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検索対象: 完訳日本の古典 第18巻 源氏物語(五)
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1. 完訳日本の古典 第18巻 源氏物語(五)

423 各巻の系図 藤裏葉 △藤壺中宮 △大宮 ( 宮 ) 紫の上 ( 対の上、上、北の方 ) 一花散里 ( 夏の御方 ) 尼君ーー明石の君 ( 母君 ) △桐 ~ 亞院源氏 ( 六条院、六条の大臣、主の院、大臣、父大臣 ) 雀院 ( 院 ) 弘徽殿大后 《葵の上一 大臣、大殿、主の 内大臣 ( 大臣、太政大臣 按察大納言の北の方 春宮 ( 宮 ) タ霧 ( 宰相中将、宰相の君、中将、男君、中納言、宰相、宰相殿 ) 四の君 ( 北の方 ) 柏木 ( 頭中将、中将 ) 弁少将 ( 少将 ) 八郎君 ( 御弟子 ) 雲居雁 ( 女君、女 ) △六条御息所 ( 御母御息所 ) 明石の姫君 中務宀呂 ( 宮 )- ー姫君 惟光 藤典侍 ( 内侍 ) 右近将監 宰相の乳母 大輔の乳母 左少将 右の少将 弘徽殿女御 ( 女御 ) 秋好中宮 ( 宮、中宮 ) 冷泉帝 ( 内裏の帝 )

2. 完訳日本の古典 第18巻 源氏物語(五)

源氏物語 422 弘徽殿大后 朧月夜の君 ( 院の尚侍 ) △式部卿宮 △六条御息所毎御息所 ) 兵衛督 部卿宮 紫の上 ( 上、対の上 ) △藤壺中宮 ( 故入道の宮 ) 花散里 ( 夏の御方 ) △桐壺院 ( 故院 明石の君 ( 冬の御方、母君 ) 、朝泉帝明石の姫君 源氏 ( 大臣、大殿、殿 ) 蛍丘 ( 部卿 ~ 呂 ( 兵部卿宮、宮、親王 ) 朱雀院 ( 院 ) 承香殿女御 朝顔の姫君 ( 前斎院、斎院 ) 秋好中宮 ( 中宮、宮 ) △葵の上 春宮 ( 宮 ) タ霧 ( 宰相中将、宰相の君 ) 大臣 ( 内の大殿、大臣 ) 柏木 ( 頭中将 ) 弁少将 雲居雁 ( 姫君、女 ) 侍従 左大臣ーーー麗景殿女御 ( 三の君 ) 大輔の乳母 中務宮ーーー姫君 惟光 ( 惟光の宰相 ) 兵衛尉 右大臣ー姫君 大弐 左衛門督

3. 完訳日本の古典 第18巻 源氏物語(五)

1 一口 一御前に進み出るのが気づまり。 れて、立ち出でにくけれど、忍びやかにうちおとなひて歩み出でたまへるに、 ニ高欄に押しかかっていた女房。 おほむまゐ 人々けざやかにおどろき顔にはあらねど、みなすべり入りぬ。御参りのほどな三中宮入内のころタ霧は十歳で、 簾中への出入りも許された。 わらは 四せう 物ど、童なりしに入り立ち馴れたまへる、女房などもいとけ疎くはあらず。御消 0 源氏からの伝一 = 〔を、女房を介 六 して中宮に伝えさせる意。 わたくしごと 源そこけい 五ともに、中宮づきの女房。 息啓せさせたまひて、宰相の君、内侍などけはひすれば、私事も忍びやかに語 六内輪の話。「御消息」に対する。 けだか 七女房が男の客とひそひそ話を らひたまふ。これはた、さいへど気高く住みたるけはひありさまを見るにも、 するという慎みなさはあるものの。 ^ 紫の上・雲居雁などのことが。 さまざまにもの思ひ出でらる。 0 野分に荒らされたとも思えぬ中 おとど かろ・し よべみす 南の殿には、御格子まゐりわたして、昨夜見棄てがたかりし花どもの、行く宮の庭。大和絵の構図をさえ思わ せる美観は、秋の人中宮にふさわ みはし しい。次の紫の上の庭と対照的。 方も知らぬゃうにてしをれ臥したるを見たまひけり。中将御階にゐたまひて、 九タ霧は、春の町に帰還。 御返り聞こえたまふ。タ霧「荒き風をもふせがせたまふべくやと、若々しく、い一 0 以下、中宮からの返事。 = 妙に気弱なところがおあり。 細くおばえはべるを、今なむ慰めはべりぬる」と聞こえたまへれば、源氏「あ三中宮の、こちらの不親切を思 う返事の言葉に納得する。 よ やしくあえかにおはする宮なり。女どちは、もの恐ろしく思しぬべかりつる夜一三源氏が中宮のもとに。 一四前行に「参りたまふ」としなが おば らも、「御直衣など・ : 」と時間を遡 のさまなれば、げにおろかなりとも思いてむ」とてやがて参りたまふ。 らせ、中宮訪問までの経緯を細叙。 みきちゃう 一四なほし 御直衣など奉るとて、御簾ひき上げて入りたまふに、短き御几帳ひき寄せて、一五母屋の御簾か 一六几帳の端からわずかに見える はつかに見ゆる御袖ロは、さにこそはあらめと思ふに、胸つぶつぶと鳴る心地袖口を、紫の上のそれかと思うと、 へ 九 さいしゃう あゆ ゅ

4. 完訳日本の古典 第18巻 源氏物語(五)

277 野分 てくる風が、紫苑の花までもいっせいに匂うような香りを いましようかと、まるで子供のように、い細い思いでおりま 放っているようなのも、中宮がお袖をお触れになったせい したが、こうしてお見舞をいただきまして、今やっと気持 であろうかと思いやられてまことにすばらしく、ついひき も慰められました」との中宮のお言葉を中将がお申しあげ しまる気持になって、御前に出ていくこともためらわれる になると、大臣は、「宮は妙に弱々しいところがおありの せき けれども、静かに咳ばらいして一歩をお進めになると、女方です。女ばかりでは、きっとそら恐ろしくお思いになっ 房たちは格別に驚いたふうではないけれども、みなそっと にもこのわた たにちがいない昨夜の荒れようだから、 じゅだい 奥の部屋へはいってしまった。中宮が入内なさったころな しを不親切ともお思いになっただろう」とおっしやって、 わらわ どには、中将はまだ童であったから御簾の中にまで出入りすぐに中宮のもとに参上なさる。 してなじんでおられた、そのせいで女房などの態度もそう 大臣が御直衣などお召しになろうとして、御廉を引き上 みきちょう よそよそしくはない。大臣のお見舞を中宮にお伝え申すよ げて奥におはいりになるとき、丈の低い御几帳をそばに引 さい、しっ うおっしやって、見知りの宰相の君や内侍などがいる様子き寄せた陰から、ちらりとお袖口が見えるのは、あのお方 なので、ひっそりと内輪のことも話し合っていらっしやる。 にちかいないと思うと、中将は、胸がどきどきと高鳴る気 この御殿もまたこの御殿なりに、なんといっても、みな気持になってくるのも我ながら情けないので、ほかのほうへ 品高く日々を過している気配や有様を見るにつけても、中目をそらした。大臣はお鏡などごらんになって、そっと小 将は、なにかとしぜんに思いがこみあげてくるのである。 声で女君に、「中将の朝明けの姿はいかにもきれいですね。 紫の上の南の御殿では、御格子をすっかり上げわたして、 今はまだほんの子供のはずなのに、そう見苦しくもなく思 ゅうべ 昨夜見捨てるに忍びなかった花々が見る影もない有様でしわれるのも、親心の闇というものだろうか」とおっしやっ おれ伏しているのをごらんになっていらっしやるのだった。 て、ご自分のお顔ま、 。いくつになっても美しいと思ってい 中将は正面の階段におすわりになって、中宮からのご返事らっしやるようである。じつにたいそうな心づかいをなさ をお伝え申しあげなさる。「恐ろしい風をも防いでくださ って、「宮にお目にかかるのは、気おくれしますよ。どこ のうし やみ

5. 完訳日本の古典 第18巻 源氏物語(五)

源氏物語 420 藤袴 △藤壺中宮 △桐壺院 卿 鬚黒大将 ( 大将 ) 承香殿女御の ) 朱雀院 左兵衛督 北の方 源氏 ( 大臣、大臣の君、六条の大臣、殿、大殿 ) 蛍兵部卿宮 ( 兵部卿宮、宮 ) 紫の上 ( 殿の上 ) △葵の上 タ霧 ( 中将 △宰相ーーーー宰相の君 △三位中将ー△タ顔毎君 ) 玉鬘 ( 女 宰相中将、 尚侍の君、 冷泉帝 ( 上、内裏 ) 大臣 ( 父大臣、大臣、殿 ) 柏木 ( 将、 ) ) 四の君弘徽殿御 (% 殿 ) 弁のおもと 秋好中宮 ( 中宮 )

6. 完訳日本の古典 第18巻 源氏物語(五)

67 野分 0 前巻の初秋に続き、ここは八月。 六条院秋の町の盛りから始まる。 一秋好中宮の住む秋の町。 野わき ニ「色」も「種」も、種類、の意。 三皮のついた木と皮をはいだ木。 四丈の低い目の粗い垣。庭園用。 おまへ 中宮の御前に、秋の花を植ゑさせたまへること、常の年よ五朝露タ露。「植ゑたてて君が 〔一〕六条院の中秋、野 しめゅふ花なれば玉と見えてや露 分にわかに襲来する りも見どころ多く、色種を尽くし、よしある黒木、赤木のもおくらむ」 ( 後撰・秋中伊勢 ) 。 四 六中宮方の庭のこと。歌語。 ませゅ 籬を結ひまぜっつ、同じき花の枝ざし、姿、朝夕露の光も世の常ならず、玉かセ紫の上の。「野辺」と「山」が対。 〈心魂も抜け出しそうな感動 とかかやきて、造りわたせる野辺の色を見るに、はた春の山も忘られて、涼し九春秋優劣の争い。↓薄雲団六 三ハー・朝顔団八六ハー。 うおもしろく、心もあくがるるやうなり。春秋のあらそひに、昔より秋に、い寄一 0 紫の上の庭前。春、紫の上方 に招かれた中宮方女房が春の壮観 おまへ に感動したが ( ↓胡蝶団一一一九ハー ) 、 する人は数まさりけるを、名だたる春の御前の花園に心寄せし人々、またひき 秋を迎えるとこれにも感動。 けしき = 「色見えで移ろふものは世の 返し移ろふ気色世のありさまに似たり。 中の人の心の花にそありける」 ( 古 一とゐ これを御覧じっきて里居したまふはど、御遊びなどもあらまほしけれど、八今・恋五小野小町 ) に似た発想。 一ニ中宮が、宮中から退下。 きづき 月は故前坊の御忌月なれば、心もとなく思しつつ明け暮るるに、この花の色ま一三中宮の亡父 ( 故前皇太子 ) 。 「忌月は、亡くなった月。 さるけしきどもを御覧ずるに、野分例の年よりもおどろおどろしく、空の色変一四花の盛りが過ぎないかと心配。 一五台風。中秋、八月に多い。 一六 りて吹き出づ。花どものしをるるを、いとさしも思ひしまぬ人だに、あなわり一六秋の草花に熱中しない人でも。 こぜんばう のわき いろくさ おほむあそ は九 る あ き くろき あかぎ

7. 完訳日本の古典 第18巻 源氏物語(五)

419 各巻の系図 行幸 △藤壺中宮 △桐壺院 大宮 ( 宮 ) △左大臣 女 藤大納言 春宮大夫 源氏 ( 主の大臣、大臣の君、源氏の大臣、大臣、六条の大臣、六条殿、殿、太政大臣 ) 蛍兵部卿宮 霧 ( 中将の君、中将 ) △タ顔 鬚黒大将 ( 右大将 ) 紫の上 ( 南の上、上 ) △葵の上 ( 姫君 ) 玉鬘 ( 西の対の姫君、君 ) 内大臣 ( 大臣、父大臣、内の大臣、殿 ) 雲居雁 ( 姫君 ) 近江の君 四の君 按察大納言の北の方 △常陸の親王 ( 父親王 ) ーー末摘花 ( 常陸の宮の御方 ) 空嬋 柏木 ( 中将 ) 少将 弘徽殿女御 ( 女御 ) 左大臣 右大臣 蔵人の左衛門尉 ( 中宮 ) 秋好中宮 冷泉帝 ( 上 )

8. 完訳日本の古典 第18巻 源氏物語(五)

に参れり。上も、このついでに、中宮に御対面あり。御方々の女房おしあはせ宮の、親密な者同士の唱和贈答が、 六条院の栄華を晴れやかに讃える。 おほとなぶら ねとき たる、数しらず見えたり。子の刻に御裳奉る。大殿油ほのかなれど、御けはひ一四六条院の秋の町で明石の姫君 の裳着を行う。中宮が腰結役。 ニ 0 す 一五午後八時ごろ。 いとめでたしと宮は見たてまつれたまふ。大臣、「思し棄つまじきを頼みにて、 一六西の対の母屋に特設。 ためし なめげなる姿を、すすみ御覧ぜられはべるなり。後の世の例にやと、心せばく宅裳着の際の髪上げの役。「内 侍」は、中宮づきの内侍。 忍び思ひたまふる」など聞こえたまふ。宮、「いかなるべきこととも思ひたま一 ^ 紫の上。姫君の養母として参 列。中宮とはここで初対面。 へわきはべらざりつるを、かうことごとしうとりなさせたまふになん、なかな一九午前一時ごろ。 ニ 0 姫君をお見捨てになるまいと。 あいぎゃう 三失礼な姿を。姫君の童女姿。 か心おかれぬべく」とのたまひ消つほどの御けはひ、いと若く愛敬づきたるに、 一三中宮の腰結役を前例のない名 大臣も、思すさまにをかしき御けはひどものさし集ひたまへるを、あはひめで誉とする。源氏の意図でもあった。 ニ三親の狭い了簡から。 ニ六 たく思さる。母君の、かかるをりだにえ見たてまつらぬを、いみじと思へりしニ四こともなげに仰せになる。 一宝中宮・姫君・紫の上など。 ニ七 まうのば も心苦しうて、参上らせやせましと思せど、人のもの言ひをつつみて過ぐしたニ六明石の君。姫君の実母とはい え、この晴儀にさえ対面できない。 ニ九 と事多くうるさきを、片はし毛源氏の、明石の君への燐憫。 枝まひつ。かかる所の儀式は、よろしきにだに、い 夭受領の娘を母に持っ姫君への、 世間の悪評を気にかける。 ばかり、例のしどけなくまねばむもなかなかにやとて、こまかに書かず。 梅 ニ九以下、語り手の省筆の弁。 とうぐう・ げんぶく とお三 0 それほどでない場合でさえも。 春宮の御元服は、二十余日のほどになんありける。い 〔五〕東宮の御元服、姫 三一二月の。前に予告 ( 一八三ハー ) 。 きほ 君の入内を延期する 三ニ時の権勢家が となしくおはしませば、人の、むすめども競ひ参らすべき うへ ニ四 三 0 たいめん

9. 完訳日本の古典 第18巻 源氏物語(五)

さうぞく おまへ の装束かづけたまふ。御返りもその色の紙にて、御前の花を折らせてつけさせ一紅梅色。下の「花」も、紅梅 ニどんな内容の文面か気になる。 うち かく たまふ。宮、「内のこと思ひやらるる御文かな。何ごとの隠ろへあるにか、深三秘密があると思われては困る。 四前歌の「散りにし枝」を「花の 語 物く隠したまふ」と限みて、いとゆかしと思したり。源氏「何ごとかははべらむ。枝」と変えて、姫君をたとえた。 「香」も、姫君のにおい出る魅力。 すずり 「梅の花立ちよるばかりありしょ 源隈々しく思したるこそ苦しけれ」とて、御硯のついでに、 り人のとがむる香にぞしみぬる」 え ( 古今・春上読人しらず ) 。 源氏花の枝にいとど心をしむるかな人のとがめん香をばつつめど 五語り手の推測。宮もこの返歌 を見ていないことになる。 とやありつらむ。 六薫物合せへの熱中は物好きに 過ぎるようだが、の意。 源氏「まめやかにはすきずきしきゃうなれど、またもなかめる人の上にて、 セ明石の姫君は一人娘だから。 、、とわり いとな ^ 不器量だから、親しからぬ人 これこそは道理の営みなめれと、思ひたまへなしてなん。いと見にくければ、 にお目にかけるのもきまりわるい 疎き人はかたはらいたさに、中宮まかでさせたてまつりてと思ひたまふる。親ので。謙辞だが、以下の「中宮・ : 」 を言い出すための口実でもある。 しきほどに馴れきこえ通へど、恥づかしきところの深うおはする宮なれば、何九姫君を格上げすべく、秋好中 宮を裳着の腰結役とする魂胆。前 から、中宮に姫君の後見をと頼ん ごとも世の常にて見せたてまつらん、かたじけなくてなむ」など聞こえたまふ。 、ペー 0 でもいた。↓薄雲 3 ~ / 二ジ 蛍宮「あえものも、げにかならず思しよるべきことなりけり」とことわり申し一 0 姫君の裳着、入内に関して。 一一中宮にあやかることも。 一ニ姫君を将来の中宮にとの源氏 たまふ。 の真意が、宮の言葉で明らかとな このついでに、御方々の合はせたまふども、おのおの御使して、「この夕暮る。八道理」にひびきあう表現。 くまぐま 四 一三かたがた うへ

10. 完訳日本の古典 第18巻 源氏物語(五)

涙もろくていらっしゃいますので、おいとおしゅうござい をひきこみまして、まったくつろうございます。ただいま ます」とお答え申されると、大臣は微笑なさって、「も , っ静養いたしておりますしだいで」とお申しあげになる。 ねんご あまり長いお命でもあるまい懇ろにお仕えしてお世話を 中将は大臣の御前をさがって、中の廊の戸口を通って、 語 物してあげるがよい。内大臣はどうもそう深切になさらぬよ中宮のもとへと参上なさる。夜明け方のほの明りのなかの 氏 うだと、大宮がこばしておられた。あの内大臣は、人柄が中将の姿は、ほんとにご立派でいかにもお美しい。中将が、 源 妙に派手好みで、しつかりしすぎている一方で、親などに 東の対の南側に立って、中宮のお住いの寝殿のほうに目を み、一うし 対する御孝養といったことにも、見た目の立派さだけを大おやりになると、御格子を二間ほど上げて、明け方の薄明 事にして、世間をあっといわせてやろうといった気持はあ りのなかに、御簾を巻き上げて、女房たちがすわっている。 こうらん るが、心底からの人情味というものはないお人であられる高欄のそちこちに寄りかかって若々しい女房ばかり大勢い な。とはいっても、心の奥が深く、まことに頭のよい人で、 るのが見える。うちくつろいだ身なりははたしてどんなも この末の世にはおさまりきれぬくらい学問も無類だから、 のか、夜明けのほの暗がりでは、色とりどりに装った姿も、 こちらが閉ロするくらいだけれども、人間としてこのよう どの人がということもなく皆それぞれに風情がある。中宮 めのわらわ むしか 1 」 に難がないというのは、めったにないことなのだ」などと は女童をお庭にお下ろしになって、数々の虫籠に露を移さ しおんなでしこ おっしやる。 せていらっしやるのだった。女童たちは、紫苑、撫子、紫 おみなえしかぎみ 〔五〕タ霧、秋好中宮を大臣は、「まったく恐ろしい風であの濃淡さまざまな色の衵の上に、女郎花の汗衫などといっ 見舞い源氏に復命するったが、中宮の御方では、しつかり 、時節に似合わしい装いをして、四、五人ばかり連れ立 みやづかさ した宮司など、おそばにいたのだろうか」とおっしやって、 ってそこここの草むらに近づき、さまざまの色の虫籠を持 なでしこ かれん この中将の君を使者として、御消息をおさしあげになる。 ち歩いて、撫子などのいかにも可憐な枝々を折り取って中 ゅうべ 「昨夜の風の音は、どんなお気持でお聞きあそばしたでし宮の御前に持ってまいる、その霧の中ににじんで見える情 たちど よう。風が吹き荒れておりました最中に、あいにくと風邪景はなんとも優艶な有様である。中将の立処に吹き送られ あこめ