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検索対象: 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)
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1. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

いめこれききし あ寺 ) ましうれし・ ) と いひな ここも狭い小屋で火所は一か所だ ニ坐シタレバ、奇異ク喜キ事」ト云テ泣ケバ、其ノ時ニ、狗此ヲ聞知リ顔ニテ、 ろうから、特に炉と限定して家長 を くひものいときょげ かまどまへふ ものうみ いめかたはらゐ の座と見なくてもよかろう。 入テ竈ノ前ニ臥セリ。苧ト云フ物ヲ績テ、狗ノ傍ニ居タリ。食物糸浄気ニシテ からむし 一五麻や苧の称。また、それらの をとこよ りをむなふ くひね いぬうちい 皮の繊維から作った糸をも。 食スレバ、男吉ク食テ寝ヌ。狗モ内ニ入テ女ト臥スナリ 一六主格は女。つむぐ。糸より車 よほよほあなかしこ よあけ をむなをとこもとくひものもてき をとこひそかしレ にかけて糸を引き出すこと。 然テ夜明ヌレバ、女、男ノ許ニ食物持来テ、男ニ蜜ニ云ク、「尚々、穴賢、 ↓一二四ハー注八。 かかと、 : つあり かたたまふ またときどきおは 『此ニ此ル所有』ト人ニ語リ不給ナ。亦時々ハ御セ。此ク兄ト申シタルハ、此天 一九夫である犬をさす。 き」しり かなまう はべなりおのづかえうじあ ニ 0 何かご入用な物事。「自然ラ」 レモ然知テ侍ル也。自然ラ要事有ラム事ナドハ叶へ申サムート云へバ、男、 はゆきがかり上、事のついでに、 ものくひは きゃう いままたまゐこ ねむごろいひ あ はべるべから の意。 「敢へテ人ニ申シ不可侍ズ。今亦参リ来ム」ナド懃ニ云テ、物食畢ツレバ京へ ニ一口止めされても帰還後すぐに かへり もらすのは第一三・一四話と同じ 返ヌ。 で、この種の説話での一バターン。 力、刀 きのふしかしかところゆき かへり 一三血気盛んな。元気のいし 返ケルママニ、男、「昨日然々ノ所ニ行タリシニ、此ル事コソ有シカ」ト、 ニ三若い男たち。若者ども。 あまねひとみなきき またひとかた ひときよう あひとごとかたり ニ四「落所」が「越度」「落度」と同 ヾ、此ヲ聞ク人興ジテ、亦人ニ語リケル程ニ、普ク人皆聞テ 第会フ人毎ニ語ケレ / ニ四 語 語とすれば、失敗をものともせぬ きたやまめ いさみ くわんじやばらおつど あつまり なかとし。わか 為ケリ。其ノ中ニ年若ク勇タル冠者原ノ落所モ不知ヌ、集テ、「去来、北山ニ妻勇敢なの意。こわいもの知らずの。 人 一宝さあ。「行テ : ・」にかかる。 めしいでたち ゆきそ 、ぬいころ ニ六「狗ノ人ヲ妻ニシテ奄ニ居ル 山ニシテ奄ニ居ルナル、行テ其ノ狗射殺シテ、妻ヲバ取テ来ムート云テ、召出立 ナル」の短絡形。犬が人を妻にし ゆき いちにひやくにんあり ものどもてごときうぜん ゆき をとこ一きた ているそうだが。 テ、此ノ行タル男ヲ前ニ立テ、行ニケリ。一二百人有ケル者共、手毎ニ弓箭 毛人を呼び集めて出発し。 まこと をとこをし ところゆきっきみ したがひすでそ 1 ひやうぢゃうもちゅき 兵杖ヲ持テ行ケルニ、男ノ教へケルニ随テ、既ニ其ノ所ニ行着テ見レバ、実ニ〈↓一一三ハー注 = 0 。 そ いほ。り・ - の まう ひと ひと これき , 一と め そ とき とり 0 ほど いぎ あり をとこ 一九

2. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

えう つくり いまはむかし一 てんわうみよひとりおきなあり 今昔冂凵天皇ノ御代ニ一人ノ翁有ケリ。竹ヲ取テ籠ヲ造テ、要スル人ニ与一天皇の諡号明記を期した欠字。 ニ功労、つまり手間賃。 こうとりよわた おきなこ ためたかむらゆ たけきり 三竹ゃぶ。竹林 へテ其ノ功ヲ取テ世ヲ渡リケルニ、翁籠ヲ造ラムガ為ニ篁ニ行キ竹ヲ切ケル 四 五 四「一ノ竹光リ」の「竹」、または たけふしなかさむずんばかりひとあり たかむらなかひとつひか 「一ノ光有リーの「有ー脱とみるむき + ニ、篁ノ中ニ一ノ光リ、其ノ竹ノ節ノ中ニ三寸許ナル人有。 が多いが、「ノ」を主格助詞とみて 第 おきなこ としごろたけとり いまかか みおも 巻翁此レヲ見テ思ハク、「我レ年来竹取ツルニ、今此ル物ヲ見付タル事」ヲ「一本 ( の竹 ) が光り」とも訳せよう。 五いわゆる小さ子で、超人的な よろこびかたて そちひさきひとと いまかたへたけ になひいへかへり おうなたかむら 語喜テ、片手ニハ其ノ小人ヲ取リ、今片ニ竹ヲ荷テ家ニ返テ、妻ノ嫗ニ、「篁資質を秘めた子であることの表徴。 六心中思惟部分を結ぶ詠嘆の おうなよろこびはじめこ かかをむなご みつけ 今ノ中ニシテ、此ル女児ヲコソ見付タレ」ト云ケレバ、嫗モ喜テ、初ハ籠ニ入レ「こと」が流れて地の文に移行した ちごゃうやちゃうだい やしなひ みつきばかりやしなは れいひとなり テ養ケルニ、三月許養 ル、、例ノ人ニ成ヌ。其ノ児漸ク長大スルマ、ニ、世セ「養ル、ニ」の意。 〈普通の大きさの人。女児の成 おきなおうないよいこ かなし ならびなたんじゃう よひと 翁嫗弥ョ此レヲ悲長の異常な速さは小さ子の神秘的 ニ並無ク端正ニシテ、此ノ世ノ人トモ不思工ザリケレバ 資質を示すもの。 - 一と・よ きこたか かしづき あひだこ 九心からかわいがって。「悲プ」 ビ愛シテ傅ケル間ニ、此ノ事世ニ聞工高ク成テケリ は、いの底から思う意。 そ ためたかむらゆき たけと たびたけなかこがね しかあひだおきなまたたけと 而ル間、翁亦竹ヲ取ラムガ為ニ篁ニ行ヌ。竹ヲ取ルニ、其ノ度ハ竹ノ中ニ金一 0 竹取「節をへだてて、よごと 、黄金ある竹を見つくることか とり ゐどころくうでんろう おきなこ しか おきなたちまちゅたかなり みつけ いへかへり ヲ見付タリ。翁此レヲ取テ家ニ返ヌ。然レバ翁忽ニ豊ニ成ヌ。居所ニ宮殿楼さなりぬ」。 = 立派な御殿や高層建築物。 またこ くゑんぞくあまたなり くさぐ一たからくら かくつくり 一ニ従者。召使。↓三八ハー注六。 閣ヲ造テ、其レニ住ミ、種々ノ財庫倉ニ充チ満テリ。眷属衆多ニ成ヌ。亦此ノ 一三これ以下、竹取に比して叙述 ち′」 のち おもやうなりしか いよいあいかしづことかぎりな が簡略で要約的。 児ヲ儲テョリ後ハ、事ニ触レテ思フ様也。然レバ弥ョ愛シ傅ク事無限シ。 一四↓田三三ハー注八。下の「殿上 け・き : っ をむなさらきか しかあひだそ ときもろもろかむだちめてんじゃうびとせうそくやり 而ル間、其ノ時ノ諸ノ上達部殿上人消息ヲ遣テ仮借シケルニ、女更ニ不聞人」は、清涼殿の「殿上の間」に上 174 そ す - ) とふ み たけとり み そ 0 ものみつけ 六 こと ひとあた 形。

3. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

かた そめとしわか ゃうな みやづか レバ、宮仕へヲモ否不為デ、可為キ様モ無クテ有ケルニ、其ノ妻年若クシテ形五他人の家に身を寄せて使われ ていたが。 ほどをうとよろづおもわづらひ こころふりうなり このまづしをうとしたがひあり ありさまよろし チ有様冝クテ、心風流也ケレバ、此貧キ夫ニ随テ有ケル程ニ、夫万ニ思ヒ煩六主人からのおばえ。少しも目 をかけられることがなかったので。 おもひ あ かぎり かくもろと。も かたら ゃう セ「ニ」は踊り字「 ~ 」の誤写で、 テ、妻ニ語ヒケル様、「『世ニ有ラム限ハ、此テ諸共ニコソハ』思ツルニ、日ニ 原姿は「所々」。 も おもふ まさ あし おのおのこころみ ともあ そへ まづし 副テハ貧サノミ増ルハ、『若シ共ニ有ルガ悪キカト、各々試ム』ト思ヲ、何〈ここでは人に仕えること。 九ここでは和語の「みさを」に相 むくし おも たださきょ たがひ いひ ニ」ト云ケレバ、妻、「我レハ更ニ然モ不思ハズ。『只前ノ世ノ報ナレバ、互ニ当し、心ばえが清らかで堅固な意。 ↓三三ハー注三一。 それ かひな ことごすべ おもひ うゑし = ためしに別れて暮してみよう。 餓死ナム事ヲ可期シ』ト思ツレドモ、其ニ、此ク云フ甲斐無クノミ有レバ 開運の期待をこめている。 を」と , げ まことともあ わか 『実ニ共ニ有ルガ悪キカ』ト、別レテモ試ョカシ」ト云ケレバ、男、「現ニ」ト、三↓二五ハー注一四。運命に甘んじ なければという気持をこめている。 なくなわか たがひいひちぎり 一三覚悟しましよう、の意。 互ニ云契テ、泣々ク別レニケリ。 一四このように貧乏な暮しばかり ひとーもレ」 としわか かたありさまよろし 皿そのちめ 第其ノ後、妻ハ年モ若ク、形チ有様モ冝カリケレバ、ロノ「凵〔下云ケル人ノ許続くものですから。 語 一八 一五三行前の男の同句を受けて、 ほど あは おもひっかひ ほどをむなこころきはめふりうなり 事文よりつかはれ いかにもそうかも知れないと考え 守ニ寄テ被仕ケル程ニ、女ノ心極テ風流也ケレバ、哀レニ思テ仕ケル程ニ、其ノ ニ 0 一九 直した句。 おばえにく かたはらふ をむなしたしょ ほど 摂ひとめうせ 成人ノ妻失ニケレバ、此ノ女ヲ親ク呼ビ仕ケル程ニ、傍ニ臥セナドシテ思不憾カ一六再会を約束して。 宅人名の明記を期した欠字。 よろづまか のちひとへこ をむなめ すぐし ほど 天かわいく思って。 男ラズ。然様ニテ過ケル程ニ、後ハ偏ニ此ノ女ヲ妻トシテ有ケレバ、万ヲ仕セテ 一九添い寝させたりして。 身 ニ 0 憎からず思う、気に入る意。 ノミゾ過ケル。 ニ一摂津国 ( 今の大阪府の西部と とし′」ろすぐし をむないよいめでたありさま しかあひだっかみになり 而ル間、摂津ノ守成ニケリ。女弥ョ微妙キ有様ニテナム年来過ケルニ、本ノ兵庫県の東部 ) の国守。 め すぐし さやう えせ め わ よ 、らさ こころみ つかひ あり あり あ ひ ーもと そ しカ

4. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

一九 せうしゃうかぎりなくいひちぎりいで にはゆかないので。↓一八ハー注八。 「夜明ナム」トテ侘ケレバ、少将無限云契テ出ニケリ。 天夜が明けて、男が人目につく せうしゃうこ なげき ほど そのちたやすあふことな 其ノ後ハ輒ク会事モ無力リケレバ、少将此レヲ歎ツ、有ケル程ニ、此ノ女ハのを恐れたもの。 一九将来 ( 再会 ) を約束して。 ちちめまうけこむすめ ニ 0 それぼだううせ ひとむすめなり ・ノ〔〔〔〔凵ト云ケル人ノ娘也ケリ、其ガ母堂失ニケレバ、父妻ヲ儲テ此ノ娘ヲニ 0 人名の明記を期した欠字。上 の空格を他例に準じて補う。 なり しかあひだちち ひとのこりとどまりゐ ばだううせ 不知ザリケレバ、母堂ノ失タル家ニ、独リ残留テ居タル也ケリ。而ル間、父三↓二九ハー注一一。 一三大宰府の次官。帥の下で、実 なり ちんぜい むすめとしごろしら 太宰ノ大弐ニ成ニケレバ、鎮西ニ下ケルニ、「此ノ娘ヲ年来ハ不知ザリケレド質的に政務を統理する。 ニ三↓ 3 一一六六ハー注六。 ぐ きゃうかく くだ す ニ四このまま一人では、どうして モ、京ニ此テハ何ニシテカハ有ラムト為ル」ト云テ、具シテ下ラムト為ルヲ、 暮していけ・よ , つか きき せうしゃうこ きゃうあり あ ことかたきなげき すぐし ちんぜい 少将此レヲ聞テ、「京ニ有ツレバコソ、会フ事難歎ヲシッ、モ過ツレ。鎮西ニ五このままだと、死なんばかり の有様での意。「ニ」は「マ」の誤写 くだり みるべ あはれこころばそおもひ で「可死キマデ」とも。 ニ祖ニ具シテ下ナムニハ、何ニシテカハ可見キ」ト、 哀ニ心細ク思ケレドモ、 ニ六太政官の次官。大臣に次ぐ重 とどむべやうな かひな をむなくだり 職で国政に参与。正三位相当官。 七可止キ様無ケレバ、極ク泣キ歎ケレドモ、甲斐無クテ、女下ニケリ。 毛人名の明記を期した欠字。 語 そ のちせうしゃうすべよ あるべ さらおばえ のちゃまひになりとしつき 西其ノ後ハ少将、惣テ世ニ可有クモ更ニ不思ザリケレバ、後ニハ病成テ年月ニ〈ちょっと物詣で ( 寺社参詣 ) に 出かけてきます。 ふ なほわびたへがたしぬべ おばえ いまひとたびあ ヲ経ルニ、尚侘テ難堪ク可死キニテ思ケレバ、「然ハ今一度相ヒ不見デハ、何ニ九朝廷が貴人に与える護衛で、 ニ六 少将は普通二名。近衛府の舎人が あ おもひおほやけいとままう ちちだいなごんニ七 ひと あからキ ) ま 少デカ有ラム」ト思テ、公ニ暇ヲ申シ、父ノ大納一一 = ロ冂〔凵ト云ケル人ニモ「白物一一担当する。 ニ九 三 0 近衛の中、少将の侍童。 宀須ものまう いひしのびひそかいでたち ちんぜい ずいじんひとり こどねりわらはひと 三一馬のロ取りなどを勤める者。 物ニ詣デム」ト云、忍テ窃ニ出立テ、鎮西へ下ケルニ、随身一人、小舎人童一 三ニ予定もたてず、日が暮れて行 ところとまり -4- り むまのとねりばかり ただゆきっ ものどもやしなはれゆき ほど ひごろ 人、馬舎人許ニテ、只行着ク所ヲ泊ニテ、此ノ者共ニ被養テ行ケル程ニ、日来き着いた所を宿泊地として。 だぎい よあけ 一八 おやぐ しカ わび いみじな なげき あ くだり す くだり あり み をむな しカ

5. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

おもほど 一昼夜兼行で。 見レバ、火モ無シ、人モ不見工ズ、ト思フ程ニ、夢覚ヌ。 ニ無事平穏でおったから。 はやゅめなり おも ・一とあ きゃういか いよいいぶかしおもふし 「早ウ夢也ケリ」ト思フニ、「京ニ何ナル事ノ有ルニカ」ト弥ョ不審ク思ヒ臥三見るや否や。見た途端に 四誘って連れ立って。 よあけ ほど いそぎたちよるひるなし きゃうかへりいへゆき めつつ 十タル程ニ、夜明ヌレバ、急立テ夜ヲ昼ニ成テ、京ニ返テ家ニ行タルニ、妻恙ガ = 無住の家屋。空家。 六その場に、の意にもとれよう 第 あり めやすながみる ゑみ やすなが うれしおばえ きのふ が、「其」を人代名詞とみて、あな 巻無クテ有ケレバ、安永、「喜」ト思ケレバ、妻安永ヲ見マ、ニ咲テク、「昨日 四 たにおいては、つまりあなたが、 集 よるゆめ いぎなひあひぐ ここしらわらはき おばえところ 語ノ夜ノ夢ニ、『此ニ不知ヌ童ノ来テ、我レヲ倡テ相具シテ、何クトモ不思ヌ所の意にもとれる。 セ連体形止め。「御タルハ」の意 よひとも うつほゃありうちいり いひかしきわらはふたりくひ 今ニ行シニ、夜ル火ヲ燃シテ、空ナル屋ノ有シ内ニ入テ、飯ヲ炊テ童ト二人食テで、詠嘆の気持をこめる。 〈夫婦が同じ夢を見る話は次話 とき のちふたりふし そこ わらはわれさわ おも にもみえるが、古く釈尊入胎の時 後、二人臥タリシ時ニ、其ニ俄カニ出来タリシカバ、童モ我モ騒グ』ト思ヒシ にも父の浄飯王と母の摩耶夫人が おもゐ ほど ゅめさめ ほど おはし 程ニ、夢覚ニキ。然テ、『不審』ト思ヒ居タリツル程ニ、此ク御タル」ト云ケ同夢を見ている ( 過去現在因果経 ) 。 九準体法で「見ケムハ」の意。 いぶか やすながわれしかしかみ おもひょるひるな ルヲ聞テ、安永、「我モ然々見テ、『不審シ』ト思テ、夜ヲ昼ニ成シテ、急ギ来「ケム」↓一五三ハー注一五。 一 0 夫妻の霊魂が肉体から遊離し めかきき おもひ て各人の目の前に現れたのか、の タル也」ト云ケレバ、妻モ此ク聞テ、奇異ニ思ケリ。 意。 ことみ まことけう これおも め」う・とか おなじときおなじゃう 此ヲ思フニ、妻モ夫モ此ク同時ニ同様ナル事ヲ見ケム、実ニ希有ノ事也。此 = よそへ出かける際にも。 一ニたとえ妻や子のことであって おも かみ またたましひみ たがひおなじゃう レハ互ニ同様ニ、「不審シ」ト思へバ、此ク見ルニヤ有ラム。亦精ノ見工ケル 一三精魂をすりへらすこと。気苦 こころえことなり 労をすること。 ニヤ有ラム、不心得ヌ事也。 あながち おもふ 然レバ物ナドへ行ニモ、妻子ニテモ強ニ、「不審シ」トハ不思マジキ也。此一四伝未詳。 み し ゆき なり あ きき もの ひな いぶか ひと いぶかし み ) いし いでき か ゅめさめ あ か - ) となり なりか いそき

6. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

こころまか うしろやまにげさり 三「濫」に同じ。気まま勝手に レ」ト云テ、後ノ山ニ逃去ニケリ。心ニ任セテ良算ヲ追却シテケリ。 一六一七 一三なだめさとす意。 しふぎゃうせしめ そのちゃましなでらだいしうおこりくげうった えいか べったうな 然テ睿荷ヲ別当ニ成シテ令執行ケルニ、其ノ後、山階寺ノ大衆発テ公家ニ訴一四なんとまあ。↓三四ハー注 = 。 一五寺務をとり行わせたが。 ほしいままえん まうやうぎをんわうご やましなでらまつじなりてら ↓一四九ハー注一一一一。 へ申ス様、「祇薗ハ往古ノ山階寺ノ末寺也。寺ノ、其レヲバ何カデカ恣ニ延一六 宅大勢で決起して。以下はいわ どど なすべよしおほせくださるべ すみやかもとごとやましなでらまつじ りやくじおしとられ 暦寺ニ被押取ム。速ニ本ノ如ク山階寺ノ末寺ト可為キ由ヲ可被仰下シ」ト度々ゆる朝廷への強 ( 嗷 ) 訴である。 天「そういう寺が」と切り出して ′一」いき。よ↓っち やましなでらそこばくだいしうきゃうのばり うったまう ほど から、改めて「それをどうして」と 訴へ申シケル程ニ、御裁許ノ遅々シケルニヤ、山階寺ノ若干ノ大衆京上シテ 言い直したもの。 くわんがくゐんっき 一九多数。大勢。 勧学院ニ着ケリ ニ 0 左京三条の北側にあった藤原 ざす そ 、きか おどろきごさたあるべ しか おほやきこめ 公ケ聞シ食シテ、驚テ御沙汰可有力リケルニ、其ノ前ニ彼ノ座主ノ氏一門の子弟の教育機関。弘仁十 一一年 ( 八一一一 ) 藤原冬嗣創設。 やま さたあすあるべし すでおほせくだされ じゑそうじゃううせ 慈恵僧正失ニケリ。然テ、「其ノ沙汰明日可有ト既ニ被仰下タリケルニ、山 ニ四 四 ニ一裁決。 さたすべもの そ てらちうざんむねこのこと しなでらだいしうみなくわんがくゐんあり 一三慈恵は永観三年 ( 九八五 ) に没し、 二階寺ノ大衆ハ皆勧学院ニ有ケルニ、其ノ寺ノ中算ハ宗ト此事ヲ可沙汰キ者ニテ 仲算は貞元元年 ( 九実 ) に没してい がたまへでしども いへやどりゐ くわんがくゐんちか ロあり 有ケルニ、勧学院近キ小家ニ宿テ居タリケルニ、其ノタサリ方、前ニ弟子共ナるから、以下の話はあり得ないの だが、両者が応和三年 ( 九六三 ) 宮中 そこたちしばらと ただいまここひとき にレかちうざん あまたゐ で行われた天台・法相の宗論で対 叡ド数居タリケルヲ、俄ニ中算、「只今此ニ人来タラムトス。其達暫ク外ニ出デ 比 決したことなども影響するところ でしどもみなのきあり ほど ひとほか があったか。↓本話解説。 薗ョ」ト云ケレバ、弟子共皆去テ有ケル程ニ、人外ョリ入来ルトモ不見エヌニ、 ニ三興福寺僧。法相宗の学匠。 でしども あやし おもひ ほどーしばしばかりあり こゑきこ ちうぎんひとものがたり 3 五二ハー注二。 中算人ト物語スル音ノ聞工ケレバ、弟子共、「怪」ト思ケル程ニ、暫許有テ、 ニ四中心となってこの事件を処置 ここやまじゑそうじゃうおはし ちうざん みないでき 1 ちうぎんでしどもよび 中算弟子共ヲ呼ケレバ、皆出来タリケルヲ、中算、「此ニ山ノ慈恵僧正ノ御タすべき者。 0 そ らうざんついきやく そ ゅふ いりきた み

7. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

ほど す つねかた ス。経方、「怪シク怖シ気ニ為ル物カナ」ト見居タル程ニ、妻ノ云、「己ヲノレ一四薄気味悪く。↓二四五注 もとゆき ふたりふ をむなか こよひまさ つれなもの ハ強顔キ者カナ」ト、「今夜正シク女ノ彼ノ許ニ行テ、二人臥シテ愛シッル顔一 = ( 旅支度を ) 整えていると。 一六昨夜の意。↓田一六一ハー注一一 0 。 わゆめ カカ、一と つねかた ョ」ト云へバ、経方、「誰ガ此ル事ハ云ゾ」ト問へバ、妻、「イデ憾ャ。我ガ夢宅すぐにも退出できないで。 一 ^ 「物参ル」は食事をする意。 おもひ いかみ つねかた あやし たしかみ 一九さっと頭髪が逆立って。↓ ニ褪ニ見ツルゾカシ」ト云へバ、経方、「怪」ト思テ、「何ニ見ルゾ」ト問へバ、 ニ四 二八五ハー注一一。 おも あは こよひ ゆく ニ五 やぜんいでゆき ニ 0 「ヲノレ」は「己」の全訓捨て仮 妻、「夜前出テ行ニシニ、『必ズ其ソコへゾ行ラム』ト思ヒシニ合セテ、今夜ノ よろづかたら おの をむなふたりふ をむなもとわゆき 夢ニ、彼ノ女ノ許ニ我ガ行タリツレバ、己レハ其ノ女ト二人臥シテ、万ヲ語ヒ = 一そ知らぬふりをする者。↓田 一六三ハー注一九。 かくふたりふし ツルヲ吉ク聞テ、『アラ己レハ、「不来ズ」ト云へドモ、此テ二人臥タリケル = = 「彼ノ女ノ許ニ」の意。 ここでは、なんとまあ、いや あり をむなおのれおきさわぎ ひきさまたげ ハ』ト云テ、引妨タリツレバ、女モ己モ起騒テコソハ有ツレト云フヲ聞クニ、もう、の意。↓三二九ハー注一モ ニ四昨夜。↓一〇二ハー注一。 - 一と つねかたかしこ つねかたあさまし 妻、経方ガ彼ニテ云ツル事ヲニ五「ソコ」は「其」の全訓捨て仮名。 第経方奇異クテ、「然ハ何事ヲ云ツル」ト問へバ、 語 ニ六こと細かに。詳しく。 つねかた ことっゆたがは つねかたゆめみ ニ六 ひとことおと 夢一言モ不落サズッラ / 、ト云フニ、経方ガ夢ニ見ツル事ニ露不違ネパ、経方、毛恐ろしいどころの騒ぎではな 事文ニ七 かった。↓ 3 二五九ハー注一一四。 のちひと わがゆめ かたら おろかなり おそろ 経怖シトモ愚也ヤ、「凵凵凵テナム有ケル。然レドモ、我夢ヲバ不語デ、後ニ人ニ = 〈「アキレ」の漢字表記を期した 欠字。 勾 かたり しかしか・あき一まし - 一と あひ 張会テナム、「然々ノ奇異キ事コソ有シカ」ト語ケル。 尾 なり こころあながちおもことかならか しか ニ九女が嫉妬や憤怒の余り蛇に転 心ニ強ニ思フ事ハ必ズ此ク見ュル也ケリ ニ九 身した話は、有名な道成寺説話以 かなら つみふか つみふか もとめ おも 此レヲ思フニ、其ノ本ノ妻何カニ罪深カリケム。「嫉妬ハ罪深キ事也。必ズ下極めて多い め ゅめ きき あや おそろげ なにごと おの かなら あり もの あり み と みゐ と そ 0 しっと め め ことなり と 名。

8. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

はた ためかむつけくにゆき あり やすながそ みやふこ ニテナム有ケル。其ニ、安永其ノ宮ノ封戸ヲ徴ラムガ為ニ上野ノ国ニ行ニケリ。九家司は親王家や公卿の家にお かれた執事職で、その下級の者 せきやどり みののくにふは かへのばり ( 六位・七位 ) を下家司という。 然テ年月ヲ経テ返リ上ケルニ、美濃国不破ノ関ニ宿シヌ。 一 0 ↓田一四四ハー注四。 つきごろくにくだり しかあひだやすながきゃうとしわかめあり 而ル間、安永京ニ年若キ妻ノ有ケルヲ、月来国ニ下ケル時ョリ、極テ不審ク = 封戸の税を徴収するために。 一ニ現在の群馬県。惟喬親王は上 ことある よあけ あは こひ おば一六 おもひ ーレ・いみ 野守だったことがある縁で、上野 思ケルニ合セテ、俄ニ極ジク恋シク思工ケル。「何ナル事ノ有ナラム。夜明バ 国に封戸を賜ったのであろう。 ゅめやすながみ いそゅ おもひ せきや 、よりふし ほどねいり 疾ク急ギ行カム」ト思テ、関屋ニ寄臥タリケル程ニ寝入ニケリ。夢ニ安永見レ一三岐阜県不破郡関ヶ原町にあっ た関所。三関の一。 と。も とも をむなぐ ものきた み わらはひ きゃうかた ひ バ、京ノ方ョリ火ヲ燃シタル者来ルヲ見レバ、童火ヲ燃シテ女ヲ具シタリ。 ふし み ものくる おもほど やかたはらき 「何ナル者ノ来ナラム」ト思フ程ニ、此ノ臥タル屋ノ傍ニ来タルヲ見レバ、此一四上野国をさす。 一八 一五留守中のことが気掛りに思わ ぐ いぶか おもめなり をむな はや きゃうあわ ノ具シタル女ハ、早ウ、京ニ有ル我ガ、「不審シ」ト思フ妻也ケリ。「此ハ何カれた上に。 九 一六「ケル」は連体形止めで、句外 やすながそ かべあな へだてゐ あさましおもほど 第 に詠嘆的余情をこめる。 ニ」ト奇異ク思フ程ニ、此ノ臥タル所ニ、壁ヲ隔テ居ヌ。安永其ノ壁ノ穴ョリ 語 一九 ニ 0 見 宅関所の番小屋。 ならゐ いひかしきわらはとも のぞきみ こわらはわめ たちまちなべとりよせ ↓三四ハー注三。 関臨テ見レバ、此ノ童我ガ妻ト並ビ居テ、忽ニ鍋ヲ取寄テ、飯ヲ炊テ、童ト共ニ天 破 一九これ以下、主語が妻に転ずる。 おも わめ あひだ み わな やすながこ 於食フ。安永此レヲ見テ思ハク、「早ウ、我ガ妻ハ、我ガ無力リツル間ニ、此ノ = 0 「かしき」の「き」は清音。 永 ↓一六ハー注一 0 。 おも きもさわこころう′」きやすからおも わらはめをうとなり 一三「セ」は「為」の全訓捨て仮名。 澄童ト夫妻ト成ニケリ」ト思フニ、肝騒ギ心動テ、不安ズ思へドモ、「然ハレ、 常 ニ三「掻抱キアヒテ」のロ語的転訛 ものく はてのちわめこわらはふたりかきいだ おもひみ ( せ ) ニニゃうみ か。ひしと抱き合って。 為セム様ヲ見ムート思テ見ルニ、物食ヒ畢テ後、我ガ妻此ノ童ト二人掻抱カラ ニ四 ニ四情を通じる。性交する。 あくしむたちまちおこり ふし とつぐやすながこ ほどな 一宝憎悪心。嫉妬心 ヒテ臥ヌ。然テ程モ無ク娶。安永此レヲ見ルニ、悪心忽ニ発テ、其ニ踊入テ しカ としつき へ それ 、」ふし はや とッ ) ろ み かべ とき そこをどりいり きはめいぶかし

9. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

一ハ ゐて そらな いかづちとら をむなはじめ みなこころっく ザリケレバ、皆心ヲ尽シテ云セケルニ、女、初ニハ、「空ニ鳴ル雷ヲ捕へテ将ることを許された人で、四位・五 位、または六位の蔵人の称。なお はなあり うどんぐゑい そときあ いしつくりみこ 来レ。其ノ時ニ会ハム」ト云ケリ。次ニハ、「優曇花ト云フ花有ケリ。其レヲ竹取では石作の皇子・くらもちの ニ 0 皇子・右大臣阿倍の御主人・大納 つづみ のち いそのかみまろたり ときあ とりもてきた 取テ持来レ。然ラム時ニ会ハム」ト云ケリ。後ニハ、「不打ヌニ鳴ル皷ト云フ言大伴の御行・中納一一旨石上の麿足 の五人が求婚者として登場する。 とりえさ をりみ - かきこ ものあ 一五言い寄る、求婚する意。 物有リ。其レヲ取テ得セタラム折ニ自ラ聞エム」ナド云テ、不会ザリケレバ 一六思いのたけをこめて。 したがひ めでた ふけり ただか ・け・き : っ ひとびとをむなかたちょ 宅以下の難題を、竹取は五人の 仮借スル人々、女ノ形ノ世ニ不似ズ微妙カリケルニ耽テ、只此ク云フニ随テ、 求婚者がそれそれ仏の御石の鉢・ あるい ふるものしり ひとこれら もとむべ ー・ら : つい たへがたこと ひわずみ 難堪キ事ナレドモ、旧ク物知タル人ニ此等ヲ可求キ事ヲ問ヒ聞テ、或ハ家ヲ出莱の玉枝・火鼠の皮衣・竜の 首の玉・燕の子安貝を持ってくる あるいいのち もとめ ほど すてやまなか かやう あるいよ うみべたゆ こととする。 テ海辺ニ行キ、或ハ世ヲ棄テ山ノ中ニ入リ、此様ニシテ求ケル程ニ、或ハ命ヲ 一〈古代信仰では最高の神格 あるいかへりきたらともがらあり ほろば 一九梵語で霊瑞の花を意味し、三 亡シ、或ハ不返来ヌ輩モ有ケリ 千年に一度、金輪王の出世の時に こをむなよ ならびなめでた しかあひだてんわうこ = 一而ル間、天皇此ノ女ノ有様ヲ聞シ食シテ、「『此ノ女世ニ並無ク微妙シ』ト聞咲くとされる。 ニ 0 法華経序品にみえる天鼓。仞 第 たちまちだいじんひやくくわん おば すみやかきさき りてん わゆきまことたんじゃうすがた 五ロ 利天の善法堂にあって打たすして 臨ク。我レ行テ実ニ端正ノ姿ナラバ、速ニ后ニセン」ト思シテ、忽ニ大臣百官 自然に鳴り、怨来・怨去・愛欲・ 児 いへありさまみめう つき すでおはし おきない へぎゃうがうあり ひきゐ 付ヲ引将テ、彼ノ翁ノ家ニ行幸有ケリ既ニ御マシ着タルニ、家ノ有様微妙ナル生厭の四種の音声を出すという。 ニ一難題の品物を海外に求めたこ 見 まことよ みたまふ てんわうこ すなはまゐ をむなめしいださる ことわうみやことなら 恥事王ノ宮ニ不異ズ。女ヲ召出ルニ即チ参レリ。天皇此レヲ見給ニ、実ニ世ニとを意味する句。 一三俗界を離れて、難題の品物を 竹 ちかづか きさきな ひと わ めでた たとふべものな 可譬キ者無ク微妙カリケレバ、「此レハ我ガ后ニ成ラムトテ、人ニハ不近付ザ仙境に求めたことを意味する句。 ニ三女が難題によって求婚者をし のたま ぐ みやかへりきさきた うれしおばめし リケルナメリ」ト喜ク思シ食テ、「ヤガテ具シテ宮ニ返テ后ニ立テム」ト宣フりぞけたことをさす。 きた をむなありさまきこめ 0 つぎ 、 ) とと うた きき みゆき てんく

10. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

こころばそおもつづ ここむげひとげ とかく やしなひ ニ 0 物陰。人目につかぬ所。 此彼シテ養ケルニ、此ハ無下ニ人気モ遠クテ、故へ無ク心細ク思ヒ次ケラレテ、 一九 三ちょっと出かけてくる、の意。 なき ことどもたがひかた あは すぎ かたゆくすゑ はるばるみわたり 遥々ト見工渡ケルニ、過コシ方行末ナドノ哀レナル事共ヲ互ニ語リッ、泣ケリ。 = = ↓一八ハ , 注 ニ 0 ニ三↓三三ハー注三一。 ややびさしみ かた あから しかあひだせうしゃうかく 而ル間、少将隠レナル方ニ、「白地サマニートテ行ニケルガ、良久ク不見ェニ四「モ」は「ハ」とありたいところ。 一宝田 ( のあぜ道 ) をどこまでも分 ものどもつぐ をむない おもひとも ひさし け入ってみると。 ザリケレバ、女、「何カニ此ク久クハ不見エヌニカ」思テ、共ナル者共ニ告レ ニ六狩猟用の衣服の意であるが、 かきある せうしゃうニ四な をむなおどろきをだふかゆきみ それらゆきみ 、其等行テ見ケレバ、少将モ無シ。女驚テ小田深ク行テ見ケレバ、垣ノ有当時の貴族や官人が外出時などに ニ六 ニ七 着用した平服。軽装である。 一らに、ま を。むカよこ あないみじ かたはらせうしゃうかりぎぬそでかぎかか 傍ニ少将ノ狩衣ノ袖ノ限リ懸リタリ。女此レヲ見テ、「穴極」トダニ更不云レ毛まあ、大変。↓注三。 ニ ^ 漢字表記を期した欠字で、該 なほおくみ うしろかたせうしゃうはき まどはれ ズ被迷テ、尚奥ヲ見ケレバ、其ノ後ノ方ニ少将ノ履タリツルロノ、片足ノミ有当語は「タビ ( 足袋・単皮 ) 」か ニ九 三 0 ニ九この辺から記事が飛躍し、主 をむなまへ おろか かなしいみじ、一とい とりあげみ ただあしひら 語が女から供の者に転換する 取上テ見レバ、只足ノ平ノミゾ有ケル。悲ク極キ事云へバ愚ニテ、女ノ前 三 0 「あなひら」と同意で、足の甲。 もち - ゆき ふ まろなきまど みをむないかばかりおば ここでは履物の甲の部分。これだ 七ニ此レヲ持行テ、臥シ丸ビ泣迷フ。此レヲ見ル女何許思工ケム。ャガテ其コ けを残して失踪した少将は、霊鬼 語 なきふし に取り殺されたものか。↓巻二七 西ニ泣臥ニケリ。 第七・八・九話。 かくききちんぜい ほど をむなおやだいに ふつかばかりそこあり 然テ二日許其ニ有ケル程ニ、女ノ祖ノ大弐、此ト聞テ鎮西ョリ数ノ人ヲ遣三一↓ 3 二五九ハ。注一戸 三ニそのままその場に。 せうしゃうちんぜいゆき またせうしゃうおやだいなごんもと三三 たづね 三三「ノ」は衍字であろう。 少セテ尋ケルニ、亦少将ノ祖ノ大納言ノ許ノョリモ、「少将鎮西へ行ニケリ」ト 三四 = 西少将一行の姿を見つけて。 ともこ もとたづきたあひ かくみつかひょろこなが 亠心ききひとやり 聞テ人ヲ遣ケルニ、共ニ此ノ木ノ本ニ尋ネ来リ会ニケリ。此ト見テ使喜ビ乍ラ、三五どちらですか。↓一四一ハ 三五 ー ) 、かーしか せうしゃうどの とひ こたふべかたな 「何ラ、少将殿ハ」ト問ケレバ、可答キ方無シ。辛クシテ、「然々」ト云ケレ三六や 0 とのことで。 カ そ あり とほ み ゅ み 三六 から ゆき な あまたひとおこ かたあし あ 注一九。