで恋に無縁 で未知の世界の物事と考えていたことを 示す。〇相見ねばー相見ルは一般に対象 を人に限る。擬人的表現。〇恋の中にも 生ける代に恋といふものを相見ねば恋の中にも我そ苦ー世の中にあれこれ数多く存する恋の中 でも特に。 夜に至らばーこのイタルは、時が移 しを」 四り行き、ある特定の時点に到達する ことをいう。「霞立っ春に至れば」 ( 一三七 ) 、 「露霜の秋に至れば」 ( 四 0 二 ) などの例があ ゅ る。〇我こそ行かめーコソは排他性の強 思ひつつ居れば苦しもぬばたまの夜に至らば我こそ行 い助詞。たといあなたがいらっしやらな くても、の余意がある。作者は女性であ + かめ ろう。 巻 燃えて思へどーこのテは状態や程度 四を表す用法。燃えるほどまでも激し く思っていることをいう。〇うっせみの 心には燃えて思へどうっせみの人目を繁み妹に逢はぬーウッセミ↓一一一。ここは人の枕詞。 2928 タ々に我が立ち待つにけだしくも君来まさずは苦しかる よひょひ よ わ を ひとし いも あひみ ひ よるいた き けや しげ うち われ あ あれ

7. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

ないことからオホホシを起す序とした。 〇おほほしく↓一一四四九。ここは見え方が不 十分である意に用いた。 失せなむ日こそー永遠に変らぬ愛情 や信頼の念を誓う場合、生起する道 理のない事態を仮想し、仮にそのような ことが起ったならわたしの心変りもあろ うが、そんなことはあり得ないから違約 するはずがない、という一種の仮定条件。 や類想歌一一四一九。 十五日に出でにし月のー満月が中天 おも たかたか もちのひ ~ 十五日に出でにし月の高々に君をいませて何をか思はむ一高く上。」る。とからタ「タカを 起す序とした。〇高々に↓一一八 0 四。ここは 待ち望んだ甲斐があって客が来てくれた ことを示す。〇君をいませてーこのイマ 月夜良み門に出で立ち足占して行く時さ ( や妹に逢はざセは、いら。しやる、来られる、の意の 四段敬語動詞イマスに対する下一一段使役 動詞の連用形。〇何をか思はむ↓一一九兊。 繝らむ 足占ー歩いて事の成否や吉凶を占う 占いの一種。↓当六。〇行く時さ へや妺に逢はざらむー詠嘆的疑問 7 さやけくはー仮定条件。ここは反事 + ぬばたまの夜渡る月のさやけくはよく見てましを君が 実の仮想を表す。逢った夜、月がお 】すがた ぼろであったため、相手の男の顔がよく 姿を 見えなかったことを残念に思い、月さえ 8 もっと明るく照ってくれていたらよかっ ワ朝 たのに、と恨んで言ったもの。 ゅふづくよあかときやみ タ月夜暁闇のおほほしく見し人故に恋ひ渡るかも ひさかたの天つみ空に照る月の失せなむ日こそ我が恋止 まめ つくよよ かど い あま よわた あしうら ゅゑ いもあ あ

8. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

右の一首 しぐれ かむとけの日香空の九月の時雨が降ると雁がねもまだ来鳴かない神 つき みたや 集奈備の清い御田屋の屋敷内の田の池の堤の ( 百足らず ) 槻の木の枝に もみじ 葉鮮やかに色づいた秋の紅葉を手に巻いた小鈴を鳴らしてたおやめでわ 萬たしはあるが引きっかんで梢もたわむほどに束ね折ってわたしは持って 行く君のかんざしにするため 反歌 ひとりきりで見ていると物足りなくて神奈備の山の紅葉を折って来まし たよあなた 右の一一首 かん かむとけのーカムトケは落雷。原文 3 に「霹靂之」とあり、カムトケシと読 むことも可能だが、次句の「日香」が訓義 未詳のため、決定は困難。〇日香ー原文 のまま。読み方不明。〇しぐれの降れば ー句を隔てて後の「みづ枝さす」にかかる。 〇雁がね↓三一一八一。〇神奈備の清き御田屋 ーカムナビ↓三一一毛 ( 神奈備の三諸の山 ) 。 ここも飛鳥のカムナビであろう。田屋は 稲の取入れの前後田のそばに造る番小屋 か。清キといい、接頭語ミを冠するのは、 神に捧げる米を作るために斎み清めたこ とをいうのであろう。〇垣内田ーカキッ で耕作している田。カキツはカキウチの

9. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

あかっきやみ タ月夜の暁闇の朝影のようにわたしの体は細 0 たあなたを思いあま 0 て 8 月があるので夜が明けたとも知らないで寝忘れて朝帰りしたのを誰か見 集はしなかったろうか 葉あの娘に一目逢いたさはタ闇の木の葉隠れの月を待つようなもの りようそぞ 萬両袖で床を打ち払いあの人を待っていた間に月が傾いてしまった ふたがみやま 二上山に隠れる月のように惜しいけれどあの娘の手枕をしないこのごろ てまくら タ月夜暁闇のー暁闇はタ闇 ( 一一六六六 ) の 対。タ月のある頃、特に月齢十日ぐ らいから十二、三日あたりまでの月は夜 中に沈み、明け方かえって暗くなるこ とをいう。以上、朝を起す序。〇朝影に 我が身はなりぬ↓一一三九四。〇汝を思ひかね てー汝↓一一六一一 0 ( なぞ汝が故と問ふ人も なき ) 。原文に「汝乎念金丹」とあるが、 「丹」を「手」の誤りとする『万葉集古義』の 説による。 明くらむわきも知らずしてーワキは 区別。十五日以後は有明の月で、月 明りのまま夜明けになるので言う。〇寝 て我が来しをー恋人の家で寝過して帰っ たことを。〇人見けむかも↓一一四九一一。 や自分の不注意で二人の関係が人に知ら

10. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

( あらたまの ) 年は巡っても ( 玉梓の ) 使いが来ないので霞の立っ長い春 あふ の一日じゅう天地に満ち溢れんばかりに思い ( たらちねの ) 母の飼う蚕の まゆ 集繭ごもりのように息苦しく嘆き続けて自分の恋い焦れる心の中を人に言 葉うべきものではないので ( 松が根の ) 待ち遠しさに ( 天伝ふ ) 日が暮れ果 萬てると ( 白たへの ) わたしの衣の袖は涙で濡れ通るばかりになった 8 あらたまの↓一三会。〇年は来去りて 反歌 ー来去ルは時間が到来してはまた過 こんなにも思ってくれないのなら ( 天雲の ) 空のかなたにでもあの人は居ぎ行くことをいう。このテは逆接的用法。 〇玉梓の↓一一天六。〇天地に思ひ足らはし てくれたらよかった ー天地の間にいつばいになるほどに、相 みなぎ 手を思う気持を漲らせ。足一フハスは、足 右の一一首 ルの継続態足ラフに対する他動詞。〇繭 小墾田の年魚道の水を間断なく人は汲むという絶え間なく人は飲むと 隠りー以上三句、一一究一の上三句に同じく、 息がつまるほど鬱屈した気持で、息ヅク いう汲む人の間断がないように飲む人の絶え間ないように日 を起す比喩の序。〇息づき渡りー息ヅク ↓三一一五 ( 我が息づきし ) 。渡ルは継続反復 を表す。〇松が根のー時間の長さを松の 樹齢の長久にたとえた比喩の枕詞。「松 が根の絶ゆることなく」 ( 四一一六六 ) という例 もある。ここは待ッと同音繰返しの興味 もある。〇天伝ふー日の枕詞。天を伝い 渡る、の意。〇通りて濡れぬー涙で濡れ 通ってしまった。 相思はざらばー主語は相手。〇天雲 のーヨソの枕詞。遠く離れていて自 おはりだ かいこ