事 - みる会図書館


検索対象: 完訳日本の古典 第32巻 今昔物語集(三)
449件見つかりました。

1. 完訳日本の古典 第32巻 今昔物語集(三)

いふかひな そ をむないひことおもあはされ 一どうしようもなくて。 云甲斐無クテ、其ノ時ニゾ女ノ云シ事思ヒ被合ケル。 ニ一七一ハー四行の「只、不意ズ もとしり をとこすべ かたな おば ひともとゆきすぐ ・ : 哀ナルゾ [ を中心とする女の言 然テ男、可為キ方無ク思工ケレバ、本知タリケル人ノ許ニ行テ過シケル程ニ、 葉をさす。 わこころぬすみ ほど にさむど しかあひだ 三やりつけたこと。 + 為付ニケル事ナレバ、我ガ心ト盗シケル程ニ、二三度ニモ成ニケリ。而ル間、 第 四自分から進んで。自発的に。 をとことらへられ とはれ 」レ」こあり ことおとさ 五 一つももらさず。一部始終。 巻男被捕ニケレバ、被問ケルニ、男有ノマ、ニ此ノ事ヲ不落ズ云ケリ。 集 なお、説話の伝承源を登場人物に いとあさましことなりそ をむなへんぐゑもの あり いちににちほどや 語此レ糸奇異キ事也。其ノ女ハ変化ノ者ナドニテ有ケルニヤ。一二日ガ程ニ屋仮託するのは、本集での一般的方 昔 法。 く、り′」も あとかたなこほちうしな ことなりまたそこばくたからじうしやども 今ヲモ蔵共ヲモ跡形モ無ク壊失ヒケム、希有ノ事也。亦若干ノ財、従者共ヲモ引〈意外な驚くべきこと。 セ神仏・霊鬼などの化身。 ぐ そ のちきか あさまし - 一となり 具シテ去ニケムニ、其ノ後不聞ズシテ止ニケム、奇異キ事也カシ。亦家ニ居乍 ^ 「壊失ヒケムハ」の意。破壊し 去ったのは。「ケム」は、編者の時 おもやう きたり じうしやどもふるま ラ、云ヒ俸ル事モ無キニ、思フ様ニシテ、時モ不違ズ来ツ、従者共ノ翔ヒケム、点から話中のできごとを推測した もの。以下の「ケム」も同じで、本 きはめあやしことなりか いへをとこにさむねんそひあり 、一ころう さなり ・一とな 極テ怪キ事也。彼ノ家ニ男二三年副テ有ケルニ、「然也ケリ」ト心得ル事無ク集に頻出する形。なお、「こほっ」 の「ほ」は清音。 やみ まためすみ あひだきたあものどもたれ ゅめしらやみ テ止ニケリ。亦盗シケリ間モ、来リ会フ者共、誰ト云フ事ヲモ努不知デ止ニケ九多くの財物。 一 0 そうだったのかと、真相に気 ただいちど ゆきあひ ところさしのきた ・ ) とものどもうちかしこまり 其レニ、只一度ゾ、行会タリケル所ニ差去テ立テル者ノ、異者共ノ打畏づくこともなしに終った。 = 「リ」は「ル」の誤字で、原姿 をとこいろ ほかげ - み いみじしろいつくし つら タリケルヲ、火ノ焔影ニ見ケレバ男ノ色トモ無ク極ク白ク厳カリケルガ、頬ッ「盗シケル間モ」か。 三まったくわからずじまいに終 おもてぎまわめ あ キ面様我ガ妻ニ似タルカナト見ケルノミゾ、然ニヤ有ラムト思工ケル。其レモ たいまっ 一三松明の光で見ると。ここの たしかしら 「影」は光の意。 褪ニ不知ネパ、不審クテ止ニケリ。 しつけ 0 ) り おきっことな こと ひ いぶかし とき やみ み やみ ときたがヘ な もの こと なり またいへゐなが ほど ひき

2. 完訳日本の古典 第32巻 今昔物語集(三)

ゾ掻入レテ置ケル。 よ あしことあ ちくごぜんじ 筑後ノ前司ノ云ケル様ハ、「家ノ物外ニ運ビ置テ、吉キ事有リ、悪キ事有リ 九 いとよ めすびとものとられ ことなりふたりさぶらひにが きはめあしことなり + 盗人ニ物不被取ヌ、此レ糸吉キ事也。二人ノ侍逃シッル、此レ極テ悪キ事也」 = 民部省の大丞の中から特に五 位に昇叙されたもの。民部省は八 第 省の一つで、広く民政をつかさど 巻トゾ云ケル。 った役所。 集 いとよ おも かしこもの かかことども 語賢キ者ナレバ此ル事共ハシタルゾトハ思へドモ、此レ糸吉キ事トモ不思工ズ。 = 「則助」の姓の明記を期した欠 字。 昔 きはめあし いにしへかかこだいこころもち ひと 今物ヲ取寄セッ、仕ヒケムモ極テ悪カリケム物ヲ。古へ此ル古代ノ心持タル人ゾ四伝未詳。 五夕暮ごろ。 あり かたった 六 ↓一八〇ハー注一三。 有ケル、トナム語リ伝へタルトャ。 セ「蜜」は「密」の通字。 ^ その場から遠ざけた。 九 ↓一九〇ハー注七。 ものとーり画 カきい おき みんぶのたいふのりすけがいへにきたるぬすびとせつがいのひとをつぐることだいじふさむ 民部大夫則助家来盗人告殺害人語第十三 本話の典拠は未詳。夕刻帰宅した民部大夫則助が、わが家に忍び入った盗人から間男と共謀 した妻の夫殺害計画を密告され、従者に命じて家捜しをし、天井にひそんでいた刺客を捕えて 検非違使に引き渡す一方、盗人には密告の賞として、彼の狙った栗毛の名馬を与えたという話。 話末の一段はこの事件に対する聞き手の感想・取り沙汰であると同時に、編者のそれでもあっ たろう。前話とは奸計が未然に発覚して事なきを得たという共通の要素でつながる。なお、妻 けび し ゃう いへものほかはこおき もの ことあ 、一と 0 一ひどく不便だったろうに。

3. 完訳日本の古典 第32巻 今昔物語集(三)

ふることかぎりな 一寸白が人間に生れ変った男。 篩フ事無限シ。 ニ ( これ以上は ) とても堪えきれ しか さだま かみふるふふるさかづきひきょ すけ ない。胡桃攻めに屈した国守の最 然レドモ介ガ、「定リテ此レ食ス事也」ト責レバ、守篩々フ盞ヲ引寄スル 後の言葉。 八 なが まことすんばくをとこさらたふべから みづなり 三「サ」は「散」の全訓捨て仮名 + マ、ニ、「実ニハ寸白男。更ニ不可堪ズ」トテ、散サト水ニ成テ、流レ失ニ 四 五 さっと。↓二八五ハー注一一。変化 第 ときらうどうどもこ おどろさわぎ むくろななり 巻ケリ。然レバ其ノ体モ無ク成ヌ。其ノ時ニ郎等共此レヲ見テ、驚キ騒テ、「此の女が水とな。て流失した類例は 長谷雄卿草紙にも見える。 こと あやしのの ことかぎりな 四 ( 絶命しただけでなく ) からだ 語ハ何ナル事ゾ」ト云テ、怪ビ隍シル事無限シ。 そのものも。 昔 し こと たちこ たまは そときこすけ すんばくひと 今其ノ時ニ此ノ介ガ云ク、「其コ達ハ此ノ事ヲ知リ不給ズャ。此レハ寸白ノ人 = 国守に従。て都から下。て来 た従者たち。 おはし なり みたまひ いみじたへがたげおもひ くるみおほ 六拝見いたしまして。 ニ成テ、生レテ御タリケル也。胡桃ノ多ク被盛タルヲ見給テ、極ク難堪気ニ思 六 セ ↓一四〇ハー注一五。なお、寸白 ことはべ こころみ おもひたま か たま けしきみたま が人に化した話は本話以外に知ら 給ヒタリツル気色ヲ見給へテ、己ハ聞置タル事ノ侍レバ、試ムト思給へテ、此 なしか、これによると当時は他に とけたま なり みなくにびとぐ つかまつり えたへたまは もあったものか ク仕タリツルニ、否堪給ズシテ、解給ヒタル也」ト云テ、皆、国人ヲ具シテ、 ^ 国守の一行をそのままほった みなきゃうかへのばり すてくにかへりかみともものどもいふかひな 棄テ国へ返ヌ。守ノ共ノ者共云甲斐無キ事ナレバ、皆京ニ返リ上ニケリ。此ノらかしにして。 九本集では、身近な従者、家来 みなこ すんばくなり よしかたり かみさいしくゑんぞく ひと 由ヲ語ケレバ、守ノ妻子眷属モ、皆此レヲ聞テ、「早ウ、寸白ノ成タリケル人をさす語。 一 0 なんとまあ。さては。↓九一 」しり あり それ ハ注一六。 ニコソ有ケレ」トハ其ョリナム知ケル。 おも ひと , ) ひとなりむまるなり 此レヲ思フニ、寸白モ然ハ人ニ成テ生ル也ケリ。聞ク人ハ此レヲ聞テ咲ケリ 一と かたった 希有ノ事ナレバ此ク語リ云へタルトャ。 すんばくさ め おのれききおき ことなり こと もられ ぎき せむ ( さ ) 三 はや ききわらひ うせ 0 = この句は本集に頻出し、ここ にも編者の説話採録の一関心があ ったことをうかがわせる。

4. 完訳日本の古典 第32巻 今昔物語集(三)

おもひ おもてがた さるときばかりはせゆき あ おほぢひと ト思ケレバ、面形ヲシ乍ラ、申ノ時許ニ馳テ行ケレバ、大路ノ人ハ、「彼レ見 おにひるなかむまのりゆ をさなもの いひののしり み おぢまどひ ョ、鬼ノ昼中ニ馬ニ乗テ行クヲ」ト云隍テ、幼キ者ナドハ此レヲ見テ、恐迷 八 まことおになり おもひ やみつき ものあり 十テ、「実ノ鬼也ケリ」ト思ケルニヤ、病付タル者モ有ケリ 第 くわんばくどの いまかちまけきら らくそんいで こととど おばしめし 巻然テ関白殿ハ、「未ダ勝負モ不切ヌニ、落蹲ノ出タル事ヲ止メム」ト思食テ、 集 から おほたま なりまこと から おほたまおほむこゑ 語「搦メョ」トハ仰セ給ヒケル也。実ニハ不被搦ヌニ、「搦メョ」ト仰セ給フ御音 ニ関白殿のおとがめを受けて。 昔 ことわりなりその よし - もち・か・むだ、う ひさしおほやけつかまつら また 今ヲ聞テ、逃ルモ理也。其ノ後チ、好茂勘当ニテ、久ク公ニ不仕ザリケリ。亦、 = 関白殿はお気に召さなか 0 た。 四左の方に肩入れなさっていた。 みぎかたうどども とうちうじゃう むつか たま みぎかたうどども 右ノ方人共ヲゾ、頭ノ中将ョリ始メテ、六借ラセ給ヒケリ。然レバ右ノ方人共五公忠がご自分の随身だったせ 四 いではないか くわんばくどの ひだりかた たま にくみまうし これきむ 六意味の上では「トヤ」はむしろ 、関白殿ヲゾ、「左ノ方ニョラセ給ヒタリケリ」ト云テ、憎申ケリ。此ハ公 不要 あり よ ただみずいじん うたが ことはしたななり セ事が中途半端になってしまっ 忠ガ御随身ニテ有ケレバトャニャトゾ、世ニ疑ヒケル。事半無ク成ニケレバ たから。 かたうどどもみなくるしなりやみ なか らくそんぶにんおもてがたながはせにげ 方人共皆苦ク成テ止ニケリ。其ノ中ニ、落蹲ノ舞人ノ面形ヲシ乍ラ馳テ逃タル ^ いや気がさして。 よひとわらひ 事ヲゾ、世ノ人咲ケル。 かかいどみごとむかしかならこといできたこと かたった 然レバ此ル挑事ハ昔ョリ必ズ事出来ル事ニテゾ有ケル、トナム語リ伝へタル ト也。 こと きき や にぐ なが そ からめられ あり 0 み 一決着がっかないうちに。

5. 完訳日本の古典 第32巻 今昔物語集(三)

今昔物語集巻第二十八 92 だんじゃうのひつみなもとのあきさだまらをいだしてわらはるることだいにじふご 弾正弼源顕定出閇被咲語第二十五 ) ) うだんしよう ふじわらの 本話の出典は『江談抄』二の三一範国恐懼事 ( ↓巻二四第二三話解説 ) 。五位の蔵人だった藤原 のり・くに ふじわらのさねすけ 範国が、職事として申し文を賜るため上卿藤原実資の下命を受けていた時、ふと南殿の東の端 で源顕定が陰茎を掻き出しているのを見て笑い、事情を知らぬ実資から行儀不謹慎のかどでき つく叱責されたが、事が事なので弁明もできず、ひたすら恐れ入った話。宮中の公事の際に起 きたユーモラスな事件が、ゴシップ化して貴族社会に伝承されたものであろう。 一江談抄は姓を記さず、頼通の 関白時代、甲斐前司から五位蔵人 いまはむかしふぢはらのりくに いふひとあり に補された人物とする。同時代人 今昔、藤原ノ範国ト云人有ケリ で、甲斐守任官歴のある平範国を くら、つ / 」 あり ときをのみやさねすけみぎおとどまうひとぢんごぎ 五位ノ蔵人ニテ有ケル時、小野ノ宮ノ実資ノ右ノ大臣ト申ス人、陣ノ御座ニ藤原姓に誤ったものらしい ニ蔵人の上級者。多くは六位。 しきじ ごゐ ことさだたま かのりくに まうしぶみたま しゃうけい 着テ、上卿トシテ事定メ給ヒケルニ、彼ノ範国ハ、五位ノ職事ニテ、申文ヲ給三藤原実資。任右大臣は治安元 年 ( 一 9 一一 ) 七月 うけたまはあひだだんじゃうのひつみなもとあきさだ ぢんごぎ むかひしゃうけいおほ 弾正弼源ノ顕定ト四陣の座。祭事・節会・任官・ ハラムガ為ニ、陣ノ御座ニ向テ、上卿ノ仰セヲ奉ル間、 ' 叙位などの儀式・政務に際して公 あり まらかきいだ しゃうけいおく なむでんひむがしつま ひとてんじゃうびと 云フ人、殿上人ニテ有ケルガ、南殿ノ東ノ妻ニシテ、閘ヲ掻出ス。上卿ハ奥ノ卿の列座した席。紫宸殿の左右両 近衛の陣にあったが、ここは注一 0 をかし えみたまは のりくにぢんごぎみなみかみ かたおは 方ニ御スレバ否不見給ズ、範国ハ陣ノ御座ノ南ノ上ニテ此レヲ見テ可咲キニ不の位置より推して左近の陣の座。 ( 現代語訳三三五ハー ) つき ため 0 み た

6. 完訳日本の古典 第32巻 今昔物語集(三)

くちみ いむくちあり はきいだ ノ開タルロヲ見レバ、婬ロニ有テ吐出シタリ。 一三精液を口から吐き出していた。 み わよねいり へみみ 此レヲ見ルニ、「早ウ、我ガ吉ク寝入ニケル、閇ノ発タリケルヲ、蛇ノ見テ一四なんとまあ、やはり。三行前 の「然ハ・ : 此ノ蛇ト婚ケルカ」とい よりのみ をむなとつぐ おば とき いむぎゃう へみえた 寄テ呑ケルガ、女ヲ嫁トハ思工ケル也ケリ。然テ婬ヲ行ジツル時ニ、蛇ノ否不う疑惑が事実だったことを確認し て驚いた気持。 - : 一ろう あさましおそろ そ・ ) さり かくれまらよく 一五男根が勃起していたのを。 堪デ死ニケル也ケリ」ト心得ルニ、奇異ク恐シクテ、其ヲ去テ、隠ニテ閇ヲ吉 一六人目につかない所、物陰。 あらひ ・一とひと かた おもひ よしな ことひとかたりきこ 々ク洗テ、「此ノ事人ニヤ語ラマシ」ト思ケレドモ、「由無キ事人ニ語テ聞エナ宅蛇毒を恐れて洗い落したもの。 ニ 0 ↓田九一ハー一〇 ~ 一二行。 へみとつぎ そうなり いはる おもひ かたら なほ・」 バ、『蛇嫁タリケル僧也』トモゾ被云ル」ト思ケレバ不語ザリケルニ、尚此ノ一〈つまらないこと。 一九世間の評判になったら。 ことあ、ましおば つひょ したし そうかたり そう おぢ 事ノ奇異ク思工ケレバ、遂ニ吉ク親カリケル僧ニ語ケレバ、聞ク僧モ極ジク恐 = 0 やはりこの事が ( あまりにも ) 不思議に思われたから。 四 ところ すべから そうそのち 語然レパ人離レタラム所ニテ、独リ昼寝ハ不可為ズ。レドモ此ノ僧、其ノ後 べちことな ちくしゃうひと いむう かならし 受別ノ事無力リケリ。「畜生ハ人ノ婬ヲ受ケツレバ、否不堪デ必ズ死ヌ」ト云フ = 一格別の変ったこと。変事。 呑 ま・ ) となり そうおくびやうしばらくやみつき あり 一三おじけづいて。おびえて。 寝ハ実也ケリ。僧モ憶病ニ暫ハ病付タル様ニテゾ有ケル。 きき ことそかたぎか そうかたり ものかかたった 此ノ事ハ其ノ語リ聞セケル僧ノ語ケルヲ聞タル者ノ此ク語リ伝へタルトャ。 蛇 よ へ あけ し 0 ひとはな なり ひとひるね なり ゃう まらおこり えたへ し

7. 完訳日本の古典 第32巻 今昔物語集(三)

- 一と・よ 一七 こをのこげす おもばかりあり こころうち - ド事吉クロケレバ、此ノ男下衆ナレドモ思量有テ賢カリケル奴ニテ、心ノ内一一しよう。 一六一一一三ハー六行にも類似の表 あ一ましこと おもかく おもひ ただいまいな さだ 、「奇異キ事ナレバ思ヒ不懸マジキ事」トハ思ケレドモ、「只今辞ビバ定メテ現が見える。わが身が大事だから こそ人目も恐ろしい。つまり一番 あし おもひ いとやすことなり 悪カリナム」ト思テ、「糸安キ事也」ト識テケリ。 大事なのはわが身なのだから、人 が知らないのなら自分の利益を第 とら はうめんどもよろこび . しば、らく きめめの をのこただいまいそが 一とせよ、という悪事への誘い 放免共喜テ、「且」トテ絹布ナド取セケレドモ、男、「只今不忿ズトモ」 宅↓注六・一三。 しえ のち かへ はうめんども よる 、「為得テム後ニ」ト云テ、不取デ返ルニ、放免共ノ云ク、「然ラバ明日ノ夜一 ^ 取りあえずのお礼ですが。 一九ここで言葉を切り、間を置い おも やはんばかりそかどもと いたりかどお まうけかどあけ をのこ トナム思フヲ、夜半許ニ其ノ門ノ許ニ至テ門ヲ押サバ、儲テ門ヲ開ョ」ト。男、て下に続けたもの。 ニ 0 やり遂げた後に。下に「得サ あら いひ はうめんども かところつはものいへあら こころやすおもひ スペシ」の語気を略す。 「事ニモ非ズ」ト云テ、返ヌ。放免共ハ、彼ノ所兵ノ家ニ非ネパ、 心安ク思テ、 三待ち構えて。 そこころえ ものどもじふにんばかりどうじむ ちり あすよるきたあふべよしちぎり 一三造作もないことだ。お安いご 六其ノ心得タル者共十人許同心ニテ、明日ノ夜来リ可会キ由ヲ契テ、散ヌ。 第 用です。 をのこあるじいへかへり ことひそかあるじきか おもひうかがひ 此ノ男ハ主ノ家ニ返テ、「何カデ此ノ事ヲ蜜ニ主ニ聞セム」ト思テ伺ケル程ニ三武門の家。武家の家柄。 被 ニ四押込強盗の心得のある者ども。 あるじえんほとりいで をのこっちついゐ まへひとな ほど 一宝「縁」の当字。縁側。 人一一、主延ノ辺ニ出タリケレバ、男土ニ突居テ、前ニ人モ無キ程一一、「捌ハム」 ニ六 ニ•P おもひけしき あるじわをのこ なにごとい おも いとまえ もとのくにくが、 強ト思タル気色ナレバ、主、「和男ハ、『何事云ハム』ト思フゾ。暇得テ本国ニ下 = 六↓注九。 おも とひ さむらは しのびまうすべ ことさむらなり 免ラムト思フカ」ト問ケレバ、男、「然ニハ不候ズ。忍テ可申キ事ノ候フ也」ト毛摂津国をさす。 放 夭↓六三ハー注一四。 あるじなに′一と あやしおもひ かたよ はなちき をのこ ニ九「ハュ」の漢字表記を期した欠 云ケレバ、主、「何事ナラム」ト怪ビ思テ、隠レノ方ニ呼ビ放テ聞ケバ、男、 とが 字。「カハハュク」は、気が咎めて まう かはニ九さむらこと きかたてまっ おも 「申スニ付テ極ジク皮ロク候フ事ナレドモ、『聞セ不奉ラデハ何カデカ』ト、思恥すかしく思う意。 ニ四 一九 こと つきい み かへり をのこさ かく かし - ) やっ ほど

8. 完訳日本の古典 第32巻 今昔物語集(三)

もとちかたち は著 ) ま めすびとこ 四令外の官で、中古、京中の司 ノ、蔵ノ戸ノ許ニ近ク立タルヲ、蔵ノ戸ノ迫ョリ、盗人此ノ放免ヲ招キ寄ス。 法・警察・治安を一手につかさど はうめんよりき めすびと うへはんぐわんまう おり おほむむま 放免寄テ聞クニ、盗人ノ云ク、「上ノ判官ニ申セ、『御馬ョリ下テ、此ノ戸ノった職。 五検非違使庁の第三等官で、六 九 もとたちよらたま おほむみみさしあてしのびまうすべことはべ はうめんうへはんぐわんもと + 許ニ立寄セ給へ。御耳ニ差宛テ忍テ可申キ事侍リ』」ト。放免上ノ判官ノ許一一位の蔵人に任ぜられ、昇殿を許さ じよう れた者。蔵人の尉。 第 き一しより きき めすびとかく つぐ うへはんぐわんこ 六上の判官の姓名の明記を期し 巻差寄テ、「盗人此ナム申ス」ト告レバ、上ノ判官此レヲ聞テ、戸ノ許ニ寄ラム た欠字。 集 す ことけむびゐしども ことなり とど いとびんな うへ 語ト為ルヲ、異検非違使共、「此レ糸便無キ事也」ト云テ、止ム。然レドモ上ノ緑 ( 藍色 ) ので、六位の着用。 束帯 ( 宮中の正装 ) の際の上着。 昔 こと はんぐわんこ ゃうあ おり くら - もレ . 一より おもひむま 今 ^ 弓矢の称。「調度」が武具に用 判官、「此レハ様有ル事ナラム」ト思テ、馬ョリ下テ蔵ノ許ニ寄ヌ。 いられた場合で、ここでは、弓と とき そ めすびとくらと あけ こちい うへはんぐわん四 たま ゃなぐい 其ノ時ニ、盗人蔵ノ戸ヲ開テ、上ノ判官ヲ、「此入ラセ給へ」ト云へバ、上胡矢入れ ) 。 九出獄後、検非違使庁の下人と うち うちギ ) しさしこめ はんぐわんと めすびとと けむびゐしどもこ いとあさ ノ判官一尸ノ内ニ入ヌ。盗人一尸ヲ内差ニ差籠ツ。検非違使共此レヲ見テ、「糸奇して召し使われた者。手先として 犯人の逮捕や護送などの下働きを まし・一となり くらうちぬすびとこめ かくみとら うへはんぐわんめすびとよばれ 異キ事也。蔵ノ内ニ盗人ヲ籠ツ。衛テ捕へムト為ルニ、上ノ判官盗人ニ被呼テ、する。 くらうちい りうちギ」しさしこも めすびとかたらたま , 】となり すきま 一隙間。 蔵ノ内ニ入テ内差ニ差籠リテ、盗人ト語ヒ給フ。此レ世ニ無キ事也」ト云テ、 ニ不都合だ。けしからぬことだ。 そしはらだちあひ ことかぎりな 三何か訳があるのだろう。 謗リ腹立合タル事無限シ。 四 : ・に対して、・ : に向っての意。 しかあひだしばしばかりあり くらとあき うへはんぐわんくら むまのり むまながらゐし 而ル間、暫許有テ蔵ノ戸開ヌ。上ノ判官蔵ョリ出テ、馬ニ乗テ、馬乍違使この意の「ヲ」は、本集では「ト云 フ」、またはそれと同意語で受け ところうちより どもあ ゃうあ ことなり そう ついぶおこなはるべから 共ノ有ル所ニ打寄テ、「此レハ様有ル事也ケリ。暫ク此ノ追捕不可被行ズ。可るのが普通。↓一八 9 ー注九。 五内側から鍵を掛けて閉じこめ うちまゐりそあひだけむびゐしどもうちめぐりたてほど し・は . しばかり すべことあり さす た。「差」は「鎖す・閉す」。 奏キ事有ート云テ、内へ参ヌ。其ノ間、検非違使共ハ打廻テ立ル程ニ、暫許 くらと まう くらと す よ な はうめんまねよ み もとよ と うへ

9. 完訳日本の古典 第32巻 今昔物語集(三)

すももさかな またおほむつきしきりまゐら マ、ニ呑テケリ。李ヲ肴ニシテ呑ニ、亦御坏ヲ頻ニ参セケレバ、皆四五度、一九院や天皇など、尊い筋からの ごろくど のみのち かみすだれごしゐ ものをし そこたち 五六度ヅ、呑テ後ニ、守簾超ニ居ザリ出テ云ク、「心力ラ物ヲ惜ムデ、其達一一 = 0 残らずそちらへ回して。 一セ ニ一食い扶持。飯米。 せめられまう はぢみむ おもふべ こぞかんばっ っゅはたり 此ク被責申シテ、恥ヲ見トハ何デカ可思キ。彼ノ国ニ、去年旱颶シテ、露徴 = = 召使の少女。 一九 ニ 0 ニ三追いつめられた末の非常手段 ものな たまたっゅばかりえ もの まやむごとな くじせめられ あるかぎ 得ル物無シ。適マ露許得タリシ物ハ、先ヅ止事無キ公事ニ被責シカバ、有限で、自害や逃散など。「可然キ事 ト」とあれば、これも前世の報い ゅめゅめのこるものな いへかしぎのれうたえは・ヘりめわらはべ のいたすところ、の意。 リ成シ畢テ、努々残物無ケレバ、家ノ炊料モ絶テ侍。女ノ童部ナドモ餓居テ ニ四 一西ささやかな食事。粗飯。「鐺 はペあひだかかあひだはぢみはべ ことおもひ そこたちおほむれうはか イル間ニ、此ル間恥ヲ見侍レバ、可然キ事思テナム侍ル。先ヅ其達ノ御料ニ墓飯」に当てたものか。 ニ五 一宝前世の報い。↓九二ハー注四。 たうばん えまゐら お はかたま ぜんしゃうしくほうったな としごろっかさたま 無キ当飯ヲダニ否不参セヌニテ押シ量リ給へ。前生ノ宿報弊クテ、年来官ヲ不 = 六 ( 実入りのない ) 疲弊した国の ニ六 守に任命されまして。 たまたばうこくまかりなりかたへがためみはべ ひとうらみまうすべこと あら 給ラデ、適マ亡国ニ罷成テ、此ク難堪キ目ヲ見侍ルモ、人ヲ可恨申キ事ニモ非毛兼時・敦行が「候」を使ってい 五 るのに対し、前文で身分が上の守 第 みづからはぢみるべむくいなり なこといみ 語ズ。此レ、自ノ恥ヲ可見キ報也」ト云テ、哭ク事極ジ。 が、より敬意をこめた「侍」を用い ニ七 ている低姿勢ぶりに注意。 こゑをし いひゐ かねときあっゆき おほせらることきはめ だうりさぶらふ ニ ^ 衛府の陣。「陣」は官人の詰所。 府音モ不惜マズ云居タレバ、兼時敦行ガ云ク、「被仰ル事極タル道理ニ候ゾ。 ニ九ここは近衛府勤務の官人たち。 / みなおしはかおもひたま ことなりしか おのれらひとり あら このごろふ っゅものさぶらは 付皆押量リ思給フル事也。然レドモ己等一人ガ事ニモ非ズ。近来府ニ露物不候三 0 不本意に思います。役目柄や ニ ^ ニ九 むなく出向いていることを強調し 為ちんのかくごんものどもわびまう よりかおこさぶら さぶら みなたがひ いとほし 守デ、陣恪勤ノ者共侘申スニ依テ此ク発リ候へバ、此レ皆互ニテ候へバ、糸惜クたもの。 三一国守の座の近くに座っていた 越一おもたてまつなが かまゐりさぶら きはめふびんおも ほど かねときあっ 思ヒ奉リ乍ラ、此ク参テ候フモ、極テ不便ニ思フ」ナド云フ程ニ、此ノ兼時敦ので、聞くと。 三ニ盛んにごろごろ鳴り響くのを。 4 ゆきちかゐ はらな こといとしきりなり三ニ ののし しやくもっふむだ 行近ク居タレバ、腹ノ鳴ル事糸頻也。サフメキ隍ルヲ、暫シハ笏ヲ以テ札ヲ三三「机」の誤写であろう。 な は か なはて のみ いか のむ さるべ 三 0 こと はべ ま みなしごど うゑゐ 三三 課税。

10. 完訳日本の古典 第32巻 今昔物語集(三)

37 越前守為盛付六衛府官人語第五 ( 現代語訳三〇九ハ -) めしたちかならことあり も一四よ てらたまかみ おのれらてんちにちぐゑっ . 一 . 五 此ノ主達ハ必ズ事有ナム者ノ。吉シ見ョ、己等。天地日月カニ照シ給フ神一三「事」は、処分の事、応分の処 みよ このかたかか 、 ) とな - ) くしみ あへしる いみじなり なか ノ御代ョリ以来、此ル事無シ。国史ヲ見ルニ敢テ不記サズ。極ク成ヌル世ノ中一四「もノヲ」の意とみる。 あふゐ 一五このままでは意不通。伝写間 カナ」ト仰ギ居タリケリ。 の空格の消滅を想定。漢字表記を 一七 一九 となり 期した欠字で、「サヤ」が擬せられ ごせちどころひとどものぞき をかし おもひ のちくわんばくどのくらうどどころ 隣ナル五節所ノ人共ノ臨テ、「可咲」ト思ケルマ、ニ、後ニ関白殿ノ蔵人所るか 一六日本国の史書。官撰の正史。 まゐりかたり ききつぎ とのばらみやばらきこはて わらはれ 第 ) とか一りな そころほひひと ニ参テ語ケルヲ聞継テ、殿原宮原ニ聞ヱ畢テ、被咲ケル事無限シ。其ノ比ハ人宅尾張守たちの受領の五節所に ふたりみたりゐ 隣接して設けられた公卿側の五節 こと かたりわら かたったへ 所。 二三人モ居タル所ニハ、此ノ事ヲナム語テ咲ヒケル、トナム語リ伝タルトャ。 一 ^ 頼通をさすか。↓一五八ハー 注九。 一九ここでは、関白家の事務を管 理する所。 ゑっぜんのかみためもりにつくろくゑふのくわんにんのことだいご 越前守為盛付六衛府官人語第五 ふじわらのためもりたいろうまい 本話の典拠は未詳。六衛府の官人・下人連合が越前守藤原為盛の大粮米不進を怒って為盛邸 に押し掛け、強訴すわり込み戦術に出た時、老巧な為盛が強訴団のリーダー格を交替に招き入 れては下剤入りの酒肴をもてなし、ひどい下痢症状を起させて大混乱の中に総員を撃退した話。 よせて さかな 寄手を酷暑にさらし、喉のかわき極限状態に追い込んだ末、やっと開門して塩辛物を肴に下剤 入りの濁酒をがぶ飲みさせるという戦略は孫呉の兵法も顔負けの妙案であり、さらにころあい を見計って声涙ともに下る釈明の辞を述べる芝居気に至っては、まさに「極タル細工ノ風流有 物ノ、物云ヒニテ人咲ハスル馴者ナル翁」ならではの妙芸である。いささか品位に欠ける恨み ところ 罰の意。