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検索対象: 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)
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1. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

0 あ 8 9 囲 いでなぞ我がここだく恋ふる我妹子が逢はじと言へるこ 十ともあらなくに 巻 00 ひとごと ~ 人一言はまこと一一一〕痛くなりぬともそこに障らむ我にあらなして仮定的に表現したもの。〇そこに障 らむーソコは、その点、の意、上に述べ たことを指し示す用法。ここは人の噂が くに うるさいことをさす。サハルは、妨げら れる、の意。〇我にあらなくにー詠嘆的 終止。 7 立ちて居て↓一一三穴。〇たどきも知ら ずータドキ↓一三。〇我が心天っ空 なりー「心空なり」 ( 一一五四 l) に同じ。 世の中の人の言葉と思ほすなーわた 囲しが愛していますと言う言葉は、世 間一般の人の通り一遍の使用とは違い、 心の奥底から出たものです、の意。〇ま あ ことば ~ 世の中の人の言葉と思ほすなまことそ恋ひし逢はぬ日をことそ恋ひしーシは回想の助動詞キの連 体形。逢ったので恋しかった気持が消滅 したことをいう。 多み いでなそーイデ↓一一四 00 ( いでなにか ) 。 囲ナゾはナニソの約、原因や動機を尋 ねる疑問副詞。〇ここだくーこんなにも 甚だしく。 0 夜を長みかもー長ミは長シのミ語法。 囲ミ語法による疑問条件。〇夢に夢に しー夢ニ夢ニは何度も夢に見えることを 具体的に示す。シは強め。〇見え反るら むーこのカへルは反復を示す接尾語的用 法。ラムは上の長ミカモと応じ、原因を いめいめ 2 ぬばたまの夜を長みかも我が背子が夢に夢にし見え反る推量する。 あまそら っちふ 立ちて居てたどきも知らず我が心天っ空なり地は踏め ′」も ゐ よ こちた わせこ あ わぎもこ さは われ かへ

2. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

繝 との曇り雨ふる川のさざれ波間なくも君は思ほゆるかも 十 第 一わぎもこ おも いそのかみそぞふるかは 我妹子や我を忘らすな石上袖布留川の絶えむと思へや 8 つるはみきぬと まっちゃまもと 橡の衣解き洗ひ真土山本つ人にはなほ及かずけり あす こだか ゅふづき あしひきの山を木高みタ月をいっかと君を待つが苦しさ ( もがもーモガ ( モ ) は、あればよい、の 意の終助詞。その上にタグヒテが省かれ ている。 1 我妹子に衣ー衣を貸す、の意で「春 日」のカスの音を起す序とした。〇 宜寸川ー吉城川。奈良市東方の春日山の みすや 水谷に発し、東大寺南大門の前を経て、 奈良女子大学の北方で佐保川に人る。以 上三句、ヨシの同音繰返しの序。〇よし 佐保川の川波立たず静けくも君にたぐひて明日さへももあらぬかーヨシはき。かけ。ヌ力は希 求の終助詞。 力、も との曇り雨ー降ルと同音の布留川の フルを起す序。トノ曇リは「たな曇 り」 ( 三三一 0 ) と同じく、空が一面に曇って、 の意。〇ふる川ー布留川。奈良県天理市 ころも よしきがは Ⅷ我妹子に衣かすがの宜寸川よしもあらぬか妹が目を見むの東方山中に発し、石上神宮のある布留 の地を過ぎ、市街地南部を西流して初瀬 川に注ぐ。〇さざれ波ー小波。以上三句、 間ナシを起す序。 ぐも 3 我味子やーヤは呼びかけを示す。〇 石上袖布留川のー石上↓ = 四一七 ( 石上 布留の神杉 ) 。このノデは、袖を振る、 の意で布留川のフルにかけた序詞的用法。 この二句は、布留川の流れが絶えないよ うに、の意で第五句を起す序。〇絶えむ と思へや↓一一六三八。主語は作者。 や前の歌と問答関係をなすか。 さがは わぎもこ ま し いも

3. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

0 こ AJ + ありありて後も逢はむと言のみを堅く言ひつつ逢ふとは 巻 なしに 3112 3111 3110 き ころも さきだ 夢に見て衣を取り着装ふ間に妹が使ひそ先立ちにける 右の一一首 ひとごと 人言の繁くしあらば君も我も絶えむと言ひて逢ひしものても絶えまいと言って逢い始めたはずで す、という気持。 すべもなき↓一一三交 ( すべなきこと ) 。 、力も 引どうすればよいかわからないほどに つらい。〇片恋をすとートは本来意図や 目的を示すが、時には「物思ふと隠らひ 居りて」 ( 一一一究 ) のように、状態を表すテ に近い用法もあり、さらには三 0 九四の「物 かたこひ 思ふと寝ねず起きたるーのように、原因 すべもなき片恋をすとこのころに我が死ぬべきは夢に見を表す用法さえある。ここもその一例。 〇我が死ぬべきはーこのペシは、見るか らにその推定が確実そうな状態であるこ えきや とを示す。〇夢に見えきゃー心から思え ば相手の夢に見える、という俗信によっ て言う。 装ふ間にーヨソフは何らかの事をす 引るために準備を整えること。ここは 相手の女の所に出かける身支度をするこ とをいう。〇妹が使ひー三一二の歌を伝え た使いの者。〇先立ちにけるー先立ツは 順序が前になる意。 3 ありありてーずっとこのような状態 引を続けて。このアリは逢うことがで きないでいる現在の状態をさす。〇後も 逢はむ↓一一八四七。以上、相手の女が以前に 言った言葉。〇堅く言ひつつーこの言フ は約束する意。 いめ しげ 右の二首 のち よそま あれ いも あ あ いめ

4. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

かすが 朝日のさす春日の小野に置く露のように消え人りそうなこの身は惜しい と思わない 集 ( 露霜の ) 消えやすいこの身は年老いてもまた若返りあの方の訪れを待と 葉う 萬あなたを待 0 て庭にばかりいましたら垂したままのわたしの黒髪に霜が 置いてしまいました〈ある本の歌には終りの句が「 ( 白たへの ) わたしの衣に露が置い てしまいました」とある〉 ( 朝霜の ) 消え人らんばかりに絶え間なく思い続けることか命をかけて ささなみ 楽浪の波越す安躄に降る小雨のように間も置かずにわたしは思 0 ている 2 朝日さすー「朝日さす春日の山」 ( 一会 四 ) という例もあり、地名春日の枕詞 として固定しかけていたとも考えられる。 〇春日の小野ー「春日野」 ( 一一一 00D に同じ。 〇置く露のー以上三句、消を起す序。〇 消ぬべき我が身ー恋ゆえに今にも消えて しまいそうなわたしの命 3 露霜のー消の枕詞。「露霜」は露の雅 語。秋の景物として詠まれ、霜をさ したとみるべき例はない。〇をち反り↓ 一一六兊。 ◆類歌一一六兊。以上六首、露に寄せる恋。 君待っと↓一一奕七。〇庭のみ居ればー ノミの下に場所を表す助詞ニが省か れている。相手の来るのを待ちかねて、 庭に出たまま屋内に人らないことを示す。

5. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

あ あの方にお逢いしないで久しくなった ( 玉の緒の ) 長い命も惜しくなどな い 集恋しさのぐっと増さった今は ( 玉の緒の ) 絶えて乱れて死にそうに思われ 葉る 萬海人おとめが潜って採るという忘れ貝決して忘れられないだろうあの娘 の姿は 弸朝影のようにわたしは痩せ細った ( 玉かぎる ) ほのかに見えて消えてしま ったあの娘のせいで なまじっか人として生きているより蚕にでもなる方がましだわずかの命 の間でも や かいこ 玉の緒のーここは長シの枕詞。〇長 き命の惜しけくもなしー恋の苦しみ の前には、死は厭うに値しないことをい 増される今はーこの増サルは、増進、 発達を示す。〇玉の緒のー絶ュの枕 詞だが、乱ルも縁語をなす。〇絶えてー この絶ュは心絶ュの意で、気絶・悶絶を 表す。 や以上三首、玉の緒に寄せる恋。 潜き取るといふーカヅクは水中に潜 る意。トイフは伝聞を表す。〇忘れ 貝↓一一七九五。ここはあわびをさす。以上三 句、忘ルを起す序。〇ょにも忘れじーヨ ニは一生涯の意だが、打消と呼応して、 決して、少しも、の意を表すことがある。

6. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

萬葉集 4 い場合は、校注者の見解にもとづいて読んだ。 6 いわゆる難訓歌に対しては、強いて異を立てず、原文のままで掲げて、後考を待っことにした。 7 読み下し本文および現代語訳の上につけた歌番号は『国歌大観』による。 8 読み下し本文・現代語訳とも、一句ごとに一字分の空白を置いた。 9 題詞・左注の読み下し文は、上代散文にふさわしい文体を復原することに努めた。 せんがく 目録は、すべての現存古写本は各巻巻頭にあるが ( 巻十六以下の非仙覚系諸本を除く ) 、本書におい ては割愛した。ただし、校注の参考になるものは、該当箇所の脚注にこれを引用し、理解の助けとした。 一、現代語訳と脚注 現代語訳はなるべく原文から離れないように直訳に近い形をとった。歌意は随時脚注を参照しつつ把 握されたい。 仮名づかいも本文のままとした。 2 枕詞は ( ) でくくり、 脚注は本文の理解に必要な事項を簡潔に記した。 4 出典などに関して参考に引いた漢文は、原則として片仮名混じりの読み下し文に改めた。 紙幅の関係上、同一句や類似句の説明で前出 ( まれに後出 ) したもの、または参考になるものは↓で 示した。平数字は歌番号を示す。 6 作品の理解を助けるため、参考となる関連事項・評言などには◆印を付し、語の注と区別した。 脚注の振り仮名は現代仮名づかいにしたが、本文中にある語についてはそのままに示した。 一、その他

7. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

幾つもあるわけでない名を惜しんで埋れ木のように深くひそかに恋い焦れ る先行きも知らずに あくた 3 あまたあらぬーこの世に一つしかな 集 ( 秋風の ) 千江の浦辺に寄る芥のように心は相手に寄りついた先のことは い。命そのものとさえ考えられてい 葉わからないが た大切な名を重んじて言う。〇名をしも 萬 ( 白砂 ) 三津の赤土のように色に出して言わないだけのことだわたしの恋惜しみーシモは強め。惜シミは本来惜シ のミ語法。この例は、一般に原因・理由 は を表すといわれるミ語法が、形容詞から 風も吹かない浦に波が立つようにあらぬ噂をわたしは立てられた逢った派生した動詞の連用形と理解されていた ことを示す。〇埋れ木のー埋レ木は太古 わけでもなくて〈また「女だと思って」〉 の樹木が土中に埋没し化石状になって地 なつみ すがしま 層中から採掘されたもの。人に知られな 酢蛾島の夏身の浦に寄せる波のように間も明けずにわたしは思っている いみじめな恋をする自分の身の上をたと えて言う。〇行くへ知らずてーこの行ク へは恋の成行きをいう。 ◆埋れ木に寄せる恋。 秋風のー秋風の吹いている、の意で、 2 千江を修飾する枕詞的用法。〇千江 の浦廻ー千江は所在未詳。浦廻は人江の 湾曲部。〇こつみなすーコッミは木の屑、 あくた 芥の類。特に波打際に打ち上げられたも のをさすことが多い。ナスは、、のよう に、の意。 0 こつみに寄せる恋。 白砂ーマナゴは細かな砂。三津の代 表的景物を取り上げてその枕詞とし 四 2726 2727 2725

8. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

461 巻第十三 3327 ~ 3329 3329 3328 あまくも 磨ぎし心を天雲に思ひはぶらし臥いまろびひづち泣けど代は藤原不比等に近づき、三野王と離婚 した。〇西の厩ー西の厩に、の意。〇立 あだ ててー立テは、立たせ、の意。〇草こそ も飽き足らぬかも ば取りて飼ヘーコソ・ハは係助詞コソとハ とが複合連濁した形。コソ ( ・ハ ) ・ : 已然形 右の一首 は逆接条件句をなすことが多く、ここも その一例。カフ↓三 0 九七 ( 水か 0 。力への 原文は諸本に「飼旱」とあり、諸説がある が、しばらく「飼矣」の誤りとする説に従 肘粐の「一野の王西の厩立てて飼ふ駒薤の厩立てて飼 う。ただし五音句が連続する点に疑問が しか残る。下の「汲みて飼へ」のそれも同じ。 ふ駒草こそば取りて飼へ水こそば汲みて飼へなにか然葬式の最中馬がいななくと不幸を呼ぶと いわれ、出棺の前に十分飼料を与える習 あしげ 俗が今もある。〇なにかーナニは何故。 葦毛の馬のいなき立てつる 〇葦毛ー馬の毛色の一種。白い毛に黒や 褐色などの毛が混じったもの。原文は 「大分青」とあり、馬体の大部分が青毛で 蔽われている、の意で書いたか。〇いな き立てつるーイナクはイナナクの古形。 囲衣手ーアシゲの枕詞。かかり方未詳。 〇心あれかもー疑問条件。心アレ・ ( カモに同じ。われわれと同じように主人 の死を悲しむ気持を持っているからか。 9 たなびく国のーこのノは同格を示す。 引〇青雲の向伏す国のー向伏スは、遠 しらくも く横にたなびいて見える、の意。以上、 あまくも した むかぶ 白雲のたなびく国の青雲の向伏す国の天雲の下なる人広大な国上の具体的表現。 反歌 ころもぞあしげ つねけ 衣手葦毛の馬のいなく声心あれかも常ゅ異に鳴く 右の一一首 と あをくも ふびと

9. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

0- 7 第 ことはか 巻つね 常かくし恋ふれば苦ししましくも心休めむ事計りせよ 2905 のちあ 恋ひ恋ひて後も逢はむと慰もる心しなくは生きてあらめセント史の側からは夜這ヒが原義という。 〇大刀が緒もいまだ解かねばー大刀ガ緒 のように、後世の例では一般に助詞ノで やも 繋ぐところをガを以てするのは、記紀歌 謡などの一時代前の語法の残存。『古事 やちこのおおくにめしのみこと 記』上の、八千桙神 ( 大国主命 ) が高志の ぬながわひめ 沼河比売を妻問う時の歌にも「大刀が緒 もいまだ解かずておすひをもいま だ解かねば」とある。これらのネ・ハは、 、しないうちに、の意。 や類想歌三三一 0 。右の『古事記』の歌のほか にも、「継体紀」の歌謡に同じような場面 が詠まれている。それらの伝承歌謡が凝 他国によばひに行きて大刀が緒もいまだ解かねばさ夜そ縮されて短歌形式となって歌われたもの であろう。 7 ますらを↓一三五四。〇聡き心ーサトシ 明けにける 四は、賢明である、しつかりしている、 の意。〇恋の奴ーこのノは同格を示す。 ↓一一五七四 ( 恋といふ奴 ) 。恋を擬人化した表 現。 8 しましくも↓一一三九七。〇心休めむーわ たしの心を安らかにしてくれるよう な。連体格。〇事計りせよー事計リは方 策。ここは、恋人に向ってうまく逢える ように計画を立てて欲しいと要求して言 や類歌七五六。 さと やっこ 四囲ますらをの聡き心も今はなし恋の奴に我は死ぬべし ひとくに あれいき いのち いくばくも生けらじ命を恋ひつっそ我は息づく人に知ら えず い たち なぐさ を あれ と よ

10. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

きて打ち折らむ醜の醜手をさし交へて寝らむ君故 : : : 」 ( 三一一七 0 ) や、「 : : : 射目立てて鹿猪待つご とこし あ とく床敷きて我が待っ君を犬な吠えそね」 ( 三一一夫 ) のような野趣に満ちた表現もさほど違和感なく受 け人れることができるのではなかろうか。 この巻の中にも『人麻呂歌集』の歌が引かれているが、巻十一・十二の中においてそれが占めていたほど かむ の比重はなく、「相聞」の中に収められている出所不明の長歌の中の冒頭「あきづ島大和の国は神から ことあ しか あれ と言挙げせぬ国然れども我は言挙げす : : : 」 ( 三一き ) が『人麻呂歌集』所収の、内容的に恋とは言い とみかど あしはら がたい、「遠の御門」に赴く官人の壮行の歌 ( 三一一吾 l) の中の歌い出し部分「葦原の瑞穂の国は神ながら 言挙げせぬ国然れども言挙げぞ我がする : : : 」と形が近いというだけのことで参考として関連併記され ているとか、「問答」の中の男女の唱和、 ものおも ゅ ゅ あをやま ふさ をとめさくらばなさか 物思はず道行く行くも青山を振り放け見ればつつじ花にほえ娘子桜花栄え娘子汝をそ な あらやま も我に寄すといふ我をもそ汝に寄すといふ荒山も人し寄すれば寄そるとぞいふ汝が心ゅ め ( 三三 0 五 ) しか き としやとせ たちばな した 然れこそ年の八年を切り髪のよち子を過ぎ橘の上枝を過ぎてこの川の下にも長く汝が 心待て ( 三三 0 七 ) をつき交ぜたものが『人麻呂歌集』所収歌の三三 0 九とよく似ているので併記されている、という程度の扱いで 解ある。 この三一一一 0 九ほどにはしつくり融合していないが、本来内容的に別個の歌がたまたま共通の詞句を有する他の 歌と結合したため、全体としては意味をなさない歌もある。 われ しこしこて かみ あ ほっえ はな みづ かむ なれ