れんしょ 袖返しつつ↓三突一一 ( 衣手を折り返しつつ ) 。 恋緒を述ぶる歌一首せて短歌 袖を一部分折り返して寝ると恋しい人を とこ あひみ たぐ いもあれ おや 妹も我も心は同じ比 ( れどいやなっかしく相見れば常夢に見ることができる、という俗信を実 修し、この場合その効果があったのであ あおくづまおほきみ はつはな る。ツツは反復を表す。〇寝る夜落ちず 初花に心ぐしめぐしもなしにはしけやし我が奥妻大君 ー落チズは欠けることなく。〇帰りにだ ひなをさ あまざか みことかしこ にもー七年前にも、「関なくは帰りにだ の命恐みあしひきの山越え野行き天離る鄙治めにと にもうち行きて」 ( 一 0 三六 ) と詠んでいる。 ゅ はるはな 〇関さへにーサへニはサへに同し。↓ 3 別れ来しその日の極みあらたまの年行き反り春花のう 一三毛 ( 桑すらに ) 。ここは主格を示す。〇 隔りてあれこそーへナル↓三七五五 ( 山川を そぞ つろふまでに相見ねばいたもすべなみしきたへの袖返し中に隔りて ) 。ここは隔てとなる意。ア レコソはアレ・ハコソに同じ。ただしこの こひ ただ うつつ つつ寝る夜落ちず夢には見れど現にし直にあらねば恋句に対する結びはなく、下に、どうする こともできない、のような内容が省かれ ゅ しけく千重に積もりぬ近くあらば帰りにだにもうち行きている。〇よしゑやし↓『窒。〇よしは あらむそーヨシは便宜。五月に上京する たまこ いもたまくら ことをいう。〇ほととぎす来鳴かむ月ー て妺が手枕さし交へて寝ても来ましを玉桙の道はし遠 四月をいう。四月に家持が税帳使になり、 せき 五月初めに出発している。〇卯の花ーゅ 関さへに隔りてあれこそよしゑやしよしはあらむそ きのした科の落葉低木うつぎの花。初夏 に五弁の白い花をつける。〇い行き乗 + ほととぎす来鳴かむ月にいっしかも早くなりなむ卯の花 り立ちー道ニ乗ルは定まったコースをと 巻 あふみち ふさ って行くこと。〇ぬえ鳥のーウラ嘆クの のにほへる山を外のみも振り放け見つつ近江道にい行枕詞。ヌエ鳥はとらつぐみ。夜間寂しい 声で鳴く。〇うら嘆けしつつーウラは心。 わぎへ き乗り立ちあをによし奈良の我家にぬえ鳥のうら嘆けし下二段のナクは嘆息する意か。 3978 ぬよ へな きは よそ いめ がヘ どり う
349 巻第十七 3958 3958 どほ へな やまかは と語らひて来し日の極み玉桙の道をた遠み山川の隔て親しく呼び掛ける語。ミ。トは尊称。 〇なにしかもー理由を尋ねる疑問副詞。 こひ あひだ けなが りてあれば恋しけく日長きものを見まく欲り思ふ間に結びは最後の告ゲッル。使者を非難する ような口調に転じているが、死者を恨ん たは あ うれ およづれ たまづさ で言ったもの。〇時しはあらむをー季節 玉梓の使ひの来れば嬉しみと我が待ち問ふに逆言の狂 はいろいろあろうに。花好きの故人が愛 こと なおとみこと した秋を選りに選って死期としたことを 言とかもはしきよし汝弟の命なにしかも時しはあらむを 恨んでいう。『古今集』に「時しもあれ秋 はぎ やは人の別るべき」 ( 全九 ) とあるのに近い。 はだすすき穂に出づる秋の萩の花にほへるやどを〈言ふここ 〇はだすすき↓三五 0 六。〇「寝院」ー居宅の 主人の起居する殿舎。正殿。平安時代の しんゐんには め ろは、この人ひととなり、花草花樹を好愛でて、多く寝院の庭に植ゑたり。故に寝殿に同じ。〇朝庭に出で立ち平しー平 スは、頻繁に行きっ戻りつした結果、地 なら あさには ゅふには ふたひら 「花薫へる庭」といふ〉朝庭に出で立ち平しタ庭に踏み平げず面の凹凸がなくなることをいう。下の対 句「踏み平げず」のズはこの平シをも含め こぬれ 佐保の内の里を行き過ぎあしひきの山の木末に白雲にて打ち消している。〇佐保の内ー佐保は 平城京の東北、現在の佐保山町・法蓮町 あれつ 立ちたなびくと我に告げつる〈佐保山に火葬す。故に「佐保の内の里をの辺りから法華寺町にかけての一帯。大 伴氏の家はその北部佐保山の麓にあった。 〇里を行き過ぎー書持葬送の行列が進む 行き過ぎ」といふ〉 ことを死者自らの意志の発現と考えてい う。〇白雲にーこのニは、、のように、 の意。 8 ま幸くとーマ幸クアレトの意。〇言 ひてしものをーモノヲは逆接。言ヒ テシの主語は家持か。書持と考えること も可能 ま幸くと言ひてしものを白雲に立ちたなびくと聞けば悲 しも さき にな こ い きは い たまほこ た と
わも みねは たにせば 谷狭み峰に延ひたる玉葛絶えむの心我が思はなくに 四 十 あれ みうらさき 〕しばっき 芝付の御宇良崎なるねっこ草相見ずあらば我恋ひめやも やす 春 ( 咲く藤の末葉のうら安にさ寝る夜そなき児ろをし思 こよ こ ばな みやせがは うちひさっ宮の頽川のかほ花の恋ひてか寝らむ咋夜も今 夜も 3508 ・語形とも似た語があり、その差は不明。 〇穂に出しーホは秀の義。ホニ出ヅは人 目につくようになること。ホニ出シ君は 二人の関係が世間に知られるようになっ た相手の男をいう。厳密には穂と秀とア クセントが異なるが、掛詞として通用し 玉葛ー玉は美称の接頭語。以上二句、 蔓性植物の蔓が長く延びて絶えない ところから、第四・五句の内容を起す序 とした。〇絶えむの心ー縁を切ろうなど というような薄情な心。 ◆『伊勢物語』三十六段に、女から「忘れ にひむろ 新室のこどきに至ればはだすすき穂に出し君が見えぬこぬるなめり」と言われて男が詠んだ歌に 「谷せばみ峰まで延へる玉かづら絶えむ と人にわが思はなくに」というのがある。 のころ 8 芝付の御宇良崎ー芝付は未詳。地名 か。御宇良崎も未詳。神奈川県三浦 半島の先端のどこかの岬かなどとする説 がある。〇ねっこ草ー未詳。きんぼうげ 科の多年草おきなぐさに擬する説がある。 その花の風情が恋人の姿を連想させたも のか。〇相見ずあらばー反事実の仮想。 一目見たばかりに恋するようになったこ とを示す。 ◆以上十八首、植物に寄せる恋の歌。木 ・草・花の順に配列してある。 へば ふぢうらば いた たまかづら ぐさあひみ よ きそ 3507
春に咲く藤の末葉のうら安ー安らかに寝た晩はないあの娘のことを思う 春ヘー春の頃。このへは秋へ・タへ の ( に同じ。〇藤の末葉のーウラ・ハ A 」 は枝先の葉。以上一一句、ウラの同音反復 ばな 集 ( うちひさっ ) 宮の瀬川のかお花のようにさぞや恋い慕って寝ていることでの序。若葉の新鮮な感じで若い女の初々 しさを連想させる意図もあるか。〇うら 葉 あろうゆうべも今夜も 安にーウラは心。 萬にいむろ 5 うちひさっー宮の枕詞。ウチヒサス 新室のこどきになったので ( はだすすき ) 仲を知られた君が見えないこの ( 三四五七 ) の訛音形か。三一一九五にもある。 近頃よ 〇宮の瀬川ー所在未詳。あるいはミナノ たまかずらつる セガハ ( 三三六六 ) の訛りか。〇かほ花のー以 谷が狭いので峰にまで延びている玉葛の蔓のように切れようなどとわた 上三句、恋ヒ寝を起す序。カホ・ハナ↓ 3 しは思わない 一六三 0 。ここはかきつばたなどの川辺に咲 しばっき みうらさき く花の名と思われるが、恋ヒ寝に続くこ 芝付の御宇良崎にあるねっこ草のようなあの娘を見さえしなかったらわ とを思えば夜間花びらを閉じる植物のよ たしはこうも恋い慕おうか うで疑問。〇恋ひてか寝らむー相手 ( 女 か ) は作者のことを恋しく思いながら寝 ていることであろうか。〇昨夜ー中央語 ではキゾと濁っていたようである。 % 新室ー新築の室。ムロは窓のない密 室状の建物。ここは養蚕のために新 造した小屋か。〇こどきに至ればーコド キは養蚕の時期か。ただし、原文に「許 騰伎」とあって、その「許」は乙類、「蚕」 のコは甲類で仮名が合わない。この至ル はその時期になる意。〇はだすすきーホ ニ出ヅの枕詞。穂の出た尾花の意であろ うか、ハタススキ・ハダススキなど新義 3508 うらイ
363 巻第十七 3970 3970 らなけくそこに思ひ出嘆くそら安けなくに思ふそら苦ふ人どち」 ( 一 0 など名詞に付く接尾語 として用いられるが、このように思フド へな しきものをあしひきの山き隔りて玉桙の道の遠けば間チという形も少なくない。〇繁み飛び潜 くークク↓三九二 ( 木の間立ち潜き ) 。〇声 や ことかよ だに聞かずー連用修飾格。下の「過ぐし 使ひも遣るよしもなみ思ほしき言も通はずたまきはる 遣りつれ」にかかる。〇春菜摘ますとー こもゐ いのちを 摘マスは摘ムの敬語形。ただし敬意は軽 命惜しけどせむすべのたどきを知らに隠り居て思ひ嘆 い。トは、、とて、の意。〇紅の↓三七 0 三 なぐさ はるはな ( 紅の八人の色 ) 。〇にほひひづちてー かひ慰むる心はなしに春花の咲ける盛りに思ふどち このニホフは色赤く照り輝く意。ヒヅッ たを ↓三六九一 ( 裳の居ひづち ) 。〇過ぐし遣りつ 手折りかざさず春の野の繁み飛び潜くうぐひすの声だにれー己然形で言い放っ法。過グシ遣リッ レ・ハに同じ。憶良の「・ : 遊びけむ時の くれなゐ をとめ はるなっ あかもすそ はるさめ 聞かず娘子らが春菜摘ますと紅の赤裳の裾の春雨に盛りを留みかね過ぐし遣りつれズ合 四 ) の模倣。〇偲はせるーわたしを偲んで や にほひひづちて通ふらむ時の盛りをいたづらに過ぐし遣いらっしやる。〇愛しみー愛シ↓三七一一九 ( 愛しと我が思ふ味 ) 。〇この夜すがらに しの うるは りつれ偲はせる君が心を愛しみこの夜すがらに眠も寝↓三 ( 夜はすがらに ) 。。ノ夜は、一日 の始りを日没時とする考え方によって、 こ けふ 昼間その前夜を回想して言った。〇しめ ずに今日もしめらに恋ひつっそ居る らにー休みなくずっと。シミラニ ( 三一一九七 ) A 」 - も 。山桜花ー原文に「夜麻左久良婆奈」と あり、その「左」は清音仮名なので、 山ノ桜花の意と考えられる。〇我恋ひめ やもー恋フの対象は山桜花。 ◆池主の三突七の歌に対する返歌。 やまさくらばなひとめ あしひきの山桜花一目だに君とし見てば我恋ひめやも つか しげ を たまこ あれ 0
しるし はぎ 秋の野をにほはす萩は咲けれども見る験なし旅にしあ居ないので淋しいことをいう。 眠の寝らえぬに↓三六六五。〇さ雄鹿鳴 % きっ↓三六五五 ( ひぐらし鳴きぬ ) 。たっ れば た今鳴く声が聞えた、という気持。〇妻 思ひかねて↓三四七五 ( 思ひかねつも ) 。ここ は妻のことが思われてどうすることもで きない場合。この妻は鹿の妻。 9 ま梶しじ貫き↓三六二。〇時待っとー % 風波が和らぎ安全に航海ができる時 の来るのを待っているのだと。〇月そ経 にけるー七月が終り、八月になったこと をいうのであろう。八月一日は太陽暦の 九月十日に当る。 山彦とよめー山彦はこだま。反響現 % 象を擬人化した呼称。トヨメは、鳴 り響かせる意の下一一段他動詞トヨムの連 用形。トヨモシに同じ。 夜を長み眠の寝らえぬにあしひきの山彦とよめさ雄鹿鳴一佐賀・長崎両県を合せた国名。 ニ松浦は肥前国の旧郡名。佐賀県側と 長崎県側にまたがり、佐賀県側は東・西 からっ いまり くも 松浦郡および唐津・伊万里の両市、長崎 五 県側は南・北松浦郡および松浦・平戸・ 福江の三市を含む。 第 巻 三所在未詳。大矢本と同系統の近衛本 や京大本の書人に「柏嶋」とあり、それな かしわ らば唐津湾西北部の神集島である可能性 もある。 おぶね 大船にま梶しじ貫き時待っと我は思へど月そ経にける おも いもおも ね 妹を思ひ眠の寝らえぬに秋の野にさ雄鹿鳴きっ妻思ひか ねて ← かいらう のみちのくちまつらのこりこましまとまりふなど 肥前国松浦郡の狛島の亭に船泊まりする夜に、海浪を遥か いた おのもおのも に望み、各旅の心を慟みて作る歌七首 かぢ い われ をしか やまびこ をしか
を ともしび たはその製品。後に約まってユハタとも て曰く、「叔父来れ、この燭火を吹け」といふ。ここに翁唯 いう。原文に「結幡とあり、旧訓はユフ むしろ やくやおもぶおもふる ハタ。これによって読む。結フ機の義。 唯といひて、漸くに趨き徐に行き、座の上に着接きぬ。良久 このハタは織機から転じて織物をさす。 たれ ゑ あひニせ をとめら ふふ 〇袖付け衣ー袖を付けた普通の衣服。肩 にして、娘子等皆共に笑みを含み、相推譲めて曰く、「阿誰 衣に対していう。〇着し我をーこのヲは、 、なるものを、の意だが、逆接性は弱い。 かこの翁を呼びつる」といふ。すなはち竹取の翁謝まりて曰 〇にほひょるー娘子たちの輝くばかりに とど おもはざほか たまさかしんせんあ 美しいさまをいうか。〇児らがよちーこ く、「非慮る外に、偶に神仙に逢ひぬ。迷惑ふ心、敢へて禁 の児ラは相手の娘子たちをさす。ョチは 同年輩の者。 0 蜷の腸↓ 3 一一一七七。〇か黒 な あか こひねが むる所なし。近づき狎れぬる罪は、希はくは贖ふに歌を以て し髪ー「か黒き髪」 ( 三六四九 ) というのが普通。 〇ま櫛もちーマは美称の接頭語。〇ここ すなは にーこのココは現場指示としての用法。 せむ」といふ。即ち作る歌一首せて短歌 演技者が見物の前で歌舞しながら自分の ひむつき はふこ わきごがみ みどり子の若子髪にはたらちし母に抱かえ襁の平生肩の辺などを指さして示したものであろ う。〇上げても巻きみー垂した髪を折り もとどり うなっき ゅふはた わらはがみ ゅふかたぎぬひつら 髪には木綿肩衣純裏に縫ひ着頸付の童髪には纐纈の曲げて巻き込み髻を作。てみたり。ミは 下のナシミのそれと応じ、いろいろ試み こ みなわた そぞっごろもきわれ ることを示す。〇解き乱りー四段の乱ル 袖付け衣着し我をにほひょる児らがよちには蜷の腸か は他動詞。〇さ丹つかふー赤みを帯びた。 くし あ た ぐろ 〇大綾の衣ーアヤは模様。下の「にほし わ黒し髪をま櫛もちここにかき垂れ取り束ね上げても巻き し衣ーと同格。〇遠里小野ー大阪市住吉 おりおの 巻 むらさき とみだ わらは 区遠里小野町および堺市遠里小野町辺の み解き乱り童になしみさ丹つかふ色なっかしき紫の地。〇ま籐もち↓ 3 一一契。 0 にほししー ニホスはニホハスと同じく染める意か きぬ とほさとをの おあやきぬすみのえ 大綾の衣住吉の遠里小野のま籐もちにほしし衣に高麗〇高麗錦↓ = 鬢。 がみ を いは こ をち に はり むだ つか っ かしこ ややひさ
91 巻第十四 3519 ~ 3523 3522 たのも たづ 坂越えて阿倍の田面に居る鶴のともしき君は明日さ ( も か、も 3519 3520 3521 きそ ね と 昨夜こそば児ろとさ寝しか雲の上ゅ鳴き行く鶴のま遠く おも 思ほゅ な ゅ あをくも こわぎもこ あひみ ぎようぎ しんごん 汝が母にこられ我は行く青雲の出で来我妹子相見て行僧行基の弟子の信厳という僧が日頃、師 と共に死なむ、と言っていたのに、先立 って死んだことを行基が悲しんで詠んだ こと かむ 歌として「烏といふ大をそ鳥の言をのみ 共にと言ひて先立ち去ぬる」という歌を 載せる。 しの 2 児ろとさ寝しかーシカは過去の助動 面形の忘れむしだは大野ろにたなびく雲を見つつ偲はむ 詞キの已然形。コノの結び。逆接的 用法。〇鳴き行く鶴のー以上二句、マ遠 クを起す序。鶴の声が空間的に遠く聞え ることでかけた。〇ま遠く思ほゅー昨日 からす 烏とふ大をそ島のまさでにも来まさぬ君をころくとそのことなのに時間的に遠い以前のことの ように思われる。 坂越えてーこの坂は次句の阿倍の近 つん くにあるどこかの坂であろうが、未 詳。〇阿倍の田面ー阿倍は所在未詳。静 岡市から清水市西部にかけての駿河国の 旧安倍郡に擬する説があるが、疑わしい。 タノモはタノオモの約。〇居る鶴のーこ の居ルは空を翔ぶ鳥が地上などに下り立 つ意。以上三句、鶴の姿の良さによって 恋人の好ましい感じを表した序。 0 とも しきートモシはあとをついて行く意の下 二段活用求ムから派生した形容詞。心引 うらや かれる、羨ましい、乏しい、などの意を 表す。〇明日さへもがもー明日もまた来 てほしいものだ。 おもかた おほ こ どり あ うへ き い たづ あす い
ね ~ 伊香保ろのやさかのゐでに立っ虹の現はろまでもさ寝を ね さ寝てば 四 十 第 巻 3415 上 野 伊 香 保 の 沼宝 に ゑ 小こ 水な 葱ぎ く 功くこ む と や 種 求 め け む ーノスは、、のような、、のように、の 意を表すナスの東国語形。〇逢へる君か もーアヘリは現在逢っていることを表す。 えんてい やさかのゐでーヰデは堰堤、ここは 人口池の堤防をさすのであろう。ャ やさか サカは地名か。あるいはもと八尺 ( 一尺 は約二九・七弩 ) の意で堤防の高さを表 したか。〇立っ虹のーノジはニジの古形 ないし訛り。以上三句、アラハロを起す 比喩の序。〇現はろまでもーアラハロは アラハルの東国語形。マデは東国語では 終止形に接続することがある。〇さ寝を さ寝てばーサ寝ヲサ寝は幾夜も続けて寝 とねがは あ あ ただわた 利根川の川瀬も知らず直渡り波に遭ふのす逢へる君かもること。「さ寝さ寝てこそ , ( 『峯 ) という 例もある。テ・ハ ↓三六五六 ( 綱し取りてば ) 。 この下に、あとはどうなりとなれ、とい うような内容の句が略されている 5 伊香保の沼にー伊香保ノ沼は倏名山 頂にある籐名湖をいうか。一説に、 籐名湖に水葱は生育しないとして山麓の 沼沢に擬する。第五句に続く。〇植ゑ小 水葱ー食用に教培してあるコナギ。コナ ギはナギともいい、みずあおい科の一年 草。その葉柄を食用にする。果実は秋熟 し、中に多数の種子が人っている。〇種 求めけむーこの種は原因。恋に苦しむも とを作った自分の行為を後悔した歌。 たごね つなは Ⅷ多胡の嶺に寄せ綱延へて寄すれどもあにくやしづしその 顔良きに かみつけのくろ 上野久路保の嶺ろの葛葉がたかなしけ児らにいや離り 来も いかほ よ くずは のじ あら ざか
やまぶき 山吹の繁み飛び潜くうぐひすの声を聞くらむ君はともに、射水川をさしている。七・六 = の 左注、四三突・四三九七の題詞、四四六一一左注では 難波堀江、大阪市北辺を流れる大川 ( 天 しも 満川 ) をさす。 宅野に住む人。仕官しない人。隠者。 ^ その本性を十分に発揮している。琴 も酒も満ち足りていて快適である、の意。 九君子の交り。↓三突七前文 ( 蘭蕙 ) 。 一 0 聖人君子が自らの優れた才能を包み 隠して俗世間の中に身を置くこと。『老 子』第四章の「其ノ光ヲ和シ、其ノ塵ニ同 ズ」による。ここは君子が俗人と酒席で 親しく交わることをいう。 = 瑞星。賢人のたとえ。 七言、晩春三日遊覧一首剏せて序 四 一ニ無声のものをたたいて声を求める、 じゃうしめいしんしゅんれいけい つらて くれなゐわか の意で、文章を作ることをいう。『文選』 上巳の名辰、暮春の麗景なり。桃花臉を昭らして紅を分ち、柳 文賦の「寂寞ヲ叩キテ音ヲ求ムーによる。 き とりはる こけふふ たづさかうが 色苔を含みて緑を競ふ。ここに、手を携へ江河の畔を曠かに望一 = 同じく文章を作ること。『文選』蜀都 賦に「楊雄章ヲ含ミテ挺生ス」とあるによ し J ほよき きんそん八 とぶら七 る。 3 ) み、酒を訪ひ野客の家に迥く過る。既にして、琴罇性を得、蘭 一四自分のったない文筆の力。 けい一 0 やはら 七 一一すぞ 一五四つの韻字。第二・四・六・八句の + 契光を和げたり。嗟乎、今日恨むる所は、徳星已に少なきこと 末字が「遊・舟・流・留」と同韻字で押さ 巻 - も もち じゃくう せうえうおもぶきの れている。 か。若し寂を扣ち章を含まずは、何を以てか逍遥の趣を據べむ。一 = この「勒」は、詩を作る場合、文字の -0 順序を定めることをいう。ただし、ここ たちま いささ しゐんしる 忽ちに短筆に課せ、聊かに四韻を勒すと云爾。 は詩を作ることをいう。 3971 3972 こもゐ 出で立たむ力をなみと隠り居て君に恋ふるに心どもなし おとものすくねやかもち 三月三日、大伴宿禰家持 い 一四 おほ あ らん 五