イーヤア - みる会図書館


検索対象: 完訳日本の古典 第48巻 狂言集
8件見つかりました。

1. 完訳日本の古典 第48巻 狂言集

男 ( 四つに組んだまま ) 「イーヤア、イーヤア。 ( 女、舅の足を取る ) 舅 男「回せ、回せ。 言 狂男「イーヤア、イーヤア。 ( 足を取 0 たまま舅を引き回す ) 女女 聟舅「ヤイヤイ、親の足を取るといふことがあるものか。 男 ( それにかまわず ) 「イーヤア、イーヤア。 女 なに なに 舅「これは何とする、これは何とする。 男「イーヤア、イーヤア、ヤットナ。 ( 投げ出す ) 舅「ア痛、ア痛。 男「お手。参ったの。 女「なういとしの人、こちへござれ、こちへござれ。 ( 男を手招く ) 男「心得た心得た。 女「ちゃっとござれ、ちゃっとござれ。 男「参る参る。 女「ござれござれ。 しゅうと みこし 一神輿の渡御の際に方向転換を するとき「回せ回せ」と掛声をかけ る。それの見立てであろう。 ニ狂言で、相撲や格闘に勝った ときに相手に向って言うことば。 オーテーと発音する。実際の相撲 でこのようなことばが用いられた か、ど - つかは・不 - 明。

2. 完訳日本の古典 第48巻 狂言集

さらば急いで戻らう。 ( 行きかけて ) が、今ひとしほの慰みに、作り声をして彼五ここで男の気が変るのだが、 これを酒の酔いが出たためとする ( みョう ) つけんくわ 見方がある。 奴に喧嘩をしかけてみうと存ずる。 ( 常座まで戻り、座頭の様子をうかがう ) 六一段の。いっそうの。 いづく 座頭「さてもさても、何処のお方かは知らねども、思ひもよらぬお振舞にあうセあいつ。 た。この機嫌で、ちと謡ひながら戻らうと存ずる。きこしめせやきこしめせ、〈狂言歌謡「盃」の一節。全文は 「盃に向へば、色もなほ赤くして、 ちとせ 千歳の命を延ぶる酒と聞くものを、 寿命久しかるべし。 ( 常座の方へ来かかるとき、男は歩み寄ってどんと突き当る ) きこしめせやきこしめせ、寿命久 みども しかるべし」。 男「ヤイ、おのれは憎い奴の。なぜに身共へ行き当たった。そこ退きをれ。 一 0 座頭「ヤアラここな者が。そちは目明きさうなが、目の見えぬ者に行き当たる九こいつはまあ ( とんでもない ことを言う ) 。 一 0 晴眼者のようだが といふことがあるものか っえ 一一そのような ( 弁解がましい ) こ 男「まだそのつれなことを言ふ。おのれ憎い奴の。 ( 杖を奪い取り、捨てる ) なに なに 一ニこいつめ。 座頭 ( よろよろしながら ) 「アア悲しや、これは何とする、これは何とする。 頭男「おのれのやうな往来の妨げをする奴は、さんざんにならはかいてやらう。一 = 思い知らせてやろう。こらし めてやろう。 座 見 ( 手を取って引き回す ) ィーヤア、イーヤア。 月 なに なに 座頭「これは何とする、これは何とする。誰そ出会うて下されい、誰そ出会う て下されい。 九 た た や

3. 完訳日本の古典 第48巻 狂言集

新発意 女 ( それにかまわず ) 「イーヤア、イーヤア。 -4 なに 住持「これは何とする、これは何とする。 狂新発意「イーヤア、イーヤア、ヤットナ。 ( 投げ出す ) 頭女 座 住持「ア痛、ア痛。 家 出 新発意「お手。参ったの。 女「なういとしの人、こちへござれ、こちへござれ。 ( 新発意を手招く ) 新発意「心得た心得た。 女「ちゃっとござれ、ちゃっとござれ。 新発意「参る参る。 やこの終局部分は、橋がかりの長 女「ござれござれ。 さに応じて、女は「こちへござれ、 こちへござれ」「ちゃっとござれ、 新発意「心得た心得た。 ( 連れだって退場 ) ちゃっとござれ」「ござれござれ」 を、男は「心得た心得た」「参る参 住持 ( 起き上がり ) 「ヤイヤイ、師匠をこのやうにしてどちへ行く。あの横着者、る」を、それぞれ適当に繰り返し ながらる。 た 誰そ捕らへてくれい。やるまいぞやるまいぞ。やるまいぞやるまいぞ。 ( 追い 込む ) しんち 一狂言で、相撲や格闘に勝った ときに相手に向って言うことば。 オーテーと発音する。 ニ早く。

4. 完訳日本の古典 第48巻 狂言集

( みョう ) 参ってみうと存ずる。イヤまことに、もはや日も暮れて、女のことでござれ九この小歌は『閑吟集』 ( 三 l) のほ か、『実隆公記』紙背文書「絵詞草 案」 ( 文明七年七・八月 ) に「ロやの ば心もとなうごどる。 水が遅くなり候、まづ放さしめ」 新発意 ( 女に取りつきながら ) 「おうが回れか、放しはせぬぞ。ィーヤア、イーヤア。『宗長手記』 ( 大永三年条 ) にも「な んぼうこざれた花にたはぶれ / お なにめ 茶の水梅が枝にこそ汲み寄せてー 女「これは何と召さる、これは何と召さる。 うちわ とあり、女歌舞伎踊歌「団扇踊」等 にも見えるなど、広く流行したも 住持 ( 本舞台に入り、この様子を見て ) 「これはいかなこと、あれにいちゃが新発意と のであることがわかる。『閑吟集』 には結句「なんぼこじれたい」とあ さんざん戯れてゐる。さてもさても憎い奴ぢゃ。ャイヤイ、ヤイそこな奴。 り、それだと「じれったい、私の 心はわかってるくせに」で、女の 女「エイ、お師匠様。 ( 新発意を後ろに隠す ) なび 心はすでに相手に韲いていること になる。場合場合によって、いろ 住持「いちゃ、今そこに新発意がゐたではないか。 おもわく いろな思惑をこめて謡われたので あろう。 女「これへはお出でなされませぬ。 しゃれ 一 0 なんともふざけた。「左社 なん たわふれのぎ 住持「何の来ぬといふことがあるものか。そこ退きをれ。 ( 女を突きのけて ) ャイ戯義」 ( 和漢通用集 ) 。「こじゃれ た」は、コージャレタと発音して いる。 水ャイ、ヤイ新発意。 まは = 意不明。「おうが回ろがとも の めんく 言う。いやでも応でも、というほ 茶新発意「面目もござらぬ。 お どの意か 住持「面目もないと言うて、この体を檀方衆の見させられたならば、愚僧とも一 = 合す顔がございません。 一三扇の一種。本折のこと。↓二 たた 八謇図参照 に寺を追ひ出されう。おのれ憎い奴の、憎い奴の。 ( 中啓で叩く ) ていだんばうしゅう

5. 完訳日本の古典 第48巻 狂言集

妻「でも人の恥を知って我が恥を知らぬ者は、畜生も同じことぢゃいやい。 はうりゃう そうべっ一あひだ 右近「総別この間うちから甘やかいておけば方量もない。おのれ、散々になら言う。「キリホウリャウガナイ」 ( 日葡 ) 。 言 狂はかいてやらう。 ( 先ほどの棒を取り、振り上げる ) 四 っゑとば 聟妻「エイ、また例の杖取り奪ひか。 右近・「イーヤア、イーヤア、ヤットナ。 ( 打ちかかる ) なに 妻「何とする。 右近「ヤットナ。 妻 ( 棒を押えて ) 「がっきめ、取ったぞ。 なに 右近 ( よろめきながら ) 「これは何とする、これは何とする。 妻「イーヤア、イ 1 ャア。 ( 振り回す ) 右近「これは何とする、これは何とする。 妻「ヤットナ。 ( 打ち倒す ) 右近「ア痛、ア痛、ア痛。 妻「お手。参ったの。なう腹立ちや腹立ちゃ、腹立ちゃの腹立ちゃの。 ( 退場 ) 六 なに 五 三思い知らせてやろう。こらし めてやろう。 四杖の取合い奪い合い。転じて 暴力沙汰。「・ハイ、ハ ハウタ カずくで取る」 ( 日葡 ) 。「例の」と あるから、彼らの夫婦げんかでは じようとう これが常套手段であり、また妻が 腕力のうえでも夫を制していたこ とがわかる。 五この野郎、つかまえたぞ。 六狂言で、格闘や相撲に勝った ときに相手に向って言うことば。 オーテーと発音する。 一近ごろずうっと。 ニきりもない。言いたい放題を

6. 完訳日本の古典 第48巻 狂言集

新発意「エイいちゃ、お師匠の足を取れ、お師匠の足を取れ。 かしこま 女「畏ってござる。 ( 住持の足を取りに行く ) 五 きゃうこう 住持「ヤイヤイ、愚僧の足を取ったならば、向後門前へは置かぬぞよ。 なにいた 女「なう悲しや、何と致しませう。 住持「新発意の足を取れ、新発意の足を取れ。 女「心得ました。 ( 新発意の足を取りに行く ) みども 新発意「ヤイヤイ、身共の足を取ったならば、向後側へは寄せつけぬぞ。 なに 女「なう悲しや、何と致しませう。 新発意「お師匠の足を取れ、お師匠の足を取れ。 女「畏ってござる。 住持 ( 四つに組んだまま ) 「イーヤア、イーヤア。 ( 女、住持の足を取る ) 水新発意 の 茶新発意「回せ、回せ。 お 新発意「イ 1 ャア、イーヤア。 ( 足を取 0 たまま住持を引き回す ) 住持「ヤイヤイ、師匠の足を取るといふことがあるものか。 きゃうこう 五今後。「向後自今以後也」 ( 和漢通用集 ) 。 ◆このあたりからは『貰聟』の終局 部 ( 二四五ハー以下 ) と同じようなセ リフと動きで、狂言の演出の類型 性を示している。しかし虎明本で は、住持が新発意たちの戯れてい るのを見て「檀那のお見やったら ば愚僧ともに追ひ出されうが、あ ざま の様は腹立ちゃ」と新発意を追人 りにするのを本文とし、現行のよ うな演出をその後に添えて「かや うにもする也」と記しており、狂 言がまだ類型化せず流動性をもっ ていたことを示している。 六神輿の渡御の際に方向転換を するとき、「回せ回せ」と掛声をか ける。それの見立てであろう。

7. 完訳日本の古典 第48巻 狂言集

新発意「ア痛、ア痛。 -4 女 ( 中に人って ) 「アア申し申し、背丈伸びた者を、そのやうにあらけなう折檻一一人前の人を。 ニひどく打ち叩くということが。 言 ( の ) 賍をするといふことがあるものでござるか 座 ひいき 住持「おのれまでが新発意の贔屓をしをる。憎い奴の、憎い奴の。 ( 女を中啓で叩く ) 家 出 女「ア痛、ア痛。 とか 新発意 ( 中に人って ) 「アア申し申し、いちゃが咎ではござらぬ、何とぞ許いて下 されい。 住持「まだそのつれなことを言ふ。憎い奴の、憎い奴の。 ( また叩く ) 新発意「ア痛、ア痛。もはや、お師匠ぢやというて負くることではない。いざ おりやれ。 ( 大手を広げてかかる ) 住持「いざ、参らう。 新発意「イーヤア、イーヤア、ヤットナ。 ( 両人組み合う ) にがにが 女 ( おろおろしながら、また二人の中に人り ) 「さてさて、これは苦々しいことぢゃ。イヤ四困ったことだ。 なに 申し申し、何とぞ堪忍をなされて下されい。何とぞ堪忍をなされて下されい。 しんち せたけ ( の ) なに せつかん 三そのような ( あっかましい ) こ

8. 完訳日本の古典 第48巻 狂言集

男「いざおりやれ。 舅「いざ参らう。 舅「イーヤア、イーヤア、ヤットナ。 ( 両人、大手を広げて四つに組む ) なに 女 ( おろおろしながら二人の中に入り ) 「アア悲しゃ悲しや、何とぞ堪忍をなされて下 ( の ) されい、何とぞ堪忍をなされて下されい。 舅「エイおごう、聟の足を取れ、聟の足を取れ。 かしこま 女「畏ってござる。 ( 男の足を取りに行く ) きゃうこうそば 聟男「ヤイヤイヤイ、身共の足を取ったならば、向後側へは寄せつけぬぞ。 なにいた 女「なう悲しや、何と致しませう。 貰 男「舅の足を取れ、舅の足を取れ。 女「心得ました。 男「なかなか。 なんぢ 舅 ( 笑って ) 「イヤ面白い。年こそ寄ったれ、汝ら如きに負くる某ではないいや ^ 「い」「やい」、どちらも語勢 を強める。 むこ ( の ) ◆最後が聟と舅の争いになるとい う趣向の狂言は、他に『水掛聟』 『庖丁聟』があるが、いずれも結局 は妻が夫の味方をして自分の父親 を打ち倒すことになっている。聟 物ではないが『お茶の水』 ( 三四四 以下 ) もこれに類する。