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検索対象: 完訳日本の古典 第13巻 枕草子 (二)
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1. 完訳日本の古典 第13巻 枕草子 (二)

枕草子 82 いづみ ずりゃう 一紀伊は上国、和泉は下国。国 受領は紀伊守。和泉。 の規模によって別がある。都に近 ふうこうめいび く風光明媚な国の長官としてあげ たものであろう。 一七四やどりづかさの権の守は ニ宿官。叙爵した者が受領に任 ちく′ ) ゑち′ ) しもつけかひ ごんのかみごんのすけ ごんかみ ずるのを待っ間、権守・権介など やどりづかさの権の守は下野。甲斐。越後。筑後。阿波。 に一時任ぜられること。任地には 赴かない 三以下いずれも上国。 一七五大夫は 四五位に叙せられた者の称。以 しきぶのたいふ さゑもんのたいふしのたいふ 下いずれも六位相当官でありなが 大夫は式部大夫。左衛門大夫。史大夫。 ら五位に叙せられた者をあげる。 五太政官の左右大史 ( 正六位上 ) が特に五位に叙せられた者。 一七六六位の蔵人、思ひかくべき事にもあらず。かうぶり 六冒頭を前段末尾につける説も 得て ある。叙爵を希望すべきではない、 の意となる。 え くろうど 六位の蔵人、思ひかくべき事にもあらず。かうぶり得て、何の大夫、権の守六位蔵人は望むべき役ではな 九 一説、以下に述べるような小 。も くるまやどり ひがき いたや などいふ人の、板屋せばき家持たりて、またく檜垣あたらしくし、車宿に車引成に安んじてはならない。 ^ 五位に叙せられて。 ふ おほ 九板で屋根を葺いた家。 き立て、前近く、こ木を生して、牛つながせて、草など飼はするこそ、いとに あじろ 一 0 檜の薄板を網代に組んだ垣。 = 「小木」で小さい木か ノけ・ . れ - 。 四 か ひのき

2. 完訳日本の古典 第13巻 枕草子 (二)

195 第 308 ~ 311 段 らも、なほさしあたりてさるをり なども言ふほどこそあれ、歩み出でぬれば、同じゃうになりぬ。 をり、いとねたきなり。はらひえ たる櫛、あかに落とし入れたるも ねたし」とある。 三〇九言ひにくきもの 一六女房には貴人の仰せ言を他に 伝達し、また言上を貴人に取り次 せうそこ 一六ごと ぐという重要な役があった。 言ひにくきもの人の消急、仰せ一言などのおほかるを、ついでのままに、は 宅貴人にお伝えしにくい かへりごと じめより奥まで、いと言ひにくし。返事また申しにくし。はづかしき人の、物天失敗、恋愛などか。当人の前 では言いにくいのである。 おとな おこせたる返事。大人になりたる子の、思はすなる事聞きつけたる、前にては一九この段三巻本にはない。前田 本を参考として「四位五位」の束帯 としては「冬」がよい、の意と仮に いと一一 = ロひに / 、し。 解く。四位は黒い袍を、五位は浅 緋色の袍を着る。 一一 0 六位の袍は深緑色。 三一〇四位五位は冬。六位は夏 ニ一正式の束帯姿に対し、夜宿直 する時に着用する簡略な装束を宿 とのゐすがた 直姿という。宿直姿などでも四位 四位五位は冬。六位は夏。宿直姿なども。 五位は冬、六位は夏がよい、とみ る。 一三品格を備えること。この段三 品こそ男も女もあらまほしき事なンめれ 巻本にはない。 ニ三主婦のことか しな わきま ニ四物事の弁えのある使者。 品こそ男も女もあらまほしき事なンめれ。家の君にてあるにも、たれかは、 一宝自然とその家の君のよしあし ニ四 つかひびとい さだ を言うにちがいない。 よしあしを定むる。それだに物見知りたる使人行きて、おのづから言ふべかン 一九 あ ニ三

3. 完訳日本の古典 第13巻 枕草子 (二)

くらゐ 位こそなほめでたきものにはあれ。同じ人ながら、大夫の君や、侍従の君な一官位をめぐっての感想。 ニ五位に叙せられた名家の子弟 ど聞ゆるをりは、、 しとあなづりやすきものを、中納言、大納言、大臣などになでまだ官職のない人。 子 三従五位下相当官。名家の子弟 が最初につく官職であることが多 草りぬれば、むげにせんかたなく、やんごとなくおばえたまふ事のこよなさよ。 ずりゃう七 ほどほどにつけては、受領もさこそあンめれ。あまた国に行きて、大弐や四位四「むげに」は、甚だしく。「せ んかたなくは、どうしようもな かんだちめ 、一ま以」 0 などになりぬれば、上達部などもやむごとながりたまふめり。 五「おばえ」は、相手によって感 うち めのと じられること。「たまふーは、中納 女こそなほわろけれ。内わたりに、御乳母は、内侍のすけ、三位などになり 言等になった人への敬語。 おもおも ぬれば、重々し。されど、さりとてはど過ぎ、何ばかりの事かはある。またお六身分身分に応じて言えば。 セ「やんごとなくこそおばゅめ きたかた ほくやはある。受領の北の方にてくだるこそ、よろしき人のさいはひには思ひれ」の意。 ^ 「あまた国ーで一語。 きさき かんだちめ 九大宰府の次官。 てあンめれ。ただ人の上達部のむすめにて后になりたまふこそめでたけれ。 一 0 大国従五位上、上国従五位下、 されど、なほ男は、わが身のなり出づるこそめでたく、うちあふぎたるけし中国正六位下、下国従六位下相当。 一九 = 男に比べて劣っている。 ぐぶ なにごと 三典侍従四位相当。 きよ。法師などの、なにがし供奉など言ひてありくなどは、何事かは見ゆる。 一三しかしそうかといってすでに 経たふとくよみ、め清げなるにつけても、女にあなづられて、なりかかりこそ老年になっているのだから、どれ くらいのよいことがあろ、つか、あ そうづ そうじゃう り・はし・ + ない すれ。僧都、僧正になりぬれば、「仏のあらはれたまへるにこそ」と、おばし 一四普通の身分の人の幸福。 せつけ 一五摂家・清華家などの家柄では まどひて、かしこまるさまは、何にかは似たる。 き - 」 ニ 0 五 一四 ないし だいじん てんじ

4. 完訳日本の古典 第13巻 枕草子 (二)

さぶら しも・ヘ 「下部候ふ」とのたまへば、出でたるに、「さやうの物ぞ、歌よみしておこせた一下部が参上しました、という あいさっ 挨拶。「下部」は行成の戯称。 ひびしくも言ひたりつるかな。女、すこしわれはと思ひニ解文のように書いた手紙。 まへると思ひつるに、。 子 三見事に、立派に、の意という。 四 草たるは、歌よみがましくぞある。さらぬこそ語らひょけれ。まろなどに、さる四私などに歌を詠みかけるよう な人はかえって無風流というもの のりみつ むしん 枕 だろうよ。謙辞とも皮肉とも考え 事言はむ人は、かへりて無心ならむかし」とのたまふ。「則光なりや」と笑ひ られる。「無心」は有心の対。 五則光は橘則光。八八段に歌を てやみにし事を、殿の前に人々いとおほかりけるに、語り申したまひければ、 好まなかったことが見える。それ ではまるで歌を嫌った則光みたい 「『いとよく言ひたる』となむのたまはせし」と人の語りし。これこそ見苦しき なものですね。 六三巻本「上」。 わればめどもなりかし。 セ行成が。 ^ 我褒め。自慢話。 九はじめて任官した。 一三七などて官得はじめたる六位笏に くろうどしやく 一 0 六位蔵人の笏。束帯の時六位 から右手に笏を持つ。 しきみぎうし たつみすみついぢ つかさ ろくゐのしやく 「などて官得はじめたる六位笏に、職の御曹司の辰巳の隅の築地の板をせしぞ。 = 東南。「立身」をかけるという。 一ニつまらないことばかりですね。 にしひんがし さらば、西東をもせよかし。また、五位もせよかし」などいふ事を言ひ出でて、ここから女房たちの話の内容。仮 に適宜句切る。 一三根拠もない名をつけたのは全 「あちきなき事どもを。衣などをも、すずろなる名どもつけけむ、いとあやし。 く理解に苦しむ。 ーし . り↓はか 」わらは かざみ ほそなが きめ 一四細長は女子の平常着として小 衣の名に、細長をばさも言ひつべし。など、汗衫は。尻長と言へかし、男の童 うちき うわぎ 袿の上に重ねる表着。おくみがな もろこし からぎめ み′一ろ の着るやうに。なそ、唐衣は。短き衣とこそ言はめ」「されど、それは、唐土いので身頃がせまい。細長はまあ きめ 一八きめ

5. 完訳日本の古典 第13巻 枕草子 (二)

おんかおおが く仏の御顔を拝み申しあげたいものだと、局に急いで入っ みのむし 三一〇四位五位は冬。六位は夏 ていると、蓑虫のような者で、奇妙な着物を着ている姿が 四位五位の正装は冬がふさわしい。六位は夏がよい。宿 とてもにくらしいのが、立ったり座ったり、額ずいて礼拝 いすがた 直姿などでも同様だ。 しているのは、しやくにさわって押し倒してしまいたいほ どの気持がする。 品こそ男も女もあらまほしき事なンめ ひどく身分の尊い方の局ぐらいを限っては、前を人払い れ してあるのだが、まあ普通の身分の人は、制しかねて困っ ひんかく 品格というものこそ、男も女も持ちたいことであるよう てしまうのだ。頼みの綱である法師を呼んでそうしたじゃ に思われる。だが、家の女主人としての立場にある時にも、 まになる者たちに注意をさせると、「お前たちちょっと向 だれが、そのよしあしを定められようか。それでさえも、 こうへ行け」などとも言ううちこそいいけれど、その法師 が歩み出てしまうと、前と同じ状態になってしまう。 物事の分別のあるよその使者がその家に行って、自然とよ みやづか しあしを一言うに違いないことであるようだ。まして宮仕え 三〇九言ひにくきもの などの勤めを持つ人は、特別である。猫が土の上に降りて おおごと いるように人目につく状態であるから。 言いにくいもの人の手紙、尊い方の仰せ言などのたく 段さんあるのを、順序どおりに、はじめから終りまで、ちゃ 一二人の顔にとりつきてよしと見ゆる所は んと取り次ぐのは、とても言、こく、 返事も、また申し 障あげにくい。気のおける立派な人が、物をこちらに送って 人の顔に備っていて、すばらしいと見える所は、毎日見 おとな 第 来たその返事も、言いにくい 。もう大人に成長している子る場合でも、ああいいなと見える。絵などは、何度も何度 に関しての、思いがけないことを聞きつけたのは、子の面も見てしまうと、目も引かれなくなるものだ。身近に立っ びようぶ ている屏風の絵などは、たいへんすばらしいけれど、自然 前ではとても言いにくいものだ。 めか きだ との

6. 完訳日本の古典 第13巻 枕草子 (二)

も レはかにいま一つえじつるに、これをこそ借り申すべかりけれ。さらば、もし一 = 裳をつけるのは臣下の礼。貴 子が唐衣を着ず略式の小袿姿であ またさやうの物をきりししめたるに」とのたまはするに、また笑ひぬ。大納言ることを婉曲にとがめたとみる説 もある。 せいそうづ 殿、すこししりそきゐたまへる、聞きて、「清僧都のにゃあらむ」とのたまふ。一六御主人は中宮様なのだから。 宅近衛府が御座所の前に陣を設 ひとこと けるのが行幸啓の例。 一言としてをかしからぬ事ぞなきや。 天私 ( 清少納言 ) が さしぬき 僧都の君、赤色の薄物の御衣、紫の袈裟、いと薄き色の御衣ども、指貫着た究僧の正装【赤色の袍・裳を用 ニ四 いる。ここは布施の料。 そう ばさっ いとをかし。「僧ニ 0 「給ふ」は自尊敬語とみる。中 まひて、菩薩の御ゃうにて、女房にまじりありきたまふも、 ニ五 宮がくださった、ともみられるか ゐぎぐそく 三法服を切り縮めて唐衣にして 綱の中に、威儀具足してもおはしまさで、見苦しう、女房の中に」など笑ふ。 いるのか、という冗談。 あや なほし ニ六 父の大納言殿の御前より松君ゐてたてまつる。葡萄染の織物の直衣、濃き綾 = = 清少納言の「清に因む冗談。 ニ三隆円僧都。伊周の弟。十五歳。 の打ちたる、紅梅の織物など着たまへり。例の四位五位いとおほかり。御桟敷 = 0 僧官、僧位の総称。 一宝仏語。動作が礼にかなって品 に、女房の中に入れたてまつる。何事のあやまりにか、泣きののしりたまふさ位があること。 ニ六伊周の長男道雅の幼名。三歳。 毛法会がいよいよ始って。 段へ、いとはえばえし。 夭蓮花の造花。 そうぞくかんだちめ いっさいきゃう 一部づっ入れて、僧俗、上達部、ニ九衆僧が列を正して経を読みな 事はじまりて、一切経を、蓮の花の赤きに、 ニ九 がら、仏堂を回る儀式。 第 。も だいぎゃうだうゑ え・一う てんじゃうびとぢげ 殿上人、地下、六位、何くれまで持てわたる、いみじうたふとし。大行道、回三 0 仏事の終りに回向文を唱える こと。 うち カう 向、しばし待ちて、舞などする、日ぐらし見るに、目もたゆく苦しう、内の御三一法会後行われる法楽の舞楽。 。力、つ ニ七 ひと まひ はす えびぞめ

7. 完訳日本の古典 第13巻 枕草子 (二)

・も からぎめき 一めのと 御乳母になりたる。唐衣も着ず、裳をだに、よう言はば、着ぬさまにて、御前一高貴な方の乳母。 ニ女房の礼装として当然着るも つばね どころ みちゃう に添ひ臥して、御帳のうちをゐ所にして、女房どもを呼び使ひ、局に物言ひやのなのに、身内のような顔をして。 礼を失したさま。 子 三どうかすると。 り、文取り次がせなどして、あるさまよ。言ひ尽くすべくだにあらず。 くろうど 草 四 四蔵人所の雑色。無位。六位の みこと こぞしもっき ざふしきくらうど 枕雑色の蔵人になりたる。去年霜月の臨時の祭に、御琴持たりし人とも見えず、蔵人となると急にはなばなしい役 になる。田九二段にも「いづこな きんだち りし天くだり人ならむとこそおば 君達に連れ立ちてありくは、いづくなりし人ぞとこそおばゆれ。ほかよりなり ゆれ」とあった。 とり 五十一月下の酉の日に行われる たるなどは、同じ事なれど、さしもおばえず。 かも 賀茂の臨時の祭。 わごん 六試楽の折に雑色が二人で和琴 を舁き出すのが例。↓一四五段。 二四三雪高う降りて、今もなほ降るに 七雑色以外から蔵人になる者。 〈袍の色か。一説、顔色。 雪高う降りて、今もなほ降るに、五位も四位も、色うるはしうわかやかなる九袍。五位は蘇芳、四位以上は 黒色の袍。 とのゐすがた おび 一 0 不審。三巻本「革の帯のかた が、うへの衣の色はいと清らにて、かめの帯のつきたるを、宿直姿にて、ひき つきたるを」。 あこめくれなゐ したがさわ はこえて、紫のも雪に映えて、濃さまさりたるを着て、衵の紅ならずは、おど = 夜の略式の姿。下襲を脱ぎ、 うえのはかまさしめき 表袴を指貫にかえ帯はつけない。 ろおどろしき山吹を出だして、からかさをさしたるに、風のいたく吹きて、横三衣服をたくし上げて着ること。 袍の後ろを腰の部分に折り込む。 ふかぐっはうくわ ひとえ ざまに雪を吹きかくれば、すこしかたぶきて歩み来る深沓、半靴などのきはま一三単衣と下襲との間に着る。こ こは下襲を着ないので袍の下にな で、雪のいと白くかかりたるこそをかしけれ。 ( 現代語訳三〇六ハー ) ふみ きめ やまぶきい あ く っ る。 か すおう かは

8. 完訳日本の古典 第13巻 枕草子 (二)

風など吹き、荒々しき夜来たるは、たのもしくて、をかしうもありなむ。 0 一「うへの」不審。三巻本「うへ くらうどニ なほし くらうど 雪こそめでたけれ。直衣などはさらにも言はず、狩衣、うへの蔵人の青色の、の衣、蔵人」。 ニ六位蔵人着用の青色の。 子 ろう寺、う 三一般六位官人着用の色。緑色。 いとひややかに濡れたらむは、いみじうをかしかるべし。緑衫なりとも、雪に ろうそう 草 作者は蔵人が緑衫を着用するのを 好まないようである。 枕だに濡れなば、にくかるまじ。昔の蔵人などの、人のもとなどに青色を着て、 四 雨に濡れて、しばりなどしけるとか。今は昼だに着ざンめり。ただ緑衫をのみ四青色の袍を着ずに緑衫を着る という流行の変化を嘆く。 ゑふ こそかづきたンめれ。衛府などの着たるは、ましていとをかしかりしものを。 くれなゐ かく聞きて、雨にありかぬ人やはあらむずらむ。月のいと明かき夜、紅の紙 六 五「月のあかかりける夜女のも ひき一し のいみじうあかきに、ただ「あらすとも」と書きたるを、廂にさしたるを、月とに遣しける / 恋しさは同じ心に あらずとも今宵の月を君見ざらめ や」 ( 拾遺・恋三源信明 ) にあてて見しこそをかしかりしか。雨降らむをりは、さはありなむや。 ひさし 六廂の間に差し入れてあるのを。 きめぎめ セ いつも後朝の文をよこす男が。 二七二常に文おこする人 ^ 今はもうこれきりだ。 九思ったとおりだ、とはいえ、 常に文おこする人、「何かは。今は言ふかひなし。今はなど言ひて、またやはりいくらか期待はしていたの おと 一 0 い の日音もせねば、さすがに、明けたてば、さし出づる文の見えぬこそさうざ , っ一 0 召使の差し出す手紙。 = きつばりと割り切ったあの人 の気持といったら。 しけれと思ひて、「さても、きはぎはしかりける心かな」など言ひて暮らしつ。 七ふみ ひる かりぎめ一

9. 完訳日本の古典 第13巻 枕草子 (二)

47 第 141 段 み かんだちめそうがう あさてる るが、朝光か 「さは、こはたれがしわざにか。好き好きしき上達部、僧綱などは、たれかは 九円融院の御所の長官。 ある。それにやかれにや」などおばめきゅかしがりたまふに、うへ、「このわ一 0 わけがわからないままに儀礼 上の返歌をした。 = 「これをだに」の歌とこの返歌。 たりに見えしにこそは、、 しとよく似たンめれ」と、うちほほゑませたまひて、 三そ知らぬ様子で、とばけて。 一五ひとすぢみづし いま一筋御厨子のもとなりけるを、取り出でさせたまひつれば、「いであな心一三僧官の僧正・僧都・律師、僧 位の法印・法眼・法橋の総称。 かしら 憂。これ仰せられよ。頭いたや。いかで聞きはべらむ」と、ただ責めに責め申一四不審がって知りたく思われる。 一五下書などか。いずれにせよ主 して、うらみきこえて笑ひたまふに、やうやう仰せられ出でて、「御使に行き上のいたすらだったのである。 一六まあ、なんと情けないこと。 おにわらは ニ 0 こひやうゑニニ たりける鬼童は、たてま所の刀自といふ者のともなりけるを、小兵衛が語らひこのわけをおっしやってください。 宅「蓑虫のやうなる童」をさす。 いだしたるにゃありけむ」など仰せらるれば、宮も笑はせたまふを、引きゅる大柄な童を「鬼童」といったもの。 だいばんどころ 一 ^ 不審。三巻本「台盤所」。 がしたてまつりて、「などかくはからせおはします。なほ疑ひもなく、手をう一九雑役をつとめる女官。 ニ 0 供の者。三巻本「もと」。 をが いとほ三中宮付きの女房の名。 ち洗ひて、伏し拝みはべりし事よ」。笑ひねたがりゐたまへるさまも、 一三話をつけて誘い出す。 ニ三藤三位が中宮を。主上の乳母 こりかに、愛敬づきてをかし。 としてまた大叔母としての遠慮の だいばんどころ わらは つばね さて、うへの台盤所にも笑ひののしりて、局におりて、この童たづねいでて、なさ。 文取り入れし人に見すれば、「それにこそははべるめれ」と言ふ。「たれが文をニ四主語は藤三位か。 ニ五藤三位は。 たれが取らせしぞ」と言へば、しれじれとうちゑみて、ともかくも言はで走りニ六痴れ痴れととばけて。 あら あいぎゃう 一九 ニ六 すず せ つかひ

10. 完訳日本の古典 第13巻 枕草子 (二)

一中宮様はこの程度の人をまで めにもかろがろしう、「かばかりの人をさへおばしけむ」など、おのづから、 おかわいがりになったのだろうと。 ニ仮に下に「もどかむ」などの省 物知り、世ノ中もどきなどする人は。あいなく、かしこき御事かかりてかたじ 略とみる。 子 は。まことに身のほど過ぎたる事もあ三「あいなく」 ( そうしてみたと けなけれど、ある事などは、またいかが 草 ころでどうしようもなく ) は「かた じけなけれど」にかかる。 枕りぬべし。 四おそれ多い中宮様の御事がか 院の御桟敷、所々の桟敷ども見わたしたる、めでたし。殿はまづ院の御桟敷かわって。 五事実なのだからどうして書か ふたところさんみの にまゐりたまひて、しばしありて、ここにまゐりたまへり。大納言一一所、三位ずにいられようか。 六高貴な方々の桟敷 てうど 九 中将は、陣近うまゐりけるままにて、調度負ひて、いとっきづきしうをかしう七権大納言伊周と道頼。ただし 道頼はこの時権中納言であり、権 な 一一ともさぶら てんじゃうびと ておはす。殿上人、四位五位、こちたううち連れて、御供に候ひて並みゐたり。大納言に任じたのは六か月後の正 暦五年 ( 究四 ) 八月のこと。 もからぎめみくしげどの 入らせたまひて見たてまつらせたまふに、女房ある限り、裳、唐衣、御匣殿ま ^ 左中将隆家。従三位に叙せら れたのは同じくこの年八月。 こうちき うへ で着たまへり。殿のうへは、裳の上に小袿をそ着たまへる。「絵にかきたるや九近衛の陣屋。 きゅうせん 一 0 武官としての弓箭など。「負 うなる御さまどもを。いまいらへ今日はと申したまふぞ。三、四の君、宮の御ひて」は、一説「帯びて」。 = 関白の御供。 しゅう 裳ぬがせたまへ。この主には御前こそおはしませ。御桟敷の前に陣をすゑさせ三女房とは言えない、の意か。 一説、一番年若い御匣殿まで。 みなひと からぎめ たまへるは、おほろけの事か」とそうち泣かせたまふ。げにと皆人も涙ぐまし一三表着の上に唐衣の代りに着る 一九 もの。通常礼服 ほふぶくひと 一四不審。誤脱があろう。 きに、赤色に桜の五重の唐衣を着たるを御覧じて、「法服一くだり給へるを、 さじき六 四 一七さじき