かきくらす かーー ) 、がまーし かずかずに かすがのの かぜふけば ーおきっしらなみ ーとはになみこす かたみこそ かちびとの 索 歌からごろも 一和かり・ノ、らし かりそめに かりなきて きのふけふ おもひあらば おもひつつ ーぬればやひとの ーをればすべなし おもふかひ おもふこと おもふには おもへども おもほえず か行 一一八きみがあたり きみがため 一一 0 四きみこむと 一一 0 一きみにより 一三 = きみやこし 一空 ノ、らべこし 一夭くりはらの 一七五くれがたき 一三七くれなゐに ーにほふがうへの にほふま、づら けふこずは こころをぞ こぬひとを こひし / 、は こひしとは こひせじと こひわびぬ こもりえに これやこの ーあまのはごろも ーわれにあふみを 、行 さくはなの 一公 一三五 一犬 一六三 一九七 一三五 さくらばな 、ーけ・ふこ挈、かノ、も ーちりかひくもれ さっきまっ さむしろに 一三四 さよふけて き、り・とも一と 一四七したひもの しなのなる 一三 0 しのぶやま 一三 0 しほがまに 一一一九しらたまか 一九七しらっゅは = 0 一しるしらぬ 一六四すまのあまの 一九 0 すみわびぬ 一堯するがなる ーうつのやまべの ーうつみのやまの そでぬれて 一一一九そむくとて 一璧そめかはを た行 一会たにせばみ たまかづら 一天たまのをを 一八一一ちぢのあき 一五四ちはやぶる 一契 ーかみのいがきも 一一 0 三 ーかみよもきかず 一堯ちればこそ 一九 0 つきしあれば つきゃあらぬ っ / 、 . しより・ つつゐつの つひにゆく 一全 つみもなき つれづれの 一九 0 てををりて 一吾一ときしらぬ としだにも 一 = 三としをへて = 00 とへばいふ 一六五とりとめぬ 一会とりのこを 一五四 な行 ながからぬ 一四一なかそらに 一七 0 一六四 一八七 一一 0 三 一三四 一空 一全 一九四 一五七 一九三 一八 0 一九 0
男の、まだいと若かりけるを、この女あひしりたりけり。男、女がたゆるされ一年少ゆえに女房の控え所に出 入りを許されたのである。 たりければ、女のある所に来てむかひをりければ、女、「いとかたはなり。身ニ普通でない、見苦しい、の意。 ちよくかんこうむ 三勅勘を蒙り破滅すること。 語 四下句「し」は強意、「かへ」は 物も亡びなむ、かくなせそ」といひければ、 勢 「代ふ」で、逢うことに代えれば。 四 伊 別に「肯ふ」 ( することができる ) と 思ふにはしのぶることそまけにけるあふにしかへばさもあらばあれ する解あり。第五句、どうともな ギ、うし といひて、曹司におりたまへれば、例の、このみ曹司には、人の見るをもしられ。『古今集』恋一、読人しらず、 『古今六帖』第五に類歌がある。 ここは宮中の女房の居室。 でのばりゐければ、この女、思ひわびて里へゆく。されば、なにの、よきこと、五 六宮仕えの女房の自宅。 とのもづかさ と思ひて、いきかよひければ、みな人聞きて笑ひけり。っとめて主殿司の見る七どうしていけないことがあろ うか、かえってよいことよ、の意。 くっ 〈宮中の掃除・灯火・輿などの に、沓はとりて、奥になげ入れてのばりぬ 事を司った役所または役人。女官 九 をもいうがここは男官であろう。 ゝこはにしつつありわたるに、身もいたづらになりぬべければ、つひに 九官職も失い、無用者になる意。 ほろ 亡びぬべし、とて、この男、「いかにせむ、わがかかる心やめたまへ」と、仏一 0 陰陽寮に属する職員で、占い や、地相判断などに従う。 かむなぎ 神にも申しけれど、いやまさりにのみおばえつつ、なほわりなく恋しうのみお = 「神和」の意で、神を祭り、神 意を伺ったりする人。 はら はら 三祓えの道具。これに罪・穢れ ばえければ、陰陽師、神巫よびて、恋せじといふ祓への具してなむいきける。 を移して川に流した。 はら かず 祓へけるままこ、、 ししとど悲しきこと数まさりて、ありしよりけに恋しくのみお一三↓一三三ハー注一 = 。 一四『古今集』恋一、読人しらず、 下句小異。『新撰和歌』第四。「み ばえければ、 かみ ほろ おんやうじ かむなぎ れい 六 ぐ ほとけ けが
かはじり みをつくし 六日。澪標のもとより出でて、難波に着きて、川尻に入る。一航路標識。淀川河口のデルタ えんぎしき 0 〔一巴難波より、水浅き 四 五六 地帯に立てられたもの。『延喜式』 おむなおきなひたひ 淀川を溯る みな人々、媼、翁額に手を当てて喜ぶこと、二つなし。か巻五十に見える。 ニ大阪市南区辺り。 ふなぞこ ふなゑ あはぢ おほいご かしら 日の船酔ひの淡路の島の大御、「都近くなりぬ」といふを喜びて、船底より頭を三淀川の河口。 佐 匹老女。 五年老いた男性。 土もたげて、かくぞいへる。 六額の前で手を合せること。仏 そ なにはがたあしこ みふねき を拝んだり喜んだりする動作。 いっしかといぶせかりつる難波潟葦漕ぎ退けて御船来にけり セ他にまたとない。 いと思ひのほかなる人のいへれば、人々あやしがる。これが中に、心地悩む船 ^ 一月二十六日の「淡路の専女」。 ゅううつ 九早く着きたいと憂鬱な思いを みかほ たう していた難波潟に。 君、いたく賞でて、「船酔ひし給べりし御顔には、似ずもあるかな」といひけ 一 0 貫之。 る。 = 上に係助詞がなくて連体形で 文を終止する余情的表現。 の水干て、脳み煩ふ。船三中に深く入り込む。 七日。今日、川尻に船入りたちて、漕ぎ上るに、川 一三「悩む」も「煩ふも似たような の上ること、いと難し。かかる間に、船君の病者、もとよりこちごちしき人に意味。二つ重ねて難儀をしている 様子を強調している。 あはぢたうめ て、かうやうのこと、さらに知らざりけり。かかれども、淡路専女の歌に賞で一四貫之。 一五無風流な人で、このような歌 みやこぼこ て、都誇りにもやあらむ、からくして、あやしき歌ひねり出だせり。その歌は、を詠むなどということは、全然知 らないのであった。貫之をさして かはのばぢ いるが、もちろん虚構である。 来と来ては川上り路の水を浅み船もわが身もなづむ今日かな おほい ) ~ 一六「淡路の島の大御」のこと。 ひとうたニ一 宅挿入句。都が近くなって意気 これは、病をすればよめるなるべし。一歌にことの飽かねば、し ぎみ なぬか のば き 一九 やまひ め かた のば ・は、つギ、 オょには あ ひ 、ま一つ、 一三わづら ここち ふな
35 竹取物語 国に仰せたまひて、手輿作らせたまひて、によふによふ荷 = 前後二人で腰のあたりまで持 〔一三〕大納言、家来たち ち上げて運ぶ輿。 を許す はれて、家に入りたまひぬるを、いかでか聞きけむ、つか三『日本霊異記』では「呻」を、 『名義抄』では「吟」を、「ニョフ」と たっくび との はしし男ども参りて申すやう、「龍の頸の玉をえ取らざりしかばなむ、殿へも読む。それを二つ重ねているので ある。うめきうめき。 かんだう え参らざりし。玉の取り難かりしことを知りたまへればなむ、勘当あらじとて 一三龍の頸の玉を取るために派遣 なんぢ された召使たち。 参りつる」と申す。大納言起きゐて、のたまはく、「汝ら、よく持て来ずなり 一四刑罰を受けることはあるまい かみるい ぬ。龍は鳴る雷の類にこそありけれ、それが玉を取らむとて、そこらの人々の一五すっかり変って、龍の頸の玉 を取って来なかったからよい、と 力し たっとら ほめているのである。 害せられむとしけり。まして、龍を捕へたらましかば、また、こともなく我は 一六多数の人々。↓五三ハー五行目。 おほめすびとやっ 宅次行の「まし」と呼応して反実 害せられなまし。よく捕へずなりにけり。かぐや姫てふ大盗人の奴が人を殺さ 仮想。「事実は : ・ではなかったが、 をのこ あり むとするなりけり。家のあたりだにいまは通らじ。男どもも、な歩きそーとて、もし : ・であったら・ : のようになっ ていただろう」の意。 たっ 天盗人に限らす、悪い奴、悪党 家にすこし残りたりける物どもは、龍の玉を取らぬ者どもに賜びつ。 というほどの意。相手をののしる もとうへ はら これを聞きて、離れたまひし元の上は、腹を切りて笑ひたまふ。糸を葺かせのに用いる。「奴」も、平安時代の 物語には珍しい。 とびからす 作りし屋は、鳶、の、巣に、みな食ひ持ていにけり。 一九別居なさった元の奥方。 たっくび ニ 0 腹わたがよじれるほどにお笑 世界の人のいひけるは、「大伴の大納言は、龍の頸の玉や取りておはしたる」、 、ヤ ) 、よっ , ) 0 . しーをナ . 子′ すもも 「いな、さもあらず。御眼二つに、李のやうなる玉をそ添へていましたる」と三↓三一一ハー注四。 たっ をの一 や 一九 みまなこ がた おほ おほとも たごし も 一五も た
一漁師でもいればいいのに。 雲もみな波とそ見ゆる海人もがないづれか海と問ひて知るべく ニ陰暦十二日夜の月が入り方近 となむ歌よめる。さて、十日あまりなれば、月おもしろし。船に乗り始めし日 くなってまだ残っている暁の情景。 1 三ロ 三船中の女性が海神に魅入られ くれなゐこ きめき 日より、船には、紅濃くよき衣着ず。それは「海の神に怖ぢて」といひて、何た話が伝えられているので、海神 六 佐 を刺激するような服装を避けた。 あしかげ ほや ずしすしあはび はぎあ 土の葦蔭にことづけて、老海鼠のつまの貽鮨、鮨鮑をぞ、心にもあらぬ、脛に上 0 逆説。 : ・と言 0 ているくせに。 五身を隠すのに大して役にも立 あし げて見せける。 たない葦の陰にかこつけて。「何 の悪しきこと」 ( なにかまうもの ふなぎみせちみ 十四日。暁より雨降れば、同じ所に泊れり。船君、節忌す。か ) という意を掛けている。 〔セ〕黒雲ひろがり、む 六老海鼠と取合せにする貽貝を 一うじもの のち かぢと きのふつ なしく引き返す船 精進物なければ、午時より後に、楫取りの昨日釣りたりし発酵させたすし。女陰をさす。 あわび セ鮑を発酵させたすし。女陰。 たひ よね 鯛に、銭なければ、米をとりかけて、落ちられぬ。かかることなほありぬ。楫〈思いもかけぬ、向脛の上まで すそ 着物の裾をめくり上げて。「いっ たひも よね けしきあ 取り、また鯛持て来たり。米、酒しばしばくる。楫取り気色悪しからず。 しかとまたく心を脛にあげて天の かはらけふ 一セ 河原を今日や渡らむ」 ( 古今・雑躰 けふ あづきがゆに かねすけ 十五日。今日、小豆粥煮ず。口惜しく、なほ日の悪しければ、ゐざるほどに藤原兼輔 ) 。 九貫之。 はつか なが ぞ、今日二十日あまり経ぬる。いたづらに日を経れば、人々海を眺めつっそあ一 0 印の精進。 一九 = 精進物がないので、半日で精 めわらは る。女の童のいへる、 進を切り上げた。 三お金がないので代りに米を与 えて。貫之の清廉なことを表す。 立てば立っゐればまたゐる吹く風と波とは思ふどちにゃあるらむ 一三作者に擬した女性からの敬意。 いふかひなき者のいへるこま、、 レ。しと似つかはし。 一四こんなことはその後もあった。 306 へ とをか ニ 0 あかっき くちを むまとき とま 一八
見、女が、「思ひけり」と男が知る、 と解している説もある。「しなま し」はサ変動詞「す」の連用形に完 了の助動詞「ぬ」の未然形と、反実 中空にたちゐる雲のあともなく身のはかなくもなりにけるかな 仮想の意の助動・まし」を続けた もの。強い仮想を表す。 とはいひけれど、おのが世々になりにければ、うとくなりにけり。 三「けに」は「いひっかはす」を修 飾する副詞。一層、の意。 一三『古今集』恋四に読人しらずの 類歌がある。 二十二千夜を一夜 一四「中空」は空の中程。「雲の」ま でが「あともなく」の序。↓異五段。 三僅かなことから心が離れたか。 むかし、はかなくて絶えにける仲、なほや忘れざりけむ、女のもとより、 一六「人」は男。「し」は強意、「も」 うら は感動の意の助詞。 憂きながら人をばえしも忘れねばかっ恨みつつなほそ恋しき 宅女が自分を慕うことを知り、 といへりければ、「さればよ」といひて、男、 いささか得意な気持で歌を返す。 一 ^ 「見る」は異性に交わること。 「川島」と「かはし ( 合ふ ) 」を掛ける。 あひ見ては心ひとつをかはしまの水の流れて絶えじとそ思ふ 川の中の島で水は分流し、また合 語とはいひけれど、その夜いにけり。いにしへ、ゆくさきのことどもなどいひて、流する。夫婦の仲も同様に、時が たてば元のようになる、の意。 物 ちょひとよ 勢 一九気の長い返事をしたが、早速 秋の夜の千夜を一夜になずらへて八千夜し寝ばやあく時のあらむ 伊 その夜、女のもとへ行った。 ニ 0 『古今六帖』第四に類歌、第五 句・恋はさめなむ」。 ニ一男は夜明けに帰る。↓十四段。 返し、 返し、 一九 秋の夜の千夜を一夜になせりともことば残りてとりや鳴きなむ なかぞら 忘るらむと思ふ心のうたがひにありしよりけにものそ悲しき ニ 0 よ た やちよね
55 竹取物語 つば くすり一一 きたな れり。一人の天人いふ、「壺なる御薬たてまつれ。穢き所の物きこしめしたれ = お飲みになってください。高 い扱いの敬語。月の世界における も ここちあ ば、御心地悪しからむものぞ」とて、持て寄りたれば、いささかなめたまひて、かぐや姫は身分が高いのである。 きたな 三現世を穢しとする把握。 きめつつ あ すこし、形見とて、脱ぎ置く衣に包まむとすれば、在る天人包ませず。御衣を一三お召しあがりになったので。 これも高い扱いの敬語。 とりいでて着せむとす。その時に、かぐや姫、「しばし待て」といふ。かぐや姫一四そこにいた天人。 ひと」と 一五「物」は、漠然として具体性の 「衣着せつる人は、心異になるなりといふ。物一言いひ置くべきことありけり」 ないこと。わからぬことをおっし やるな、の意。 といひて、文書く。天人、「遅し」と、心もとながりたまふ。 一六朝廷、すなわち天皇。 おほやけ かぐや姫、「物知らぬこと、なのたまひそ」とて、いみじく静かに、朝廷に宅これ以上の滞在を許さぬ迎え。 御文奉りたまふ。あわてぬさまなり。 天「取り」を加えて、むりやりに 連れてゆく雰囲気をよく表す。 たま き かくあまたの人を賜ひてとどめさせたまへど、許さぬ迎へまうで来て、取り一九ここで切って、「宮仕へ仕う まつらすなりぬる」原因の説明と くちを みやづかっか 解した。このように常人とは異な 率てまかりぬれば、口惜しく悲しきこと。宮仕へ仕うまつらずなりぬるも、 った面倒な体ゆえのことなのです。 こころえおば かくわづらはしき身にてはべれば。心得ず思しめされつらめども。、い強くう下の「心強くうけたまはらずなり にし」を修飾すると解することも おば できる。 けたまはらずなりにしこと、なめげなるものに思しとどめられぬるなむ、心 ニ 0 ここで切って余情表現と解し たが、後へ続けることもできる。 にとまりはべりぬる。 ニ一底本「はヘりぬ」。「なむ」の結 びだから連体形に改めた。 とて、 きぬ ふみたてまっ ふみ き ・一と おそ むか みぞ
きよう 三すこしも。現代語の「もっと 「をかしきことにもあるかな。もっともえ知らざりけり。興あること申したり」 も」とは意味が異なる。 をのこ あななひ す とのたまひて、まめなる男ども二十人ばかりつかはして、麻柱にあげ据ゑられ一三前ハーにもあったが、忠実な、 をのこ の意。「男」は召使。 一四『名義抄』『新撰字鏡』は、「麻 柱」と書いて「アナナヒ」と読んで との たま こやすかひ いる。高い所へのばるための足場。 殿より、使ひまなく賜はせて、「子安の貝取りたるか」と問はせたまふ。燕 ごてん も、人のあまたのばりゐたるに怖ぢて巣にものばり来ず。かかる由の返りごと一五御殿。中納言の邸である。 おおいづかさ 一六大炊寮で倉の番人をしている おば 一六つかさ を申したれば、聞きたまひて、「いかがすべき」と思しわづらふに、かの寮のというイメージでつけた名前。登 場人物の多くに名をつけるのが、 くわんにん おきな こやすがひ おば 官人くらつまろと申す翁申すやう、「子安貝取らむと思しめさば、たばかりまこの物語の方法。 宅中納言のような身分の高い人 おほんまへ ひたひあは むか は、ふつう、くらつまろ程度の人 うさむーとて、御前に参りたれば、中納言、額を合せて向ひたまへり。 とは直接話をしないのだが、目的 つばくらめこやすがひ あ くらつまろが申すやう、「この燕の子安貝は、悪しくたばかりて取らせたまのためには、そのようなことは言 っていられなかったのである。 ふなり。さては、え取らせたまはじ。麻柱におどろおどろしく二十人の人のの あななひ ばりてはべれば、あれて寄りまうで来ず。せさせたまふべきゃうは、この麻柱天離れて。 語 ニ 0 一九こわすこと。なお、「こほっ」 しりぞ あらこ のす つなかま 取をこほちて、人みな退きて、まめならむ人一人を、荒籠に乗せ据ゑて、綱を構の「ほ」は清音。「こばっ」と読むの はよ / 、ない 竹 あひだ へて、鳥の子うまむ間に、綱を吊り上げさせて、ふと子安貝を取らせたまはむニ 0 綱をその籠につけ、体勢をと とのえて。 ちゅうなごん なむ、よかるべき」と申す。中納言のたまふやう、「いとよきことなり」とて、三すばやいさま。さっと。 0 つかひ よ お あななひ こやすがひ と よしかへ つばくらめ
竹取物語 12 ち′一 この児、やしなふほどに、すくすくと大きになりまさる。三月ばかりになる一↓翦ー注、。 ニ肩までたらしていた童女の髪 ほどに、よきほどなる人になりぬれば、髪あげなどとかくして髪あげさせ、裳を結いあげる儀式。女の成人式。 三底本「さうして」。当・左右 ちゃううち ちご けそう 着す。帳の内よりもいださず、いっきやしなふ。この児のかたちの顕証なるこして」と書いて「とかくして」と読 むことが多かった。あれこれして。 ・よ み おきなここちあ も と世になく、屋の内は暗き所なく光満ちたり。翁、心地悪しく苦しき時も、こ 四裳は女性が正装の際に襷の上 から腰にまとうもの。これを着け はらだ の子を見れば苦しきこともやみぬ。腹立たしきこともなぐさみけり。 る儀式も女性の成人式である。 五諸注「けうら」の誤写とするが、 いきほひまうもの 翁、竹を取ること、久しくなりぬ。勢、猛の者になりにけり。この子いと大底本のままでよい。あざやかに見 えるさま。 みむろどいむべ あきた あきた きになりぬれば、名を、御室一尸斎部の秋田をよびて、つけさす。秋田、なよ竹い「神の」の意。地名ではない。 さいしつかさど 斎部は祭祀を司る氏族。 のかぐや姫と、つけつ。このほど三日、うちあげ遊ぶ。よろづの遊びをそしけセしなやかな竹のような。 〈「かくや姫」と清音で読む説も つど る。男はうけきらはず招び集へて、いとかしこく遊ぶ。 あるが、ちらちらと揺れて光る意 の「かがよふ」も『万葉集』で濁音で をのこ いや 世界の男、あてなるも、賤しきも、 いかでこのかぐや姫を表記されているし、垂仁天皇の皇 〔ニ〕貴公子たち争って かぐやひめのみこと 女に「迦具夜比売命」 ( 古事記 ) がい おと まと 求婚 得てしかな、見てしかなと、音に聞きめでて惑ふ。そのあるので通行のままにした。光り輝 くはどの美しさゆえの命名。 かき よるやす 九「男」ではない。召し使われて たりの垣にも家の門にも、をる人だにたはやすく見るまじきものを、夜は安き いる人。宮仕えしている人。廷臣。 あな かいまみまと いも寝ず、闇の夜にいでても、穴をくじり、垣間見、惑ひあへり。さる時より一 0 この一句は挿入句。 一一『万葉集』では「結婚と表記。 なむ、「よばひ」とはいひける。 「呼ば」に継続の「ふ」がついた。 をと、】 やみよ や と よ ひさ あそ みつき
ける人、この蛍のともす火にや見ゆらむ、ともし消ちなむずるとて、乗れる男「べみ」は助動詞「べし」の語幹に接 尾語「み」がついて理由を表す。 のよめる。 「ともし消ち」は『法華経』序品の たきぎ 「仏此ノ夜滅度シタマフコト薪尽 キテ火ノ滅スルガ如シ」によって、 いでていなばかぎりなるべみともし消ち年経ぬるかと泣く声を聞け 皇女の死をいう。十九歳で亡くな ったから、年経てご存生か、いや かの至、返し、 ご短命でした、の意に、蛍火を消 いとあはれ泣くそ聞ゆるともし消ちきゅるものともわれはしらずな してまだかまだかと泣く車中の人 の声を聞け、の意を含める。 一五下句『法華経』方便品の「我涅 天の下の色好みの歌にては、なほそありける。 はん 槃ヲ説クト雖モ、是レ亦タ真ノ滅 したがふおほぢ あら ニ非ズ」を踏まえる。皇女は真に 至は順が祖父なり。みこの本意なし。 滅したと思えぬ、の意に蛍火を払 ってもよく見える、の意を含める。 一六源順 ( 九一一 ~ 九八三 ) 。挙の子。 四十すける物思ひ 宅難解。本来「親王の本はなし」 か。「親王の本」とは勢語伝本の一。 一 ^ 悪くはない女。後に「いやし むかし、若き男、けしうはあらぬ女を思ひけり。さかしらする親ありて、思 ければ」とあるので召使であろう。 語ひもぞっくとて、この女をほかへ追ひやらむとす。さこそいへ、まだ追ひやら一九女に対する思いがきっと深く なる、それはよくない、の意。 物 勢ず。人の子なれば、まだ心いきほひなかりければ、とどむるいきほひなし。女 = 0 「いまだ」とある本も多い 伊 一 = 「心いきほひ」は、心中の気力。 あひだ もいやしければ、すまふ力なし。さる間に、思ひはいやまさりにまさる。には一三「棄つ」。すてる、の意。 ニ三涙の出尽した後に出る血の混 かに、親、この女を追ひうつ。男、血の涙を流せども、とどむるよしなし。率った涙。痛切な悲しみを表す。 あめ きこ へ ニ 0 こぞる めつ