源氏物語 5 圜明石の君ーー明石の中宮 ( 后 0 宮、中宮、大宮、后 ) 今上帝 ( 上、帝、内裏 ) 三の宮 ( 三条宮、宮 ) 董中納言殿、中納言、中納言の君、客人、君、殿 ) △葵の上 △八の宀呂 ( 宮、故宮、親王 ) 朱雀院 △紫の上 △源 秋好中宀呂 ( 后の宮 ) 冷泉院 ( 院 ) ーーー女一の宮 ( 冷泉院の姫宮 ) △致仕の大臣ー△柏木 ~ 務 ( 左の大殿 氏 衛門督 相中将 六の君 ( 左の大殿の姫君 ) 大君 ( 女女君 姫宮、姉宮 中の君 ( . 匂宀呂 ( 兵部卿宮、宮、男 ) 一の宮 中の宮、宮、君、女君、 昼寝の君、御方、姫宮 弁 ( 古人、老人、弁のおもと ) 阿闍梨 宮の大夫
503 各巻の系図 椎本 △葵の上 明石の君 △源氏 ( 六条院、故院 ) △致仕の大臣 朱雀院 明石の中宮 ( 后 ) 女一の宮 ( 今上の姫宮 ) コ上帝 ( 帝 ) . 匂宀呂 ( 三の宮、兵部卿宮、宮 ) 女三の宮 ( 入道の宮 ) 宰相中将、宰相の君、宰相、中将、 中納言の君、中納言殿、客人、君 △柏・不 ( 大納言 ) 藤大納言 タ霧 ( 右大殿、大臣、大殿 ) △大臣 △北の方 △左中弁 △柏木の乳母 八の宮 ( 宮、聖の宮、親王 ) 大君 ( 姫君、姉君 ) の丑 ( 君、中の宮 ) △北の亠刀 ( 母北の方、母君 ) ム廾 ( 老人、古人 ) 右大弁 侍従宰相 権中将 頭少将 蔵人兵衛佐 六の君 阿闍梨 宿直人
源氏物語 498 △桐壺院 匂宮 各巻の系図 △葵の上 常陸の宮 朱雀院 △紫の上 ( 対の上、紫 ) 女三の宮 ( 黔「 ~ 唄母 ) 明石の君柘の ) 宮の若君、二品の宮の 若君、源中将、薫る中 明石の中宮 ( 后〔后の 宮今后 ) 薫 将、中将、三位宰相、 宰相中将、右の中将 秋好中宮 ( 后の宮 ) 氏 ( 院、光る源氏 ) 朝泉院朝の啼、泉 ) 女宮、冷泉院の一の 宮、姫宮、院の姫宮 弘徽殿女御社大殿の ) 雲居雁 ( 三条殿 ) タ霧 ( 臣、右大臣、大将 右の大臣、大殿、大 ) 藤典侍 ( 典侍 ) △源 花散里 △致仕の大臣 更衣 フ上帝龕帝、 ) 一、本巻所収の登場人物を各巻ごとにまとめた系図である。 一、△は、その巻における故人を示す。 、 ( ) 内は、その巻での呼び名を示す。 / 葉の宮 ( 一条宮 ) 春宮 女一の宮 匂宮 三の宮 兵部卿 兵部卿宮 匂ふ兵部卿 五の宮 衛門督 大弁 君 ( 大姫君 ) 権中納言 六の君 中の君 ( 中姫君 ) 二の宮
源氏物語 500 △桐壺院 竹河 雀院 三の宮鯱 S 宮、入 ) ・中将、薫る、薫る中将、中納言、源中納言 四位侍従、源侍従の君、源侍従、侍従、宰相 ) △源氏 ( 六条院、故院、院、光る源氏、故六条院 ) △紫の上 ( 紫 ) 明石の君 △柏 , 不 ( 故大納言 ) 紅梅大納言 大納言、 大臣、藤 大納言 弘徽殿女御 女一の宮の女御、 女御、院の女御 秋好中宮呂后 ) 冷泉院 ( 院〕冷泉院の帝、 一の宮 明石の中宮 ( 中宮 ) 匂宮 卿宮、宮 匂ふ、兵部 ) フ帝 ( 内裏 ) 春宮
源氏物語 502 △大臣ー△女御 橋姫 △桐壺院 ( 父帝 △弘徽殿大后 ( 朱雀院の大后 ) 雀院「 △源氏 ( 源氏の大殿、故六条院 ) △柏 , 不 ( 右衛門督、権大納言、故権大納言の君 ) 藤大納言 弘徽殿女御 ( 冷泉院の女御 ) 女一の宮 冷泉院 ( 帝、院、院の帝 ) 今上帝ーー匂宮 ( 三の宮、宮 ) 女三の宮 ( 入道の宮、宮 ) 董賀宰相中将、中将の君、君、中将 ) △大臣 △北の方 △左中弁 ム廾 ( 老人、古人、弁の君 ) △柏木の乳母 イ , 挈母 八の宀呂 ( 古宮、宮、宇治の宮、俗聖、親王 ) 大君 ( 姫君 ) の君 ( 若君 ) △北の亠月 ( 故君、昔の人 ) 阿闍梨 左近将監 宿直人 △小侍従 ( 侍従 )
451 総角 こうして中納言がしばらく住みなれていらっしやっ ばしたので、兵部卿宮は、中の宮を女一の宮の御方にお仕 えするという体裁にしてこちらへ引き取ろうとのおつもり て、人の出入りも多かったのに、これからはその名残もな になられたのだろうかと、お疑いになりながらも、そうな く寂しくなってしまうのだろうと心細がる女房たちは、ご れば気づかいなくいつでも逢うことができそうなのはうれ 不幸の当座の悲しかった騒ぎ以上に、今はひっそりとして 堪えがたい寂しさをかみしめている。「あの折この時、何しくて、その旨山里へお知らせになったのであった。そう ふぜい いうことになるらしいと中納言もお聞きになって、「三条 かにつけて、姫宮たちと風情ある有様で消息をお交し申さ れたあのころの年月よりも、こうしてゆっくりとお暮しに宮を完成させてから姫宮をお迎え申そうと思っていたのだ なった近ごろのお姿や御物腰がおやさしくご親切で、慰み から、この妹君をその代りのお方と思ってお世話すればよ かったものを」などと、またしても亡きお方のことをお思 事につけ暮し向きのことにつけ、思いやりの深くていらっ しやった中納言のお人柄を、もうこれきり拝見できなくな い返しになっては寂しいお気持である。宮が気をまわして いらっしやるようだった筋は、まったくとんでもないこと ってしまうとは」と、一同涙にむせんでいる。 と、まるでその気はなく、ただおおかたの御後見は、この あの兵部卿宮からは、「やはりああしてお訪ねすること もまったくむすかしいものですから、思案にあまりまして、 自分をおいてほかに誰がいようかと思っておいでになると 近い所へお迎え申す手はずを工夫しております」とお知ら せになった。后の宮がお耳になさって、中納言までがこう うつ して一方ならず虚けのようになっているとのことだが、な るほど宇治の方々はいかにもありふれた女のようには扱え ないのだとどなたもお考えになるのだろうと、お気の毒に おばしめされて、二条院の西の対に中の宮をお迎えになっ てときどきでもお通いになるようにと内々お申しあげあそ ひと なごり
. 匂一ニ九 しとど忍びがたく思すべかめり。一六以下、薫の道心。 さまの事にふれて聞こえ伝ふるなどもあるに、、 宅なまじ現世に執着して。 中将は、世の中を深くあぢきなきものに思ひすましたる心天厄介になりそうなあたりにか 〔 0 薫、厭世の心深く、 かわるのは控えよう。出家の妨げ 女性関係に消極的 になりそうな結婚を断念する気持。 なれば、なかなか心とどめて、行き離れがたき思ひや残ら 一九心奪われそうな女君の現れな い当座、悟りすましてもいられよ むなど思ふに、わづらはしき思ひあらむあたりにかかづらはんはつつましくな うが、と語り手が薫の道心を危ぶ 一九 ど思ひ棄てたまふ。さしあたりて、心にしむべきことのなきほど、さかしだつむ言辞。薫の独自な人生観を際だ てる評言でもある。 ニ 0 にゃありけむ。人のゆるしなからんことなどは、まして思ひょるべくもあらず。ニ 0 娘の親の承諾しない恋仲など。 ニ一「宰相ーは参議。正四位相当官。 みかどきさき さむゐのさいしゃう 十九になりたまふ年、三位宰相にて、なほ中将も離れず。帝、后の御もてなし三位の場合、特に三位宰相と呼ぶ。 一三宰相兼近衛中将。同年齢の源 うち はばか に、ただ人にては憚りなきめでたき人のおばえにてものしたまへど、心の中に氏と比べても異例の昇進である。 一一三冷泉院と秋好中宮。 は、身を思ひ知る方ありて、ものあはれになどもありければ、、いにまかせてはニ四出生の秘事を知ったこと ( ↓ 一六ハー注五 ) 。数奇な運命への痛恨 やりかなるすき事をさをさ好まず、よろづのこともてしづめつつ、おのづからが、独自な人生観を導くとする。 一宝気ままに軽薄な好色事に走る ことを好まぬ性分。その老成した およすげたる心ざまを人にも知られたまへり。 心柄が、世人に理想視されもする。 ニ六 ニ六匂宮。 三の宮の年にそへて心をくだきたまふめる院の姫宮の御あたりを見るにも、 毛冷泉院の女一の宮。 な ひとっ院の内に明け暮れたち馴れたまへば、事にふれても、人のありさまを聞夭薫が。 ニ九冷泉院。薫の本拠はその対屋。 き見たてまつるに、げにいとなべてならず、、いにくくゆゑゅゑしき御もてなし三 0 噂どおり、女一の宮は。 ニ四 三 0 ニセ
( 現代語訳四三一 しぐれ 時雨いたくしてのどやかなる日、女一の宮の御方に参りたび歩きの相手としてではなく召人 三六〕匂宮、女一の宮に の扱いとせよの戒め。↓二二八ハー。 おまへ 戯れ女房とも浮気する まへれば、御前に人多くもさぶらはず、しめやかに、御絵一三匂宮を東宮にという帝の配慮。 きちゃう など御覧ずるほどなり。御几帳ばかり隔てて、御物語聞こえたまふ。限りもな 0 匂宮をめぐる京における人間関 係や動向が語られ、相対的に宇治 けだか くあてに気高きものから、なよびかにをかしき御けはひを、年ごろ二つなきもの姫君らの存在が画定されよう。 一四匂宮の同腹の姉。六条院南の あこが 町の東の対に住む。薫には憧れの のに思ひきこえたまひて、またこの御ありさまになずらふ人世にありなむや、 的のような存在 ( 一一一九ハー ) 。禁足 うちうち 冷泉院の姫宮ばかりこそ、御おばえのほど、内々の御けはひも心にくく聞こゅの匂宮が、行き所もなく訪れる。 一五以下、女一の宮の美貌ぶり。 一九 れど、うち出でむ方もなく思しわたるに、かの山里人は、らうたげにあてなる一六以下、匂宮の心中に即す叙述。 女一の宮には誰も比べられぬ意。 宅冷泉院の女一の宮。弘徽殿女 方の劣りきこゅまじきぞかしなど、まづ思ひ出づるにいとど恋しくて、慰めに、 御腹。↓匂宮一五ハー注孟。 をむなゑ 御絵どものあまた散りたるを見たまへば、をかしげなる女絵どもの、恋する男天父冷泉院のご寵愛の深さ。 一九匂宮は早くからその女宮に心 をかけていた。↓匂宮二〇ハー の住まひなど描きまぜ、山里のをかしき家居など、心々に世のありさま描きた ニ 0 中の君をさす。 角るを、よそへらるること多くて、御目とまりたまへば、すこし聞こえたまひて = 一女の愛玩する絵。恋の場面な どを描いた風俗的な大和絵の一種。 きん かしこへ奉らむと思す。在五が物語描きて、妺に琴教へたるところの、「人の = = さまざまな恋する男女の姿を。 ニ三匂宮は、わが身につまされる。 総 ニ四中の君のもとに。 結ばん」と言ひたるを見て、いかが思すらん、すこし近く参り寄りたまひて、 一宝以下、『伊勢物語』四十九段。 匂宮「いにしへの人も、さるべきほどは、隔てなくこそならはしてはべりけれ。ニ六匂宮の好色心を、暗にいう。 ニ四 ニ五 ぎい′ ) ニ六 いへゐ か をとこ
河 一九今上帝と冷泉院のどちらに。 たまひけるついでに、院よりのたまはすることほのめかしきこえたまふ。玉鬘 ニ 0 冷泉院。↓四七ハー五行。 うしろみ 「はかばかしう後見なき人のまじらひはなかなか見苦しきをと、かたがた思ひ一 = 冷泉院はもともと源氏に酷似。 一三タ霧の娘は六人。長女は東宮 、次女は二の宮に奉る。六の君 たまへなむわづらふ」と申したまへば、タ霧「内裏に仰せらるることあるやう は美貌と評判。ここは自卑して、 にうけたまはりしを、いづ方に思ほし定むべきことにか。院は、げに、御位を冷泉院を高めた言い方をした。 ニ三冷泉院の后妃たちの中に。 去らせたまへるにこそ、盛り過ぎたる心地すれど、世にありがたき御ありさまニ四女一の宮の母女御。弘徽殿女 御 ( 旧頭中将の娘 ) 。タ霧は、大君 が参院すれば、玉鬘と弘徽殿女御 は古りがたくのみおはしますめるを、よろしう生ひ出づる女子はべらましかば が姉妹で争いかねないと忠告。 と思ひたまへよりながら、恥づかしげなる御仲にまじらふべきもののはべらでニ五前に冷泉院に参ろうとした人。 ニ六弘徽殿女御への遠慮から断念。 によう′」 なん、口惜しう思ひたまへらるる。そもそも、女一の宮の女御はゆるしきこえ物語には語られない事実である。 毛他ならぬその弘徽殿女御が。 ニ六 レしカ たまふや。さきざきの人、さやうの憚りによりとどこほることもはべりかし」強調的な語り口。「つれづれ」以下、 「慰めまほしきをまで女御の言葉。 夭退位後の閑暇な日々をさす。 と申したまへば、玉鬘「女御なん、つれづれにのどかになりにたるありさまも、 ニ九冷泉院と一緒に大君の世話を。 ニ九 うしろみ 同じ、いに後見て慰めまほしきをなど、かのすすめたまふにつけて、いかがなど三 0 女御が。女御の勧めであるこ とを強調してタ霧の干渉を斥ける。 三一按察大納言、藤中納言やタ霧 だに思ひたまへよるになん」と聞こえたまふ。 やその子息など玉鬘邸に集う人々。 しゅじゃくゐん ・一うぎ これかれ、ここに集まりたまひて、三条宮に参りたまふ。朱雀院の古き心も三ニ朱雀院と昔から交誼のある 人々や、六条院の関係の人々も。 のしたまふ人々、六条院の方ざまのも、方々につけて、なほかの入道の宮をば三三女三の宮。 ふ ニ三 お ニ四 をむ + は′ ) 三三
13 匂宮 と思ひのばりたまへる親王たち、上達部の御心尽くすくさはひにものしたまひ宅藤典侍腹。求婚者たちが多く、 花形的存在となっている。 ける。 天二条院や六条院に住んでいた 源氏の妻妾たちは、源氏の死後。 さまざま集ひたまへりし御方々、泣く泣くつひにおはすべ天皇崩御の後に皇妃たちが実家な 〔三〕源氏の御方々のそ どに退散するのに酷似した表現。 はなちるさと の後とタ霧の配慮 き住み処どもに、みなおのおの移ろひたまひしに、花散里一九二条東院。源氏出家の際分与。 ニ 0 女三の宮。朱雀院から三条宮 そぶどころ と聞こえしは、東の院をそ、御処分所にて渡りたまひにける。入道の宮は、三を下賜。↓鈴虫八三ハー注一八。 ニ一前ハー一〇 ( 后の宮」と同じ。 いまきさきうち 条宮におはします。今后は内裏にのみさぶらひたまへば、院の内さびしく人少秋好中宮に対して「今」。 一三六条院。 みぎのおとど ためし なになりにけるを、右大臣、「人の上にて、 いにしへの例を見聞くにも、生けニ三源融の河原院、中国の例では 秦の始皇帝の阿房宮や唐の玄宗皇 いへゐ す る限りの世に、、いをとどめて造り占めたる人の家居のなごりなくうち棄てられ帝の華清宮などが想定されよう。 ニ四東の京極大路、南の六条大路 て、世のならひも常なく見ゆるは、、 しとあはれに、はかなさ知らるるを、わがあたりには貴族の邸宅が少ない ニ五東北の、夏の町。もとの花散 おほぢ 世にあらん限りだに、 この院荒らさず、ほとりの大路など人影離れはつまじ里の居所で、タ霧の部屋もあった。 ニ五 ニ六落葉の宮のこと。 うしとら う」と思しのたまはせて、丑寅の町に、かの一条宮を渡したてまつりたまひて毛雲居雁。タ霧の巻から十年後、 彼女も三条殿に戻っている。 ニ七 一穴タ霧らしい合理的な解決法。 なむ、三条殿と、夜ごとに十五日づつ、うるはしう通ひ住みたまひける。 ニ九『宇津保物語』 ( 楼上上 ) にもみえる。 おとど うてな ひと ニ九明石の君の子孫。二条院には 二条院とて造り磨き、六条院の春の殿とて世にののしりし玉の台も、ただ一 匂宮、六条院南の町の東の対には あかし うしろみ 人の末のためなりけりと見えて、明石の御方は、あまたの宮たちの御後見をし女一の宮、寝殿には二の宮が住む。 みが すか ニ四 ニ六 とおる