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検索対象: 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)
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1. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

こと ただ うつつ + ~ 現には言も絶えたり夢にだにぎて見えこそ直に逢ふま 巻 ワ 3 2958 ことかよ 夢かと心迷ひぬ月まねく離れにし君が言の通 ( ば 2956 2957 いめ 今よりは恋ふとも妹に逢はめやも床の辺去らず夢に見え こそ こととが や 人の見て言咎めせぬ夢にだに止まず見えこそ我が恋止ま ただ ある椴ん かみい む〈或本の歌の頭に云はく、「人目多み直には逢はず」〉 としつき あらたまの年月かねてぬばたまの夢に見えけり君が姿は いめ と いも ひとめ いめ いめ とこへ いめ あ すがた や 一一哭三 ( 衣手離れて ) 。〇言の通へばー通フ は同じ所を何度も住復する意。相手の使 いの者が伝言をしてくれるようになった ことをいう。 6 あらたまの↓一三会。〇年月かねてー 四長い年月にわたって。幾年月も併せ て、の意か。〇夢に見えけりー夢に相手 が見えるのは自分を思ってくれているし るし、という俗信を頼みに今まで待ち続 けた、の意。 7 恋ふともー主語は作者。〇床の辺去 四らずーわたしの寝床の側を離れるこ となく。〇夢に見えこそーコソは希求の 終助詞。 人の見て言咎めせぬ↓一一九一一一。〇夢に 四だにーダニは、せめて、なりとも、 の意の副助詞。〇「頭」ー「頭句」 ( 三一一究左 注 ) ともいう。↓一一八合 ( 「発句し。この歌 および一一一では第一・二句をさしているが、 一六三五は上三句、三一一究は長歌の上六句をさ し、四 0 四三は第一句のみ、『歌経標式』も第 一句を「頭」と称しているようで、必ずし も一貫した呼称ではなかった。 9 言も絶えたりー直接に逢うことはも 四ちろんのこと、使いの者の住来さえ も途絶えてしまった。相手が世間の人の 目を意識したためか。

2. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

ひとごと 人言の繁き時には我妹子し衣にありせば下に着ましを 十 第 巻 ころも あれこ ~ ぬばたまのその夢にだに見えげや袖乾る日なく我は恋〇逢ふと見え。そー。のトは引用を示す 用法のそれであるが、ここは、そんな感 じに、のような意味に用いてある。この ふるを コソは希求。 ↓一一四標題。 上は結びてーウへは表面の意。ここ 囲は上衣の紐をいう。〇下紐開けてー 恋人に逢えるように、自ら下紐を解いて 待っことをいう。↓一一四 0 六 ( 紐解き開けて ) 。 2 衣にありせばーコロモ↓一一全八 ( 濃染 囲めの衣 ) 。セ ・ハ↓一一全四 ( 知りせば ) 。 〇下に着ましを↓一一全八 ( 下に着ば ) 。人目 につかず恋人と一緒に居ることを願って 言う。 3 ま玉つくーヲチのヲにかかる枕詞。 囲玉が緒に繋がれて寄り付くことによ ってかけた。〇をちをしかねてーこのヲ チは末来の意。シは強め。カヌは予想す る意。結婚して添い遂げる意思があるこ とをいう。六七四・一一九当には「をちこちかね て」となっている。先後は不明だが、相 互に異伝関係にあると考えられる。〇一 重の衣ひとり着て寝れー寒々とひとり寝 す . るさ士 1 ま玉つくをちをしかねて思へこそ一重の衣ひとり着て◆逢。てくれないのを恨んだ相手の言葉 に対して、それは遠いおもんばかりあっ てのことであると答えた歌。 寝れ 2851 の 物に寄せて思ひを陳ぶる うへ 人の見る上は結びて人の見ぬ下紐開けて恋ふる日そ多き わぎもこ うつつ あ ただ いめ 現には直には逢はず夢にだに逢ふと見えこそ我が恋ふら くに しげ いめ ころも したびもあ ひとへ そぞふ き あ

3. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

( ぬばたまの ) 夢の中ぐらいは続けて見えてくださいよ涙で袖の乾く日もな いほどにわたしは恋しく思っていますのに 集現実にはじかに逢えません夢でなりとほんとに逢っているように見えてく 葉ださいわたしは恋しく思っていますのに 萬 物に寄せて思いを述べた歌 ひも 人の目に触れる上着の紐は結んで人の見ない下紐を解いて恋い慕う日が 多い 人の噂のこんなにも高い時はあの娘がもし衣であったらじかに着ように ( ま玉つく ) 先まで見通して思うからこそ一重の衣をひとり寂しく着て寝 ているのです 2851 2853 2852 うわさ そぞ 9 その夢にだに見え継げやーこのソノ 2 は語調を整えるために挿人したもの。 見工継ゲヤは、命令形に詠嘆のヤが付い た形。この見ュは相手が自分の夢に見え ることをいう。思えば相手の夢に見える という俗信によって、ひたすらわたしの ことを思ってください、という気持で言 ったのであろう。原文に「彼夢見継哉」と あり、訓義に諸説がある。〇袖乾る日な くー涙で濡れた袖が乾く日とてないばか りに。 直には逢はずー原文に「直不相」とあ 囲 り、一一会八「或本の歌」に合せて、ここ も直ニ逢ハサズなどと読むこともできる。

4. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

91 巻第十一 2543 ~ 2547 2546 田お は ぬ に 至 ら が 嬉 し み と 笑ゑ ま む 眉ま び き 田お ~ じ、も ゆ る 2547 2543 いめ 現には逢ふよしもなし夢にだに間なく見え君恋に死ぬ 2545 こ 我が恋ひしことも語らひ慰めむ君が使ひを待ちやかねなりとも、の意の副助詞。〇間なく見え 君ー見工は見ュの命令形。心から思えば 相手の夢に見える、という俗信によって、 てむ ここは相手の男「君」に向って、自分を思 ってほしい、と言ったもの。〇恋に死ぬ べしーペシは推定性の強い推量の助動詞。 最近の心身の衰弱からそうなるにちがい ないと判断して言う。 誰そ彼ーあの人は誰か、の意の倒置 表現。上代語には遠称のカ・カレ・ カノの例が少ないが、カモカモ・カニカ クニ・カユキカクユキなどの慣用例のほ かに、「かの児ろ」 ( 三五六五 ) 、「み舟かもか た かれ 誰そ彼と問はば答へむすべをなみ君が使ひを帰しつるれ , ( 四五 ) や「暁のかはたれ時」 ( 四三会 ) の ような例もなくはない。母親などが不審 に思って作者に尋ねる言葉。 力、も 鮖嬉しみとーミ語法に付いたトは、 とて、の原義がほとんど認められな い場合が多い。〇眉引きー眉の尾を引い たように長いさま。女性の美しい眉の形 や類歌一一五一一六。 7 思はねばー思ハザリシカ・ハの意。〇 こ 2 妹が手本ー手本は手首。腕全体をさ かくばかり恋ひむものそと思はねば妹が手本をまかぬ夜すこともある。転じて衣の袖をもいう。 や一一八六七と同じような内容を裏返しに表現 もありを」 した歌。類歌一一空四。 うつつ たもと よ 2545

5. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

341 巻第十二 3141 ~ 3144 3144 の旅 この ろ夜よ の 久 し く な れ さ に ら ふ 紐 f 解 き 放さ け る こ 3143 引 41 引 42 くさまくら 草枕旅の悲しくあるなへに妹を相見て後恋ひむかも 旅愁をいう。ナへ ( ニ ) は、、すると共に、 、するにつれて、の意だが、前後の文脈 に応じて、、しているところへ、、する のに、などの順接ないし逆接の接続助詞 の或る場合に相当すると思われる意味用 法のこともある。ここはその前者に当る。 万葉仮名で「奈倍」「奈倍尓」などとあり、 その「倍」は本来濁音字であるため、ナベ ただ ( ニ ) と読まれることが多かったが、この 国遠み直には逢はず夢にだに我に見えこそ逢はむ日ま歌をはじめとして「苗尓」「苗」と書かれ た例も多く、中古でも『古今集』の写本で そのヘを清音に読むように指示した声符 でに を見る。〇妹を相見てーこの妹は旅先で 逢った見知らぬ女をいう。 2 国遠みーこの国は故郷をいう。〇夢 ことと わぎもこ かく恋ひむものと知りせば我妹子に言問はましを今し悔引にだにーせめて夢にでも。↓一三。 〇我に見えこそーコソは希求の終助詞。 かく恋ひむものと知りせばー知リセ しも ・ハ↓一一全四。家に居た時には現在の恋 しさが予想できなかったことをいう。 0 言問はましをー十分に語り合っておけば よかったのに。 さにつらふ↓一一五 = 一 ( につらふ ) 。赤み 引を帯びた。ここは妻の下紐の色の描 写。〇紐解き放けずーサクは放つ意。五 0 九にもこの二句と同じ語句がある。妻と 共に寝ない淋しさを表す。 へば あ いめ いもあひみ われ のち あ くや

6. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

325 巻第十二 3106 ~ 3109 あひみ 相見まく欲しきがためは君よりも我そまさりていふかしホリスレ・ ( 。ソなどの読み添え案もある。 タメは本来、目的・便益を表し、原因・ 理由を表すュヱとは混同しないといわれ みする るが、漢文訓読体などで紛らわしい場合 もある。〇いふかしみするーイフカシは、 不審だ、の意であるが、疑う気持は少な く、相手の生活をあれこれ思いやること を表す。フは清音。↓六哭 ( いふかし ) 。 ◆前の男の歌に、女が逢おうとしないか ら恋死にしそうだ、とあったのを受けて、 逢いたい気持はむしろ私の方が上である が、将来のことを考えて逢いたいのを堪 えているのです、と答えた女の返歌。 うっせみー生きてこの世に在る人。 引〇生けりともなし↓一一九八 0 。 8 人目繁くはー繁クハは仮定条件。こ 引こは前の歌の第一一句を受け、そうい う事情なら、と言ったもの。〇夜の夢に をーこのヲは命令や希求を表す文の中に 置かれ、強めを表す間投助詞。〇継ぎて 見えこそーコソは希求の終助詞。 ねもころに↓一三査 ( ねもころの ) 。〇 引思ふ我妹をーこのヲは、、なるもの ひとごと を、の逆接的な意味に用いたもの。〇淀 ねもころに思ふ我妹を人言の繁きによりて淀むころかもむころかもーこの淀ムは通うことを差し 控える意。原文も「不通比日可聞ーと書か れている。 よるいめ ~ うっせみの人目繁くはぬばたまの夜の夢にをぎて見え こそ 引 07 うっせみの人目を繁み逢はずして年の経ぬれば生けりと もなし 右の二首 右の一一首 ひとめ わぎも しげ あ あれ へ よど い

7. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

いしまくら こけ あすかがわ 帯になさっている明日香川の流れが速くて生えっきにくい石枕に苔が〇帯にせるー雷丘のそばを流れている。 0 ↓ 3 二 0 一一。〇水脈速み↓三一当。ここはそ 生えるまでも長く夜離れせず無事に通えるようなよい手だてを夢にお示 の周辺の明日香川の流れが速いことをい 集しください ( 剣大刀 ) 神官たちが大切にお祭りしてきた神であられるからはう。〇生しため難きームスは草や苔など が自然に生じること。タムは、留める、 葉 反歌 固定する、の意。苔がそれ自身を石に付 かんなび みもろ 着させることをいうのであろう。〇石枕 萬神奈備の三諸の山に大切に守っている神杉の思いが過ぎることがあろうか ー枕状の石をいうか。〇苔生すまでにー 苔が生えるまでも長く 遠い将来を予測して言う。〇新た夜の↓ 斎串を立て御神酒を捧げまつる神官たちの髪飾りのかずらは見るからに = 会 = 。ここも「新た夜の一夜も落ちず、の 意で用いたのであろう。〇事計り↓一一兊八。 ゆかしい ここは恋人と逢える良策をいう。〇見え こそーこの見工は、見せる、示す、の意。 右の三首、ただし、ある書には、最後の短歌一首を載せていない。 コソは希求の終助詞。〇剣大刀ーイハフ に・つみ ( みてぐらを ) 奈良の宮を出発して ( 水蓼 ) 穂積に着き ( 鳥網張る ) 坂手をの枕詞。剣大刀を神聖視し、穢れに触れ ないように努めることからかけた。〇斎 過ぎ ( 石橋の ) 神奈備山において朝宮の奉仕を受けられ吉野へと ひ祭れるーイハフ↓一一四 0 三 ( 斎ふ命 ) 。神職 が斎戒して奉祀している。〇神にしまさ ばー事実の仮定的表現。 8 斎ふ杉ー以上三句、スギの同音繰返 しの序。〇思ひ過ぎめやー思ヒ過グ は、思うことが消えてしまう、思わなく なる、の意。 や長歌の後半およびこの反歌一首は相聞 的内容。 9 斎串ー神を祭る時に立てる神聖なク ひえだ シ。最近大和郡山市の稗田遺跡から 3229 さかて

8. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

( 白た ( の ) 袖を折り返して恋しがっているせいかあの娘の姿が夢に見え る うわさ 集人の噂が絶えずうるさいのであの方を目では見るけれど逢うすべもない 葉言葉で恋といえばそれだけのことだがしかしわたしはあなたを忘れまい 萬恋い死ぬことがあっても いっそ死んだら楽だろう朝出る日がいつ人るともわからずに暮すわたし は苦しい 気を紛らす手だてもわたしは今やないあの娘に逢わずに年が経たので 2937 2941 あ 7 白たへの↓一一四二。〇袖折り返し↓一一八 四一一一 ( 袖返ししは夢に見えきや ) 。〇恋

9. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

の三組の重出歌がある。小異歌も、 ひもと まよねか 眉根掻き鼻ひ紐解け待つらむかいっかも見むと思へる我を ( 一一四 0 八 ) あれ 眉根掻き鼻ひ紐解け待てりやもいっかも見むと恋ひ来し我を ( 一一合 0 の した こもぬ 隠り沼の下ゅ恋ふればすべをなみ味が名告りつゆゅしきものを ( 一一四四 l) い 隠り沼の下に恋ふれば飽き足らず人に語りつ忌むべきものを ( 一一七一九 ) こ こも おもあ さはいづみ 隠りどの沢泉なる岩根をも通してそ思ふ我が恋ふらくは ( 一一四四三 ) あ 隠りづの沢たつみなる岩根ゅも通りて思ふ君に逢はまくは ( 一一七九四 ) さとど とこへ 里遠み恋ひうらぶれぬまそ鏡床の辺去らず夢に見えこそ ( 一一五 01) 里遠み恋ひわびにけりまそ鏡面影去らず夢に見えこそ ( 一一六三四 ) けやすあ 朝露の消易き我が身老いぬともまたをち反り君をし待たむ ( 一一交九 ) 露霜の消易き我が身老いぬともまたをち反り君をし待たむ ( 三 0 四三 ) のように数多い。中には、 こと あおも あふみ 近江の海沖っ島山奥まけて我が思ふ妹が言の繁けく ( 一一四三九 ) 近江の海沖っ島山奥まへて我が思ふ妺が言の繁けく ( 一一七一一 0 のように一音節だけの差という場合もある。これらを説明するのに、一方が他方の伝誦歌における訛伝形と 解解することは便利な方法であるが、その先後を判定することは困難である。たとえば、 もすそぬ はしきやし逢はぬ児故にいたづらに宇治川の瀬に裳裾濡らしつ ( 一一四一一九 ) はしきやし逢はぬ君故いたづらにこの川の瀬に玉裳濡らしつ ( 一一七 0 五 ) いも いめ こ われ かぞん

10. 完訳日本の古典 第5巻 萬葉集(四)

約。アカトキより後で、日の出の少し前 をいう。〇よく見ずてーヨクは、詳しく、 念人りに、の意。すでにかなり明るくて、 人目につくことを恐れて見送らなかった 萬葉集巻第十一一 のでいうか。 我が心ー格助詞ニがあるべきだが、 音数の制約のため省かれている。〇 ともしみ思ふートモシミは形容詞トモシ のミ語法。トモシは、あとをつけて行く 正に心緒を述ぶる 意の下二段動詞トムから派生した語で、 懐かしい、心引かれる、少ない、などの あひだ あさけすがた けふ 2 我が背子が朝明の姿よく見ずて今日の間を恋ひ暮らす意を表す。ここは、離れたくない、の意。 ミ語法十田 5 フは、、だと田 5 う、の意。〇 新た夜ーこれから後、日に日に新たに巡 、刀、も り来る夜、の意か。〇一夜も落ちずー落 チズは、欠けることなく、の意。〇夢に 見えこそーコソは希求の終助詞。 うるはしとあがも 3 しと↓一一三葉。「宇流波之等安我毛 かながき 我が心ともしみ思ふ新た夜の一夜も落ちず夢に見えこそ“【 : 布伊毛乎」 ( 三七一一九 ) などの仮名書例が ある。〇人皆の行くごと見めやー人々が 通り行くのを眺めるのと同じように無関 ゅ おもいも ひとみな 心に見ることができようか。〇手に巻か + 2 愛しと我が思ふ妹を人皆の行くごと見めや手に巻かず ずしてー「玉ならば手にも巻かむを」 ( 七一一 巻 九 ) などのように、手ニ巻クは、鞆 ( 二八三 ) して の一例を除けば、すべて玉を手首に巻き 大切にすることをいう。シテはサ変動詞 スの形式的用法。 わ うるは ただおもひの あ あらよ ひとよ いめ