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検索対象: 完訳日本の古典 第56巻 近松門左衛門集
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1. 完訳日本の古典 第56巻 近松門左衛門集

ニ 0 のきは ふみたより ふ客は退果て・内からは、紙屋治兵衛故ぢやと堰くほどに / \ ・地色ウ文の便も宅軽々しく。むやみに。 穴「伊丹」と「痛みいる」を言いか かな こよひさぶらひしゅ かはしゃうかた ける。 叶はぬゃうになりやした・不思議に今宵は、侍衆とて、河庄方へ送らるゝが・ 一九大言壮語する者。 かたきもち きづか みもち かう行く道でも、もし太兵衛に会はうかと気遣ひさど、・敵持同然の身持・な = 0 相愛の仲を妨げること。 ニ一茶屋の略称。河内屋という屋 んとそこらに見えぬかえ・詞オ、 / 、そんならちゃっとはづさんせ・あれ一丁号と主人の名前の一字による。 一三僧形の門付芸人。 ばうず てんがうねんぶつ 目から、なまいだ坊主が・転合念仏申して来る・その見物の中に・のんこに髪 = = おどけ念仏。 品髷の根を高く立てた、侠客や ゅ だてしゅじまん 伊達者の髪形。 結うて、のららしい・伊達衆自慢といひそな男・たしかに太兵衛様かと見た・ ニ七 ニ九 孟野良。放蕩者。 はうろくづきんあをだうしんすみ たまだすきけん 地色ウあれ / \ こゝへと言ふ間ほどなく、炮烙頭巾の青道心・墨の衣の玉襷、見 = 六侠客。 毛丸くて浅い炮烙 ( 素焼の平た ぶつ かねひやうしぞあひ ねぶつあだくちか 三 0 物ぞめきに取巻かれ・鉦の拍子も出合ごん / ・ほでてん / \ ご念仏に徒ロ噛い土鍋 ) に似た頭巾。僧侶や老人 が用いた。 みまぜて・ ll< なまぐさ坊主。 ニ九欅の美称。 はくわいりう につなんあさひなりう くわんのき 道具屋樊噌流は珍しからず・門を破るは、日本の朝比奈流を見よやとて・貫木、 = 0 悪ふざけ、悪たずらの意の 三三 「ほでてんごう」をの音「てんて うりようこさりようこう・ち - と さかもぎひきやぶ せき 網逆茂木引破り・右龍虎、左龍虎討取って・難なく過ぐるフシ月日の関や・なまをに言いかける。 の 三一中国の武将樊噌の軍法。以下 中みだ、なまいだ・なまみだ、なまいだ・文弥節迷ひ行けども松山に・似たる人な「月日の関や」まで、近松の「国性 やかっせん 爺合戦」の一節。 うきょ きゃうらん き浮世ぞと・泣いつ、エ、・ワハ / \ / 、 ・笑うつ、狂乱の・身の果、な三 = 朝比奈三郎義秀が和田合戦の とき鎌倉御所の門を破ったこと。 ふ毯い んとあさましやと・芝を褥に臥しけるは、スエテ目もあて・られぬ風情。なまみ = 三雲門関を守る二人の大将。 137 とりま しとねふ ま かみやちへ かど なん まよ はて まイ こくせん

2. 完訳日本の古典 第56巻 近松門左衛門集

にともない・銀もいるほど持ってござれ・助けてくだされ与兵衛様・オ、死に = 一前に「邪見の刀」と言ったもの を、「鬼」の縁で「角」と言いかえた。 ともないはず、もっとも / \ ・こなたの娘がかはいほど・おれもおれをかはい = = 地獄にあるという、剣の林立 する山。 あきら おやぢ がる親仁がいとしい・銀払うて男立てねばならぬ・諦めて死んでくだされ・ロ = 三この名の地獄はないが、目の 前の苦しみを「血の池地獄」になぞ ひきょ ねぶつなむあみだ で申せば人が聞く・心でお念仏、南無阿弥陀・地ウ南無阿弥陀仏と、引寄せて、らえた表現。 品「挿し」と「さしもげに」を言い いど とばら ゅんゼ 右手より左手の太腹へ・刺いては刳り、抜いては切る・お吉を迎ひの冥途の夜かける。あのように菖蒲を挿して 願ったのにの意。 風・はためく門の幟の音。煽に、売場の火も色消えて・廴もむも暗闇に。う = = 前世粲の報いで受ける災 ニ←難。因業。 ちしあカづらあかおにじ ふみすべ ち撒く油、流るゝ血・踏みのめらかし、踏滑り・身うちは血潮の赤面赤鬼・邪実端午の節句に飾り、また子供 が差す刀。 のきあやめ つるぎ もくんニ三 けんつのふりた 見の角を振立てて・お吉が身を裂く剣の山、目前油の地獄の苦しみ・軒の菖蒲毛「露の玉」と「魂」を言いかける。 与兵衛の邪見の刀に倒れたお吉の しゃうぶがたな ごふびやうのが ニ四 のさしもげに・千々の病はよくれども・過去の業病逃れえぬ・菖蒲刀に置く露魂を、端午の節句の縁で、菖蒲刀 に宿る露と見立てた修辞。 ll< ふだん気丈であったお吉の死 の、たまも乱れて三重「息絶えたり・ ひざぶし ひごろ しにが ニ九 = 九ぞっとして、気おくれして。 地色ウ日頃の強き死顔見て・ぞっと我から心もおくれ・膝節がた / 、、がたっ 三 0 お吉が腰に下げている鍵 かぎおっと のぞ おしさ 三 0 く胸を押下げ / ・さげたる鍵を押取って、覗けば蚊帳のうちとけて・寝たる = 一「蚊帳の内」と安らかに、の意 の「うちとけて」の言いかけ。 なる かぎ かうべ かつき 子供の顔付さへ、我を睨むと身も震へば・つれてがらっく鍵の音。頭の上に鳴 = = かみなり。 三三びったりくつついて。 ひきだうちがひ 2 かみ 神の・落ちかるかと肝にこたへ・戸棚にひったり引出す打飼・上銀五百八十 = 四七左衛門が置いていった袋。 かね きも にら 一八 ゑぐ ふる とだな三三 かや

3. 完訳日本の古典 第56巻 近松門左衛門集

一七 ( 現代語訳一一八八謇 ) きえい ねどころ 一八こすいた、 あ 一七気を失う。気が遠くなる。 はっと消人る寝所に、汗は湖水を湛へたり・詞ゃい / \ 戻った、開けやいと・ 穴流れ出る冷や汗が湖水を満々 さま 地色 ( ル呼ばゝるは以春の声・助右衛門色目を覚し・どいつらも大ぶせりと、提と満たすかのようだの意。 一九ぐっすり寝人ること。熟睡。 あんどう げて出でたる行灯の光・地色 ( ル顔を見合す夜着のうち。色ャアおさん様か・茂 = 0 行灯のほの明りでおさんと茂 兵衛が顔を見合せることをいう。 兵衛か・はあ。色はあゝ三重 0 上之巻のおさんは、中之巻以後 の行動と比べると、自分の意志で 動いている。それが姦通にまでつ ながったのであるが、姦通の原因 としては、下之巻でおさんの口か りんき ら「よしなき女の悋気故、・ : 」 ( 一 一一八ハー七行目 ) と言わせている。 ニ一↓「冥途の飛脚」七三注一一 0 。 一三別荘。別宅。 ニ三しょんぼりしているさま。 とりぶき 品「鳥」と「鳥葺屋根」 ( そぎ板を 並べ石などで押えた屋根 ) を言い ぶげんしゃ しもやしき フシ ( ル京近き・地中岡崎村に分限者の・下屋敷をば両隣、中かける。 〔一五〕太平記講釈 ニ五見かけもみすぼらしく、その どり はさ らうにん ニ四ぶきゃね に挟まるしょげ鳥の・浪人の巣のとり葺屋根・見る影細き光も細い粗末な、家の人口に吊し 昔 た行灯。 つりあんどうたいへいきかうしやくあかまつばいりゅうしる にうこう をち 経釣行灯。太平記講釈・赤松梅龍と記せしは、玉がためには伯父ながら・奉公の = = 客を集めて『太平記』などの軍 記物語を読み聞せた芸能者。 う たにんむき は らうにやくしゆっけ 請に立ち、フシ他人向にて暮しけり・地ウ講釈果つれば聞手の老若、出家まじり毛身元保証人。 ll< 聞くだけの価値のあること。 き、ごと たちかへ に立帰る・詞なんと聞事な講釈、五銭づ又には安いもの・あの梅龍ももう七十 = 九席料が銅貨五文。 中之巻岡崎村の段 赤松梅龍内の場 ニ九せん き、て

4. 完訳日本の古典 第56巻 近松門左衛門集

ぢきひっ ふみうらおもて よあけかけだ 日夜明に駆出せば、正午までに行て戻ると・たった今直筆の伯父の文の裏表・一九とやかく言わず。 ニ 0 世間への聞え。 しゅうかねひきお 憎く、をかしく・詞いかな伯父でも・主の銀引負ふやうな侍・腹切らせたがま = 一世間に対して面目が立つまい。 一三決算の時期。 もんめニ五 こだくさん し・なんぢや、小沢山に三貫目・三匁もおぢやらぬ・おぬしが商ひ、去年から = = 正反対。 「小」は悪意の接頭語。ぎよう 一文も見せぬ・算用したら、三貫目や四貫目は残るはず・やりたくばその銀やさんに。 ニ五「ある」の丁寧語「おちゃる」の びま おつ、けむこよびい れ・地色中追付、婿を呼人るゝ・大事の娘が病気、鈍な評定する隙がない・ヤ法打消し。ありはしない。 実ばかげた相談。 とりあは ようだいごらん 印様、お待ちどほ・おかちが容態御覧なされくだされと、余のこと言うて取合毛森右衛門と無関係なこと。 夭みごとに。山伏の祈疇で病気 けんぶつ ず・オ、 / 、 ・手柄に婿が呼ばれうば呼うでみや・見物せうと、親の前に足踏が癒ることをいう。 ニ九 一五「算盤」「胸算」「ぐわらり」は よう そろばんまくらむねざん 縁語。計略がすっかりはずれたこ みのばし・算盤枕の胸算フン用、ぐわらりと違うて見えにけり・ とをいう。 おも だきおこ 父がそろ / \ 抱起す、おかちが顔の面やつれ・法印とっく三 0 人間の病苦を救う仏。縁日は 八日と十二日。 あと と見・詞ム、、年はいくっ・十五・病みつきは後の月十二三一極楽世界を主宰する仏。縁日 は十五日。 くわいちゅうしよじゃく あみだ やくしによらいえんにち 獄日・ム、、薬師如来の縁日・十五は阿弥陀と、地懐中の書籍くりひろげ、指を = = 呪文や縁日などを記した本か 三三わけありそうな。もっともら 地 いは ふざうびく じゃうるり こわっき 折り・子細らしき声付・詞そも / 法蔵比丘の浄瑠璃に曰く・阿弥陀と薬師はしい。 三四説経浄瑠璃の題名。 女 いっとき むこどのよびい うんぬん 御夫婦と云々・すなはちこの病は一時も早く婿殿を呼人れ・夫婦になりたいと = = 気持からの病気。 三六物の怪に魅人られている。憑 かみいれ きやみ 思ふ気病に・地ちと外の魅人ありと言ふより、徳兵衛もっとも顔・法印に乗き物があること。 〔一 0 〕祈 もん しさい さんよう てがら ひる い どんひやうちゃう や よ ニ七 かね

5. 完訳日本の古典 第56巻 近松門左衛門集

( 現代語訳三三五 ) じひ りよぐわいものニ六こそぞばぐ ニ五無礼者。 お慈悲 / \ と、ほえ色面かく・詞こいっ慮外者・お小袖、馬具に泥をかけて、 実ご主人の着ている着物。 つらあ ねぢあ をち 怪我というてはすまぬ・面を上げいと首捻上げ・ヤア森右衛門殿、伯父ぢや人・毛「ちをは助動詞連体形で、 であるの意。伯父である人。伯父 ム、与兵衛めかと、地互にはっと色驚きしが・詞ャイおのれは町人、いかやうの敬称。 三 0 ll< おまえは町人ゆえ、どのよう ちじよく きず だんな ごふちかうぶ の恥辱を取っても疵にならぬ・旦那より御扶持を被り・一一字を首にかけたる森な恥をかいてもよいが、の意。 ニ九主君。 をひ おさ 三 0 主君より米でいただく禄。 右衛門・慮外者を取って押へ・甥と見たればなほ助けられぬ・討って捨つる、 三一武士の身分をいう。通称のほ かに二字の実名を持つのが通例な 地 ( ~ ちませいと、小腕を取って引立つる。馬上の主人、色ャイど、ヤイ・詞 のでいう。 さやぐちっ 三四さやばし ャイ森右衛門・見れば、其方が大小の鞘ロ、詰めやうが緩さうな・ふと鞘走っ = = 立ちもうせ。 三三刀の鞘の人口。「鯉ロとも。 ごだいさんかな げかう て怪我でもして・血を見れば殿の御代参叶はず・帰らねばならぬ・下向までは茜うつかり。 三五刀が鞘から抜け出ること。 とも ずいぶんさやぐち 随分鞘口に心をつけて、森右衛門供をせい、 / \ ・ハア地 ( ルはっと、お言葉 = 六極力。できるだけ。 毛武士としての気性ゆえ。 かたじけな つきはな 色忝く・詞おのれ、下向には首を討っ・地色ウしばしの命と突放し・随分伯父六鳴き声を出さぬ子鶯をいう。 森右衛門が手ぶりで、下向時に我 さぶらひぎ てふりうぐひす らの目につかぬよう注意しろとい 獄が目にかるなと、言ひたけれども侍気・声せぬ夏の手振鶯、はい / 、はい・ う知らせと、供先が手を振って歩 三九 油ぶけ き出す両意。「はい / 、 / ・、」は掛 武家のいきかたなづまぬお馬フシ足を早めて急がるゝ・ 女 け声。 うつ、ゑ なむさん 三九「なづむ」は停滞する意。「武 地色ウ与兵衛うっとり、夢か現か酔ひたるごとく・南無三、 家のいきかた」と「馬」の両方にか 〔 = 〕お吉の介抱 げかうき 伯父の下向に斬らるゝはず・斬られたら死なう・死んだらかる。 づら そのはう ゆる う

6. 完訳日本の古典 第56巻 近松門左衛門集

一七 わたくしとめかたしんしゃうもちなは ち、私の勤方、身上持直し・お目にかくれば知るゝこと。それまでは目を塞妻の持物であったので、これは戻 一八 さねばならなかった。 た、み ニ 0 きものに同じ。「きるもの」の いで・おさんに添はせてフシ給はれと、はら / \ こぼす血の涙、ノル中畳に・ 言い方が当時としては普通。 ひにん 一九 食ひっき詫びければ・詞非人の女房にはなほならぬ。去状書け / \ ・地色ウおさ = 一からつぼのさま、すっからか ん。 たちょ かずあらたふう きるもの んが持参の道具衣類、数改めて封つけんと・立寄れば、女房あわて、着物の数 = = ありったけ。「こたけ」には意 味はない。 そろ ひきだ つきの くっと色引出ニ三衣服を人れる籠 は揃うてあり・改むるにおよばぬと、駆けふさがれば突退け、。 品衣類・夜具などを人れておく し・詞コリヤどうぢや・地色ウまた引出してもちんからり。ありたけこたけ引出長方形の箱。 ニ五衣装を人れておく大型の箱。 つぎぎれ っヾらながもちいしゃうびつ から ニ六浦島太郎の故事による諺をふ しても・継切一尺あらばこそ。葛籠、長持、衣裳櫃・これほど空になったかと、 まえて「あけてくやしき浦島の子」 しうといか とし、「縞の火燵蒲団」と言いかけ 舅は怒りの目玉もすわり・夫婦が心はいまさらに、あけてくやしき浦しまの・ る。 たつぶとん ふぜい 毛「穴にも人りたき」と言うべき こ燵蒲団に身を寄せて、フシ火にも人りたき風情なり・ ところを「火燵」の縁でいう。 とりちら きづか ニ九 地色ウこの風呂敷も気唖退ひとひきほどき色取散し・詞されば ll< 気がかり。 〔ニ六〕おさんを連れ行く ニ九思った通り。 こそ / \ 、これも質屋へ飛ばすのか・ヤイ治兵衛、女房子三 0 遊女圧い。京阪では位の高く の ない遊女を「おやま」と称した。 ずり 三 0 ぐる 中供の身の皮剥ぎ・その銀でお山狂ひ・地色中ウいけどう掏摸め。女房どもは叔母 = 一悪党め。「いけ」「どう」とも 、い に罵倒の意の接頭語。 をひ 甥なれど、この五左衛門とは赤の他人・損をせうよし色みがない・詞孫右衛門三 = いわれ。因縁。 くさりも、ヘ はう さりじゃう / 、、 な、へとびらやヘ に断り、兄が方から取返す・地 ( ルサア去状々々と、七重の扉八重の鎖・百重の = 三きびしい束縛をいう。 165 ことわ めだま とり・かへ かね あか ふさ

7. 完訳日本の古典 第56巻 近松門左衛門集

( 現代語訳一一五三 ) 八うきみおきどころ りになぞらへ、露の憂身の置所・サアこゝに極めんと・上着の帯をとく兵衛も、 ^ 『続古今集』の殷富門院大輔の 和歌による。はかないこの身の意。 はつも涙のそめ小袖・脱いで掛けたる櫚の葉の、オクリその玉「箒、今ぞげに帯を「解く」と「徳兵衛」を言い かける。 うき - よ ちり 一 0 涙に「染めるーと「染小袖」の言 フシ憂世の塵を・地 ( ル払ふらん。 いかけ。「染小袖ーは色染めの着物。 かみそりいだ おって はつが、袖より剃刀出し・もしも道にて追手のかり、わ前に「はつは白無垢、死出立、恋 一四 路の闇、黒小袖・上にうち掛けー うきな れ / ・、になるとても・一浮名は捨てじと心がけ、剃刀用意いとある。白無垢の上に染小袖を重 ねて着、その上に黒小袖を掛けて うれ いっしょ たせしが・望みの通り、一所で死ぬるこの嬉しさと色言ひければ・詞オ、神出て来たので今染小袖を脱ぐと白 無垢となる。 べうたの おちっ 妙、頼もしゝ・さほどに心落着くからは、最期も案ずることはなし・さりなが = 棕櫚の葉で箒を作るので、 「箒」「払う」は縁語。 くちを くげん ふたもと しにすがた ら今はの時の苦患にて・死姿見苦しと言はれんも口惜しゝ・地この二本の連理一 = 箒を作る草の古名。また魂を 掃き寄せる道具の意。ここは「魂」 たぐひ からだ ゅは しにやう の木に体をきっと結ひつけ・いさぎよう死ぬまいか。世に類なき死様の・手本の意は軽く、美称の「玉」とみる。 一三別れ別れ。 さぎぞめ一八 とならん。いかにもと、あさましや、浅黄染・かれとてやは抱帯、両方へ引一四心中したという評判を立てる こと 0 おびさ あひだ ぬしさま 張りて・剃刀取ってさら / 、と・帯は裂けても、主様とわしが間はよも裂けじ一五殊勝。けなげ。 一六死際。臨終。 しま 崎と・どうど座を組み、二重三重、ゆるがぬゃうに色しつかと締め・詞よう締っ宅当時流行した浅黄色の抱え帯。 入このようであるとは思いもし なさけ をつと たか・オ、締めましたと・地 ( ル女は夫の姿を見、男は女の体を見て・こは情ななかったの意。 一九腰帯。しごき。 なきい とくべゑ き身の果ぞやと、スヱテわっと泣人る・ばかりなり・ア、嘆かじと、徳兵衛・顔 はて ふたへみへ きは てい 一九 力、へおび ひっ

8. 完訳日本の古典 第56巻 近松門左衛門集

なげだ で火にくべてくだされ・サア兄貴へ渡せ・地色 ( ル心得やしたと、涙ながら投出 = 一男女の愛情が変らないことを、 神仏にかけて誓った証文。 おしひら ひいふうみいよ にか かずそろ つう 一三約二年半の交際を示す。 す守袋・孫右衛門押開き・一、 、三、四・十、二十九枚数揃ふ・外に一通、 ニ三あなた。孫右衛門をさす。 だいじふみ 女の文、こりゃなんぢやと・開くところを、ア、そりや見せられぬ大事の文と・ = 四「ます」の遊里語。 ニ五すがりつくのを。 おしの あんどう うはがき まゐ かみやうち 取りつくを押退け・行灯にて上書見れば、小春様参る・紙屋内さんより・読み = 六女の書く手紙の形式。「内」は、 家内・女房の意。 くわいちゅう さいんさぶらびみやうり こや ニ七 も果てず、さあらぬ顔にて懐中し・詞これ小春・最前は侍冥利・今は粉屋の毛なにくわぬ顔つきで。 三 0 ll< 商人として誓う。けっしての あきなみやうりニ九かぎ ひけん きしゃう 孫右衛門、商ひ冥利・女房限ってこの文見せず、我一人披見して・起請ともに意。 ニ九女房にさえ。 せいもん かたじけな わたし 三 0 開いて見て。 火に入るゝ・誓文に違ひはない・地ウア、忝い・それで私が立ちますと・また 三一わたしの面目が立ちます。 伏沈めば・ ハア / \ / \ ・詞うぬが立つの立たぬとは・人がましい・これ兄ぢや人・地色三 = 並の人間らしい。 かたとき むねんくちを ウ片時もきやつが面が見ともなし・いざござれ。さりながら・この無念、口惜 = = 少しの間でも。 こんじゃう 網しさ、どうもたまらぬ。今生の思ひ出・女が面一つ踏む・御免あれと、つゝと = 0 兄に許しを乞う言葉。 の 三五激しく地を踏み鳴らすこと。 ぢだんだふ 中寄って色地団駄踏み・詞工、 / \ しなしたり・地色ウ足かけ三年、恋しゆかしも、激高したときの動作。 三六しくじった。失敗した。 いとまごひ ひたひぎは いとしかはいも・今日といふ今日、たったこの足一本の暇乞と・額際をはった毛足蹴にする一けりを置土産に した別れをいう。 なきだ づれ と蹴て・わっと泣出し、兄弟連・帰る姿もいた / \ しく、後を見送り声をあげ・ 151 ふししづ ふみ ニ四 あと 三四 ごめん

9. 完訳日本の古典 第56巻 近松門左衛門集

ニ 0 せつつく。 だ地ウどうだと、フシ責めせちがふ・ あざけ 一 = 東国者を嘲って言う語。 いひあは 一三東国への土産に。 地 ( ル言合せし二人の連、つかと色寄って・ヤイ詞もさめ・この女郎こ ニ三くれよう。「むずーは推量・意 あづまみやげ どろみづふるま っちへ貰ふ、置いて帰れ・地色 ( ルたゞし東土産に川の泥水振舞はうかと・両方志を表す助動詞。 品関東者。 たちはさ つらがま ばんどうもの ニ五「どう」は接頭語。卑しめる意 より立挟み、投げてくれんず面構へ・坂東者の色どう強く・詞何さ、ぶい / をもつ。 ひとおど かひな りもの けんくわ ふところ を」、おレ 4 ども・人脅しの腕にいろノく、の彫物して、喧嘩に事よせ・懐の物取ると聞及ぶ・ = 六ぶつぶつ文句ばかり言うやつ。 毛人れ墨。人れぼくろ。 びんなふ こしひざ あうしうもの 貧乏といふ棒に脛をなぐられ・腰膝も立たぬ遊女狂ひ・上方の泥水より奥州者 ll< 貧乏に苦しめられての意。 ニ九 ニ九あごがはずれるほど蹴り上げ どろあし はけおとがひけちが られの意。 の泥足くらへと・地 ( ルっゝと寄り、蹴上ぐる足首・刷毛が頤蹴違へられ・ど 三 0 三 0 ころんで。 まろ うと転んで、ころ / \ / \ 、小ー 月へだんぶとはね落され・これはと取りつく皆 = 一睾丸。 三ニ鳶に油揚をさらわれたときに しゅ ちゞこ なむさん 朱が大事の命の玉・縮み込むほど蹴っけられ、鳶がかけた、南無三と・あきれ見上げるような格好の意。 三三「見る」と「道」の言いかけ。 はらば て空をみち / / \ 腹這ひ / \ 、フシ逃げて行方はなかりけり・ 三四 三四大地に頭から叩き込んでやる さかさま 地色 ( ル友達投げさせ見てゐぬ男・逆様に植ゑてくれんと、むずとめば、色の意。 獄 地 三五こなまいきな。 ふりはな ろくえらねひっか 振放し・詞ャちょこざいな、けさい六・鰓骨引欠いてくれぺいと・地 ( ルくらは = 六青二才。人を罵って言う語。 女 三七悪口をたたくあごの骨をこわ た、あ こぶし ぶちかへ つかあ す拳を受けはづしては打返し・叩き合ひ、掴み合ふ・なう、気の通らぬ、これしてやるの意。 三九 六気がきかぬ。不粋な。 かせい くわしゃ どうぞと・中へ小菊が枷に人り、ア、怪我さしゃんすな、大事の身と・花車が = 九止めに人るをいう。 うすね 三五 とんび かみがた 三八 かい ののし

10. 完訳日本の古典 第56巻 近松門左衛門集

いた ひけふもの づく。色あ痛たゝ・詞あ痛とは、卑怯者・ヤアこりや縛りつけられた・さては一盗みをしやがったな。「ほざ くーは動詞につけ罵倒の意を示す。 いきずり ずり 盗みほざいたな・ヤ生掏摸め、どう掏摸めとては、はたとくらはせ・ヤ強盗め、 = 悪党め。「生」も「め」も次の 「どう」も罵倒の意を強める語。 ごくもん けとば ャ獄門めとては、蹴飛かし・紙屋治兵衛盗みして縛られたと・呼ばはり喚けば、三「ガン」は唐音。ののしって言 - っ五ロ 0 一三ロ 左 ゆきか かけあつま 四さらし首野郎。悪態を続けた 行交ふ人、あたり近所も駆集る・ 部分である。 近 ぬすびと 内より侍飛んで出で・盗人呼ばりはおのれか・治兵衛が何盗んだ、サアぬか 五「かい」は強意の接頭語。 せと・太兵衛をかい掴み、土にぎやっとのめらせ・起きれば踏みつけ、踏みの六踏み倒し。 七うつぶんをはらせ。 ひっとら めし / ・引捉へて、サア治兵衛・踏んで腹癒よと、足元に突きつくるを・縛八頬骨。 九踏みちらす。「さがす」は度を 、がまち たちあが ねめまは 越えている意味を表す接尾語。 られながら頬框・踏みつけ / \ 。踏みさがされて土まぶれ・立上って睨廻し・ 一 0 やつら。「ばらーは多数である いち / 、、つら 一一けんぶつ ことを示す接尾語。 詞あたりのやつばら、よう見物して踏ませたナア・一々に面見覚えた・地色ウ返 = 止めもせずに黙って見ていた ぐち ばう たちょ にげいだ 報する、覚えてをれと・ヘらず口にて逃出す・立寄る人々どっと笑ひ・踏まれなの意。 一ニ「頤を叩く」の略。へらずロ。 とがひ あきれた物言い。 てもあの頤・橋から投げて水食はせ、フシやるな / \ と、おっかけ行く・ 一三逃がすな。 づきん 地色中人立すけば、侍立寄って、縛り目解き・頭巾取ったる 〔一ニ〕兄孫右衛門の意見 高人だかりが散ったので。 めんてい まごもん めんなく 面体・ヤア孫右衛門殿、兄ぢや人・アツア面目なやと、ど兄である人の意。兄上。 一六おまえ。対称の代名詞。卑し あにごさま めた語。 うと坐し・スヱテ土に平伏し泣きゐたる・さては兄御様かいのと・走り出づる小 ( 現代語訳三一一一ハー ) ひれふ くら ふ 七い 一五 と わめ がんだう