材木 - みる会図書館


検索対象: 日本の天然記念物 3 植物Ⅰ
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1. 日本の天然記念物 3 植物Ⅰ

がびさん あまかわじんじゃしやそう 天川神社社叢 峨嵋山樹林 指昭和 7 年 4 月 25 日 指昭和 55 年に月ロ日 所山口県光市室積 所香川県仲多度郡琴南町 置光市 天川神社 * 琴平町から東南へ約 10 キロメートル、 峨嵋山は瀬戸内海に突出し、本上と砂 りくけいとう 讃岐山脈て、は竜王山につぐ高さの frJ 日山 堆て、つながった陸繋島て、、島内は照葉樹 ( 1043 メートル ) のふもとに近く、道路 を多数交えたアカマッ林に覆われてい わきに古い木の残る神社の森がある。そ る。杵崎神社付近には照葉材木のコジイ れが、天川神社の社叢て、ある。 林があり、海に面した絶壁の崖地には天 林内の高木層にはスギをはじめ、アカ 然のアカマッ林がある。 マツやクスノキなどが混生しているが、 瀬尸内地方は有史以前から人間によっ コジイ ( ップラジイ ) が少なくない。林 て山野が開発利用され、森本直生の多く のなかには多数の常緑の小高木や低木が を失ってきた。このような状況下て、、ア 見られ、ことにサカキ・クロバイ・イズ カマツの二冫木て、はあるが森本冓成種に センリョウなどが多くて、この地方にも 暖地性照葉樹を多数含む当材木は、自然 とあった林の模様がよくわかる。 の高い森オ直物相をしていて、瀬尸内西 シイノキは日本の暖地に分布し、スダ 部の本来の植物的自然を知る上て、まこと ジイとコジイの二つの変種にわけられる に貴重て、ある。主な照葉樹を挙げると、 が、このあたりて、は、コジイの林がおも コジイ・ウラジロガシ・アラカシ・ヤマ なものて、あることが、この社叢を見るこ モモ・クロガネモチ・ナナメノキ・シャ とによって理解て、きる。 ( 山中二男 ) シャンボ・タイミンタチバナ・イズセン リョウ・ヒサカキ・クスドイゲ・モッコ ミズンヾイ・クロノヾイ ク・カクレミ / ・ カンザプロウノキ・コノヾンモチ・リンポ クがある。小型の常緑樹にはジュズネノ ただのうみはちまんじんじゃしやそう 忠海八幡神社社叢 キ・マンリョウ・ヤプコウジ・ツルコウ 指昭和Ⅱ年 9 月 3 日 ジなどが、また、シダ植物のオオカグマ・ 所広島県竹原市忠海町 ホシダ・ヤワラシダ、つる植物のティカ 置八幡神社 * ・竹原市 カズラ・イタビカズラなど多くの暗い林 うっそう 床て、も生活て、きる陰生植物が林内に生育 八幡ネ上境内は樹木が密生し鬱蒼とし している。これらの高木のなかて、は、コ た社叢林となっている。この神社林には ジイ・ウラジロガシ・アラカシが照葉樹 霈アジアから日本の暖帯まて分布する 林の林冠を形成する能力がある。 モッコクが優占している。最大のモッコ 最近になって、アカマツの老齢木がマ クは目通り幹囲 1.9 メートルもある。 ックイムシなどによって次々と死亡して の他にクスノキ・エノキ・ムクノキ・ア いるのて、、将来は暖帯の本来の森オ直生 ラカシ・ナナメノキ・クスドイゲなどの て、ある照葉材木へと遷移してゆくものと 高木や瀬尸内に多いウバメガシもある。 思われる。したがって照葉樹の不信封を大 低木て、はマサキ・ネズミモチ・ナワシロ 切に保護する必要がある。 ( 中越信和 ) グミ・ヒサカキなどがあり高木も低木も 照葉樹が多い。しかしモッコクの稚樹が 少なく、このモッコク林が天然更新て、き るか否かは問題がある。林床草本にはイ ノコズチ・ドクダミ ミズヒキ・ツュク サ・キツネガヤ・オカメザサなど人為の 154 ・神社や寺の森

2. 日本の天然記念物 3 植物Ⅰ

いしなみ 石波の海岸樹林 指昭和 26 年 6 月 9 日 所宮崎県串間市市木 置農林水産省 * 串間市市木の野猿の生息地て、有名な幸 南大東島は沖縄本島の東方約 360 キロ れきち 島の本上側海岸の礫地に発達した亜牆 メートルの太平洋上に浮かぶほば円形の ・附直物の多い天然防 ) 嚇その規模は幅 島て、、南ポロジノ島とも呼ばれている。 りゆうきかん 約 150 メートル、長さ 1500 メートルにお 島はドーナッ形をした典型的な隆起環 よび、林内には 84 科 251 種類の植物カ寉 礁からなり、島のまわりは岩礁の断崖と なっている。島の中央は盆地状て、、一面 認されている。 この中心部の林分は、高木層にタブノ サトウキビ畑カ昿がっている。南大東島 キ・ヤプニッケイ・ホルトノキ・バクチ 東海岸植物群落は、島の東部に生育する ノキが多く、亜高木層にはヒメユズリ 海岸植生て、ある。明治 25 年 ( 1892 ) 、この ハ・ヤブッパキ・タイミンタチバナ等が 地に日本海軍が上陸し、記念として主 かい 90 パーセント以にの植被率て、覆い、林内 を建てたのて、、島の人々はこの場所を海 ぐんぼう は暗い。低本層にはギョクシンカ・タチ 軍棒と呼んて、いる。大東島は、明治 32 年 たまきはんえもん バナ・イソヤマアオキ・ハクサンボク・ ( 1899 ) 、八丈島出身の玉置半右衛門ら オオムラサキシキプ等が目立ち、林床に 23 人がサトウキビ作地として開拓して以 はアオノクマタケラン・オオイワヒト 来、内陸部のビロウを中心とした自然林 デ・ホソノヾカナワラビ・ムサシアプミ が伐採され、耕作地となったが、海岸の ナンゴクウラシマソウ・エダウチチジミ 岩礁地帯は自然伏態のまま残された。東 ザサが多い。また、ハカマカズラ・ハマ 海岸植物群落は、荒波の打ち砕ける岩礁 サルトリイバラ・フウトウカズラ・サカ 地帯に、潮のしぶきを受けながら、島の キカズラ・キジョラン・テリハツルウメ 成立した歴史とともに生きてきた。 モドキ等のつる植物が上層まて、はい上が この海岸植物には、塩生植物のシロミ り、ジャングルの様相を呈している。し ルスペリヒュ、岩に固着して生活してい かし、モクタチバナやショウべンノキ・ るイソフサギ、ハワイと小笠原に分布す フカノキが見当たらず、また樹高も 10 る低木のアッパクコ ( 島の人は実を食用 メートル以下て、あることから、遷移途ト としている ) 、ミクロネシアやオーストラ のムサシアプミータフ子集て、あろう。 リアからかけ離れて分布するボロジノニ この植材木には、ミカン科のタチバナの シキソウ、大東島固有のウスジロイソマ 老木が多生し、ハカマカズラ・ギョクシ ツ・オオソナレムグラなどが群生し、我 ンカ・リュウキュウススビトハギ・イモ が国て、他に類を見ない植物群落が分布し ネャガラ等の亜物生の希産植物が生育 ている。この他、ミズガンヒ。群落・シオ し、また日本には希有な礫 - の海岸材木 カゼテンツキ群落、内陸側にクサトべ て、あることは特筆すべきて、ある。なお、 ラ・モンパ / キからなる低〕イ財木が発達し オ家にはハマボウ群落やハマオモト群落 ている。これらの貴重な海岸植生も、近 ( 外山三郎 = 宮崎、南谷忠志 ) もみられる。 年、上木工事やさんご石灰岩採掘によっ て次第に破壊されつつある。 ( 宮城康一 ) みなみだいとうじま 南大東島東海岸植物群落 指昭和 50 年 3 月田日 所沖縄県島尻郡南大東村 海浜の植物群落・ 81

3. 日本の天然記念物 3 植物Ⅰ

生島樹林 指大正ロ年に月 9 日 所兵庫県赤穂市坂越 置大避神社 * 生島は兵庫県赤穂市坂越町の大きく東 南に開いた坂越湾の入り口に浮かぶ約 9 ヘクタールほどの小島て、ある。ちょうど、 天然の防波堤となっていることもあっ て、島物本が丿も硅神ネ上のネ或となってお り、古くから人の手も加えられず、自然 のままに放置されてきている。そのため、 全島が、スダジイ・アラカシなどからな る自然性豊かな照葉材木て、おおわれてい 高木層はスダジイを主体に、コジイ・ アラカシ・サカキなどが混生し、これら の樹冠のすき間を埋めるように、ヤブッ ノヾキ・ヒメユズリハ・カクレミノ・モッ コク・モチノキなどが亜高木層を形成し ている。低木層にはカナメモチ・クチナ シ・ネズミモチ・ヤプニッケイ・イヌビ ワなどが、下層の低木層には、センリョ ウ・マンリョウ・アリドオシ・ジュズネ ノキ・イズセンリョウがみられる。林床 の草本層には、カラタチノヾナ・ナガノヾジャ / ヒゲ・ヤプラン・ヤプコウジのほか、 ティカカズラ・サネカズラ・ムペなどの つる植物も加わっている。このような種 類組成から判断して、この照葉樹林は瀬 戸内の少雨地方に特有のコジィーカナメ モチ群集に当たるシイ林と考えられる。 かいしよく 島の東南部は海蝕による崖となって いて、その肩部にイプキの古木が生育し ている。その下方の岩角地の一部には、 ウノヾメガシ・トべラ・マノレノヾシャリンノヾ ふうしよう イ・ヒトッパ・ツワプキなどの海岸風衝 いくしま いくしま がけ 神島は田辺湾の中央にあって周囲約 1 キロメートル、おやま・こやまと呼ぶ大 小二つの小島からなる無人島て、ある。古 来、海上鎮護を祈って神社がまつられ、 島本をおおう照葉植材木はネ木として人 びとから厚い保護を受けてきた。そのた め平安の昔から熊野を訪れる人の歌にも 数多くその名が見られる。 この島の森林を概括すると、海に接す る外側のウバメガシ中央部の広い地 域を占めるタブ林タイプの二つに大別て、 きる。ウバメガシ林はトべラ・マサキな どをともなう海岸の岩地特有の典型的な ものて、あるが、タブ本料或て、はむしろタブ ノキが少なく、ホルトノキ・バクチノキ・ カゴノキ・モチノキなどの大木が高さ 12 ~ 15 メートルの大森林を形成し、樹下に はホソノヾカナワラビ・ヤマアイ・キノク ニスゲなどが密生している。また、この 森林には暖地性のつる植物が多い。地表 に広がり樹間を埋めているものにティカ カズラ・フウトウカズラがあり、巨大な つるとなって古木にからみ、樹上高くま て、はい上がって大きい棚をつくっている ものにサカキカズラとハカマカズラがあ る。 みなかたくまぐす この島の生物相については、南方熊楠 が大正から昭和にかけて詳細に研究し、 ハカマカズラ・キシュウスゲはじめ多く の学術十 . 貴重な粘菌類の生育することを 報告した。このため、昭和 4 年 ( 1929 ) には天皇陛下の行幸をあおぐこととな り、南方が御進講している。 昭和 31 年 ( 1956 ) 、動物相についても調 査がすすめられカシマイボテカニムシ・ ノミガイなど森林内に生活する亜壯性 の貴重な小動物が多数知られるように 低 : イ財木が発達している。 か 神島 囮昭和年に月 24 日 所和歌山県田辺市 ( 湾内 ) 闇田辺市 146 ・神社や寺の森 ( 中西哲 ) なった かすがじんじやけいだい 闇春日大社 * 所奈良県奈良市春日野町 囮大正に年 3 月 7 日 春日神社境内ナギ樹林 ( 後藤伸 ) みかさ 御蓋山 ( 海抜 293 メートル ) は特別天然 記念物春日山原始林を擁する春日山の西 に接し、三角錐状の美しい形をした山て、、 西麓に春日大社 ( 全国に春日神社が多い のて、、はっきりさせるため春日大社と呼 んて、いる ) が祀られている。ナギ材木は春 日大社社殿の東側、いいかえると御蓋山 の西斜面一帯から西へかけて、飛火野の 東端に至る広い範囲にほとんど糸羽大を なしてひろがっている。このうち天然記 ; ま物に指定されているのは、春日大社社 殿、摂社若宮神社東方を中心にした約 9.4 ヘクタールて、ある。 春日大社のナギは自然分布て、はなく、 ネリ祀に際して、時の権力者の氏神て、 もあり、珍樹としてナギが献木され、植 栽されたものから今日見るように広がっ たと考えられている。ナギは雌雄異株て、 あるから、植栽当初に雌株と雄株の配合 がよかったことはいうまて、もないことて、 ある。問題はなぜこのように糸相大をな し広範囲に広がったかて、ある。これにつ いては、第 1 に春日大社境内に放し飼い にされているシカが食べないことがあげ られる。ナギ植材木は大きな木を除いて、 シカの好まない植物から構成されると いってさしつかえない。事実、ナギの他 に、アセビ・イヌガシ・イズセンリョウ・ ナチシダ・コバノイシカグマなどがわず かに生育する程度て、ある。第 2 にナギの アレロバシイ ( 他感作用 ) があげられる。 ナギの生産物質が土中に溶け込み、他の 植物 ( この場合は他種 ) の発芽、成長を抑 制するとするものて、ある。第 3 にナギの 初期成長は明るい林床程度の方が全天下 より良いことて、ある。 指定地て、は、実測樹高 27 メートルの高 木から本年芽ばえた幼苗に至るまて、各階 層をナギが占めるが、このような美しい 抃木は他に類がない。また、年輪から推 きゅうしゅ 定して 1000 年を越える朽株があるとこ ろからひじように古いものて、あることが 想像される。 ( 菅沼孝之 )

4. 日本の天然記念物 3 植物Ⅰ

みやがわじんじゃしやそう 宮川神社社叢 指昭和 55 年 3 月図日 所新潟県柏崎市宮川 マズミ・ヒサカキ・オクチョウジザクラ コマュミ・サンショウ・ヒメアオキ・ガ 混生している。低木層の植被率は高く、 ラ・ケヤキ・エゾイタヤなどがわずかに チメートルに及ぶ。中にミズナラ・コナ ルのカシワが優占し、太いものは 50 セン りにあり、胸高直径 15 ~ 30 センチメート カシワ林はシロダモ林の海岸側の外周 温帯の草本が混生している。 クサイチゴ・ヤプラン・シラスゲなど暖 ンモンジスゲなどの日本海要素の植物と レサイシン・コシノコノヾイモ・コシノホ 工ンゴサク・オオタチッポスミレ・スミ 周辺には、トキワイカリソウ・ミチノク どのシダ類が多い。なお林内およびその ビ・アイアスカイノデ・サカゲイノデな リョウメンシダ・べニシダ・オクマワラ クチョウジザクラなどがある。草本層に ャッデ・サンショウ・エゾアジサイ・オ し、低木層にはヒサカキ・ヒメアオキ・ 混じえる。亜高木層はヤブッパキを主と シ・エゾイタヤ・ミズキなどの落葉樹を プノキなどの常緑樹木があり、ケンポナ シロダモ林は、高木層にシロダモ・タ 然記念物に指定されている。 ない貴重な常繍ム葉材木として、国の天 態を残す景観の一つて、あり、県内に数少 林は日べ餠則の海岸丘陵の自名財直生の形 シロダモーケヤキ群落が成立している。樹 面のネ上の背後および左右の斜面には、 り口付近の斜面にカシワ林があり、風背 節風の風衝面にあたる尾根すじや神社入 て、冬季海からの季節風をさえぎる。季 の背後および左右を小高い丘がとりまい の南側の海岸丘陵のすそにあって、社搬 宮川神社は、柏崎市宮川にあり、集落 はこがたはちまんぐうしやそう 筥堅八幡宮社叢 指昭和 3 年一月引日 所新潟県岩船郡山北町勝木 置筥堅八幡宮 * がつぎ 羽越本線勝木駅に近く、海抜約 50 メー トルの小丘本が原始オ林目を形成して自 しやそう 然伏態に保たれている社叢て、ある。朽土 は深く湿潤を保ち肥えている。この小丘 の南東部はタブノキ・ヤブッパキを主と した常糸喇ム葉樹が多い。スキ・ケヤキ・ イヌシデ・トチノキの高木カ隋攵生する。 樹齢約 300 年といわれる竜登杉がある。 樹林の下にはウリノキ・ムラサキシキ プ・ヒメアオキなどの低木、林床にはキ ヅタ・オクノカンスゲ・クマワラビなど が多く、マノレノヾグミ・オオノヾジャノヒゲ など暖地性の植物も生育する。北西側の 日本海に面した斜面は急て、オオバボダイ ジュ・シナノキ・イタヤカエデなどの広 葉樹が多く、タニウッキ・イヌザンショ ウ・コクサギなどの低木が生え、春には 林床一面にカタクリの花が咲いて美し また風変わりなギョウジャニンニク・ コシノカンアオイ・オオノヾキスミレなど もみられる。コシノカンアオイはここ勝 木て、採集されたものが原標本て、、花は大 きくてめだち、越後ては山地に広く分布 し、山形県から福井県にわたって日本海 側に生育する。葉面には光沢があり、花 は地 - E または多少地下に埋もれ、鐘状球 形て、黒紫色の花を開く。 このように南東側と北西側との対照は たいへん顕著て、、日本 : 餠則の沿岸部の特 色として植生上からも注目されると共 に、北越地方の日べ毎沿岸における代表 的オ目を保っていることて指定された。 ( 野田光蔵 ) などの樹木が目立つ。 138 ・神社や寺の森 ( 石沢進 ) すずじんじゃしやそう 須須神社社叢 指昭和 50 年 6 月 26 日 所石川県珠洲市三崎町 闇須須神社 須須神社は、崇神天皇の代に創建され、 当初、山伏山の山項に本殿があったが、 天平勝宝年間 ( 749 ~ 75 のに山伏山から 一崎町寺家に週巫し、これ以来、寺家に 本社、山伏山に奧宮をまつっている。 のように古い来歴を持っところから、航 海安全、北方鎮護の神として環州郡一円 の住民から広く崇敬の的となり、とくに はせべよりつら 時の支配者、たとえば長谷部東ル里・前田 利家などから社地の寄進を受けている。 このような関係から、古来、斧を入れた ことがなく、原植生をよく保存している。 本社叢は高座宮 ( 1 . 7 ヘクタール ) と金分 宮 ( 1.2 ヘクタール ) の両宮から成り、と もにスダジイ林て、、高木層のスダジイは 高さ 20 メートル、胸高直径 30 ~ 80 センチ ぐらいて、ある。亜高木層はモチノキ・ヤ ブッパキ、低木層はモチノキ・スダジイ・ ヒサカキ、草本層はヤプコウジ・ツルア リドウシ・ティカカズラ・ツルシキミ ヒメアオキ・スダジイなどが優占してい る。この社叢林て、最も特徴的なものは、 ツルシキミがよく繁茂していることて、あ り、林下にみられるマメヅタ・オモト・ ムペ・イタビカズラの存在とともに未 深く、貴重な森林て、ある。 ( 里見信生 ) 鹿島の森 指昭和年 8 月 8 日 所石川県加賀市塩屋町 闇加賀市 北側は、大聖寺川河口に接し、南と西 側は、北潟湖に臨み、かっては島て、あっ たが、今て、は大聖寺川の上砂の堆積に よって、塩屋町から陸続きになっている。 周囲は急峻な斜面て、約 1 キロメートル、

5. 日本の天然記念物 3 植物Ⅰ

妹山樹叢 指昭和 3 年 3 月 24 日 所奈良県吉野郡吉野町妹山 置吉野町・大名持神社 * いもやまじゅそう ちな じゅそう おお 保存されているのて、天然記念物に指定さ 産するばかりて、はなく、樹叢全体がよく ウ・テンダイウヤクなどの暖地性植物を 本樹叢は分布上顕著なツルマンリョ されている。 てタイミンタチノヾナ属 ( Myrsine ) に移 を研究したウォーカ—(Walker) によっ 命名されたが、現在はヤプコウジ科植物 て斤属を作り Anamtia stolonifera と の山て、発見され、大名持神社の名に因ん キ ) は京都大学小泉源一博士によってこ ツルマンリョウ ( ー名ツルアカミノ ろがっている。 北斜面にウラジロが大群落をつくってひ 生する。このほか不岩泉部にヒトッパ、西 科 ) 、テンダイウヤク ( クスノキ科 ) が自 カネ科 ) 、ナガバジュズネノキ ( アカネ ウが群落をつくり、また、ルリミノキ ( ア なく、山項付近の林床にはツルマンリョ 妺山樹叢は森林の保存のよさだけて、は れる。 ラジイ林と小面積のイチイガシ林がみら らにゆるい傾斜になる北向き斜面にツブ に比べてややゆるやかて、、山麓部は、さ はツブラジイ ( コジイ ) 林が、南向き斜面 ノキ林がおおい、急傾斜の南向き斜面に 妺山の山項を中心とした稜線部はヒ りようせん ている。 ために、まれに見る原始的な樹叢を保っ り、神山として樹木の伐採を禁じられた 名持神社が祀られた貞観元年 ( 859 ) よ じようがん なもち して有名て、ある。この妹山の西南麓に大 て、、浄王肉の「妹背山婦女庭訓」の舞台と いもせやまおんなていきん じようるり る妹山は海抜約 260 メートルほどの小丘 紀ノ川の上流、吉野川の右岸にそびえ れた。 ( 菅沼孝之 ) えすざき 江須崎暖地性植物群落 指昭和 28 年Ⅱ月図日 和歌山県西牟婁郡すさみ町江住 すさみ町 江須崎は和歌山県西牟婁郡すさみ町江 住の小さな半島からわずかに狭い水路て、 へだてられた、周囲約 1.5 キロメートル、 面積 7 ヘクタールの小島て、ある。全島が 春日神社のネ或として保護されてきたの て、、自然性の高い照葉抃木が残存してい たが、昭和 34 年 ( 1959 ) の伊勢湾台風や、 昭和 35 年 ( 1960 ) の島内一周道路の建設 によって、古老木の衰退や本尠ビが進み、 本林目は劣イヒの様相を呈している。 植材木内に生育しているハカマカズラ・ シマサノレナシ・ナギラン・ノシラン・ユ ウコクラン・ハマセンダン・カッモウイ ノデなどは当地が分布の北限あるいは北 限付近に当たっている。また、マッパラ ン・ホウライカズラ・イプキ・キイセン ニンソウなどの希少種も生育している。 最も広い面積を占めているのは、スダ ジイを中心とした植抃木て、、高木層にはス ダジイのほかに、ホルトノキ・クスノキ・ イヌマキ・ヒメュズリハなどの植物が見 られる。亜高木層にはイヌマキ・ヤブッ パキ・タブノキ・ ミズバイなどが繁茂 している。低木層にはタイミンタチバ ナ・マンリョウ・センリョウ・シロダモ・ モチノキ・ネズミモチ・モッコク・カク レミノ・ヒサカキ・ヤプニッケイなど多 数の常氏木カっている。草本層には ホソノヾカナワラビ・コノヾノカナワラビ・ アリドオシ・フウトウカズラ・ナギラン・ ムペなどが見られる。また、ハカマカズ ラ・ホウライカズラ・サカキカズラ・シ マサルナシ・ティカカズラなどのつる植 おうせい 物が各階層て、旺盛に生育している。この ような不頁組成から判断して、このスダ ジイ林は四国南部から紀伊半島の温暖多 ミズ 雨地域に発達しているスダジィー バイ群集に相当するものと考えられる。 島の周辺部にはウバメガシ・トべラ・ シャリンバイ・イプキなどからなるウバ メガシ林が成立し、海浜にはハマアザ ・キノクニシオギク・ハマナタマメ・ ハマユウ・ビロウドタッナミなどの海浜 植物も分布している。 ( 服部保、中西哲 ) いなつみじま 稲積島暖地性植物群落 指昭和 46 年 3 月一日 所和歌山県西牟婁郡すさみ町 闇すさみ町 すさみ 稲積島は周参見湾のほば中央に浮か ぶ、周囲約 1 キロメートル、面積約 4 へ さんのうおうじ クタールの小島て、ある。山王王子社の社 叢としてイ隻されてきたために、良好な 照葉柆材木が全島をおおっている。また、 ここにはオオタニワタリ・ハマセンダ ン・オオバヤドリギなどの分布上の貴重 種も生育している。 きゅうしゅんがけ 島の南側には急峻な岸カ昿がり、そ こには、ウノヾメガシ・トべラ・シャリン バイ・ヒトッパなどを構成種とするウバ メガシ林が発達している。 島の北部は傾斜が比較的ゆるやかて、、 そこにはスダジイを主体とした照葉材木 が成立している。その高木層て、はスダジ イにイヌマキ・イスノキ・ホルトノキ・ タブノキなどが混生し、亜高木層て、は、 ヒメユズリハ・ミミズノヾイ・モッコク・ カクレミノなどの生育が顕著て、ある。低 木層にはタイミンタチバナ・マンリョ ウ・クチナシ・ネズミモチ・イヌビワ・ ャプニッケイなどが茂っている。草本層 て、はホソノヾカナワラビ・べニシダ・ヒト ツノヾ・タマシダなどのシタ・植物のほか、 ティカカズラ・ツワプキ・ヤプラン・ツ ルコウジ・ヤプコウジなどが目につく。 つる植物のサカキカズラが低木層から高 木層にわたって高い被度て、出現している のも珍しい。このスダジイ林は四国南部 から紀伊半島、東海地方の太平 : 判則温暖 多雨地域を領域とするスダジィー バイ群集に当たるものと考えられる。 ( 服部保、中西哲 ) 神社や寺の森・ 147

6. 日本の天然記念物 3 植物Ⅰ

高山や岩石地の植物群落 高山帯は、植物にとってはきわめてきびしい環境て、ある。一年の大半は極寒な気候て、、短い夏の間に生長し、 花を咲かせる。現出するお花畑は、礫地のもの、雪田のものなどさまざまて、あるが、いずれも自然美の極致と いえよう。指定地に限らず、すべての高山帯は保護すべき価値をもっている。高山て、はない岩石地も、生育条件 のきびしさて、は類似している。 アポイ岳高山植物 群落 だけ 特別天然記念物 指昭和図年 9 月 7 日 ( 天 ) 昭和 27 年 3 月 29 日 ( 特天 ) 所北海道様似郡様似町 闇北海道 アポイ岳は北海道南部、太平洋に面し た日高海岸に臨む海抜 810 メートルの小 山て、、北はビンネシリ岳を経て日高と十 せきりよう 勝を分ける北海道の脊梁、日高山脈に連 なる。東は幌満川に区切られ、南はほと んど直接、太平洋に落ちこんて、いる。 標高はあまり高くないというよりむし ろ低山に属するというべきて、あろうが、 占い地質構成をもつ日高山地の一環とし かんらん て橄欖岩、蛇紋岩などの超塩基性岩から 成り、これに由来する特殊な植物の生育 するところとして有名て、ある。低い標高 にもかかわらず、高衄直物が多く、その 群落がよく発達するのにはこれらの基岩 の存在と共に、海岸に近くて夏季によく 海霧がかかり、風も強いことなど気象的 条件もまた大きくかかわっているものと 考えられる。 主として南側と東側の山麓斜面には落 葉広葉材木が上しており、多くの抃重 が含まれるが、中て、もミズナラとイタヤ カエデが多い 林床には工ゾミヤコザサ群落が広く分 布するが、カマッカ・ガマズミ・サンシ ョウ・ナッハゼ・ナニワズ・コゴメウッ ギなどもみられる。 針葉材木と、針葉樹と広葉樹カ鯤じっ た林は斜面によっては標高 700 メートル 18 ・高山や岩石地の植物群落 付近まて達している。針葉材木には工ゾ マツートドマッ林と、トドハダゴョウ ( キ タゴョウ ) ーアカエゾマッ林とがあり、ゴ ョウマッ林は主として表上の薄い尾根筋 にみられる。ダケカンバ帯の幅は比車勺 せまい 標高 500 メートル前後の馬の脊から項 上に至る西尾根に高目」植物群落がよく発 達する。固有種としてはアポイカンパ・ ヒダカソウ・アポイヤマプキショウマ・ アポイキンバイ・サマニオトギリ・ホソ バノコガネサイコ・アポイアザミ・エゾ コウゾリナ・ヒダカトウヒレン・エゾイ ヌノハナヒゲ、固有変種としてアポイツ メクサ・アポイジャニンジン・チャポヤ マハギ・アポイアズマギク・アポイゼキ ショウ・エゾルリトラノオなどがあるほ か、希少種としてサマニカラマツ・ヒダ カミセノヾヤ・ミヤマハンモドキ・ヒダカ イワザクラ・ホソバトウキなどがみられ る。 しりべしやま ( 辻井達一 ) 後方羊蹄山の高山植物帯 囮大正 10 年 3 月 3 日 所北海道虻田郡倶知安町・京極町・ 喜茂別町・真狩村・ニセコ町 間北海道 後方羊蹄山は普通、羊蹄山または俗に その山の形から蝦夷富士とよばれる海抜 1893 メートルの円錐形の休火山て、あっ しりべし て後志地方のほば中央に位置する。 山麓から無立木地帯に至る倶知安登山 路の左右約 400 ~ 500 メートル、および山 項にかけての高山帯が指定地に含まれ る。 完全な独立峰て、、均整な円錐形を示す ために植生の垂直分布もきわめて均整 、はっきりと識別されるのて、、標式と に しても学術的価値が高い。 標高 300 ~ 650 メートルは低山性広葉 樹林帯、 650 ~ 1050 メートルは工ゾマッ とタ、ケカンノヾ帯、 1700 メートル以上はハ イマッ帯に区分される。低山・ム葉材木 にはイタヤカエデ・シナノキ・ミズナラ などが多いが、シウリザクラ・オヒョウ・ ノ、ノレニレ・エゾヤマサクラ・ヒロノ、ノキ ハダ・オニグルミ・ケヤマハンノキ・ リギリ・ホオノキ・ヤチダモなどが混生 する。工ゾマツからダケカンバ帯の下生 えにはチシマザサなどのササ類が優占す るが、その上半部にかけてはミネカエ デ・オガラノヾナ・ミヤマナナカマドなど がみられるようになる。ハイマッ帯の下 生えとしてはタカネガリャスとコケモモ が多いが、ミヤマエンレイソウ・マイズ ルソウ・ゴゼンタチノヾナ・コミヤマカタ バミなどもよくみられる。 ハイマッ帯のさらに上部には山項にか けていわゆる高山性お花畑が展開する。 ハイマツは次第に疎生するようになり、 低灌木伏となる。高山植物としてはキク バクワガタ・ホソノヾオンタデ・イワギキョ ウ・イワプクロ・ミヤマキンバイなど乾 性の不頁が多い 部分的にキバナシャクナゲ・エゾノッ ガザクラ・ガンコウラン・コケモモなど

7. 日本の天然記念物 3 植物Ⅰ

護に留意することが望ましい。 ( 倉内一二 ) 指昭和 50 年 6 月 26 日 一位森八幡神社社叢 いちいもりはちまんじんじゃしやそう るといわれ、本来の自然の姿をとどめる と考えられるいろいろな動も棲んて、い も豊かて、、一殳的にこのような森にいる の影響をほとんど受けておらず、植物相 は神社の境内林て、ありながら大部分が人 ヤキなどの大木も生えている。この樹叢 他にキワダの大木、カエテ頁、クリ、ケ チ近いイチイが 160 本ほどもある。この メートルの大木もある。また幹囲 30 セン 他幹囲 2.7 メートル、 2.6 メートル、 2.3 齢は 500 ~ 600 年と推定されている。その 10 メートル余、幹囲が 2.85 メートル、樹 がイチイて、、なかて、も最大のものは樹高 ものが約 250 本あるが、そのうち約 200 本 内の樹木の総数は幹囲 30 センチ以上の の優占した針葉植材木となっている。社叢 イワガラミなどが見られ、本にイチイ トチノヾニンシン・ホソノヾノトウゲシノヾ・ オシダ・リョウメンシダ・ハエドクソウ・ チゴュリ・サラシナショウマ・ノブキ・ プラ・ヤマウルシなどが生え、草本層に はイチイ・ヒノキ・ヤマモミジ・コシア ずかにまじえている。亜高木・低木層に トルほどのイチイが優占し、ヒノキをわ る。このイチイ林は高木層に 11 ~ 15 メー カラマツや伐採後の再生林となってい 林が残されている。この他の山地一帯は ルて、あるが、この境内にイチイの立派な この社叢の指定面積は 3401 平方メート 1300 メートルの地点、小駮の隣にある。 ら東北へ 100 メートルぐらいの海抜約 八幡神社の社叢は、日和田バス終点か 闇高根村 所岐阜県大野郡高根村日和田中村垣内 こなひめのみことじんじゃ 伊古奈比咩命神社の アオギリ自生地 指昭和 20 年 2 月 22 日 所静岡県下田市白浜 闇伊古奈比咩命神社 * 上は、伊豆最古の神社として知 られ、伊豆半島の東南部、下田市白浜の 海岸に面した小高い丘を境内としてまっ られている。そこは、下田市の中・討野か ら東北に約 3 キロメートルの地点て、あ る。 アオギリ自生地は、海岸に面した密な ヒメュズリハやトべラ・スダジイなどの 常純ム葉植材木の北側のやや平坦地がその 中心となついる。アオギリの自生地北限 のものとして天然記念物に指定されたこ この群落は、個体数も多く、良好な生長 を示している。樹高は約 9 メートルくら いて、、林内にトべラ・イヌマキ・アオキ が散生する。林床にはフュイチゴ・ツワ プキなどが見られる。また一部のアオギ リは、国道に沿った神社正面左手にも見 ることがて、きる。 アオギリは主として珱球以、南の亜 ? 帯 に分布する落葉樹て、、樹高 15 メートルに 達するアオギリ科の植物て、ある。緑色を した太い一年生枝が勢い良く伸びるの て、、幹から緑色の棒が幾本も突き出て奇 妙な姿となる。葉は掌状て、、長さは 20 セ ンチくらいて、ある。しばしば庭園や街路 この森林には樹高 10 ~ 18 メートルほ どのスダジイが優占し、これにウバメガ シ・ホルトノキ・クスノキ・オガタマノ キ・タブノキ・イスノキ・ヒメユズリハ・ ヤマモガシ・ミサオノキ・バリバリノキ・ ミズバイ・カンザプロウノキ・タイミ ンタチバナ・トキワガキ・イヌマキ・リ ンボク・ノヾクチノキ・ヤマビワ・コノヾン モチなどの暖地性の高木を混生し、草本 層にアリドオシ・ルリミノキ・イズセン リョウ・ヒトッパ・ミヤマノコギリシダ・ オオカナワラビなどが生育した暖生の 海岸林て、ある。 これらの林内にはクサマルハチ ( へゴ 科 ) ・ヤワラハチジョウシダ ( ワラヒ斗 ) ・ ヒメハシゴシダ ( オシタ下 D など、日本 て、の最北の自生地をなすシダ植物が生育 するのをはじめ、暖地性植物が多く生育 している。 特に注目されるのは、ヘコ驀斗のクサマ ルハチが本リ、トに発見された最初の場所て、 あることだ。その後この付近て、いくらか 発見されたが、この地方が日本て、の分布 の北限て、あり、またへゴ・リュウビンタ イも付近に自生するなど植物分布地理上 に重要な或て、ある。 に植えられる。 くきじんじやじゅそう 九木神社樹叢 指昭和に年 4 月ロ日 所三重県尾鷲市九鬼町 闇九木神社 * ( 近田文弘 ) 貴重な森て、ある。 ( 南川幸 ) この樹叢は、九鬼湾の入り口にやや半 島状に突出した小さな岬の上にある九木 ネ土にあり、典型的な暖帯地方の海岸林 て、ある。また林内には暖地性植物が多く 生育している貴重な森林て、ある。 ( 南川幸 ) 神社や寺の森・ 143

8. 日本の天然記念物 3 植物Ⅰ

波波伎神社社叢 指昭和 9 年 5 月一日 所鳥取県倉吉市福庭 置波波伎神社 * 山陰本線倉吉駅の北約 1 . 2 キロメート ル ( 日べ毎岸から約 4 キロメートル ) 、天 神川右岸の沖積平野に小さく突出した丘 陵末端にある。山ド鑾或の低地部の丘陵 項部や、斜面上部のやや乾くところの極 相林はシイ林て、あるが、 , この社叢もそ の典型的なものの一つといえる。高木に はシイが 8 割ぐらい、斜面下部や小さい 谷状の所にはタブノキやウラジロガシも みられる。亜高木層にはツバキが圧倒的 に多いが、クロキ ( 沿岸部に多い ) ・モチ ノキ・ヤプニッケイや、やや低湿部分に はサカキも入っている。また、低木層に はヤダケが多いところもある。全体とし てシイの古木が多く、かっての「伯耆一 の宮」のネ木として、長くその自然生 が保たれてきたことを物語っている。社 殿の東方には店新もある。 社叢西側の斜面下方に植えられたモウ ソウチクが次第に上方に向かって侵入し つつあるのて、、今後の保存上注意を要す ははきじんじゃしやそう てん 分的にシイ・ウラジロガシ・ヤマモミジ もまじっている。亜高本にはツバキが多 いが、より湿度の高いところにはサカキ も入り、ヤプニッケイも少しまじってい る。よく茂っており、低木・草本層は貧 弱て、ある。 近年ドクガの一種が多発してその幼虫 がツバキを食い荒し、また、タブノキに も害虫がみられるケースが出てきた。社 叢などの保護、管理に関して、新しい間 題が生じたことになる。 はくとじんじやじゅそう 白兎神社樹叢 指昭和に年に月 8 日 所鳥取県鳥取市白兎 闇白兎神社 * ( 越智春美 ) くらたはちまんぐうしやそう 倉田八幡宮社叢 指昭和 9 年 5 月一日 所鳥取県鳥取市馬場 倉田八幡宮 ( 越智存美 ) せんだい 鳥取駅の南方約 3 キロメートル、千代 川下 ~ 或の鳥取平野の平坦部、水田に囲 まれた湿度の高いところに存在する。山 ド鑾鬱或低地部の極相林は照葉材木て、ある このような平坦な湿度の高いとこ ろて、はタブノキ林が普通て、ある。 この 社叢は、平地部て、は残されにくい、典型 的なタブ / キ林て、、学術的にも貴重な、 珍しい存在といえる。 高木はタブノキが 7 ~ 8 割を占め、部 150 ・神社や寺の森 鳥取市の西方約 11 キロメートル、海岸 ぞいを走る国道 9 号線のすぐ南側、海岸 に迫る丘陵の東端に位置している。白兎 “なば は、神話 ( 伝譓て有名な「因幡のシロ ウサギ」に由来する地名て、、それがネ上 ( 祭神は事代主命 ) の名前にもなってい る。 この社叢のある丘には、正面 ( 北 ) か らの石段を上ると、参道の右側に凹地が あって、その底部は十ばつの際にも水が 絶えないという「不増不減バとなっ ている ( ここにはガマが生え、そのガマ がシロウサギの伝説と関係しているとも いわれる ) 。ここの社叢て、はその池をとり まいて低湿部の西側にタブノキ林、その 上方、西から南側の高所はかなり多くの クロキをまじえたシイ・モチノキ椒北 から北西側のやや高くあるいは不岩泉十 . に なるところはクロマッ林となっている。 また、社叢の北がわ、参道の向かって右 側のところて、は、参道沿いに北風がよく 吹き抜けるためか、小径のシイ・モチノ キ・ヤプニッケイなどが密生して、風衝 オ和勺相観を示す。この社叢にも前記クロ キのほか、トべラ・ツワプキもみられる。

9. 日本の天然記念物 3 植物Ⅰ

の直径は 50 センチを越す。優占種はスダ ジィまたはイスノキて、、そのほか、常緑 木本のヤブッパキ・ヤプニッケイ・ハマ ビワ・シロダモ・クロキ・カクレミノ・ ホルトノキ・モッコク・タブノキなどや、 常緑草本のオオカグマ・フウトウカズ ラ・ノシラン・ヤプラン・アオノクマタ ケラン・ナガノヾジャノヒゲ・べニシダ・ オニャプソテッなど、それに常緑つる植 物のティカカズラ・サネカズラ・ムペ・ サカキカズラ・フウトウカズラなど、常 緑植物が数多く生じる。山項近くにはア コウ ( クワ科 ) の大木があり、四方に枝 を伸ばし気根を垂れ下げて、一部は地面 にとどいて支本甘艮となっている。 この森オ羊落は、対馬暖流の影響を強 くうけている五島列島中部の低地の自然 林を代表するものて、ある。かってはこの 地に、オオタニワタリ ( 南方系の大形の シダ植物 ) が足の踏み場もないほど生育 していたといわれるが、いまは甜隻のた め姿を消してしまった。 うさじんぐうしやそう 宇佐神宮社叢 指昭和 52 年 4 月に日 所大分県宇佐市南宇佐 間宇佐神宮 ( 伊藤秀三 ) 宇佐神宮は平地に接した海抜 36 メー トルの小高い丘の上に鎮座し、これを うっそうとした森が取り巻いている。 の森はイチイガシおよびクスノキを主と する常純ム葉材木て、、自然伏態をよく保 ち、その面積は 4 ヘクタールにおよんて、 いる。 この森林の階層構造についてみると、 咼木層は二層に分かれており、第一層は 高さ 20 ~ 30 メートル、胸高直径 40 センチ 以上のイチイガシ 150 本、クスノキ 40 本、 このほかホルトノキ・タブノキなど約 50 本から形成されている。この中には胸高 直径 70 センチ以上のイチイガシの巨木 70 本、クスノキ 25 本が含まれている。第 二層は高さ 10 ~ 20 メートル、主な抃重は アラカシ・カゴノキ・イスノキ・ヒメユ ズリハ・ヤマビワなど。亜高木層は高さ ミズバイ・ナギ・ヤ 4 ~ 8 メートル、 ブッパキが優勢て、ある。低木層はイズセ ンリョウ・アリドオシ・アオキ、草本層 はホソノヾカナワラビ・ツルコウジの優占 度が咼い。 イチイガシ林内て、 161 種の維管束植物 が観察されているが、このうちナギ・ク ミズバイ・イズセ スノキ・ヤマビワ・ ンリョウ・センリョウ・イヌマキ・ホル トノキは特にイチイガシ林と結びつきが 強く、群落学上はこれらを標徴種とする イチイガシ群集と命名されている。 イチイガシは関東南部以西に分布し、 各地の水分条件に恵まれた山麓や台地に 森林を形成していたと思われる。しかし、 材質がすぐれているのて、家具・農具に広 く利用されて伐採され、生育地は環境条 件に恵まれていたため、早くから田畑や 住居地に開発されたようて、ある。現在、 イチイガシの自然林はひじように少な い。宇佐神宮の境内林は、その規模が広 く、自大態がよく保たれているのて、、 学術ーヒの価値はきわめて高い。 ( 須股博信 ) いかんそく 神社や寺の森・ 159

10. 日本の天然記念物 3 植物Ⅰ

植物系天然記念物の実態と間題点 沼田 植物系の天然記念物を大きく巨樹名木式の単木中 心のものと、草本や木本の植生を中心としたものと に分けることがて、きる。そのうち単木的なものはわ が国の天然記念物の一つの大きな流れて、もあるし、 数が多いのて、、第 5 巻 ( 植物Ⅲ ) として分離した。 のこりの面的な天然記念物として植生があるのて、 あるが、数の上て、うまく分けられない部分があり、 編集の便宜上、草本植生の巻に寺社の森 ( 社寺林と もいう ) をつけ加えることとした。 草本性の植生としての第一群は高山植物群落また は高山植物帯の名をもつものて、ある。高山帯の定義 も人により必ずしも同じて、はなく、生態学的には議 論のあるところて、あるが、たとえば『原色新日本高 山植物図金 ( 清水建美著、保育社 ) のようなものは一 般に疑義なくうけいれられている。 しかし、ある食虫植物群落の説明をみるとウメバ チソウのような高山植物を交えていると、さも特別 変わったような解説がみられる。和歌山県の紀伊半 島南部の山々のように、ふつう暖地と考えられると ころて、水系ぞいにシャクナゲが標高 50 メートルま て、一ド降したり、北海道の弟子屈の近くの硫黄山のよ うに、硫気孔の近くて、はハイマツが低地に下降した りという現象がある。これはドイツのレッチェルト ( 1969 ) がその著書『極限地の植物』て指摘しているよ うに、過湿、イオウ酸化物などの影響て、、高山性の ものが下降するといった現象はよくみられるところ て、ある。したがって高山植物は中生的 ( 水、大気、上 壌などて、 ) な条件のもとて、、本来のふるさとが高山に 4 ・ あるものということて、諒解されるて、あろう。 う。そういえば、先の高山植物群落て、も湿原て、も数 ィじ、 砂丘て、あるが、指定すべきものがいくつかあると田 よい。日本には内陸砂丘はないのて、、もつばら海岸 んなくなってしまう ) 、海岸砂丘植生なども注目して べきて、あるし ( そういう立地条件のところはどんど べきて、あろう。海岸の塩性湿地ももっととりあげる と系統的に北から南まて、指定すべきところを見直す かに行きあたりばったりて、あったかがわかる。もっ は指定が意外に少いのに驚いた。今まて、の指定がい 7 ヵ所あるが、まわりを海に囲まれたわが国として 海浜または海岸植物群落 ( 沿岸材木をふくむ ) が というのて、も困る。 よいと思う。用語が古くさくて不統一なのが文化財 なものを作った機会に名称や概念の再検討をすると いかに用語が不統一て、あるかがわかる。本書のよう うして立地条件の類似したものをならべてみると、 の名を冠したものがずらっとならぶのて、あるが、 炭形成、湿生、水生、池沼、沼沢、浮島、湿原など 基質の湿った方については、植物群落の前に、泥 群落などもこの章に加えてある。 ドラともよぶ。本書て、は風穴、石灰岩地、崖錐ー E の 高山帯はその上にある草本植生帯て、あり、高山ツン の低木林 ( 日本て、はハイマッ ) 帯が亜高山帯て、あり、 パの人がよくとる考え方からすると、森林限界の上 しているのかどうかとなるとむずかしい。ヨーロッ ある。高山帯とはどこをさすのか、亜高山帯と区別 これが咼山帯ということになるとまた話はべって、