そのをむなのば もとまとひあ のば 来テ、其女ノ登レル桑ノ木ノ本ヲ纏テ有リ。路ヲ行ク人此レヲ見テ、登レル木とする。 六あるいは「ナ」で「女」の捨て仮 をむな六これききおどろきみおろ まことおほ へみき よしつ へみまと 蛇ノ纏ヘル由ヲ告グ。女ヲ此ヲ聞テ驚テ見下シタレバ、実ニ大キナル蛇木ノ本名か。 セ「踊リ下ル、ニ」の意。 まと ^ から、たじゅ , つがかっとほてつ ヲ纏ヘリ たようになって、前後不覚に悩乱 をむな そのときをむなお をどお へみをむなまとひっきすなはとっ した意であろう。 其時ニ女恐ヂ迷テ、木ョリ踊リ下ル、、蛇女ニ纏付テ即チ婚グ。然レバ、女 九ここでは戸板のようなもの。 こがれまどひしに もとふ かなし たちまちくす 焦迷テ死タルガ如クシテ、木ノ本ニ臥ス。父母此ヲ見テ泣キ悲ムデ、忽ニ医一 0 稲塚の意で、刈り取った稲を 積み上げたもの。ここでは脱穀後 そ こひ 、、れとは くにや。む′一とな くすしあ これよび 師ヲ請テ、此ヲ問ムトスルニ、其ノ国ニ止事無キ医師有リ、此ヲ呼テ、此事ヲの藁を積み上げたもの。 = 「三尺」は藁一束の直径または をむなへみ おなとこの そのあひだへみをむなとつぎはな ( れ ) ずくすし 問フ。其間、蛇女ト婚テ不離レ。医師ノ云ク、「先ヅ女ト蛇トヲ同ジ床ニ乗セ円周か。 三藁灰を湯にまぜて。 にはおくべ しか いへゐてゆ すみやかいへゐてかへり 一三刻んで粉末にして。 テ、速ニ家ニ将返テハ、庭ニ可置シ」ト。然レバ、家ニ将行キテ庭ニ置ツ。 一四このままでは文意不通。霊異 さーむぞく いなづかわらさむぞくや さむじゃくい っそくな そののちくすし したがひ 其後、医師ノ云フニ随テ、稷ノ藁三束ヲ焼ク。三尺ヲ一束ニ成シテ三束トス。記には、女の頭と足の位置に杭を 打ち、二本の杭の間に女を横に掛 ゐのししけじふば あは しるさむどとり これせん 第湯ニ合セテ汁三斗ヲ取テ、此ヲ煎ジテ、二斗ニ成シテ、猪ノ毛十把ヲ尅シ末シけ渡してつるした、とある。 五ロ 1 = 一口 一五陰門。女陰。 そのしるつびくち そのしるあは をむなかしらあ 一六固まって。凝結して。 テ、其汁一一合セテ、女ノ頭ニ宛テ、、足ヲ釣リテ、其汁ヲ開ノロニ入ル。一 一六一七 医 宅おたまじゃくし。 うちころ かへるこ はひゅ すて そのときへみここり すなははな 蛇斗ヲ入ルニ即チ離レヌ。這テ行クヲ打殺シテ棄ツ。其時ニ蛇ノ子凝テ蝦蟆ノ子一〈霊異記「ロ入 = 二斗「蛇子皆 嫁 出」。本話では残りの一斗の藁汁 ′ ) しトでつばかりい へみこみないではて ′一とく そのゐのししけへみこ っぴ ノ如ニシテ、其猪ノ毛蛇ノ子ニ立テ、開ョリ五升許出ヅ。蛇ノ子皆出畢ヌレの使用についてしるすところがな いが、霊異記によって用途が知ら わこころさらもの ぶもなくなくこのことどもと をむないは をむなさめおどろきもの 、女悟驚テ物ヲ云フ。父母泣々此事共ヲ問フニ、女ノ云ク、「我ガ心更ニ物れる。 と ゅ と し いる 0 まどひ ) と くはき たち あしつ ぶもこれみ みちゅひとこ な ま な み にはおき し こくまっ もと
一はひおほと そのをのこそのはひなかうづみおきしばらみ 一意識的欠字とみられる。灰の 難知シ。然ラバロ灰ヲ多ク取リ集メテ、其男ヲ其灰ノ中ニ埋テ置テ暫ク見ョ」 種類の明記を期したものか たきぐちかへり ただあきをし はひおほあつめそのなかをのこうづ ニ文意がやや落ち着かず、疑問 ト教へケレバ、滝ロ返テ、忠明ノ教へニ随テ、灰ヲ多ク集テ、其中ニ男ヲ埋ミ あまた が残る。あるいは原資 - ・数ロシテ」 四 はひう′」き かきあけみ ひとふたときばかりへ ゃうなり + 置テ、一二時計ヲ経テ見ルニ、灰動ケレバ、掻開テ見ルニ、此男例ノ様ニ成の空格が消滅したものか。「数」が 「欸」の誤写とすれば、「あくびシ みづのま のちひとごこち なりはて テ」で、文意の通りはよい 巻テ数シテ有ケルニ、水飲セナドシテ後、人心地ニ成畢ニケレバ、「此ハ何ナリ みぶ 三美福門 ( 壬生 ) 大路を南下して。 集 こと とひ をのこいは きのふはっしゃうらう おほせうけたまは いそび 語ツル事ゾ」ト問ケレバ、男ノ云ク、「昨日、八省ノ廊ニテ仰ヲ承リテ、急ギ美四神泉苑の略。平安京造営時以 五 四 来の皇室の庭園。しばしば祈雨修 昔 ふくくだ はしさむらひ しんせんにしおもて にはからいでん ゅふだちつかまっ ほど 今福下リニ走リ候シニ、神泉ノ西面ニテ、俄ニ雷電シテ、タ立ノ仕リシ程ニ、神法が行われ、竜蛇の出現・昇天の 霊異が多く伝えられる。 せんうち やみなり にしギ、まくら みやり そのくら 五雷がとどろき、稲妻がひらめ 泉ノ内ノ、暗ニ成テ西様ニ暗ガリ罷リシニ、見遣タリシニ、其暗ガリタル中ニ こむじき きらみ きみさむらひ しはうくれふさ ものおばえず 六西方に向けて暗くなっていき 金色ナル手ノ鋼ト見へシヲ急ト見テ候ショリ、四方ニ暗塞ガリテ、物モ不思シ ましたので。 あらぎ みちふすべ ねむ このとのまゐつき 七「急」の字音を借りて「きと」に テ侍シヲ、然リトテ路ニ可臥キ事ニモ非リシガ、念ジテ此殿ニ参リ着シマデハ 当てたもの。ふっと。ちらっと。 ほのかおばはべ そののちことさらおばはべらず ^ あたり一面が真っ暗になって。 髴ニ思へ侍リ。其後ノ事ハ更ニ思へ不侍」ト。 この前後の記事、弱い感電現象ま またただあきもとゆき たきぐちこれきき あやし・おもひ はひ たは一種のショック現象と解され 滝ロ此ヲ聞テ、怪ミ思テ、亦忠明ノ許ニ行テ、「彼ノ男、仰セノマ、ニ灰ニ る。 まう うづみ . しばらあり こころなほり しかしか ただあき 「非リシカバ」の意か。「非ザ 埋タリシカバ、暫ク有テ、人ノ心ニ直テ、然々ナム申ス」ト云ケレバ、忠明九 丿シガ」なら、「ガ」は接続助詞と りうてい あぎけりわらひ み そのぢ 、一と - な 嘲咲テ、「然レバコソ。人ノ竜ノ体ヲ見テ病付ヌルニハ、 其治ョリ外ノ事無なる。 一 0 あたりはばからず心から笑う たきぐちかへりのち ぢんまゐり ほかたきぐちどもこのことかたり たき シ」ト云ケレバ、滝ロ返テ後ニ、陣ニ参テ、他ノ滝ロ共ニ此事ヲ語ケレバ、滝意。いわゆる嘲笑の意ではない。 しりがた おき をし はべり あり て ひと ひと あっ こと まか したがひ やみつき をのこおほ このをのこれい しカ しん
そのときそのくにつかさあ わかさくらべ一 つかさ あひだこのだい 其時ニ其国ノ司有リケリ。若桜部ノ冂凵ト云フ。国ノ司トシテ有ル間、此大一国司若桜部某の名の明記を期 した欠字。該当者未詳。若桜部は きめうるは めでたきみ そきぬとりだいりゃういは なむぢきるもの 領ガ着タル衣ノ直シク微妙ヲ見テ、其ノ衣ヲ取テ大領ニ云ク、「此レ汝ガ着物稚桜部とも。上代氏族の一。 ニふさわしくない かへあた ( へ ) ずだいりゃういへかへり めとひ なにゆゑなむぢ 十・あたはず 二ニ不能」ト云テ、返シ不与へ。大領家ニ返タルニ、妻問テ云ク、「何ノ故ニ汝三下に「来レル」などの語気が省 第 略されたものか。あるいは「ソ」の くにのつかさしかしかいひと きめな だいりゃうこたへいは なりめまたとひていは 巻 ガ衣ハ無キゾ」ト。大領答テ云ク、「国司ノ然々云テ取レル也」。妻亦問云ク、誤写で、原何ナル女ゾとも。 集 こころをし なむ おも だいりゃういは はなはを きめ めこれきき 語 物「汝ヂ、彼ノ衣ヲバ心ニ惜トャ思フ」。大領ガ云ク、「甚ダ惜シ」ト。妻此ヲ聞 昔 すなはちくにのつかさもとゆき そきぬたま くにのつかさいは はちく くれ 今 テ、即国司ノ許ニ行テ、「其ノ衣給へ」ト乞フニ、国司ノ云ク、「此レ何ナル四淡竹の一種。呉の国よりの伝 来としたことからの称。丈二前 をむな三すみやかにお ひときたりをむなとりひ ちりばかりうごかずそ 女ノ。速追ヒ出ョ」ト。レパ人来テ女ヲ取テ引クニ、塵許モ不動。其ノ後になる観賞竹。 五恨み。「ノ」は「ヲ」に通ずる ゐていで ときをむなふたつおよびもっ くにのつかさとりゆかすながこくふかどと 六四ハー注九。 時ニ女、二ノ指ヲ以テ、国司ヲ取テ床ニ居へ乍ラ国府ノ門ノ外ニ将出テ、衣ヲ「ノ」。↓ 六処刑する、仕返しをするの意。 くにのつかさおそれきぬかへあたへをむなきぬとりすすぎきよおき セ会話文「 : ・事ヲ行レム」を受け 乞フ。国司恐テ衣ヲ返シ与ツ。女衣ヲ取テ濯浄メ置ツ。 四 る「ト」で、次行の「此ノ妻ヲ送テ くれたけとりくだことねりいとと こをむなちからつよことひと しかあひだだい 此ノ女力強キ事人ニ不似。呉竹ヲ取砕ク事練糸ヲ取ルガ如シ。而ル間、大ョト」の「ト」と同じく、「ト云フ」 の意。「 : ・ ・ : ト」と会話文を並 りゃうぶもこれみ だいりゃういは このめよりくにのつかさあたおも 、一とおこなは 列的に重ねる語法は本集に頻出 領ガ父母此ヲ見テ、大領ニ云ク、「此妻ニ依テ国司怨ノ思ヒ、事ヲ行レムート、 ( ↓七一ハー注一一七 ) 。 め おそあるべ われら ためよからぎるなりさ だいりゃう おほ 「大キニ恐レ可有シ。我等ガ為ニモ不吉也。然レバ此ノ妻ヲ送テョ」ト。大領 をし ぶも したがひめ 〈片輪郷をさす。↓七三ハー注一六。 父母ノ教へニ随テ、妻ヲ送リツ。 九 九未詳。 あきひとふねくさ つみ めもとさとくさつがはいふかはのつ そのふねに 妻本ノ郷ノ草津川ト云川津ニ行テ衣ヲ洗フ時ニ、商人船ニ草ヲ積テ、其船一 0 船着き場。 りゃうき おく し ゆききめあらとき おくり 六 あ しカ きめ
ものはさま のぞき にようばううすきわたきめひとばかりき 不審サニ物ノ迫ョリ睨ケレバ、九月許ノ事ナレバ、女房ハ薄綿ノ衣一ッ許ヲ着、相撲の名を取った伴氏長 ( 三代実 録 ) と同人か。二中歴一能歴、相 くちおほひ いまかたて をのこかたなぬきさしあっかひなやはとらへ ゃう 片手シテハロ覆ヲシテ、今片手シテハ男ノ刀ヲ抜テ差宛ル肱ヲ和ラ捕タル様一一撲の項の筆頭に「薩摩氏長」とみえ るはか、新猿楽記・太平記八など とり をのこおほき かたなおそろげ さかて はらかたさしあて あしもっ にもみえてなかば伝説的人物化し テ居タリ。男大ナル刀ノ布シ気ナルヲ逆手ニ取テ、腹ノ方ニ差宛テ、足ヲ以テ ていた強力無双の相撲。 うしろ いだきゐ このひめぎみみぎて をのこかたなめきさしあて てやは 後ョリアグマへテ抱テ居タリ。此姫君右ノ手シテ、男ノ刀抜テ差宛タル手ヲ和 = 不思議に思って。 一九 三隙間。 とらへ ひだりて かほ一 ^ ふさぎ なくな もっ まへやのしの ラ捕タル様ニシテ、左ノ手ニテ顔ノ塞タルヲ、泣々ク其ノ手ヲ以テ、前ニ箭篠一三袖などでロを覆って恥じらっ ているさま。 あらづくり にさむじふばかりうちちら いたじき ふしほどおよびもっ ノ荒造タルガ二三十許打散サレタルヲ、手マサグリニ節ノ程ヲ指ヲ以テ板敷一四肩から下の二の腕。 一五腰刀の寸延びのもの。↓注七。 くちき おしにじり やはらか おしくだかやう あさまし くだくだな ニ押蹉ケレバ、朽木ナドノ和ナランヲ押砕ン様ニ砕々ト成ルヲ、「奇異」ト見一六刀身を内側に向け、刀の柄を 逆に持っこと。 これしちとり をのこめ つけみ 宅あぐらをかく、の意。 四ル程ニ、此ヲ質ニ取タル男モ目ヲ付ニ見ル。 天「ヲ」に通する「ノ」。 のぞをとこ おも これみ やがら 一九矢柄を作るための篠竹。 第此ノ睨ク男モ、此ヲ見テ思ハク、「兄ノ主、ウべ騒ギ不給ハ也ケリ。極力ラ 語 ニ 0 粗製のもの。 ・刀あにぬしかなづちもつうちくだ たけ いか・はかり ム兄ノ主、鉄鎚ヲ以テ打砕カバコソ此ノ竹ハ此クハ成ラメ。此ノ姫君ハ何許三手なぐさみにいじること。 一三ぐちゃぐちゃに砕ける。 しちとり 遠 ちから おは をのこニ六 ニ三「目ヲ付テ見ル」と同意。ある 光ナルカニテ、此クハ御スルニカ有ラン。此ノ質ニ取タル男ハヒシガレナムズ」 いは「ニ」は「テ」の誤写とも。 しち・とり をのここれみ 大み ほど やくな たと かたなもっ おば ニ四なるほどお騒ぎにならないは 人ト見ル程ニ、此ノ質ニ取タル男モ此ヲ見テ、益無ク思へテ、「譬ヒ刀ヲ以テ突 ニ七、す - おに 相 つかれ にようばうちから か・はかり トモョモ不被突ジ。肱取リヒシガレヌベキ女房ノカニコソ有ケレ。此許ニテ支ニ五大力の聞え高い兄君が ニ六押しつぶされてしまうだろう。 よしなし 9 たい くだかれ おもひ ひとめ はかりすてはしりいで 体モ被砕ヌべカメリ。由無。逃ナム」ト思テ、人目ヲ量テ、棄テ走出テ、飛プ毛手足と胴体。 かたて いぶかし ほど ゃう か かひなと ニ三 あ ながっきばかりこと て めしニ四さわたま ( は ) ぬなり カ よ そ あり て ひめぎみ いみじ と み
おふものはし はかかたはらざまいそぎより おば ト思へテ、俄ニ傍様ニ急テ寄タレバ、追者走リ早マリテ、否止マリ不敢ズシテ相手を制止するのは盗賊の常套的 奸策。↓巻二九第二一話。 うちわり すぐたて かしらなから わまへ 一五さてこそ思ったとおりだ。 我ガ前ニ出来タルヲ、過シ立テ、太刀ヲ抜テ打ケレバ、頭ヲ中ョリ打破ツレバ、 一六「サスガ」の漢字表記を期した うつふたふ 欠字。 ( 案の定だと思ったが ) 今さ 低シニ倒レヌ。 ら返ることもできないから。 うち よ おもほど あ 「吉ク打ツ」ト思フ程ニ、亦、「彼レハ何カニシッル事ゾ」ト云テ、走リ懸テ宅そのまま通り抜けられようか、 そうはさせじの意。 えさしあへ わきばさみにぐ きたるものあ ーレか 来者有リ。然レバ太刀ヲモ否指不敢ズ、脇挟テ逃ルヲ、「ケャケキ奴カナ」ト天うずくまって。 一九弓影。弓の形。↓前ハー注一三。 これ はじ はしりと おば はしかかりきたもの ニ 0 背をかがめて。 云テ、走リ懸テ来ル者ノ、初メテノ者ョリハ走ノ疾ク思へケレバ、「此ヲバョ ニ四 ニ一 ( 一瞬 ) 頭を打ち割られたかに はしはや あり ゃう せられ おもひ にはかいかついゐ モ有ツル様ニハ不被為ジ」ト思テ、俄ニ忿リ突居タレバ、走リ早マリタル者、感じて。 一三走る勢いにのり過ぎて。 たがへたちあがり おこたてずかしらうちわり くゑつまづきたふれ ニ三きわだっさま。ここでは腕が 我レニ蹴躓テ倒タルヲ、違テ立上テ、起シ不立、頭ヲ打破テケリ 五 立っさま。腕達者な奴よ。 十 いまか おもふほど いまひとりあり 第「今ハ此クナメリ」ト思程ニ、今一人有ケレバ、「ケャケキ奴カナ。然テハ否 = 四角立つ、突き出る意。急にか 語 らだを突き出すように身構えてか たびわれあやまたれ かかりニ六きたり 人まから 殺不罷ジ」ト云テ、走リ懸テロク来ケレバ、「此ノ度我ハ被錯ナムト為ル。仏神がみ込んだので、の意。 一宝「ナンメリ」の撥音の無表記。 もの ーしかたちむか ほこやうとりな はしはや 光たすたま もうこれですんだようだ、の意。 則助ケ給へ」ト、太刀ヲ鉾ノ様ニ取成シテ、走リ早マリタル者ニ俄ニ立向ヒケレ ニ六「シウネ ( ク ) 」の漢字表記を期 一口 あまちか はしあた か はらあは 腹ヲ合セテ走リ当リヌ。彼レモ太刀ヲ持テ切ラントシケレドモ、余リ近クした欠字。しつこく。 ニ九 毛「為ル」は連体形止めで、言外 ほこやうもち うけられなから きられ 陸きめ テ衣ダニ不被切デ、鉾ノ様ニ持タル太刀ナレバ、被受テ中ョリ通ニケルヲ、大に感動の意をこめる。 夭太刀を前に突き出した構え。 カ たち のけざまたふれ 刀ノ櫤ヲ返シケレバ、仰様ニ倒ニケルヲ、太刀ヲ引抜テ切ケレバ、彼レガ太刀 = 九突き通された意。 わ つかかへ いでき たち たち また たちめきうち たち たち もの もちき たちひきめききり はや こと えとど やっ とほり 0 す ニセ やっ カカめ・ もの ぶつじん え た
をとことしごろすみ きゃう あひださぶらひなり 其人、其ノ国ニ下テ有ケル間ニ、侍也ケル男、年来棲ケル妻ヲ京ョリ具シ をむなかたら ほど そをむなこころ かみとも くにくだりあり テ、守ノ共ニ国ニ下テ有ケルガ、其国ニ有ケル女ヲ語ヒケル程ニ、其ノ女ニ心 四 もとめ わすれ うつはて + 移リ畢ニケレバ、ヤガテ其レヲ妻ニシテ、此ノ本ノ妻ヲバ忘ニケリ。 四 第 ゃう もと′ ) と をうといひ たびそら かたおば 四「空」は境遇、身空の意。異郷 六 にある身として。 集 いひつけ われきゃうおく さらおも ( は ) ずただおのづかひときゃうのば 0 本 , 妻〔旅 , 空 = 一一可為、方、思〈ザ。」〈、夫 = 云ケ ~ 様、「本 , 如ク このままなら「棲ヌペシ」の強 語ニ我レト棲ヌトハ更ニ不思ハ。只自然ラ人ノ京ニ上ラムニ云付テ、我ヲ京へ送 = 調表現。「ヌ」が「ネ」の誤写なら、 昔 - もと をむなっかはせうそく をうとさらみみ ききいれず はて 今レ」ト。夫更ニ耳ニモ不聞入シテ、畢ニハ女ノ遣ス消息ヲダニ不見リケリ本一緒に暮してくださいの意。 六ついでがあってだれか上京す をとこいまめもとゐ め すべもとめあ ノ妻ヲバ居タリケル屋ニ居へテ、男ハ今ノ妻ノ許ニ居テ、惣テ本ノ妻ノ有リ無るような方があったら、その人に 依頼しての意。 しらギ、 もとめおもひなげきあ ほど おもひかけずやまひづき セ無事かどうか。安否をも意に シヲモ不知リケレバ、本ノ妻思歎テ有ル程ニ、不思懸病付ニケリ。 介しなかったので、の意。 をうとさり ものくふ しらね と、まかうギ、ま ただあり うちたのみはるかき 只有ツルソラ、打憑テ遥ニ来タル夫ハ去テ、物食ラム事モ不知バ、此様彼様〈普通の身であってさえも。達 者でいてさえも。 おもや あは ましおもやまひうけ こころばそおもひ かまへっすぎ 九あれこれやりくり算段してや ニ構ッ過ケルニ、増テ重キ病ヲ受テケレバ、思ヒ遣ル方無ク、哀レニ心細ク思 っと暮してきたのに。 めわらはただひとり やまひずつな きゃう つきき テ臥タルニ、京ョリ付テ来タリケル女ノ童只一人ナム有ケル。此ク病シテ術無一 0 どうしようもない由を。 = しみじみと、心から。かか きき をと、」もと やまひすでかぎり やり ( れ ) ずひごろへ てゆく中心的叙述は「歎テ悲デ」。 キ由ヲ、男ノ許ニ云ヒ遣タリケレドモ、聞モ不入レ。日来ヲ経テ、病既ニ限ニ 三「テ」は「キ」の誤写で、原姿 ことなげきかなしむ なり をむなあは たびそら 成ニケレバ、女哀レニ、知ル人モ無キ旅ノ空ニテ死ナムズル事ヲ歎テ悲デ、物「歎キ」か 一三意識も確かでない状態で。 、一めわらはもつをと ~ 一もとやり おば ( え ) めここち モ不思へ心地ニ、ワナ、ク / 、文ヲ書テ、此ノ女ノ童ヲ以テ男ノ許ニ遣ケルヲ、一四ぶるぶる震えながら。 そのひとそ もとめ ふし くだりあり やす し ひと ふみかき そのくにあり し かたな あり め カ みざ な もの 一筑前国をさす。 言い寄ってねんごろな仲にな るの意。 三そのままべったりと。 っ
さぶらひとおは ↓一一〇ハー注六。 事ノ有ル也、ト申セ」ト候フ人ノ御スル也』トナム申ス」ト。 宅「庇」と同じ。ここでは、母屋 めわらは あ あやしおも くわんれんこれきき に続けた放出の間に設けられた庇 寛蓮此ヲ聞テ、「誰ガ云ハスルニカ有ラム」ト怪ク思へドモ、此ノ女ノ童ノ おしたてもん ひがき ゅ おほぢ ほとり くるまやら っちみかどさへ 一 ^ 軒丈が低い板葺きの平屋。 云フニ随テ、車ヲ遣セテ行ク。土御門ト道祖ノ大路トノ辺ニ、檜墻シテ押立門 一九竹や柴で目を粗く作った垣。 まへはなちいで そこおり ここなり めわらは いへあ ニ一望了しいき、亠工に。 あるべ せんギ、い まへ にはまがきゅひ ナ ~ 家有リ女〉童、「此也」ト云〈バ、其 = 下テ入。見」バ、前 = 放出〉 = 0 庭先 0 植、《。 ひら ひろびさしあ 一三「いさご」の「こ」の清濁末詳。 広庇有ル板屋ノ平ミタルガ、前ノ庭ニ籬結テ、前栽ヲナム可有力シク殖テ、 しばらノ、日葡による。 ゅゑありすみな くわんれんはなちいでのばりみ あやしのこし ニ三風流に。 砂ナド蒔タリ。賤小家ナレドモ故有テ住成シタリ。寛蓮放出ニ上テ見レバ ニ四伊予国 ( 愛媛県 ) から産出した なっきちゃうきょげ すだれかさ あきころほひこと よすだれしろ 簾。古来伊予の物産として著名。 伊与簾白クテ懸タリ。秋ノ比ノ事ナレバ、夏ノ几帳清気ニテ簾ニ重ネテ立タリ。 ニ六 ニ七 一宝拭きこんで艶を出させた碁盤。 そのかたはら ) 」いしけをかしげに ごばんあ すだれもとのごひきらめ ニ六後出の「碁盤」に同じ。 簾ノ許ニ巾カシタル碁杆有リ。碁石ノ笥可咲気テ、秤ノ上ニ置タリ。其傍 毛碁石を入れる容器 ゑんぎひと 夭わら・すげ・藺草などで平た 六ニ円座一ッヲ置タリ。 ニ九 第 く円板渦巻き状に編んだ敷物。 こちょ たま すだれうちゅゑゅゑ くわんれんのきゐ 語 女寛蓮去テ居タレバ、簾ノ内ニ故々シク愛敬付タル女ノ音シテ、「此寄ラセ給 ニ九由ありげで。 うちたま ならびなご をむないは ただいまよ ′一ばんもとよりゐ 値へ」ト云へバ、碁盤ノ許ニ寄テ居ヌ。女ノ云ク、「只今世ニ並無ク碁ヲ擲給フ = 0 「早ウ」は「絶テ然ル遊モ重ク 三 0 蓮 不為ニ」までかかってゆく。 はやちち ぎはめみ ほしおば いかばかりうちたま 三一「繁ク」の意。 擲ト聞ケバ、然テモ何許ニ擲給フニカ有ラムト、極テ見マ欲ク思へテ。早ウ父ニ 碁 三ニ「聞侍ツレバ」の意の条件句。 をしおきうせはべり おもひはべ すこうちなら すこうつ テ侍リシ人ノ、『少シ擲』ト思テ侍リシカバ、『少シ擲習へ』トテ教へ置テ失侍三三会話文を受ける「トを略。下 に「お呼び立ていたしました」など はばかりなが かくとほたまおのづからききはべり のちたえさ あそびしげせぬ テ後、絶テ然ル遊モ重ク不為ニ、此通リ給フト自然聞侍ツレ。憚乍ラ」。咲テの語気を略。 ことあなり ニ四 いン一 はべ したがひ まき ひと い一 おき まう あ なり あいぎゃうづき まう をむなこゑ ばんうへおき み うゑ たて わらひ の間 いたぶ つや
どもこゑたかくあげ およぎきたむねひら そのなみわに くひころされ 一鮫類の古称。わにざめ。海岸 共音ヲ高挙テ、游来ル宗平ニ、「其波ハ鰐ニコソ有ラメ。被瞰殺ナント為ル にいた射手たちには鰐の姿は見え そなみむねひらもときたり いひあつまりののし なみむねひらうちか み ほど ハ」ト云テ、集テ隍ルニ、其ノ浪宗平ガ許ニ来テ、浪宗平ニ打掛クト見ル程ニ、ず、沖に立っ白波の動きからそれ と察したのである。 も いまむねひらくはれ おもふなみもとかたかへ またむねひらもとやうしか 二「今ハ宗平ハ被瞰タラン」ト思ニ、浪本ノ方へ返ル。亦、宗平本ノ様ニ鹿ヲ持ニ「ハ」は間投助詞で、感動の意。 第 三これ以下、波は鰐の襲来を意 さき・ くむがいまいっちゃうばかりなり しばしばかりありまたこのなみむねひらもとぎまきた 巻きた テ来ルニ、陸今一町許ニ成ヌルニ、暫許有テ亦此浪宗平ガ許様へ来ル。前ノ味する。 四陸地 ( 海岸 ) まであと一町ぐら ロごとむねひらうちかくみほどしばしばかりありなみまたかへ いのところに接近した時に 枷如ク宗平ニ打掛ト見ル程ニ、暫許有テ浪亦返ル。 昔 むねひらなほしか もちなぎさいまいちにぢゃうばかりな ほど くむがものどもみ むねひらしか 今 宗平尚鹿ヲ持テ渚今一二丈許ニ成ル程ニ、陸ノ者共見レバ、宗平鹿ノ尻足 五眼光鋭く輝くさまの形容。類 もち またこのなみたちきた 一一しばね しばしばかりあ くむがひとあつまりむねひら 二ツ、腰骨トヲ持タリ。暫許有レバ、亦、此浪立テ来ル。陸ノ人集テ宗平ヲ、似の形容は本集に散見。「見成テ」 は浜辺にいる者たちの目にそのよ ののし むねひらみみ ききいれず た なみすでちかくきた み うに見えた意。 「疾ク上ネ」ト隍ルニ、宗平耳ニモ不聞入シテ立テリ。浪既ニ近来ルヲ見レバ 五 六「あご」の古称であるが、ここ めかなまりゃうみなし つるぎごとなるちかよりきたり むねひら 鰐ノ、目ハ銑ノ様ニ見成テ、大口ヲ開テ、歯ハ釼ノ如ク也、近ク寄来テ、宗平では魚であるから、えらをさす。 六 セ掛声を発して。 くち みるほど むねひらもち しかあしわに わにかしらあぎて ヲ瞰フト見程ニ、宗平持タル鹿ノ足ヲ鰐ノロニ入ル、マ、ニ、鰐ノ頭ノ聘ニ手 ^ 一丈 ( 約三邑はど陸地に投げ 上げられて。 こゑさけびくむがぎまなげあげ き一しいれ うつふなり すまひなぐごと わにいちぢゃう ヲ指入テ、低シニ成テ、相撲ヲ投ル如ク音ヲ叫テ陸様ニ投上タレバ、鰐一丈九擬声語。ばたばたあばれるさ くむがたちみ てどもやいたて ばかりくむがなげあげられ九 許ニ陸ニ被投上テフタメクヲ、陸ニ立テ見ル射手共箭射立ケレバ、鰐鹿ノ足ヲ一 0 文脈からは鰐が主語で、「被 射殺レッ」とありたいところであ い : っ ′、。はた、・か るが、途中で叙述意識の中心が鰐 瞰へ乍ラ、射殺シッ。 から射手に移り、主格が射手に転 そののち てどもあつまり むねひら とひ むねひら 其後、射手共集テ、宗平ニ、「何ニシテ不被瞰ルゾ」ト問ケレバ、宗平ガ云じて「射殺シッ」としるしたもの。 ふた と あがり おほくちあけ くはれぎ あ わにしかあし す しり , あし
みやまうしひとみこなりしんごんみちやむごとな ニ一丹鶴本「此人」。 ノ宮ト申ケル人ノ御子也。真言ノ道ニ止事無力リケル人也。 8 一三宇多天皇の皇子敦実親王。 おはし またにんわじ かてらやぶれ そのひとひろさはすみたまひ 其人ノ広沢ニ住給ケルニ、亦仁和寺ノ別当ニテモ御ケレバ、彼ノ寺ノ壊タル 一京都市右京区御室大内町に所 しゆり あななひゅひひごとたくみどもあまたきたりしゆり ひくれたくみ , 卞 - ところ 二所ニ、修理セントテ、麻柱ヲ結テ日毎ニエ共数来テ修理シケルニ、日暮テ工在。光孝天皇の勅願寺で仁和一一年 第 四 ( 犬六 ) 創建。宇多法皇が住して御 しよき一 ・はかり おもひたまひ 〕どもおのおのかへりのちそうじゃうたくみけふ 共各返テ後、僧正、「エノ今日ノ所作ハ何カ許シタルト見ム」ト思給テ、中室と称された。 六 ニ「所ニ」の「ニ」は「ヲ」とありた たかあしだはき っゑつき ただひとてらもとあゆいで あななひどもゆひ ゅひ 物結ニシテ高足駄ヲ履テ、杖ヲ突テ、只独リ寺ノ許ニ歩ミ出テ、麻柱共結タル中いところ。このままなら、「麻柱 昔 ヲ結テ」にかかる。 たちめぐりみたまひ ほど くろしゃう をのこえばうしひきた ゅふぐれがた 三高所へ登るための足掛り。 ニ立廻テ見給ケルニ程ニ、黒ク装ゾキタル男ノ烏帽子ヲ引垂レテ、夕暮方ナレ 四仕上がり。 いできたりついゐ そうじゃうまへ かたなめきさかさま かほたしかみ ( え ) ず ハ顔ハ褪ニ不見へシテ、僧正ノ前ニ出来テ突居タリ。見レバ、刀ヲ抜テ逆様一一五腰の辺で帯や紐を結ぶこと。 六高下駄。現在の足駄。 そうじゃうこれみ あ なにもの とひたまひ もちひきかく 持テ引隠シタル様ニ持成シテ居タリ。僧正此ヲ見テ、「彼レハ何者ゾート問給セ黒装束をした男。 ^ 元服した男子のかぶり物。貴 をのこかたひざ おのれわびびとさむらさむさたへがたさむら そこのたてまつおほむぞ ケレバ、男片膝ヲ突テ、「己ハ侘人ニ候フ。寒難堪ク候へバ、其奉ル御衣ヲ人は平服に、常民は晴にも平時に も用いた。 おもひたま かか一四おもひ けしき ひとふたおろさむら 一ッ二ッ下シ候ハムト思給フル也」ト云マ、ニ、「飛ビ懸ラン」思タル気色ナ九うずくまる意。 一 0 逆手に持って。 一五そうじゃうこと あら いとやすこと これおそろげ = 生活困窮者。 レバニ、僧正、「事ニモ非ズ、糸安キ事ニコソ有ケレ。而ルニ、此ヲ怖シ気ニ 三「着る」の尊敬語。 をのここころ のたま ただこ おどさず ・カラヌ男ノ心バへカナ」ト宣フマ、ニ、立一三「下ス」はお下がりをいただく 不恐トモ云フトモ只乞へカシ。 意で、頂戴いたしましよう。 をのこくゑられ たちまちみ ( え ) ず めぐりをのこしり 一四下の「ト」を脱した形。 廻テ男ノ尻ヲフタト蹴タリケレバ、男被蹴ケルマ、、忽ニ不見へ。 一五「ニは不審。 やはあゆたまひ ばうちかなり こゑあげ そうじゃうあや おもひたまなが 僧正、「怪シ」ト思給ヒ乍ラ、和ラ歩ミ給ニケリ。房近ク成テ、音ヲ挙テ、 ゃうもてな つき くゑ なり べったう あり と ひとなり み み なか たち ひも
本話は季通の剛勇譚化され、ここに収録される資格を与えられている。 ^ 則光の子。式部大丞、蔵人、 ときまゐりつか そのひとわか 中宮少進、駿河守、内蔵権助など いまはむかしするがのぜんじたちばなのすゑみちいふひとあり 今昔、駿河前司橘季通ト云人有キ。其人若カリケル時、参仕マツル所一一歴任。従五位上。後拾遺以下の作 そのところあり さぶらひども 者。康平三年 ( 一 0 六 0 ) 没。 しのびかよひ ところあり にようばうかたらひ あらやむごとな モ非ヌ止事無キ処ニ有ケル女房ヲ語テ、忍テ通ケルヲ、其所ニ有ケル侍共、九直接経験を回想する助動詞 「キ」を用いているが、典拠の表記 あらもの よひあかっきとののうち とのひと なまなまのろくゐ 生々六位ナドノ有リケルガ、「此ノ殿ノ人ニモ非ヌ者ノ、宵暁ニ殿内ョリ出入を踏襲したもの。同源関係にある こと とみられる宇治拾遺にも「駿河前 すゑみちさ たてこめうた つどひいひあは スル、極テ無愛也。去来此レ立籠テ罸ム」ト集テ云合セケルヲ、季通然ル事ヲ司橘季通といふ者ありき」とする。 一 0 言い寄って契りを結ぶ意。 かち ゆき しのびつばねいり さキ一 ) き ) とこどねりわらはひとりばかりぐ しらず モ不知シテ、前々ノ如ク小舎人童一人許ヲ具シテ、歩ョリ行テ、忍テ局ニ入ニ = 「生々」は未熟なさま。六位に なりたての若僧の意。 わらは あかっきむか きた 一ニ宵に訪れ暁に帰るわけである。 ケリ。童ヲバ、「暁ニ迎へニ来レ」ト云テ、返シ遣リツ。 一三「愛無し」と同意。ふとどきだ。 ほど めしきたりすでつばね うた ものどもうかが しかあひだこ ↓六四ハー注六。 わ然ル間、此ノ罸ムト為ル者共、伺ハムトシケル程ニ、「例ノ主来テ、既ニ局一四 一七 一五間仕切りした部屋で、宮仕え さぶらひども こなたかなたかどどもさ かぎ っげまは 語 逃ニ入ヌルハ」ト告廻シテ、此方彼方ノ門共差シテケリ。鎰ヲバ取置テ、侍共の女房に与えられた個室。 一六「ハ」は間投助詞で、もう局に まも つばねあり あ ついがきくづれ 「みなひきづゑ はいったそ、の意。 皆曳杖シテ、築垣ノ崩ナドノ有ル所ニ立塞ガリテ護リケルヲ、其ノ局ニ有ケル 宅錠をかける意。 あるじにようばうつげ にようばうきおどろきすゑみちっげ 「円めのわらはペこ 天杖を引きすって持っこと。 前女童部、此ノ気色ヲ見テ主ノ女房ニ告ケレバ、女房モ聞キ驚テ季通ニ告ケレバ 一九土塀 によ、つばう あさまし おもひゐ これききおきうちき 駿すゑみちふし ニ 0 主人のもとに参上して。 季通モ臥タリケルガ、此ヲ聞テ起テ打着テ、「奇異」ト思居タリケリ。女房ハ ニ一「尋ネム ( ン ) 」の撥音の無表記 いひながら まゐりたづね さぶらひどもこころあはせす たづ うへまゐ 「上ニ参リテ尋ネ」ト云テ、参テ尋ケレバ、「侍共ノ心合テ為ルトハ云乍、 きはめぶあいなり けしきみ い、こ す ところたちふさ かへや れい そ とりおき ところ いでいり ( 現代語訳二七六ハー )