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検索対象: 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)
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1. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

みちふみ かはそこひしら ふかめまやう 一底もわからぬほど深い。限り 道踏タル跡モ無力リケリ。河ハ底モ不知ズ深キ沼ノ様ナル河ニテナム有ケル。 もなく深い もひとのけはひすところあ ほど かはのばりざまさしのばり ただおなじゃう ひとひす 「若シ人気ノ為ル所ャ有ル」ト、河ヲ上様ニ差上ケル程ニ、只同様ニテ一日過 = なんとあきれたことだ。 三どんな川に行きづまりがない ふつかすぎ おもひ ただおなじゃう 十ギ二日過ケルニ、「奇異」ト思ケルニ、七日差上ニケリ。其レニ只同様ニテ有はずがあろうか、必ず水源がある はずだ。 第 はてなく ほど 巻ケレバ、「然リトモ何ニノ河ノ畢無テハ有ラムゾ」ト「ムテ、差上ケル程ニ、一一 集 つかさしのばり なほひとけ なおなじゃうなり みそかさしのばり 四隙間。陰。「サ」は清音。 語十日差上ニケリ。尚人ノ気ハヒモ無ク同様也ケレバ、三十日差上ニケリ。 五古代中国の西北方に興亡した あや ちひびやうおば ふねひとみな ひとあ 今其ノ時ニ、怪シク地ノ響ク様ニ思工ケレバ、船ノ人皆、「何ナル人ノ有ルニ遊牧民族の国。いわゆる北方騎馬 民族の国。 おば あしはらはるかたか ふねさしかく ひびやうす カ有ラム」ト怖シク思エテ、葦原ノ遥ニ高キニ船ヲ差隠シテ、響ク様ニ為ル方六漢字表記を期した欠字で、該 当語は「カラミ」または「カラゲ」。 は ) ま ひとゑかき すがた ものやう ヲ葦ノ迫ョリ見ケレバ、胡国ノ人ヲ絵ニ書タル姿シタル者ノ様ニ、赤キ物ノ上の「ノ」は「物」の捨て仮名で、赤 いものを巻きつけて、の句意。 かしらゆひ いっきうちいづふねひとこ おもひ セ河岸。「鉉」は、ヘり、端。 冂凵テ頭ヲ結タル、一騎打出。船ノ人此レヲ見テ、「此ハ何ナル者ゾ」ト思テ ^ 胡人が意味不明の言葉で話す ほど いでき きき ひとうちつづ かずしら はたみなうちたち のを鳥のさえずりにたとえたもの。 見ル程ニ、其ノ胡ノ人打次キ、員モ不知ズ出来ニケリ。河ノ鉉ニ皆打立テ、聞 九擬態語。ばらばらっと。大勢 しら ことども もしこ なにごと ふねみ いふ モ不知ヌ一一 = ロ共ナレバ、何事ヲ云フトモ不聞工ズ。「若此ノ船ヲ見テ云ニヤ有ラの者がいっせいに行動を起すさま。 ↓五九ハー注一九。 おも おそろ し画しカく ほど ひとひとときばかりさへづりあひ ム」ト思へバ、怖シクテ弥ョ隠レテ見ル程ニ、此ノ胡ノ人一時許囀合テ、河一 0 わきにびったりと引き寄せ引 き寄せして。↓ 3 一八一ハー注一一三。 九 うちいりわたり せんきばかりあ かち ものども = 段初の「怪シク地ノ響ク様ニ ニハラ / 、ト打入テ渡ケルニ、千騎許ハ有ラムトゾ見工ケル。歩ナル者共ヲバ 思工ケレバ」を受けたもの。なん むまのり ものどもそばひきっ わたり ものどもむまあしおと 馬ニ乗タル者共ノ喬ニ引付ケ引付ケッ、ゾ渡ケル。早ウ、此ノ者共ノ馬ノ足音とまあ。↓三四ハー注三。 み 六 あ あし とき あとな おそろ み あさまし ひきっ み なめかさしのばり はや み さしのばり もの あ あり かた あり

2. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

いまはむかしうせうべんふぢはらもろいへ ひとあり そひとたがひこころぎしあり かよをむな 今昔、右少弁藤原ノ師家ト云フ人有キ。其ノ人互ニ志有テ、行キ通フ女一太政官右弁官局 ( 兵部・刑部 ・大蔵・宮内の四省を管掌 ) の職 0 有ケリ 員で、右大、中弁の下位。 ニ隆家の孫、経輔の子。従四位 、つ しづおも あり 亠ーをむなこころ、まきはめこころにく = 一女ノ心様ノ極テ心憾クテ、踈キ事ヲモ静メ思ヒナドシテ有ケレバ、弁事ニ触下。摂津守、右中弁を歴任。康平 四 元年 ( 一 0 五 0 没。年四十。一説に三 これつれなしおもはれ ふるまひ つけ ことどもあ 巻 テ、此ニ価ト不被思ジト翔ケレドモ、公事ニ付ツ、念ガシキ事共有リ、亦自然十二。師家の右少弁在任は永承三 ロ 年 ( 一 0 四 0 十一一月から同五年九月。 あだ とどめらるよ あり ほど をむなかやう あり 拯ラ泛ナル女ナドニ被留ル夜モ有ケル程ニ、夜枯ガチニ成ケルヲ、女此様ナル有 = 直接経験を回想する助動詞 昔 「キ」の使用に注意。↓田六九ハー注 こころ いまならは こころ ( う ) 七 ことおもひ うちとけ けしき あり △フさま 様モ未ダ不習ヌ心ニハ、心踈ウキ事ニ思ツ、、打解タル気色モ不見工ズノミ有〈・二五八ハー注 = 。 四「仙」は古辞書にみえないが、 ほど ゃうやかれがれなり さきぎきゃう ケル程ニ、漸ク枯々ニ成ツ、、前々ノ様ニモ無力リケリ。憾シトハ無ケレドモ、会意性より推すに、邪曲、薄情の 意。↓一〇七ハー注天。 そ こころう ことおもひこ、 ) ろよから たがひうとこころな 其レヲ心踈キ事ニ思テ、心不吉ズノミ成リ持行ケレバ、互ニ踈ム心ハ無ケレド五浮気な女。色好みの女。 六ともすれば来訪が途絶えがち つひたえ つ」 - よっつ 0 、 0 モ、遂ニ絶ニケリ。 七「ウ」は「踈」の全訓捨て仮名。 としなかばばかりなり をむないへまへすぎ 〈来訪が途絶えがちになるさま。 然テ年半許ニ成ニケレバ、弁其ノ女ノ家ノ前ヲ過ケルニ、其ノ家ノ人外ョ 九半年ほど。 きたり いりきたり べんのとの すぎ たま いりおはし一 0 とき あり リ来ケルガ入来テ、「弁殿コソ此ョリ過サセ給ヒッレ。入御マシ時ハ何ニカ有一 0 「マシ」は「マシ、」の踊り字 「、」を脱したものであろう。 あはれ みたてまつり あるじをむなきき ひといだ まうすべことあ ケム。哀ニコソ見奉ツレ」ト。主ノ女聞テ、人ヲ出シテ、「可申キ事ノ有ルヲ、 = 漢字表記を期した欠字で、 「ナョ ( ョカ ) 」が擬せられる あからキ、ま いりたま きき ペんこ まことここ 三練らない生糸で織った絹布製 白地ニ入給ヒナムヤ」ト云セタリケレバ、弁此レヲ聞テ、「実此ハ然ゾカシ」 おも や かへ おり いりみ をむなきゃうばこむかひ一一 ト思ヒ出テ、遣リ返サセテ、下テ入テ見レバ、女経箱ニ向テ冂〔〔〔〔凵凵ョカナル一三びったり身について。 あり をむな ここ べんそ こと じ なもてゆき 六 よかれ なり いへひとと べんことふれ またおのづか の袴。

3. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

さまよ いまとりつくろひ ・すず・しはかまきょげ 衣、厳気ナル生ノ袴ノ清気ナルナド有付テ、今取蹄タルトモ不見工ズ、様吉一四「頼ーは上の「額」の衍字の見せ 消ちの誤写、「ロ」は「ツ」の古体の ほしゃうなりしか まみひたひ一四 にくから クテ居タル眼見、額頼ロキナド不愡ズ、見マ欲キ様也。然レバ弁、事シモ今日誤写で、原姿は「額ッキ」だろう。 ↓一〇〇ハー注五。 かへすがヘわ はじ ゃう 始メテ見ム人トノ様ニ、「此ヲバ何ド今マデ不見ザリケルゾ」ト、返々ス我ガ一五ただ今日初めて会う相手のよ うに新鮮に美しく感じられて。 さまた ふし おも つきごろへだて こころくちをし きゃうよみたてまっ 心モロ惜クテ、「経読奉ルヲモ取リ妨ゲテ臥ナバヤ」ト思へドモ、月来ノ隔一六相手の了解なしに無理じいを するのも気がひけて。 ゆる おしたた こた とかくものいひかく ニ許サレ無クテ押立ムモ漠マシクテ、此彼物云懸レドモ、答へズ不為ネパ、経一セ「答へズ」と「答へ ( モ ) 為ネパ」 の混態か。なお、「バ」は「ド」とあ うち一 ^ にほひす かたとりかへもの よみはてよろいはむ 読畢テ万ヅ云ズル気色ニテ、打冂凵凵〕タル顔ノ匂、過ヌル方取返ス物ナラバ今りたいところ。↓五五ハー注一八。 一 ^ 「ウナヅキ」の漢字表記を期し のちこ とどま けふ あながちさまあし おば モ取返シッペク、強ニ様悪キマデ思ュレバ、ヤガテ留リテ、「今日ョリ後、此た欠字。了解の意思表示である。 一九法華経第二十三品、薬王菩薩 こころうちょろづせいごんおもひつづ つきごろこころ ほかなり ひとおろかおもひ ノ人ヲ愚ニ思タラバ」ト、心ノ内ニ万ノ誓言ヲ思次ケテ、月来心ョリ外也ツル本事品の略。薬王菩薩が法華供養 のために焼身焼臂した由来を記し、 こた 、しち・まきなり やくわうばむおしかへおしかへ 七 かへすがヘ この品を受持する者は死後安楽世 第事ナドヲ返々ス云へドモ、答へモ不為デ、七ノ巻ニ成テ、薬王品ヲ押返シ々シ 界に往生すると説く。 よみはてたま まうすべきことども 死 みたびばかりよみたてまっ べんな かへし 女クリ返ツ、、三度許読奉レバ、弁、「何ド此クハ。疾ク読畢給へ。可申事共ニ 0 命終して後、ただちに極楽世 界の阿弥陀仏や大菩薩たちが取り おしみやうじうそくわうあんらくせか いあみだぶつだいばさっしうゐねうぢう 臣おほ 朝モ多カリ」ト云フニ、「於此命終即往安楽世界阿弥陀仏大菩薩衆囲遶住巻いている所に往生し、宝池の青 い蓮華の中の宝座の上に生れよう、 ところよみたてまつりめ なむだ しよしゃうれんぐゑちうほうぎしじゃう 師 の意。なお、本句を誦し終って往 弁所青蓮花中宝座之上」ト云フ所ヲ読奉テ、目ョリ涙ヲホロ / 、ト泛セバ 生を遂げた類例に定昭僧都の往生 め みあはせ をむななむだうかび あなうた あまばらやうだうしむつきたまひ 右ペん 弁、「穴転テ。尼原ノ様ニ道心付給タルヤ」ト云フニ、女涙ノ浮タル目ヲ見合譚がある ( 古今著聞集、釈教 ) 。 ニ一ああ、いやだ。↓ 五〇ハー注三。 おもひ おも しもっゅめれ 一三不吉に思われて。 タル、霜露ニ湿タルカト思フニモ、忌々シクテ、「月来何ニ価シト思ッラムー きめいつくしげ とりかへ みひ な けしき つつ な と せ ありつき み み つきごろいかつれな と ペんこと み せ きゃう

4. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

よ いみじくら さっきはつかあまりほどなり 一三「雨ノ音不止ズ」が普通。 ケルニ、五月ノ二十日余ノ程ニ成テ、雨隙無ク降テ極ク暗カリケル夜、平中、 ↓二〇二ハー注一一。 おば ものなり あは こよひゆき しみじおにこころもち 一五なんとかやりくりして。 「然リトモ今夜行タラムニハ、極キ鬼ノ心持タル者也トモ、『哀レ』ト思シナム 一六まだ退出できません。「下ル」 くら うち あめのおとやまふり めぎす おもひょふけ は、貴人の前から退出する意。 カシ」ト思テ、夜深更テ、雨不音止ズ降テ、目指トモ不知ズ暗キニ、内ョリ、 宅「然レ・ハコソ思ヒッレ」の略 まゐり おもわびかく いひつぐめ わらはよび つばねまへ わりな ほんゐんゆき 破無クシテ、本院ニ行テ、局ノ前ニ云継女ノ童ヲ呼テ、「思ヒ侘テ此ナム参タやつばり思った通りだ。 一〈「賢クは下の「ケリ」と呼応し わらはすなはかへりきたりていはくただいまおほむまへひといまだね ル」ト云セタリケレバ、童即チ返来云、「只今ハ御前ニ人モ未不寝ネパ、否て、よくそ、運よく、などの意。 一九物陰。ここでは戸の陰。 むねさわぎ いひいだ しのびみづかきこえむ おりずいましばらくまちたま 不下。今暫待給へ。忍テ自ラ聞」ト云出シタレバ、平中此レヲ聞クニ胸騒テ、 一八 ニ 0 開き戸に対し、引き一尸の称。 かしこき おもひ かかよき ひとあは おばさ 「懸金」は一尸・障子の鍵。 「然レバコソ。此ル夜来タラム人ヲ哀レト不思ザラムャ。賢ク来ニケリト思 一九 ニ一うれしい時にもからだが震え くらと かきそひまちたち ほどおほとしすぐここち はさま るものだった、と初めて気づいた テ、暗キ戸ノ迫ニ、掻副テ待立ケル程、多ク年ヲ過ス心地ナルペシ。 意。「篩フ」は「震」の当字。 やりど おとす ほど ひとおと ひとときばかりありみなひとね 一時許有テ皆人寝ヌル音為ル程ニ、内ョリ人ノ音シテ来テ、遣一尸ノ懸金ヲ = = 来客の折など、別室で香をた 第 き、香りが洩れ匂うようにするこ 五ロ やす あき ゅめやうおばえ よりやりどひ 旨ロひそかはなっへいぢううれし とで、奥ゆかしい心づかいとされ 従窃ニ放。平中喜サニ寄テ遣戸ヲ引ケバ、安ラカニ開ヌ。夢ノ様ニ思テ、「此ハ る。↓田一一三ハー注一一。 おもしづ おも みふるものなり ニ三「女ロナル」の空格が消滅した 本何カニシッル事ゾト思フニ、喜キニモ身篩フ物也ケリ。然レドモ思ヒ静メ、 もので、空格は「ナョラ ( ャ ) 力」な ところ寺一ぐ へいぢうあゆより ふしどおば そらだきかつばねみち 仮やはうちい 文和ラ内へ入レバ、虚薫ノ香局ニ満タリ。平中歩ビ寄テ、臥所ト思シキ所ヲ搜レどの漢字表記を期した欠字。 ニ四 ニ四ここでは、くつろいで横たわ かき * 一ぐ かし、らギ」まほそ かしらギ一まかた 平 をむな きそびきふし きめひとへ っているさま。 、女ナル衣一重ヲ着テ聳臥タリ。頭様肩ッキヲ掻捜レバ頭様細ャカニテ、 ニ五氷を長くのばしたように長い ふるはれ あた ものおばえ へいぢううれし かみさぐれこほりの 髪ヲ捜バ凍ヲ延べタル様ニ氷ャカニテ当ル。平中喜サニ物モ不思ネパ、被篩テ髪がひんやりと感じられた。 こと ゃうひや うれし あめひまな うち 一四 ふり へいぢうこ かけがね へいぢう え

5. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

ぐんじ ゅあみ かへすがへかしづきたて ぐんじおどろきい へかへり きゃう ケレバ、郡司驚テ家ニ返テ、京ノニ湯浴シ、髪洗セト、返々ス傅立テ、郡司一念入りに磨き立てて。 ニよそおい立てたさま。飾り立 一まうるはし み きゃう てた様子。 妻ニ、「此レ見ョ、京ノガ為立タル様ノ美サヲ」トゾ云ケル。 十 三なんとまあ。次行の「也ケリ」 もとを、つと かみ きゃう よ はや そ きめ たてまつり 第然テ其ノ夜、衣ナド着セテ奉テケリ。早ウ、此ノ守ハ、此ノ京ノガ本ノ夫と呼応して、初めてそれと気づい 巻 た意を表す。↓一一五七ハー注一一一一。 きゃう ちかめしょ み なり ひやうゑすけ ありひとなり しんみ 四親身に感じられたから。赤の 集ノ兵衛ノ佐ニテ有シ人ノ成タリケル也ケリ。此ノ京ノヲ近ク召寄セテ見ケルニ、 語 四 他人とは思えなかった意。 きはめむつ いだきふし ゃうおば 物あやしみ 五感動表現で、不思議に見たこ 昔怪ク見シ様ニ思工ケレバ、抱テ臥タリケルニ、極テ睦マシカリケレバ、「己ハ 六 今 とがあるように思われるがね、の をむなさ 五 もの あやしみやうおば 何ナル者ゾ。怪ク見シ様ニ思ュルゾトヨ」ト云ケレバ、女然モ否心不得ザリ句意 六男が前の夫だとも気づかなか あり 七ばかりいひ かみ きゃう あら きゃうに おのれこ ったので。 ケレバ、「己ハ此ノ国ノ人ニモ非ズ、京ナム有シ」ナム許云ケレバ、守、「京ノ 九 セ この「ナム」は、あるいは「ナ うちおもひあり をむなうるはし 八あ ものきたり ぐんじ つかはれ 者ノ来テ、郡司ニ被仕ケルニコソト有ラメ」ナド、打思テ有ケルニ、女ノ娥クムド」または「ナド」の誤りか。 〈「ト」は衍字か。ただし、巻一 かみをむな ゃうおば よなよなめし なほあやしものあは おば 七第三三話にも「極テ聡敏ニ御ス 思工ケレバ、夜々召ケルニ、尚怪ク物哀レニ、見シ様ニ思工ケレバ、守女ニ、 ルニト有ケレ」と類似の表現が見 おも あは きゃう さるべ 「然テモ京ニハ何也シ者ゾ。可然キニヤ、『哀レニ糸惜』ト思へバ云フゾ。不隠える。 九本来は端正な美をさすが、本 まことしかしかあり ものなり ふるをとこ をむなえかく サデ云へ」ト云ケレバ、女否不隠サデ、「実ニ然々有シ者也。若シ旧キ男ニテ集での用法は優美な感じをも伴う ようである。 おもひ ひ・ころまうさ ありひとゆゑ 有シ人ノ故ナドニテモャ御マスラムト思ツレバ、日来ハ不申ザリツルニ、此ク一 0 前世からの因縁であろうか。 一一、心か、らいドし、りーしい」。 かみ あやし あり かたりなき たま あながちと 強ニ問ハセ給へバ申ス也」ト、有ノマ、ニ語テ泣ケレバ、守、「然レバコソ怪一 = 前の夫だった人の縁故の方。 一三「者ヲ」は終助詞「ものを」で、 おも あ寺 ) まし なむだこばるるさ おもひもの わふるめ ク思ツル者ヲ。我ガ旧キ妻ニコソ有ケレ」ト思フニ、奇異クテ、涙ノ泛ヲ然ル詠嘆表現。 め しカ いかオより くにひと もの おはし したち あり かみあらは み えこころえ おのれ

6. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

えぐ ゑっちう かみなりくだり のぶのりたうじきくらうど くだら 越中ノ守ニ成テ下ケル時ニ、惟規ハ当職ノ蔵人ニテ有ケレバ、否具シテモ不下一為時は越前・越後守となって いるが、越中守にはなっていない じよしやく のち くだり のぶのりみち おもやまひっき ズシテ、叙爵シテ後ニゾ下ケルニ、准規道ョリ重キ病付タリケレドモ、然トテ越後守が正しいが、俊頼髄脳に 四 「越中守」とあるのを踏襲したもの。 あら みちとどまるべ かまへくだっき かギ一りゃう 十道ニ可留キニ非ネパ、構テ下リ着ニケリ。国ニ行キ着ケレバ、限ナル様ニ成ニ = 現職の蔵人。蔵人は天皇側近 の秘書官的役職なので、任を離れ 第 て父に同行できなかったもの。 三五位に叙せられることで、そ きき よろこびまちつけ あさまし ちちためよしのぶのりくだると五 語 父為善、惟規下冂凵聞テ、喜テ待付タルニ、此ク限ナル様ナレバ、奇異クれまで六位の蔵人だった惟規が五 物 位に昇叙されたが、五位の蔵人の 昔 おもひなげさわことかぎりな さよろづあっかひ 今思テ歎キ騒グ事無限シ。然テ万ニ繚ケレドモ不愈ズシテ無下ニ限リニ成ニケレ定員外だ 0 たので殿上を退いたも の。 よ のちょ - ) とおも さとあ やむごと 「今ハ此ノ世ノ事ハ無益力リ。後ノ世ノ事ヲ思へ」ト云テ、智リ有リ止事四危篤状態に陥ってしまった。 五破損による欠字。大東急記念 し そうのぶのりみみ そうまくらがみす ねむぶつ すす 無力リケル僧ヲ枕上ニ居へテ、念仏ナド勧メサセムト為ケルニ、僧規ガ耳ニ文庫本「ルト」が該当する。 六ここでは介抱する意。 ちうう ぢ′ ) く なり つくすべから あてをし ゃう くぐゑん八 宛テ教へケル様、「地獄ノ苦患ハヒタブルニ成ヌ。云ヒ不可尽ズ。先ヅ中有トセ来世の往生。成仏。 ^ まっしぐらに近づいてきた。 はるか くわうやとりけだもの ただひとあこころばそ いひむまれきたらさだまらほど 云テ生来ヌ不定ヌ程ハ、遥ナル広野ニ鳥獣ナドダニ無キニ、只独リ有ル心細九衆生が死んで次の生をうける までの四十九日間。「中有の旅」は たま のぶのりこれ たへがた よひとこひし その間を旅にたとえたもの。 サ、此ノ世ノ人ノ恋サナドノ難堪サ、押量ラセ給へ」ナド云ケレバ、惟規此ヲ 一 0 息も絶え絶えのありさまで。 きき たびそら あらしたぐもみぢばかぜしたがをばな いきした そちうう 聞テ、息ノ下ニ、「其ノ中有ノ旅ノ空ニハ、嵐ニ類フ紅葉、風ニ随フ尾花ナド = 「空」は境遇、身空の意。 一ニ嵐につれて散る紅葉。これ以 、もレ」 いきしたい ひ こゑ まつむし 下、秋を代表する風趣で、惟規の ノ本ニ松虫ナドノ音ナドハ不聞エヌニヤ」ト〔〔〔〔〔凵凵〕ツ、、息ノ下ニ云ケレバ 風雅に対する偏執を示す句。 とひ いとあら なにれうそれ たづたまふ 僧サノ余リニ、糸荒ラカニ、「何ノ料ニ其ヲバ尋ネ給ゾ」ト問ケレバ、匯規、一三今の鈴虫。古くは名称が反対。 そ、つにく 0 あ ことやくな とき おしはか カ あり つき かぎり ゃう かぎ ま なり さり のぶのり

7. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

九国名の明記を期した欠字。 ちちうせ をのこごふたりあり いまはむかし九 一 0 郡名の明記を期した欠字。 今昔、冂凵〔〔〕ノ国冂凵ノ郡ニ住ム人有ケリ。男子二人有ケルガ、其ノ父失ニ 一一火葬による埋葬形式に対して、 こどもこ かなし′一ととしふ わすることな ふたり 土葬にした意。 ケレバ、其ノ二人ノ子共恋ヒ悲ブ事、年ヲ経レドモ忘ル事無力リケリ 一ニ朝廷に仕えて、つまり公務に こどもおやこひ これ は力をき、 むかしうせ ノ、此ヲモ納メテ、子共祖ノ恋シキ時ニハ打まぎれて私生活をふり返るのがむ 昔ハ失ヌル人ヲバ墓ニ納メケレヾ ずかしくなってきたので、の句意。 おや うれ なげき なむだなが わみ はかゆき 具シテ彼ノ墓ニ行テ、涙ヲ流シテ、我ガ身ニ有ル憂へヲモ歎ヲモ、生タル祖ナ一三普通にしていては。このまま では。 十 むかひ ゃういひ 一四「ナグサム」の漢字表記を期し ドニ向テ云ハム様ニ云ツ、ゾ返ケル。 第 五ロ 1 = 1 ロ た欠字。 たへがたことどもあり つかわたくしかへりみ こどもおほや しかあひだやうやとしつきつもり 而ル間、漸ク年月積テ、此ノ子共公ケニ仕へ私ヲ顧ルニ難堪キ事共有ケレ一 = ュリ科の多年草。ヤ・フカンゾ 草 ウの類。山野に自生し、葉は狭長、 くさ くわんざうい ただ おもべ一四 ゃうわ あにおもひ 夏黄赤色のユリに似た花をつける。 萱バ、兄ガ思ケル様、「我レ只ニテハ思ヒ可冂凵キ様無シ。萱草ト云フ草コソ、 人 別名忘れ草。 おもひ まとりうゑみ くわんぎうはかー ひとおもひわする 一六「殖」は「植」の通字。次ハー四行 二其レヲ見ル人思ヲバ忘ルナレ。然レバ彼ノ萱草ヲ墓ノ辺ニ殖テ見ム」ト思テ、 兄 には「植」字が使われている。 つものよ , つに。 宅例のごとく。 殖テケリ 天差しつかえることばかり多く あにき、はり まゐたまふあにとひ れいおほむはか そのちおとうとつねゅ 其ノ後、弟常ニ行キテ、「例ノ御墓へャ参リ給」ト兄ニ問ケレバ、足障ガチなって。 うゑ そ 0 ひと 話。孝心の厚い弟が吉凶の予知能力を得たという結末は、末子成功型の兄弟説話につながるも のがある。忘れ草は『万葉集』以来の歌語として『俊頼髄脳』以下の歌学書でも取り上げられ ていることから、萱草を忘れ草、紫苑をそれに対立する思い草とした当時の歌語解釈にまつわ る伝承話だったのであろう。 ′一ほりす かへり ひとあり をさ あ ゃうな そ とき 0 うち

8. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

ふそうりやっき ほんちょうせいき という話。『扶桑略記』二五天慶一一年己亥の条に「或記云」として収め、『本朝世紀』二天慶元年八月 こじだん + 二日丙戌の条、『古事談』五神社仏寺にも同話を収める。本話はこれらと同原の記録に由来する ものであろう。 十 一天暦 ( 九四セ ~ 九五七 ) 年間に限らす、 第 広く第六十一一代村上天皇の治世を 巻 さす。なお、扶桑略記以下では朱 集 四 五 雀天皇治下の天慶元、一一年 ( 九三八 ~ 五ロ いまはむかしてんりやくみよ あはたやまひむがしやましなさときたかたてらあ はじめふぢをでら 1 = 1 ロ 物今昔、天暦ノ御代ニ、粟田山ノ東山科ノ郷ノ北ノ方ニ寺有リ。始テ藤尾寺九 = 九 ) の事件とする。↓本話解説。 昔 ニ↓一八六ハー注六。 そ てらみなみべちだうあ としおい そだうひとり あますみ そあま 今 ト云フ。其ノ寺ノ南ニ別ノ堂有リ。其ノ堂ニ一人ノ年老タル尼住ケリ。其ノ尼三京都市山科区の東部地域。本 集中に南、北山科の地名も見える。 ざいゆたか よろみなおもやう としごろすぐし 四寺を建立した当初に。 財豊ニシテ、万ヅ皆思フ様ニテナム年来過ケル。 かいじゅうせんじ 六 五海住山寺の古称であるが、所 そ あまわか ねむごろはつまんつかまつりつねまうで こころうちおもひ七 其ノ尼若クョリ懃ニ八幡ニ仕テ常ニ詣ケル。心ノ内ニ思ニケル様、「我レ年在地が異なり、別寺。 いわしみず 六八幡大菩薩。ここでは石清水 ごろだいばさったのたてまつり ねむたてまっ おなじわゐ ほとりだいばさつうつ 八幡宮の主祭神、八幡大菩薩 ( 応 来大菩薩ヲ憑ミ奉テ、朝暮ニ念ジ奉ル。同クハ我ガ居タル辺ニ大菩薩ヲ遷シ 神天皇 ) 。本地垂迹説により、八 たてまつり つねづねおもひごとあがうやまたてまっ おもひたちまちそわたりところえらびほうでん 奉テ、常々思ノ如ク崇メ敬ヒ奉ラム」ト思テ、忽ニ其ノ辺ニ所ヲ撰テ、宝殿幡神を護国霊験威力神通大自在王 菩薩の垂迹身とみて大菩薩とする。 めでたくかぎりだいばさつあがめたてまつり としごろあがたてまつり あままたねがおもひ ヲ造リテ微妙荘テ、大菩薩ヲ崇奉テ、年来崇メ奉ケルニ、尼亦願ヒ思ケルセ「ニ」はあるいは「ヒ」の誤写か。 ぶんし ^ 八幡大菩薩の神霊を分祀申し こと ゃう ほんぐう はづきじふごにちほふゑおこなひ はうじゃうゑ あげて。 様、「本宮ニハ毎年ノ事トシテ、八月ノ十五日ノ法会ヲ行テ、放生会ト云フ。 九石清水八幡宮。尼が山科に勧 だいばさつおほむちかひょ されわ みや おなじひこ はうじゃうゑおこな 請した新八幡宮に対する語。 此レ、大菩薩ノ御誓ニ依ル事也。然バ我レ此ノ宮ニモ同日ニ此ノ放生会ヲ行ハ 一 0 「放生」は「殺生」の対。金光明 おもひえ としうちところどころ ほんぐうごと はうじゃうゑおこなひしゅ はらき ム」ト思得テ、本宮ノ如ク、年ノ内ニ所々ニシテ放生会行テ修シテ、八月ノ最勝王経所出の流水長者の放生の とー ) ′ ) と てうば ゃうわとし

9. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

五 六 ただく わかをとこあそばむためきたやまわたりゆき いまはむかしきゃうあり 今昔、京ニ有ケル若キ男ノ、遊ガ為ニ北山ノ辺ニ行タリケルガ、日ハ只暮五「遊ぶ。は、普通音楽などを奏 する意であるが、ここでは山野の いづ のやまなかまどひみちおば レニ暮ニケルニ、何クトモ不思工ズ野山ノ中ニ迷テ道モ不思工ザリケレバ、可清遊、逍遥の意。 六船岡山・衣笠山・岩倉山など たにはキ ) ま おもあっかひあり ほど こよひやどるべところな 返キ様モ無力リケルニ、今夜可宿キ所モ無クテ、思ヒ繚テ有ケル程ニ、谷ノ迫京都北方一帯の山々の総称。 セとつぶりと暮れてしまって。 タ一と - 一 あり よろこび ちひさいほりほのかみ ↓三三〇ハー注九。 ニ小キ奄ノ髴ニ見工ケレバ、男、「此ニ人ノ住ムニコソ有ケレ」ト喜テ、其へ 〈思案に暮れていると。↓一一 ちひ一しばいほりあ 一一〇ハー注四。 掻行テ見ケレバ 小キ柴ノ奄有リ 九谷あい。「迫」は、物陰のせば いときトげ , けしききき いほり・、っち - わかをむなとしはたちあまりばかり まった所。↓一一〇ハー注四。 此ク来レル気色ヲ聞テ、奄ノ内ョリ、若キ女ノ年二十余許ニテ糸浄気ナル、 一 0 草木をかき分けてたどりつい をとここれみ うれし おもひ をむなをとこうちみ あ一ましげ おもひ てみると。 出来タリ。男此ヲ見テ弥ョ、「喜」ト思ケルニ、女男ヲ打見テ、奇異気ニ思テ、 みちふみたが をとこやまあそびゅ はべり ひとおはし 「此ハ何ナル人ノ御タルゾ」ト云へバ、男、「山ニ遊ニ行キ侍ツルニ、道ヲ踏違 = たいそう美しげなのが。↓ 3 くれ ゆきやどるべところな ここみ えかへはべら へテ、否返リ不侍ヌ程ニ、日ノ暮ニタレバ可行宿キ所モ無力リツルニ、此ヲ見二五五ハー注一 = 。 五 一ニ驚いた様子で。 つけよろこなが いそまゐり をむなここ ひときたら 第付テ喜ビ乍ラ念ギ参タルニナム」ト云へバ、女、「此ニハ冂凵ノ人不来ズ。此一 = 「オポロケ」の漢字表記を期し 五ロ 1 三ロ た欠字。並み大抵の。普通の。 いほりあるじただいまきたり 為ノ奄ノ主ハ只今来ナムトス。其レニ、其ノ奄ニ御セムズルヲバ、定メテ己レガ五五注毛。 人一五 一四あなたが庵にいらっしやるの しり をと - 一 たま 山知タル人トコソ疑ハムズラメ。其レヲバ何カヾシ給ハムト為ル」ト云へバ、男、を見て。 五単なる知人の意ではなく、親 よ 、一・よひ・はかりかく ただかへるべやうな 「只何カニモ吉カラム様ニコソハ。但シ可返キ様ノ無ケレバ、今夜許ハ此テコ密な男、情夫の意。 一六なんとか、いかようにでもう をむた、さ かく . おは とし′ ) ろあ みず まくお取り計らいください ソ侍ラメ」ト云へバ、女、「然ラバ此テ御セ。『我ガ兄ノ、年来相ヒ不見ナリッ 127 るべやうな き 0 み いでき ただい はべ しカ きた ひと うたが ほど ゃう ひ そ ここひとす そこ い・はめ・。お・は わ す さだ ひ おの そこ かへ

10. 完訳日本の古典 第33巻 今昔物語集(四)

てかかや しゃうごぶたいきぬや ふたっふねいけ うへめぐゅ 二ノ船池ノ上ニ廻リ行クニ、荘リ立タル大皷、鉦皷、舞台、絹屋ナドノ照リ曜一四絹製の天幕。前ハー五行に「錦 ノ平張とあるもの。 ふねかぎり さまいだぎめどもおばしまうちかけられ おび 一五欄干。↓注一一。 キ愕夕、シク見ョリモ、此ノ二ッノ船ノ荘タル様、出シ衣共ノ欄ニ被打懸ツ、 一六戒め。制する一言葉。↓一一七 かむだちめてんじゃうびとこれ めでたみ いろいろかさなり みづかげうつりよ ハ注一一四。僧都が口止めをしたのは、 色々ニ重タルガ、水ニ影ノ移テ世ニ不似ズ微妙ク見ュレバ、上達部殿上人此 有力なパトロンである高助の身分 そうづ たづねられ なにみやにようばうものみ 不相応な所業に対して、世間の悪 ヲ見テ、「彼レハ何ノ宮ノ女房ノ物見ルニカ」ト問ヒ被尋ケレドモ、僧都ノ、 評が立つのをはばかったもの。 たかすけふね あなかしこかれふね くちかためられ 「穴賢、彼ガ船ト不云ナ」トロヲ被固タリケレバ、「高助ガ船」ト云フ人モ無力宅一定の日に宮中や院に出仕す る下級官僚。 しら ふね いみじ たづねとひ つひた 、 : 一ろにく リケリ。然レバ、い應ガリテ極クナム尋問ケル。然レドモ遂ニ誰ガ船トモ不知デ入宮家に仕える侍。 一九諸官庁の三等官の子。 むすめものみ そ のち たかすけかやう やみ ニ 0 気に入らないで。 止ニケリ。其ノ後ニモ事ノ折節ニ付ツ、、高助此様ニシテ娘ニ物ハ見セケリ ニ一先払いをさせながら行く人で、 そひととっゅしられ 公卿のこと。即ち三位以上および 然レドモ其ノ人ハ露不被知ザリケリ 一九 四位の参議。身分不相応な高望み じゃうにちものみやさぶらひしかるべしよしぜう かやうめでたかしづき であるが、そこには高助が自分の 第然テ此様ニ微妙ク傅ケレバ、上日ノ者、宮ノ侍、可然キ諸司ノ尉ノ子ナド、 五ロ ニ = ロ 果し得なかった夢を娘に託し、財 ふみ とめいれ たかすけめ むこな リカによって上流社会につながろう 傅「聟ニ成ラム」ト云セケレドモ、高助目ザマシガリテ文ヲダニ不取入サセザ という気持が汲みとれる。 あふみはりま さきお 高 ただ 綱ケリ。只、「賤クトモ前追ハム人ヲコソ出シ入レテ見メ。極力ラム近江幡磨ノ = = 羽振りのよい近江・播磨の国 守の子でも。延喜式巻一三民部上 よ わごぜんたちおほむあた さきおは ひと 圧 ~ かみこなり 史守ノ子也トモ、前追ザラム人ヲバ、我ガ御前達ノ御当リニハ何デカ寄セム」ナでは、近江・播磨国とも大国 ( 最 上級の国 ) にはいる。 あにをとこあり ぶもうちつづ むことり ほど 大 ニ三二人の娘をさす。↓田一六九 ム云テ、聟取モ不為ザリケル程ニ、父母打次キテ死ケレバ、兄ノ男有ケルモ、 ハー注一八。 とり いも、つとかーっき おもひ よろづたからわひとり 9 ちちかへすがヘすいひつけ ニ四妺の世話。 父返々モ云付ケレドモ、「万ノ財ハ我レ独コソ取テム」ト思ケレ、妹傅ヲバ し みゆる いやし せ ふ ことをりふしつけ こふた かぎたて ひと 0 たいこ と み いみじ しカ ひと 0