入清水本「十二かや」。十四、十 ぬ君が宿にとどめよ 五、十九、二十についても同し。 ごくらくみだ じゃうど 一九清水本「さのみなさけなふり 九つや、ここで逢はずは極楽の弥陀の浄土で逢ふ世あるべし すてそ」。そうそう情けをふり捨 とを とや てるな、の意。 十とかや、鳥屋を離れしあら鷹をいっかわが手にひき据ゑて見ん ニ 0 「情けは人のためならず」とい ことはうれ - っことわ」による。 十一や、一度まことのあるならば人の言の葉嬉しからまし 三清水本「おしからし」。 ニニ清水本「君ゅへすつる」。「流 十二とや、憎しと人の思ふらんかなはぬことに心尽せば す」は流浪する意か。「うき名を流 なさけ 一九 す」で、浮いた評判をたてる意か 十三や、さのみ情をふり捨てそ情は人のためにあらねば ニ三死後の極楽往生を妨げること。 ニ四清水本「この世はかなく」。 十四とや、死なん命も惜しからず君故流すわが身なりせば ニ五清水本「めぐるにも」。 ごせさは ニ六清水本「きみに心は」。 十五とや、後世の障りとなりやせん身のはかなくも逢はで果てなば 毛清水本「七ととまらて」。 ろくぢ 夭清水本「君にあふかといのり 十六や、陸地のほどを過ぐるにも君に心をつれてこそ行け をそなす」。 たびたびニ八 ニ七まう ニ九「心強し」は人情に乏しい、情 十七や、七度詣での度々も君に逢ふ世と祈りこそすれ にほだされない意。 ニ九 三 0 三 0 清水本「きかぬ君かな」。 部十八や、恥づかしながら言ふことを心強くも逢はぬ君かな 三一清水本「くる、夜ことにおも 式 ふには」。 泉十九とや、くるし夜ごとに待ちかねて袖いたづらに朽ちゃ果てまし 和 三ニ清水本「にくしと人をおもふ まし」。 二十とや、憎しと人の思ふらんわれならぬ身を人の恋ふれば 8 三三清水本「われならぬ身も」。 げぢよ かんし三四 と言ひければ、かの下女、これを聞きて、「柑子よくぼるべきにはあらねども、品欲張る。 一八 一七 ニニゅゑ ニ四 つく す
( 十一とや、一度でもまことがあるならば、人の言ったこと ばがうれしく思われるであろうに ) 十二とや、憎しと人の思ふらんかなはぬことに心尽せ ( 十二とや、憎いと人が思うであろう、できないことに心を くだいているので ) なさけ 十三や、さのみ情をふり捨てそ情は人のためにあらね ば ( 十一二とや、そのようにむやみにつれなくするものではない、 情けは他人のためではなく自分のためになるものであるか ら ) 十四とや、死なん命も惜しからず君故流すわが身なり せば ( 十四とや、たとえ死んでも命は惜しくない、あなたのため 部 に流浪する私の身であるのだから ) 式 ごせさは 泉十五とや、後世の障りとなりやせん身のはかなくも逢 和 はで果てなば ( 十五とや、来世の安楽の妨げとなるかもしれない、私がは かなくも逢わないで死んでしまったならば ) ゅゑ つく 十六や、陸地のほどを過ぐるにも君に心をつれてこそ 行け ( 十六とや、陸地のあたりを過ぎるにも、あなたのことを思 いながら行くことだ ) まう たびたび 十七や、七度詣での度々も君に逢ふ世と祈りこそすれ ( 十七とや、一日に七度ずつ神に詣でるたびごとに、あなた に逢う時がきてほしいと祈ることである ) 十八や、恥づかしながら言ふことを心強くも逢はぬ君 かな ( 十八とや、恥ずかしいと思いながら言うことを、無情にも 逢ってくれないあなたですね ) 十九とや、くるし夜ごとに待ちかねて袖いたづらに朽 ちゃ果てまし ( 十九とや、つらく思いながら夜ごとに待ちかねて、ひとり で敷く袖がむなしく朽ちてしまうことだろうか ) 二十とや、憎しと人の思ふらんわれならぬ身を人の恋 ふれば ( 二十とや、憎いと人が思うことであろう、自分であって自 分でない正体もない身を人が恋しく思うので ) こうじ げじよ と言ったので、かの下女がこれを聞いて「柑子を欲張るわ ろくち
まことしからぬことなれども、床を清 かうた め、香を焚き、なりをしづめて、笛を 吹き給ふ。十八日の月、やうやう澄み 上りて、千里万里に明らかなり。いと いきゃうくん かうばしき風吹きて、花降り、異香薫 かぶり ずる内よりも、十六人の童子、玉の冠 いただ を頂きて、金の輿をさし寄せ、十四五 一五 ひめぎみひたひ てんくわん ばかりの姫君、額には天冠をあて、身 には玉の瓔珞を垂れ、金のひっかうを くれなゐはかま一八 一九 履き、紅の袴ふみくくみ、すべてあ ことは 国だなる、言の葉まではありぬべしとも 天 おぼえず。侍従、「こなたへ」とのたまへば、経の前、錦の褥の上にゐ給へり。 梵 ゑんあうひょく たがひに見えつ見えられつ、鴛鴦比翼のかたらひも、浅からずとぞ聞えける。 ニ四 じふぜん かかるめでたき折節に、帝、このよしきこしめし、「われ十善の位をうけ、 の こがねこし をりふし みかど 一七 す きう にしきしとね 一 0 「納受」は、神が人の願いなど を聞き人れること。 る 降 = 「回向ーは、読経などによって が死者の霊を弔うこと。 王 一ニ居待ちの月で、月の出がやや 天 梵 遅い。 に 一三仏菩薩や天人が天降るさま。 よ の 一四十六人の童子が金の輿をかっ ぎ人れ、十四、五歳ばかりの姫君 の がその輿から現れ出るのである。 仏 一五仏や天人のかぶる宝冠。 一六玉をつらねた装身具。 びこう 宅鼻高で、爪先の高くあがった を 革製の沓。 め 入足が見えないように、袴の裾 た の を引いてはくこと。 養 一九何から何までなまめかしく美 供 の しいことは、ことばには言い表せ 母 父 そうには思われない。 君ニ 0 笹野本に「きちゃうのまに」と 若 あり、「儿帳の間」にあたる。 ニ一敷物。 一三見たり見られたり。「見る」は、 男女が契りを交す意。 ニ三夫婦のむつまじい仲。↓三七 ′ー注一四。 ニ四天子の位。↓一三ハー注一五。
末は習はぬなり。もしそれを習ひてや 空中を飛びあるくという怪物。 一 0 「相伝」は、受け伝えること。 る 去 一一未詳。 あるらん。それを習ひてあるならば、 ち 立 一ニ流布本『平治物語』下に「ひる て は終日に学問を事とし、夜は終夜 われわれが目の前にて、ことごとく語 せ ーカ 武芸を稽古せられたり。僧正が谷 のち び な にて、天狗と夜々兵法をならふと るべし。その後、大事を伝ふべし」と を れ巾 云々」とある。謡曲『鞍馬天狗』、 ひ領 幸若舞『末来記』などにも、鞍馬の のたまひければ、御曹子はきこしめ 奥の僧正が谷で大天狗から天狗の くらまそだ や し法を学んだとされている。 し、もとより鞍馬育ちのことなれば、 一三私。一人称の代名詞。単数の びしやもんてんわうけしんもんじゅさいたん 目謙称としても用いられる。 毘沙門天王の化身、文殊の再誕にてま 尻 一四鞍馬寺 ( 京都市左京区 ) の本尊 もんじ を の の毘沙門天。毘沙門天は四天王の しますうへ、文字にくらきことましま る え 一で、北方を守る。福徳を与え、 に七福神の一とされている。 さず、鞍馬の奥にて習はせ給ひし、四 庭 一五釈迦仏の左に侍して、知恵を おこな 広 つかさどる菩薩。 十二巻の巻物を、ことごとく行ひ給 子 曹一六「林樹の法」か。 一七「霞の法」か ふ。大王御覧じて、「まことになんぢ 入「小鷹の法ーか。『浄瑠璃十二 島 しんべう 子は、こころざし深き者なり。神妙なり」と仰せありて、「さらば、許し申さん」段草子』に「わが身には、こたかの いんをむすんで、ゑんよりしたへ 一七 とんており」とある。 とて、師弟の契約をなし給ふ。まづりんしゅの法、かすみの法、こたかの法、 一九「霧の法」か 9 一九 ニ 0 奥義。極意。 きりの法、雲居に飛び去る鳥の法などを御伝 ( あり、「これより甓は無益なり」 お ′彡あ
べきーは『法華経』化城喩品の「従冥 人於冥、永不聞仏名」 ( 冥より冥に 人りて、永く仏の名を聞かず ) に よる。 九昔と今との中間。 一 0 大阪市。「津の国」は摂津国。 おきな 一一年老いた男。翁。 おうな 一ニ年老いた女。媼。 一三住吉神社。大阪市住吉区。 一四子がいないので、子を授けて 中ごろのことなるに、津の国難波の里に、おほぢとうばと侍り。うば四十にほしいとお祈りする。申し子の例 一五 一五神名につける尊称。 だいみやうじん すみよし 及ぶまで、子のなきことを悲しみ、住吉に参り、なき子を祈り申すに、大明神一六妊娠したことをいう。 毛出産の月をさす。 穴「いつくし」は、容姿が整って あはれとおぼしめして、四十一と申すに、ただならずなりぬれば、おほぢ、喜 一七 美しい意。ここでは、主人公の一 ( 絵 ) とっき 一八 び限りなし。やがて十月と申すに、いつくしき男子をまうけけり。さりながら、寸法師が神の申し子として生れた とある。民間の昔話では、主人公 のちせい一九 いっすんふし の小さ子が、脛や指などから生れ 生れおちてより後、背一寸ありぬれば、やがて、その名を、一寸法師とぞ名づ たにしかたつむり たとも、田螺や蝸牛などとして現 れたとも伝えられる。 師けられたり。 一九一寸は約一一。 法 としつぎふ せいニ 0 ニ 0 人並でなく。 寸年月を経るほどに、はや十二三になるまで育てぬれども、背も人ならず、つ ニ一普通の者。凡人。 ばけものふぜい くづくと思ひけるは、ただ者にてはあらざれ、ただ化物風情にてこそ候へ、わ = = 化物のようなもの。 ニ三一人称の代名詞。単数の謙称 れら、いかなる罪の報いにて、かやうの者をば、住吉より給はりたるぞや、あにも用いられる。 193 いっすんふし 一寸法師 くになには をのこ はんべ すね
だんかう = 例の。あの。にせの宇都宮を の様体をも、談合申さんと存じ候へ る さす。 れ ら 一ニそのまま素通りしては、亭主 ば、急ぎまかり出づべきよし仰せ出さ 、カ が恨みに思うでしようから。 れ、一両日以前に、出仕申して候ふ。 武一三馬具の一。馬に乗る人が足を の 踏みかけるもの。 ぶさた 子一四あれこれと日も過ぎ。「まか 無沙汰のいたり、御許しあれ。かなら る」は、動詞にかぶせて語勢を強 鳥 しゆくしょ め、また謙譲の意を表す。 ず御宿所へ参りて申すべし」とて、馬 る 一五人間の姿。なりかたち。 けい れ 一六相談すること。話合い。 引き寄せて乗らんとせしところに、蛍 や は ぐわうすぐもはるさめ て 火、薄雲、春雨とて、そのほかの遊君 に 女 十人ばかり立ち出でて、「いかにやい 氏 なさけ 源 かにや、情なくも、目のあたりを通ら 猿 っ せ給ふとて、うち過ぎんとし給ふぞ に たもと 一七主語が遊女から宇都宮に変る 紙や」と言ひて、袂にすがりつつ、座敷 草 穴気の進まない。不本意な。 ふぜい 一八 原へ手を引かれ、心ならぬ風情にて、座敷へ人りにけり。かくて、宇都宮思ふや一九思いがけないことだ。丹緑本 に「おもはゆや」とある。 らくちゅう いわし ありさまニ 0 一九 ニ 0 様子を改めた。姿を変えた。 う、あら恥づかしや、思はずや、われ、洛中をめぐり、鰯売りし有様、ひきか ニ一南阿弥の心中を察して、恥ず ( 絵 ) かしく思われる へたるさまかなと思ふにつけても、南阿弥の心の中こそ恥づかしけれ。 ま いうくん むま なあみ うち
73 鉢かづき まへ の前か、恐ろしや」などと申す。さるほ 筆蹟がおちたと伝えられる。「ふ るひ筆」は、その場合「震筆」と解 さかづきい しうとごぜん どに、また御盃出でければ、舅御前き されるが、一般に「揮筆」にあたり、 筆をふるって書いたものをさす。 ( 絵 ) 一 0 金毛九尾の狐の化したという こしめし、姫君に御さしありて、「御さ んそくおう 美女。西域で班足王の夫人となり、 しよりゃう一ニ かな申さん」とて、「わが所領七百町と 中国で周の幽王の后となり、日本 で鳥羽院の寵をうけて、三国の帝 え王を惑わせたという。院の市病の は申せども、二千一二百町の所なり。一千 折に、安倍泰成の占によってその ちゃう を ぢゃう しもつけのくに 領素姓が現れ、下野国那須野に逃げ 町をば姫君に参らする。また一千町をば せっしようせき に て、ついに殺生石に化したと伝え れ こ 宰相の君に取らすべし。残る三百町をば られる。御伽草子『玉藻草紙』、謡 曲『殺生石』などによって知られる。 て め = 酒盛りのときに興を添えるも 三人の子どもに取らするなり。百町づっ を の。品物とは限らず、広い言い方。 一ニ一町は一般に三六〇〇歩。一 分けて取れ。これを不足に思ふ者あら ず 歩は六尺四方で三・三平方′ 鉢 一三以下、「町」の濁点は底本のま ば、親とも子とも思ふべからず」と仰せ 将 中 ま 一四 父 一四道理に合わない。『ものくさ ければ、兄御たちきこしめし、合はぬこ 太郎』に「合はぬは君の仰せ」とあ きめい る。↓一三四謇七行。 ととは思へども、貴命なれば力なし。今よりしては、宰相の君を総領と思ふべ 一五高貴な人の命令。仰せ どうしん 一六家の名跡を継ぐ者。嫡子。 しと、三人同心し給ひけり。 にようばう さるほどに、姫君には、冷泉をはじめとして、女房たち二十四人付け奉り、 あにご 一七 れんい ぢゃう ちゃう 4 たてまっ
九「買はう、ゑい」の訛り。「買 はう」は、「買へ」と勧める言い方。 る め 一 0 富裕。金持。 そ 見 = 五条通から清水坂に通ずる橋。 火今の松原橋にあたる。 蛍 一ニ屋根や両脇に網代を張った輿。 る ひわだ 乗「網代」は、青竹や檜皮などを細く 輿 削り斜めまたは縦横に編んだもの。 とばり 一三車や輿の簾の内に掛けた帳。 に 一四年功を積んだ僧から転じて、 身分の高い女をいう。ここでは、 氏遊女を「上﨟」と呼んでいる。 源 一五「そぞろ」は何となく浮わっく 猿 さま、何となく落ち着かないさま な に 一六『伊勢物語』二十七段に「われ を 荷ばかりもの思ふ人はまたもあらじ の と思へば水の下にもありけり」と 鰯 ある。自分の姿がたらいの水に映 で 橋 って見えたので詠んだ歌。 命あらばまたもやめぐり見もやせ の 条 一七「あらぬ」は「あらむ」の意で、 五 「あらん」を書きゅがめたものか ん結ぶの神のあらぬ限りは 紙 草 穴生きながらえるかどうかわか ( 絵 ) ありさまぞんめいふぢゃう らぬさま 源と詠み、あさましき有様、存命不定に見えにけり。 おかん 猿 一九悪寒と熱気。 なあみだぶ 南阿弥陀仏、このよし聞き給ひて、かれが宿へ行き、有様見給ひて、「それ、 = 0 全身。漢方の医術で、筋・脈 ・肉・骨・毛皮をいう。 一九 けしき カんねっ 1 やまひ 病といふものは、寒熱二つより起りて、五体を苦しむるなり。なんぢが気色は、 = 一様子。ぐあい。 一四 じゃうらふひとめ るその隙より、輿の内の上﨟を一目見 しより、恋となり、明け暮れ思ひわづ らひて、心もそぞろになりはてて、明 くれば五条、暮るれば橋へ出で、商売 さらに身にしまず、うち臥し、一首、 わればかりもの思ふ人はまたもあ らじ思へば水の下にもありけり と、古き歌など思ひ出し、またかくな ん、 ひま 一七 いだ い
足がきせば、両眼を強くふさぎ給へ。あなかしこ、道にて御眼をばしあき給ふ一 = 「ばし , は、強調を表す助詞。 係助詞「は」の燭音化したものに間 むま な。この馬とり付きて、身ぶるひせん時、御眼をあきて御覧ぜよ」と、こまご投助詞「し」の付加されたもの。 むち一三 まと仰せければ、教へのごとく、両眼を強くふさぎて、鞭をしとと当てられけ一三勢いを強く、動作を早くする ( 絵 ) むまこくう 一四空。大空。 る時、馬は虚空へあがりける。 一五平らな土地。陸地。 ろくち ややありて、陸地とおぼしき所にて、身ぶるひを三度したりける時、両眼を一六遠く広々としたさま。果てし なく広がったさま まんまん いさご 開きて御覧ずれば、漫々たる砂の地にぞ著き給ふ。この馬一二度いばへて、人な毛「いばふ」は、いななく意。 入道を迷いながらたどって行く こくう そみち いとまこ らば暇を乞ふとおぼしくて、虚空に行きぬ。さて、何となく、細道をしるべに、さま。 一九人家のある所。人の住んでい あゆ 一八 たどりたどりと歩み給ふほどに、人に会ひて、「この国をば、いづくと申すぞ」る所。 ニ 0 際限もない。「ほとり」も、き だいり んゼんこく と問ひ給へば、「梵天国」とぞ伝へける。さて、「梵天国の内裏は、いづくにてわみ、際限の意。 ニ一面積の単位。一般に中世には、 候ふぞ」と問ひ給へば、「これなる道を、南へ行きて御覧ぜよ。すなはち内裏一町が三六〇〇歩。一歩は六尺四 方で、約三・三平方 うれ るり 一三「瑠璃」の誤りか。「瑠璃」は七 国なるべし」と答へける。嬉しくおぼしめして、行き給ふほどに、野にてもなく 宝の一で、青色の宝石。↓一六八 山にてもなく、漫々平々として、また里もなく、限りほとりもなし。次第次第注五。 ニ三「七宝ーは七種の宝物 ( ↓一六 しろかね いさご に砂の色を見れば、みな金のごとくなり。銀の門を建て、金の門を建て、見れ〇ハー注一五 ) 。「荘厳、はおごそかに 美しいことであるが、寺院や仏像 めなう しっぽうしゃうごん いさごニ一 ば金の砂、一町ばかり敷き満てり。その内に、きりの柱、瑪瑙の石、七宝荘厳の飾りつけをさす。 りゃうがん へいへい こがね 一七 しだい さま
( 絵 ) だいにちによらい しゃうぞく 一 0 大日如来の法。大日如来は真 ひ、旅の装束し給ひて、音に聞きし、 んちすいしやく 言密教の本尊。本地垂迹説による あまてらすおおみかみ みなとっ と天照大神の本地とされている。 わが朝四国とさの湊へ著き給ふ。 = この世。 せんどう 一ニ死後に生れる世。 船頭を近づけて、「これはいづくへ 一三準備。支度。用意。 る 一四ああしようか、こうしたらよ 行く舟ぞ。数はいかほどある」と問は す 言 、か「わ : つ、か A 」 進 一五土佐 ( 高知県 ) の港では、蝦夷 に せ給へば、船頭ども承り、「これは北 子 へ至る航路に合わない。津軽十三 み外 4 と カうらい 御 の湊で、青森県北津軽郡市浦村か。 国、または高麗の船も御人り候ふ」と 姿一六朝鮮。本来は朝鮮古代の国名。 めいせん 狩毛七艘の船の名は、どれも速さ 申せば、「名船いかほど」とのたまへ または海にかかわりあるもの。底 子 帽本「はやっき」は、古梓堂文庫旧蔵 ば、船頭ども承り、「舟の数は一千艘 一七 振絵巻に「はやふさ ( 隼 ) 」とある。 風 穴一両は約三七等。 と申す、その中に七艘候ふ。小鷹、早 一九貴人の乗る船。 秀 つきなみくぐりはやかぜいはわりなみわたしいはくだき の ニ 0 立派に。上品に。 著、波潜、早風、岩割、波渡、岩砕と 巾 ニ一洛北鞍馬寺の毘沙門天。 ニ = 源氏の氏神の石清水八幡宮。 て御座ある」と申す。義経きこしめ 渡 京都府八幡市にある。 一九 子し、「余の船はほしからず、早風」と好ませ給ひ、金百両に買ひ取り給ひ、御 = = 船の両側の櫓・櫂を扱う所。 = 0 阿陀仏に従う二十五の菩薩。 座船と号して、物常に飾り、豌には鞍馬の大悲多聞天、艫に氏神正八幡大菩薩、 = = 仏をかけることを【う。 ニ六神仏の霊を請じて祭ること。 こ くわんじゃう 【ーろかい 毛神仏に祈り誓いをたてること。 櫂には二十五の菩薩をかき奉り、勧請し、祈誓を申させ給ひ、とさの湊を漕 てうしこく一五 こたかはや ざう ほっ ニ七 こがね一八 し。 0 0