石山 - みる会図書館


検索対象: 完訳日本の古典 第25巻 夜の寝覚(一)
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1. 完訳日本の古典 第25巻 夜の寝覚(一)

石山寺絵巻 / 石山山中大津市・石山寺蔵 女主人公は苦悩のなかで石山の姫君を出産し た。この出産は姉にも父にも隠さねばならな かった。そのために、出産の場に石山か選ば れている。『蜻蛉日記』などにも、石山参籠の 記事かあるが、道綱母の深刻な煩悶を映して、 その描写は寂しくけわしい。『夜の寝覚』の女 主人公の石山行も、けわしい運命の岐路であ った。『石山寺縁起』を借りて、石山への道筋 のけわしさを偲ぶことに、丁る

2. 完訳日本の古典 第25巻 夜の寝覚(一)

351 年立 。三月、父大臣心痛の余り病に倒れ、広沢の別荘に移る。大君同行。〔一〇〇〕 。宰相中将ら、人目を避けるため出産間近の中の君の石山参籠を計画。〔一〇一〕 。三月二十五、六日頃、中の君石山に移り、さらに、宰相中将の乳母の尼君の家に隠される。 〔一〇二〕 。四月五、六日頃、大納言心配のあまり石山に赴き、重態の中の君に対面。〔一〇三〕 。翌々日、中の君、女児 ( 石山の姫 ) を出産。大納言、姫君を引き取る準備を進める。〔一 。父大臣、大納言に中の君の後見を依頼して出家。〔一一七〕 。中の君、一条邸に戻る。姫君の車も人目を忍んで続く。〔一一 。その日の暮、大納言、姫君に対面。姫君、ひとまず大納言の乳母のもとに引き取られる。〔一 二五〕 。中の君、広沢を訪れ、父入道と再会。大君は夫大納言の迎えを受けて帰京。大納言は広沢に残 る中の君を思う。〔一二八〕 巻。四月末日、大納言、石山の姫を自邸 ( 関白邸 ) に伴う。関白夫妻喜び慈しむ。〔一三一〕 。中の君、大君夫妻の住む京の自邸に戻る。〔一三三〕 。関白家、石山の姫の五十日を盛大に祝う。大君、夫への不信に苦しむ。〔一三四〕 。石山の姫の成長を見るにつけ、大納言の中の君への思慕ますますつのる。〔一三六〕 。七月七日 ( 十七日ノ誤リカ。一三七注一九参照 ) 夜、大納言、中の君方に近づき歌を詠みかけ る。二人の仲、大君側の人々に見咎められる。〔一三七〕 。大君、夫と味の仲を疑い苦悩。長兄左衛門督に訴える。〔一三八〕 。左衛門督驚き、中の君側を強く非難。父人道に悪しざまに報告する。〔一四一〕 。入道心痛深く、真偽を宰相中将に問う。中将、噂を否定し、中の君を広沢に呼ぶよう勧める。 〔一四五〕 。中の君に対する大君側の悪口つのる。大納言、思い余り、中の君をひそかに、連れ出すことを 計画。中の君付女房の少将などに協力を依頼。〔一四八〕 。九月、中の君、広沢に赴く。父入道、久々に対面し、悲運を慰め世話をする。〔一五九〕 。大納言、中の君が無断で広沢に移ったことを恨み、文を送る。〔一六四〕 。雪の日、大納言、思慕に堪えず広沢を訪問するが中の君には逢えず。その日宮の中将も広沢を

3. 完訳日本の古典 第25巻 夜の寝覚(一)

あない さいしゃうのちゅうじゃう 一大納言は関白邸に宰相を呼ん とて、大殿に参りたまひて、宰相中将を呼びたまひて、案内問ひたまへば、 で、石山の様子を尋ねるのである。 くはしくきこえさす。「いっか出でたまふべき」、「道の程も消え人るばかり弱 = 大納言の質問。中の君はいっ 石山をお出になる予定か。 寝げにてものせらるれど。左衛門督などもものせられなむ。さては、えはべるま三宰相中将の返事。道中も危ぶ の まれるほど中の君は弱っておられ あひ あさて 夜じければ、相助けて明後日ばかりなど思ふ」と、きこえたまへば、「そのはべますが。言いさした表現。 石山にきっとおいでになるで らむ人は、さて、いかでかもて隠したまふかたはべらじを、迎へてむと思ふを、しよう。左衛門督に来られてから では困る、というのである。 ありさま そちこそ参らむと思へ」とのたまへば、「げに、紛らはしにくき御有様にこそ五生れた子供をいう。 六迎え取ろうと思うので、私が そちら ( 石山 ) に伺おうと思います。 はべるめれど、さても、物の聞こえはおのづからはべらむ」と、きこゆれば、 七大納言様がお引き取りになっ をのこゅゑ ても。「物の聞こえ」は、噂。 「それはなどてか。男の故は、いづれもいづれも人の知りがたきものなれば、 八そんなことは何の心配があろ う、の気持。 ともかくも紛らはしはべりなむ。指して、さならむと思ひ寄る人あらじ。それ 九男の内実というものは。 をさへ引き隔て、うち忍びてはいかが」と、のたまふままに涙の落つるを、こ一 0 中の君を指して、子供の母親 だと考えつく人はあるまい。 とわりなれば、「かしこには、なほえおはしまさじ。とかく紛らはして、一条 = 子供まで私から引き離して人 目を忍んでいるのは、とうてい我 に率て渡したてまつるべくはべるを、その程に迎へたてまつらせたまへ」と申慢してはいられない、の気持。 一ニ石山には大納言様はやはりお けしき いでになるわけにはいきますまい。 し定めて出でたまふを、児のやうに、いと慕はしげに見送りたまふ気色は、い 一三石山に赴く前、中の君が移り 住んでいた所。中の君の故母上の とあはれにいとほしげなり。 き

4. 完訳日本の古典 第25巻 夜の寝覚(一)

のだろうと後ろ姿を見送って、 ずかしくて、また中宮方の女房たちは、みんな慣れつこに しやく さやかにもみつる月かなことならば影をならぶる契り 思っておりますのも癪で、皆から離れて眺めておりました A 」、もかな 月の美しさ、 となると今度は一人では何やら物足りな ( はっきりと月のように美しいとあなたを見たことです。同 寝く感じておりましたところ、折よくおいでくださったのが の じことならば二人相添う契りを結びたいものです ) うれしく : : : 」と、宮の中将を呼び寄せて、あの石山で中 夜 たじまのかみ と言わせてやりましたところ、たいそう早く、 将が但馬守の三の君に言い寄ったと聞いたその時のことが、 くもゐ 何とか引き出して聞きたかったので、常に似ずくだけて、 天の原雲居はるかにゆく月に影をならぶる人やなから ものもうぞ む 世間の浮いた話やら、物詣の折にかなりの美人に出会った ( 空高くめぐりゆく月のような身分あるあなたに、添い並ぶ 次第などを話し出したところ、宮の中将も、打ち解けて、 人はいないでしよう ) 案の定、「去年の秋ごろで・こざいましたでしようか、石山 さんろう に人知れず参籠した折会いました人が、思ったよりも風情と返歌を持たせて参りました」と語るのを、中納言は、 つね 「さあ、あの人だったらそんなふうに物慣れて返事を返せ があり、局などの様子も、心を配ってとりまかなっており そうもない。誰ともわからず、不意のことだったとはいい ましたが、私は心にもとめず、ひたすらお勤めをしており かるかや ましたところ、折から暁方の月の光が谷の底まで照らし出ながら、咋夜は秋風に吹き乱れた刈萱の上の露が今にもこ かれん しておりましたので、私はあちこち巡り歩きながら月を賞ぼれ散ってしまいそうな様子をしていたが : : : 」と可憐さ でておりますと、その局の人たちは寺を出る様子で偶然通がまず思い出されるにつけ、涙ぐまれて、「そして、それ りかかりましたのを、物陰に隠れて見ておりましたところ、 から」とひどく聞きとどめて話の先をお尋ねになる。 仰々しく世話しかしずいて、大勢人々がおりました中に、 〔中納言と宮の中将「その後、その女の人に、影を並べ 感じのよい女性がおりました。月の光で見たそら目かとは女性論に夜を明かすようという様子はありますか。いや、 思いながら、そのまま見過しがたく存じまして、下山する もう契りを結んでおしまいになりましたか」とお聞きにな ふい め

5. 完訳日本の古典 第25巻 夜の寝覚(一)

みかど にいたいのですが、帝に奏上せねばならないことがいくっ れて涙が頬を伝うのを、それも道理とうなずいて、中将は、 あいさっ やしき かございますので」と挨拶されて、父関白の邸にお戻りに 「しかし、やはり、石山にいらっしやるわけにはいきます さいしようのちゅうじよう やしき なると、宰相中将をお呼びになり、石山の様子をお尋ねまい。何とか人目を紛らわして、一条の邸に一緒にお連れ 寝になるので、宰相は詳しくお話し申しあげる。「それで、 するつもりでおりますので、その折に迎え取ってくださ てはず の いつごろあちらをお出になるのですか」、「道中も危ぶまれ い」と手筈を整えて、中将がお立ちになるのを、まるで幼 夜 るほどに弱っておられるのが心配ですが・ 。しかし、そ児のように、今にも後を追わんばかりにお見送りになる大 のうち左衛門督などもおいでになるでしよう。そうなって納言の様子は、まことに胸痛く同情に堪えないものがあっ は、あのままにしてはおられませんから、皆でお助けして、 明後日ごろになどと考えております」とお話しになると、 〔 = 0 〕中将石山に至り、宰相中将は石山にお着きになって、 「その生れた子供は、どうにもお隠しになりようがないで女児の可愛さに涙する父君が人道なさったとはお耳に入れ しようから、それではこちらに迎え取ろうと思いますので、ず、だいぶお元気になられた旨をお話しになると、中の君 私が石山に出向こうと考えています」とおっしやる。「確の弱々しいお顔にも喜色が浮ぶのであった。中将は、大納 たいきみ かに、人目を避けにくい苦しい状況ではございましよう。 言のおっしやったことを、対の君に話されて、生れた姫君 が、こちらでお引き取りになりましても、世間の噂は自然を御覧になると、まことにおかわいい様子なので、「昨日、 に立つでしよう」と、申しあげると、「噂ぐらいは立とう 一昨日とお目にかからないうちに、一段とかわいくおなり が、何の心配があろう。男の内幕というものは、どんな場になった。それも道理だ。御両親のどちらに似ても、並ひ 合も他人にはわかりにくいものだから、何とでも紛らわし と通りの御器量でお生れになるはずがない。なんとまあ、 てしまいましよう。特に中の君を指して、この子の母と考 こんなにかわいい御様子で、ずいぶん人の気をおもませに えつく人はあるまい。子供まで私から引き離し、人目を忍 なったものだ。この姫君を、天下晴れて、父太政大臣にお んでいることなどどうしてできましよう」と、お言葉につ見せしたいものだ。どんなにかわいくお思いになることだ お

6. 完訳日本の古典 第25巻 夜の寝覚(一)

やしき に当っておられるだろう。どうしたらよかろう。邸から離の中にも、中の君の御事ばかりを心配なさっていて、「た こも いへん結構なことだろう。早くお籠りさせておあげ。なる れたものの、こことて人目が少ないわけでもない。父上が ほど、早くから試してみるべきだった。うかつにも今まで 『法師も男たちも、私の所にはいないでよい。一条の中の 寝君の方に』とおっしやってばかりいるので、皆こちらに集思いっかなかった。私の病気は大丈夫、今すぐ死ぬとも思 さえもんのかみ の って来るため、かえって人の出人りがうるさい。左衛門督われない。私のことは心配しないでよい。お前は、中の君 夜 にずっと付いていてさしあげておくれ。私に付き添ってく も、頻繁に広沢と往復なさっているから、様子がおかしい と、感づいておしまいになるだろう」と相談して、考えたれたとて、少しもうれしいとは思わない。中の君のお世話 めのと さいしようのちゅうじよう 末に、宰相中将は、「乳母が、石山の辺に持っている土をしてくれるのが、何よりうれしいのだ」と、泣きながら べっとう おっしやるのを、宰相中将はしみじみと悲しく拝見する。 地に、風流な小家を造って、その兄も石山寺の別当であっ そうず たので、この二年ばかり、尼になってそこに籠って暮して 〔四〕中の君石山に移り僧都は、直ちに、石山寺で中の君の 更に尼の家に隠される平癒を祈って修法をしてさしあげる いる、その家なら、どんなことがあっても、見る人がある しゆったっ ため、出立なさる。三月二十五、六日のころなので、参籠 わけもなく、具合がよい」と思い出されたものの、といっ てすぐにそこにお連れすることもできないので、広沢におを二十一日間と決めて、「いくらなんでも、その間には御 出産があるだろう」と思って、宰相中将たちは中の君をお いでになって、父上に、「中の君の御病気が、相変らずい おんようじ つまでもはっきりしませんので、陰陽師に占わせましたと連れになった。左衛門督も、石山までお見送りをなさる。 さんろう 「私も付き添いたいところだが、こちらには宰相中将がお ころ、『石山寺に参籠するのが、たいへんによいこと』と 申します。これまでも心残りのないくらいたくさんの御祈仕えなさるようにと、父上がしきりにおっしやっているよ うなので、二人ともこちらにいて、父上を大納言の北の方 疇を重ねておりますが、それでもききめがあるとも見えな お一人にお預けするのも具合が悪いので、私は帰ることに いようですので、占いのとおりに試してごらんになったら おとど いかがでしよう」とお話しになると、大臣は苦しい御気分しよう。御病気の様子をうかがって、今よりもお悪くなる とう ずう

7. 完訳日本の古典 第25巻 夜の寝覚(一)

りゃう せうと 一石山寺。「別当」↓一八ハー注五。 領ずる所に、をかしき小家造りて、兄も、その寺の別当にてありければ、この ニただ理由もなく。 1 ふたとせ 二年ばかり、尼になりてそこに入り居たるが家こそ、いかなりとも、見る人あ三以下、中の君を石山に移すた めの口実を父大臣に述べる宰相中 寝るまじく、よけれ」とおぼし出づるも、ただそこに渡したてまつるべきゃうな将の言葉。「この御心地」は、中の の 君のご病気。 ここち 夜ければ、広沢に参りたまひて、「この御心地の、かくのみはべるを、物問はせ 0 「ここら」は、数多くの意。 五そのように試してごらんにな こも はべれば、『石山に籠りて、いとよし』と申す。ここら思ひ残すことなき御祈ったらいかがでしよう。 六父大臣は。 セ中の君のご病気を。 りの、験ありとも見えはべらざめるを、さてや心みたまふべき」と申したまへ 八私に付き添ってくれても、少 うれ しも嬉しいとは思わない、の気持。 ば、苦しき御心地にも、ただこの御事をいみじとおぼして、「いとよかめり。 九「それは、中の君に付き添っ はやく籠めたてまつれ。さてこそ、心みるべかりけれ。今まで思ひ寄らざりて看病することをいう。 一 0 「やがて」は、すぐに、直ちに。 わ 一ニ参籠の期限を二十一日と限っ ける。我が心地は、ただ今死ぬくも覚えず。おぼ 0 かなしと、な思ひそ。そ = ~ ミ て。参籠には七日、三七日 ( 二十 の君に、つと添ひたてまつれ。我が身に添ひたらむ、さらになにと思ふまじ。 一日 ) 、五七日 ( 三十五日 ) など、 それなむうれしかるべき」と、泣く泣くのたまふを、あはれに悲しく見たてま七日を一区切とする期日がある。 一三いくら何でもこの二十一日間 のうちには・こ出産があるだろう、 つる。 の気持。対の君たちは出産予定日 を四月上旬と考えていたらしい。 〔四〕中の君石山に移り lß以下、石山から広沢の父のも 更に尼の家に隠される とに帰る左衛門督の挨拶。こちら しるし まう ずふ 僧都は、やがて、この寺にて修法をたてまつりに、出で詣 でたまふ。三月二十五六日の程なれば、三七日と限りて、 そうづ こいへ 四 べたう あいさっ

8. 完訳日本の古典 第25巻 夜の寝覚(一)

103 巻 ( 現代語訳一一四七 ) 「さりとも、その程にはあらじやは」と思ひて、率てたてまつりたまひつ。左には宰相中将がお仕えなさるよう に父上がしきりにおっしゃいます ゑもんのかみ 衛門督も、御送りしたまふ。「ここには宰相さぶらひたまふべきよしのみ、おので。下の「・ : 便なければ」と並立 して「おのれは帰りなむ」に続く。 びん うへひとところ ぼしのたまふめれば、大納言の上一所に預けたてまつりて便なければ、おのれ一五大納言の北の方お一人に父上 をお預けしていて具合が悪いので。 さま は帰りなむ。御心地の様を承りて、これよりまさりたまはば、また参らむ。ひ一六「事なし」は、平穏なこと。無 事出産なさってほしい、の気持。 ひま とかたならず、いみじく、心の隙なくもあるかな」とうち嘆きて、帰りたまひ毛事情を知る者同士は。「どち」 は、仲間、親しい人、の意。 一七 ぬ。「よき隙にこそあめれ。この程に、事なくて」と、心あるどちは念じ思ひ穴夜中に出産される場合も考え。 一九仏の御前で出産するのでは、 よるよなか けが 穢れの罪が恐ろしいのである。 て、夜夜中の事も、御堂にては恐ろしかるべければ、おはする顔にし置きて、 ニ 0 参籠中のように装っておいて。 さぶらひ さるべき女房、侍は、みなさぶらはせて、御方ばかり、やをら、かの尼君の家 = 一真相を知らずについてきた女 房や侍は、中の君が参籠中と思い、 に率てたてまつりたまふ。京には、よろしくなりたまへるよしをきこえたまひみな御堂に控えているのである。 一三「よろし」は、ややよい状態。 ニ三「関」は、逢坂の関。逢坂の関 たれば、左衛門督もおはせず。 よりも遠く、つまり石山をいう。 せき 大納言、心の及ぶ限り、御祈りは残さずせさせたまふ。関品中の君に付き添ってお世話を 〔五〕大納言、不安のあ なさらない心中は。 をちこも まり忍んそ石山に赴く より遠に籠りたまふ由を、いとおぼっかなく、これをよそ = 五僧都は修法のため石山に赴き、 次ハー五行目でも石山にいたと考え に聞き騒ぐばかりにて、寄りつき扱ひたまはぬ心のうちぞ、たとへむかたなきられるが、ここでは都にいたこと になる。僧都の行動が省筆された か、作者の不注意によるものか。 ゃ。僧都に会ひて問ひたまふに、宰相の、かくおぼし構ふるよしをきこえけれ 一五

9. 完訳日本の古典 第25巻 夜の寝覚(一)

355 年立 。寝覚の上、生霊の噂に衝撃を受け、苦悩。〔盟一三六〕 。五月二十日、寝覚の上、昔を偲び箏を弾く。内大臣忍んで寝覚の上を訪れるが、二人の心、徴 妙にずれてゆく。〔一三八〕 。同夜、寝覚の上の生霊再び出現。内大臣、寝覚の上を思って苦悩。〔盟一四四〕 。内大臣、母尼君の請いにより、石山の姫を自邸に戻す。〔一四五〕 。同夜、寝覚の上、次兄新中納言に苦境を訴え、広沢に籠ることを相談。内大臣、この日より六 日間の物忌。〔一四九〕 巻。二日後、寝覚の上、まさこ君と小姫君を伴い広沢に移る。父入道や前斎宮と対面。〔一五六〕 四 0 内大臣、忌明けを待ち広沢を訪れるが、寝覚の上、避けて対面せず。〔盟一五八〕 。帝よりまさこ君の参内を促す使者があり、寝覚の上 ( の御文も届く。内大臣心騒ぐが、使者を 厚遇。〔一六二〕 。病気の女一の宮、朱雀院に移る。〔一六四〕 。内大臣、その後も忍んで広沢を訪れるが、依然寝覚の上逢わず。〔盟一六四〕 。六月一日頃より、女一の宮快方に向う。内大臣、宮を自邸に連れ戻す。〔一六五〕 。石山の姫、母寝覚の上を恋う。内大臣、寝覚の上との仲を中宮に訴える。中宮から帝の様子を 聞くにつけ心鎮まらず。〔一六六〕 。去る五月晦日頃から患っていた寝覚の上、出家を決意。〔一七三〕 。七月、あるタベ、父人道に出家を願い出る。入道、やむなく承諾。〔一七七〕 。二十五、六日頃をその日と定め、ひそかに準備。〔一八一〕 。大弐の北の方 ( もと対の君 ) 驚き、内大臣に事態を知らせる。〔一八二〕 。内大臣驚き、まさこ君、石山の姫とともに急ぎ広沢に赴く。〔一八六〕 巻 。内大臣、言葉を尽して翻意を迫るも、寝覚の上承引せず。〔一八八〕 五。翌朝、内大臣、入道に対面。過去のすべてを打ち明ける。入道事の意外さに驚き、今までの不 明を恥じる。〔一九一〕 。入道、寝覚の上の部屋を見舞い、石山の姫に対面。その美しさを驚き喜ぶ。〔二〇三〕 。寝覚の上、すべてを知った父の前に恥じ、病重る。見舞の人々広沢に集う。〔二〇七〕 。内大臣、寝覚の上の懐妊を見ぬく。寝覚の上苦悩。〔二〇九〕

10. 完訳日本の古典 第25巻 夜の寝覚(一)

夜の寝覚 6 一、ロ絵に関しては、徳川黎明会、田中家、石山寺のご協力を得た。