小島の自然林 こにあげられる小島は、おもに陸地の近くにあるものて、ある。小島は大部分が岩盤て、て、きており、海風の強い影 響もあって植物にとってくらしにくい環境て、ある。長年の間にここには特色のある林がつくられてきた。しかも島としてま とまった自然を保ち、人手もあまり加わらずにきた点が、研究の対象としても価値をもっている。 椿島は志津川町戸倉字津の宮の北、約 1 キロメートルの志津川湾に浮かぶ、面 積約 5 ヘクタール、周囲約 1.3 キロメー トル、海抜約 30 メートルの小島て、ある。 この島には、椿上があり、古くから 自然が保護され、全島がタブノキの自然 林て、覆われている。このタブノキ林は、 樹高 23 ~ 25 メートル、胸高直径 40 ~ 180 センチのタブノキが優占し、ケヤキや工 ノキの大木カ鯤生するところもある。 林内はひじように暗く、亜高木層には ャブッパキ・モチノキ・ヒサカキなどが 多くみられる。低木層にはヤブッパキ・ オオバイボタ・タブノキなどがみられる が、その被度は低い。草本層には、オオ ノヾシャノヒゲが優占し、ヤプコウジ・マ サキ・タブノキ・ジャノヒゲ・べニシダ・ アスカイノデなどが生育している。 島の周囲の岩壁には、イプキ・トべラ・ スカシュリ・ハマギク・エゾヒナノウス つばきじま 椿島暖地性植物群落 指昭和年Ⅱ月 7 日 所宮城県本吉郡志津川町 ツボなどの海崖植物群落がみられるが、 その規模は小さい。また、島に生育する 高等植物は 200 種以上て、ある。 この島の植物景観は、太平洋岸北部の 暖地・附直物群落としては、最もすぐれた ものて、あり、暖地・附直物の豊富さととも に、その学術的価値は高い。 この島が分布の南限となっているハマ べンケイソウ ( ムラサキ科 ) が、一日色 滅してしまった。しかし、丘になって、 細々と生育していることカ蔀寉認されてい る。糸色威した原因は不明て、あるが、貴重 な植物て、あるのて、、再び糸威しないよう に保護したいものて、ある。 ( 内藤俊彦 ) やけいじま 八景島暖地性植物群落 指昭和 39 年 6 月 27 日 所宮城県桃生郡雄勝町名振 闇雄勝町 八景島は南三陸・金華山国定公園の第 1 種特別或にも指定されている小島て、 ある。働芬町名振の北東約 2 キロメート ルの海上にあり、島の周囲は約 3 キロ メートルて、ある。島の最高点は 79 メート タフ ル、周囲は断崖絶壁となっている。地質 れきがん は古生代三畳紀の * 反岩、砂岩、礫岩、 石灰岩などから成っている。 島の大部分は、タブノキ林て、覆われて いる。この林は高さ 15 メートル内外て、、 胸高直径 80 センチ以上のタブノキが優 占し、ユズリハ・モチノキの大径木が混 生している。亜高木層にはヤブッパキが 優占し、ユズリハ・モチノキ・トべラな どの常純ム葉樹に混じって、ハウチワカ ェデ・ヤマモミジなどの落囀ム葉樹もみ られる。林床にはヤプコウジが優占し、 オオノヾジャノヒゲ・ジャノヒゲ・マサキ・ ャブッパキなどが生育している。 島の周囲の岩壁には、イプキ・トべラ・ マサキなどからなる低木林が発達してい る。また、一部にアカマツやクロマッ林 もみられる。この島に生育するユズリハ とマメヅタは、わが国における分布の北 限となっている。 島の植物景観は、タブノキが密生する ために、西南暖地の照葉樹林の景観を示 し、太平洋岸北部における暖地附直物群 落として、近くにある椿島とともに、学 術的価値が高い。 この島の保護については、地元の人達 もじ、て、ある。しかし、島の周囲が格好 ( 内藤俊彦 ) 用禁止を、徹底させる必要がある。 災の危険性があり、島における火気の使 の磯釣り場て、あり、釣り人による林野火 タブ タブ ュス、リノ、 ュスリ / 、 オオ / ヾジャノヒケ 八景島のタブノキ林 52 ・小島の自然林 モチノキ ャプコウジ ャブッパキ ( 調査菅原亀悦 )
この林内はオオミズナギドリのすみかと 沖の島原始林 黒子島原始林 なっており、多くの巣穴がほられている。 指大正年月 20 日 指昭和 26 年 6 月 9 日 一方、島の東南側は急傾斜のがけて、、 所福岡県宗像郡大島村 所長崎県平戸市大久保町黒子島 その下にくずれ落ちた岩塊や土砂がたま 置大島村 置平戸市 * り、ハチジョウススキを主とする帯状の げんかいなだ 玄界灘のただ中に浮ぶ孤島て、、周囲約 草原となっている。その中にはニオウヤ 黒子島は平戸島とル羽本島の間の狭い 4 キロメートル、宗像大社の沖津宮が鎮 ブマオやハマウドが、あるいは密に、あ 平戸瀬戸にある小島 ( 面積 3 ヘクタール ) 座しており、古来、島本が御ネ軒本とし るいは疎に生育し、さらにキクタニギ て、ある。古くから弁才天がまつられてい てあがめられてきた。今もなお女人禁制 ク・クサフジ・ミヤコジマッヅラフジな て、全島の照葉材木が原始性高く保護さ て、あり、一木一草一石といえども持ち ども混じって、この島独特の海岸斜面草 れている。 帰ってはならないというおきてに護られ 原を形成し、上方はハマビワ・トべラ・ 植物群落には二通りある。ハマビワ群 て、原始林の状態が保たれている。 マサキなどの暖イ財木に続いている。 落は島を取りまいて発達している。この 島には北東から西南方向に、島の長軸 植物て、注目されるのは、島の北端のが 群落は強 ) 鄭寺に盟ル欠の飛沫をあびると にそって走る丘陵があり、主リを一の岳は けの上にビロウ ( 大株 2 本、幼木数本 ) ころにある。ハマビワのほか、マサキ・ 標高 246 メートルて、、こに灯台がある。 が見られ、また南部にはオオタニワタリ トべラ・マルノヾグミ・ヤブッノヾキなどの 荒天のときはここまて、浪しぶきがかかる の自生があり、これら南方系植物の北限 常緑低木が繁茂し、樹下にはフウトウカ 地となっている。 ズラ・オニャプソテッ・ノシラン・ツワ 主稜の北西側および南部は深い森林て、 沖の島は、ル、 N 北部にありながら、上 プキ・ティカカズラ ( いすれも常緑植物 ) おおわれる。タブノキを主とし、ホルト 己のように代表的な暖帯林のオ目を示し が密生する。 ノキ・ヤプニッケイ・ホソバタブ・ナタ ていることが著しい 島の大部分はスダジイとタブノキの群 オレノキ・ヒゼンマユミなどが混じる典 また、この島には巨石祭祀の遺蹟があ 落におおわれている。樹高は 18 メートル、 型的なタブ型の森林て、ある。林内にはア り、貴重な出土品も多く、海の正倉院と 最大の幹の直径は 70 センチを越すもの オキ・ヤブッノヾキ・イヌビワ・ハマビワ・ いわれ、古代史の謎とロマンを秘めた島 もある。スダジイ・タブノキ・クロガネ マサキなどの亜高木、低木が多く、下草 モチ・シロダモ・ヤブッパキ・ヤプニッ て、ある。 もムサシアプミ・ノシランなどの海岸性 匠この島の原始オごけて、なく、オオ ケイ・クロキ・ノヾクチノキ・ホルトノキ・ のものて、占められ、ところによってオオ ミズナギドリほかの鳥類なども含め、県 ネズミモチなどの照葉樹が茂り、林下に タニワタリ・ナンゴクウラシマソウ・オ の自然環境保全よ或に指定したいという はムサシアプミ・ノシラン・ホソノヾカナ リヅルシダ・イワヒトデなども見られる。 申請が出されている。 ワラビ・フウトウカズラ・ティカカズラ ( 尼川大録 ) が生育している。ビロウ ( ヤシ科 ) やア コウ ( クワ科 ) が生育するところもある。 島本の原婚性は高く、この地方の低 地林の原型をいまにったえている。 ( 伊藤秀三 ) おき くろこじま 一三ロ やぎしり 焼尻の自然林 指昭和 58 年 8 月 30 日 所北海道苫前郡羽幌町焼尻 闇羽幌町 焼尻島は北海道西北部の日本海上に てうり 天売島と並んて、浮かぶ、面積 330 ヘク タールの小島て、ある。地形的には平坦な 島て、、最高部が 97 メートル、全島が 4 段 の段丘堆積て、構成されている。 ネスミモチ ノシラン ャブッパキ ビロウ ノシラン マサキ マサキ 調査地 マ ワ 沖の島の北端頂上部の自然林 56 ・小島の自然林 冫毎 ( 調査西原幸男 )
やぎしり 0 焼尻の自然林 ( 北海道 ) 4 段の段丘て構 成された島には、オンコ林が発達している。 ひらど 0 黒子島原始林 ( 長崎 ) 黒子島は平戸島と ル、ト体土の間の狭い瀬戸にある小スダジ イとタブノキが上部をおおい、海岸近くはハ マビワが島をとりまいている。 かんじゅ まんじゅ の干珠樹林 ( 山口 ) 満珠島と対になってい る。原生オ相大の抃木には多不頁の植物が生育 している。 まんじゅ かんじゅ まんじゅ ①満珠樹林 ( 山口 ) 手前が満珠島、向こう すおうなだ が干珠島。周防灘の西端、壇 / 浦に近い きらい第 、 , をゞドら年 ①虚空蔵島の亜熱帯林 ( 宮崎 ) もとは 鬲丁の沖に浮かぶ小島て、あったが、近年陸 くぞうばさっ 続きになった。虚空蔵菩薩がまつられている ため森林もたいせつに一描矍されてきた。ビロ ウやフカノキなどの亜性植物が残り、ア コウの巨木の群生地もある。
自然林は島の中央部からほほ凍半分に わたっている。ミズナラ・イタヤカエデ・ シナノキ・ホオノキ・ナナカマド・ハン ノキなどが主体て、あるが、この島を特徴 づけるのは、イチイ ( オンコ ) の原生林 て、ある。島の東部に約 1 キロ平方メート ルにおよぶイチイの大群落があり、混交 する落葉広葉樹と美しい対比を見せてい ( 羽幌町および編集部 ) 満珠樹林 まんじゅ 置下関市 所山口県下関市豊浦町 囮大正年田月 20 日 べラなどその漿果が鳥に食べられ、その しようか プ・ハマビワ・モチノキ・ヒサカキ・ト いえる。また樹林の構成種をみるとタ いて、本島は島嶼生態学上貴重な存在と 類の樹木が高木層て、共存している点にお 成されている。小島にもかかわらず多種 ばタブなどが優占することなく森林が構 かなく、林内て、は特定の照葉樹、たとえ 島の総面積はわずか 1.2 ヘクタールし 這い、樹木によじ登っている。 ツルウメモドキなどがあちこちぞ林床を カズラ・フウトウカズラ・ツルマサキ・ 構成している。つる植物も多く、ティカ ウなどが島を縁どるように海岸低木を ハマセンタン・ハマクサギ・ハマニンド ホソノヾカナワラビが多い。また、トべラ・ い森林を構成している。森林の林床には 広葉に、、これらカ鯤生してやや背の低 キ・アカメガシワ・ハゼノキなどの落葉 葉植まやイヌビワ・ホソノヾイヌビワ・エノ キ・ホルトノキ・モチノキなどの常繍ム ノ・ヒメユズリハ・ヤブッノヾキ・ヒサカ ワ・モチノキ・ヤプニッケイ・カクレミ 森林の主要構成種はタブノキ・ハマビ ほとんど受けていない な島て、ある。島の植材木は人為的な攪乱を かくらん 西部の本来の植物的自然を知る上て、重要 から 1 キロメートル離れた島て、、瀬戸内 の高い美しい植材木に覆われている。本土 気朱島は瀬戸内海の西端にある自然度 中の種子が消化されることなく運ばれる 植物が多い。このことは一殳にド売きの 所に比べて、島には鳥によって種子が運 ばれる植物が多いことの一具体例を示す かった。本島の植物相は南のル羽や四国 の植物相に類似している。なお、地名は 天然記念キ刎旨定時のものとした ( 国土地 工野完の地形図て、は逆 ) 。 虚空蔵島の亜熱帯林 指昭和 26 年 6 月 9 日 ( 中越信和 ) ものて、ある。 干珠樹林 かんじゅ ( 中越信和 ) 指大正年田月 20 日 所山口県下関市豊浦町 置下関市 干珠島朱島よりさらに沖合いにあ る ( 土地台帳による ) 面積 4.5 ヘクタール の小島て、ある。本島も満珠島同様西瀬戸 内の原始的自然を保ち、本上と異なった 島Ⅱ鄭直物相を有している。干珠には満 珠に生育する植物以外にバクチノキ・イ スノキ・クロガネモチ・ネズミモチ・モッ コク・ネムノキ・マサキ・シイ・クロキ・ アオキ・ホオノキ・ニワトコ・チシャノ キ・オオバグミ・イヌマキ・イズセンリョ ウ・マンリョウなどの樹木やムペ・ビナ ンカズラ・シマ - ナ . ルナシ・キショラン・ オオッヅラフジ・サカキカズラなどのつ る植物、ツワプキ・イワタイゲキ・ハマ マツナ・ハマウド・ラセイタソウ・ハマ 工ンドウ・ダンチク・オニャプソテッな ど海岸生の草本が生育している。 より島が大きいことや、植物の生 育地がより多様なことなどが植物相を豊 かにしているのて、あろう。島内には 7 財斗 186 種の植物が生育している。樹林内て、は おもにシイが優占しており、植生高も高 い。他の植重は林内の亜高木・低木層に 生育していたり、高木のシイとシイの間 のすき間に生育していたりするなどして シイと共存する形て生育している。島内 の植物相を詳しく調べてみると、バクチ ノキ・モッコク・チシャノキ・オオノヾグ ・イヌマキなど主として暖帯南部に分 布する植物が多く含まれていることがわ 所宮崎県南那珂郡南郷町中村 置南郷町 日南海岸の一角、目井巷に浮かぶ小 島て、あったが、近年ド橇をきになった。周 囲約 1 キロメートル、標高 56 メートルの 小島に亜帯↑直物を中心に 57 科 171 種 の植物が生育している。寛永 16 年 くぞうばさっ ( 1639 ) 、今から約 350 年前に虚空蔵菩薩 が祠られ、それ以来聖域としてこの島の 森林が保護され、この環境における極相 林となったものと思われる。 周囲をオニャプソテッーハマビワ群集 て被われた、群落高 20 メートルのアコウ ータフ羊落の極相林て、ある。林冠は直径 1 メートルに達するタブ・アコウの巨木や ホルトノキ・スダジイ・ホソバタブ等が 9 ヾーセントを被っている。その下層に はモクタチバナが優占し、フカノキ・ギョ クシンカ・バクチノキ・ハドノキ・イヌ ビワが多い。林床はオオイワヒトデ・ア オノクマタケラン・イシカグマ・ノシラ ン・ムサシアプミ・ホソノヾカナワラヒ、・ ニセコクモウクジャクが繁茂し、樹幹に はオオタニワタリ・フウトウカズラ・シ ラタマカズラ・オオイタビ等が着生し、 暗い密林をなしている。 この小島にはビロウ・フカ / キ・ショ ウべンノキ・イソヤマアオキ・ギョクシ ンカ・リュウビンタイ・オオカラスウリ・ マルバハダカホォズキ・ササキビ等の代 表的亜熱壯直物が集まり、アコウの巨 木の群生とともに学術的価値が高い。 この島の所有は南郷町の西明寺て、ある が、管理は南郷町がやっている。丘、 釣り客等の島内への出入りが激しく、オ オタニワタリは盗掘され、林床が荒れて いる。 ( 外山三郎 = 宮崎、南谷忠志 ) 小島の自然林・ 57
おおいけ 大池のオヒルギ群落 囮昭和 50 年 3 月田日 所沖縄県島尻郡南大東村北 闇大東村 りゆうきかんしよう 南大東島は隆起環礁からなるさんご 礁の島て、島の周囲は小高い岩礁 ( 石灰岩 堤 ) て、とり囲まれている。内陸部は盆地状 にくばみ、その中央部には少量の塩分を 含んだ池沼が数多くみられる。大池は島 の北側に位置し、島の中て最も大きな池 て、ある。大池の北側の湿地帯にマング ロープの構成種て、あるオヒルギが数十本 群生している。オヒルギ林の高さは 4 ~ 5 メートル、林内にタコノキ科のアダン や汽水 ( 海水と淡水の入り混じった水 ) 性湿地に生育するヒトモトススキ、淡水 性湿地に生育するテッホシダなどがみら れる。 オヒルギはレ牆から亜帯の河口や入 り江、あるいは河岸や海岸の浅い水域に 生育し、その散布体 ( 果実・種子など ) は ~ 充によって分布を広げる海流散布型の 植物て、ある。しかし、大池のオヒルギが 陸に封じこめられた池に分布すること は、世界的にも珍しく、貴重なものとい える。このことは、かってさんご礁の発 達によってて、きた環礁の時代に、現在の 湿地帯は海に開口していて、マングロー プが ~ 充によって運ばれ定着した。その 後、島がドし、内陸湿地帯にマングロー プが残ったものと考えられる。大池のオ ヒルギは毎年花を咲かせ、果実をつけ、 よく繁殖している。オヒルギは淡水化し た池のほとりて、も、イ或のオヒルギと ほとんど変わらずよく生育している。過 去に建築材として使われたこともある が、現在て、は保護され、これからも島の 成立の生きた証拠として生きながらえて てい いくて、あろう。 ( 宮城康一 ) みやらがわ 宮良川のヒルギ林 指昭和 47 年 5 月日 所沖縄県石垣市宮良 闇石垣市 石垣島南部、宮良川河口に室するマ ングロープ櫪宮良川は石垣島北部茂 登山系の数カ所の渓谷に源を発し、大 かいなんかわはらみわ 里・茂登・開南・川原・三和の各平野 部を流れ、宮良湾に注ぐ石垣島最大の河 川て、言或面積 30.6 平方キロメートル、 全長 12.1 キロメートルて、ある。宮良川の 河口のマングロープ林は川幅 50 メート ル、長さ 1.5 キロメートルの範囲に分布 する。川の水路沿いにヤェヤマヒルギ椒 内陸側にオヒルギ林が分布し、一部マン グロープ林の前縁部や後背地にメヒルギ なかす 林がみられる。宮良橋より下流には中洲 カ夥し、そこて、はオヒルギが優占し、 一部ヤェヤマヒルギ林が生育している。 マングロープ林の周辺部には塩生植物の ソナレシノヾやハイキビの草地、ハマゴ ウ・イボタクサギ・ハマナツメ・トゲイ ヌツゲ・アダンなどの低木林が分布して 宮良川のマングロープ林は亜帯士或 の代表的なマングロープ林の構造を有 し、その規模が大きいことから天然記念 物の指定を受けている。しかしながら、 かんがい 近年、川の上流部に国蘿漑排水工事の 一環としてダム建設が行われ、またマン ほじよう グローオ品地周辺の平野部て、は、圃場整 備が進められ、多量の土砂が流入してい る。また上流側から工場排水が流れこみ、 牛の放牧によってマングロープ林内に牛 カイ受入し、林内カみ固められるなど、 著しく攪乱を受けている。そのためマン グロープ林は次第に荒廃し、メヒルギや しとうばく オヒルギの本尠休も多く、天然記勿 としての価値が失われつつあるのが現状 おお ざと ヤェヤマヒルギの若木 地上に落ち、生長を始めたもの。 胎生種子が て、ある。 ( 宮城康一 ) 常緑広葉高木林・ 101
天然記念物目録 ー自然林 富士山原始林 20. 幻 野幌原始林 藻岩原始林 円山原始林 登別原始林 那智原始林 青葉山 25 宮山原始林 甑岳針葉樹林 43 城山 46 諸志御岳の植物群落 46 田港御願の植物群落 47 安波のタナガーグムイの 20 25 24 植物群落 47 ■小島の自然林 椿島暖地性植物群落 津島暖地性植物群落 大島暖地性植物群落 蒼島暖地性植物群落 50 50 ー引 仏経岳原始林 28 春日山原始林 28 弥山原始林 29 喜山暖帯林 29 三瓶山自然林 30 ー引 高尾暖地性濶葉樹林 34.35 指月山 34 室戸岬亜熱帯性樹林 および海岸植物群落 35 洲藻白岳原始林 38 竜良山原始林 38.39 阿蘇北向谷原始林 39 諫早市城山暖地性樹叢 普賢岳紅葉樹林 42 39 八景島暖地性植物群落引 弁天島熱帯性植物群落引 沖の島原始林 54 焼尻の自然林 55 黒子島原始林 55 満珠樹林 55 干珠樹林 55 虚空蔵島の亜熱帯林 55 枇榔島亜熱帯性植物群落 58 青島亜熱帯性植物群落 59
べんてんじま 弁天島熱帯性植物群落 指大正Ⅱ年 3 月 8 日 所徳島県阿南市橘町小勝 闇阿南市 おおしま あおしま 大島暖地性植物群落 昭和 32 年 7 月田日 所三重県北牟婁郡紀伊長島町長島 紀伊長島町 この植物群落は紀伊長島町の南南東約 弁天島は徳島市の南に位置する阿南市 蒼島は小浜湾内に浮かぶ面積 8250 平 5 キロメートルの海上にある東西約 400 椿町にある周囲 1 キロメートルあまり、 方メートルの無人島て、、砂岩と粘土岩と メートル、南北約 500 メートル、海抜約 90 高さ 17 メートルの小島て、ある。 の互層による基盤から成り、周囲は急峻 な断崖になっている。この斜面にはタブ メートルを最高所とする無人島に発達生 島にはウバメガシ・トべラ・マサキな 育している。この島には最高所に無人灯 ノキ・スダジイ・ヤブッパキ・モチノキ どの海岸林が見られ、クロマツもある。 台が設けられているほかには人工物はな また、崖地にはユリ科のキキョウランが などがうっそうとしげり、典型的な暖地 く、全島スダジイの原生林て、おおわれ、 生育している。注目されているのは、亜 ↑生常糸剥ム葉植材木が残されている。 森林内には暖地・附直物が多く生育してい 熱帯植物といわれるアコウの自生て、あ 島内から 55 科 122 種の植物が記録され る。すなわち高木層に樹高 10 ~ 13 メート ているが、そのうちの多くのものは暖地 ルほどのスダジイが優占し、これにタブ 熱物葮物群落とはいっても、実状と 性て、、代表的な種類としてカラタチバ ナ・サカキ・シロダモ・スダジイ・タブ ノキ・ヤマモモ・オガタマノキ・ヒメユ は一致しているとはいえない。また ズリハ・クスノキを混生し、亜高木・低 とは海岸から約 1 キロメートルほど沖に ノキ・ツクノヾネガシ・トべラ・ナタオレ 木層にカクレミノが優占し、ヤブッパ ノキ・ハゼノキ・ヒトッノヾ・ヒメユズリ あったが、近年島のすぐ近くまて埋め立 ハ・べニシダ・ホソノヾカナワラビ・マメ キ・タイミンタチバナ・イヌマキ・オガ てられ、植生の保存状態はあまりよくな ヅタ・マルバグミ・マンリョウ・ムサシ いのが現状て、ある。 タマノキ・ノヾクチノキ・オオノヾグミ・モッ ( 山中二男 ) コク・コカラスザンショウなどを混じ、 アプミ・ムペ・モチノキ・モッコク・ヤ ブッパキ・ヤプニッケイなどをあげるこ 草本層はホソバカナワラビを主にイワヒ 津島暖地性植物群落 とがて、きる。中て、もナタオレノキ・ムサ トデ・ナチシダなどのシダ類、それにハ 指昭和 48 年 4 月 23 日 シアプミが、この島に分布することは特 スノハカズラ・フウトウカズラ・キジョ 所徳島県海部郡牟岐町 筆すべきことて、、両種ともに北限産地と ラン・ティカカズラ・サカキカズラなど 闇牟岐町 なるものて、あるから、貴重な存在と言え の常緑性つる茎植物、海岸性のツワプ る。本島は陸地より遠くないが、離島の 紀イル道にある小島には、自然林が比 キ・キノクニスゲなどを混生したわが国 ため訪ねる人も少なく、現在のところ、 の暖かい地方の海岸林の代表的な群落生 申知勺よく残っているところがあり、津島 上肆知勺よく保存されている。しかし、今 態を呈した原生林て、ある。 もそのひとって、ある。 後、さらに保護に留意する必要がある。 島は西南側の一部に狭い砂浜海岸があ この島は牟岐町の沖約 3 キロメートル るほかは断崖となっている。この砂浜に にあり、高さは 44 メートル、面積は狭い ( 里見信生 ) はハマオモト ( ー名ハマュウ ) が一面繁 が、全島がほとんど林におおわれている。 茂していたが、伊勢湾台風て大部分流失 優占する木はスダジイて、、タブノキ・ してしまった。その後上地の人々の保護 ヒメユズリハ・モチノキ・モッコクなど が混生し、林内にはヤブッノヾキやタイミ 活動により現在ほとんど回復し、 7 ~ 9 月には白色て劣香のある美花て砂浜一面 ンタチバナが多い。地上にはホソバカナ を飾る。また、この島の断崖上には日本 ワラビ・ムサシアプミ・コャプランなど て、の最北の自生地をなすオオタニワタリ が生じ、また四国て、はおもに南西部の島 が生育するのをはじめ、ナチシダ・タマ に生えるアオノクマタケランやシラタマ シダ・メジロホォズキ ( サンゴホォズ カズラが見られ、ことにシラタマカズラ キ ) ・ハチジョウススキなど暖地海岸性の の繁茂カ墸しい 植物が多く生育している。 津島の植生は四国のスダジイ林て、も南 ( 南川幸 ) 方的な色あいの強いものて、、これからも いっさい人手を加えずに残しておくべき て、あろう。 ( 山中二男 ) 小島の自然林・ 53 蒼島暖地性植物群落 囮昭和 26 年 6 月 9 日 所福井県小浜市加斗 小浜市 つしま タブノキ スダジイ オオハクミ ホソバカナワラビ ャブッパキ イワヒトデ フウトウカスラ タイミンタチハナ サカキカズラ ティカカズラ 大島暖地性植物群落のスダジイ林 ( 海抜 80m 付近 ) ( 調査葛山博次 )
0 潮カ艚ちはじめた、宮良川河口付近のヒル ギ櫪 常緑広葉高木林・ 99 以降に咲き始める。 ロープて、いちばん特徴自勺な不鶤庇 8 月の中旬 発達するため、石垣島や西表島のマング いりおもて ヤェヤマヒルギの胎生種子と花。支村が
重厚な緑のシンフォニ ル、の小島の自然林探訪ー 「見えるかね、お客さん、あそこにばつんばつんと五、六 株の葉があるだろう。あれがビロウだよ。海からも見やす いように、まわりの木を伐採してあるんだ」工ンジン音の 中て、漁師カ哘く手を指さして言った。高島は小高く盛りあ がり、濃い緑におおわれていた。船が近づくにしたがって、 すっくと直立する灰色の幹と、他の常緑樹より幾分明るい ビロウの葉が鮮明になってきた。島の中心には群落もある が、道がないのて、行くのは無理だと漁師の言。船は大きく 迂回し、島の反対側の岩場に舳先を着けた。「気をつけてな」 の声を背に島にとび移り、岩づたいにまわり込む。ふり仰 ぐと斜面に沿って 10 本をこえるビロウが天に向かって屹 立していた。大きく広げた葉の先端カド垂している。地を 這うテリハノイバラの海岸を波打際ぎりぎりまて、退った。 ちんにゆうしや 不意の闖入者に驚いたフナムシが、三脚のまわりを騒が しく動きまわっていた。 平戸城天守閣から見る黒子島は、名の通り黒々とした樹 林におおわれ、平戸瀬戸にどっしりと鎮座していた。価度 し船て、わずか 5 分、平戸港からは指呼の間て、ある。島に 歩踏み込むと、まず古色蒼然たる鳥居があり、朽ちかけた 社殿にツタが這い、シダが床下から顔をのぞかせていた。 頭上には巨樹のアコウやスダジイ・アカメガシワなどが葉 を広げ、まるて、社殿を丸ごと呑みこんて、いるようだ。道は どこにも見あたらない。わずかに、社殿の裏側にそれらし い跡は見受けられたが、途中からシダ・カクレミノ・ムサ シアプミなどによってさえぎられ消えていた。岸沿いに廻 ろうと何度か試みたが、どっちへ行っても行く手をふさが れてしまう。人の手が入らないと樹林というのは、 暴れるが如く繁茂していくものだろうか。島そのものが すつほ。り原生林として存在している。いっしか満潮に向 かっているらしく、踏みあとはあっという間に潮に浸され ていった。まるて、人間の到来を島全体が拒んて、いるようだ。 壱岐島の北端の勝本から辰の島に渡った日は、雨こそ 降っていなかったカ哂風がめつほ。う強く、玄界灘のうねり に漁鉛は板切れのように翻弄された。私は船べりにうずく まり青い顔をして、日喆斤り船頭の顔を盗み見たが、彼は平 然として操船していた。一蓮托生の思いを抱き続けた数ート 分間が果しない時間に感じられた。接岸て、きるただーっの 内湾から一ヒ陸し、岩陰て、風をよけながら一呼吸入れた。辰 の島は平坦な小島て、壱岐に向かって大きく彎曲している。 その曲った内湾沿いが砂浜て、ある。目あてのハイビャクシ ' ' にあった。砂浜一面にびっしりと根を張り、まる ンカま て緑色のふかふかの布団を敷きつめたようだ。腰をおろし てみるとかなりの弾力て、ある。本州の高山のハイマッ帯を 思い出させる感触だ。同じ海岸にはえるハイネズによく似 ているが、イプキの変種てある。ハイネズは針状の葉に触 れると痛いが、こちらは痛くなかった。ハイビャクシンに 交っていくっかのハマュウの大きな葉が見受けられた。ハ マボウフウはすてに実になっていた。沖合いはまだ白い波 頭の絶え間がなく、帰路の船上が思いやられた。 対馬上島の厳原の町をはずれ、バラスの林道を四輪駆動 たつら て一気に登りつめた。右手の稜線の先に、竜良山がなだら かな三角形を描いていた。役場て測いたルートが見つから ず、いったんひきかえして北西側の谷にまわり込み、営林 署の作った林道を進んだ。しばらく行くとイスノキの純林 地帯に出会う。糸木とは言ってもモッコクやサカキ・ヒサ カキ・スダジイ・アカガシ・ヤブッパキ・ハイノキなどが 混生している。しかしこれほどみごとなイスノキ林を見た のは初めてて、あった。林の中にわけ入ってみる。落ち葉の 上にシダ類やマンリョウ・ヤプコウジといった低木も生え ているが、林床はすっきりしていて歩きやすい。暖温帯の 林床がこれほど歩きやすいとは思いもよらなかった。撮景彡 には絶好の日和てあった。明るい曇り日て影もなく、林内 はやわらかく光がまわっていた。心なしか心身の毒気が洗 い落とされていくようだった。 7 月初旬の対馬はいたる所てネムノキが咲き乱れ、疲れ た体をなごませてくれた。関東近辺て、見るものより赤味が 強く実にきれいてあった。ネムノキがとぎれスギ林になっ すもしら た所カ駲藻白岳の登山口てあった。山麓から仰ぐと青空に 緑の尾根が広がり、その中央がひときわ白い。白岳の岩峰 て、ある。登り 1 時間半、山項のネ上に着く頃から天気力軽 しくなり、足もとから霧が這いあがってきた。撮影を急が ねばならない。岩場の周囲をせわしく動きまわる。季節的 にみて花は少ない。山項部に 1 本のヒメコマツがあった。 対馬て、は唯一この山にだけあると聞いてきた。ガスが尾根 を横切っていく。そのとぎれめを狙って岩蜂から直 - ドの原 生林を撮ってみた。毎央はガスてけむり、朝鮮半島を眼に することはてきなかった。小雨降る中を下山した。上衣が 水を含んて重くなった。木肌もみるみる色を変えていく。 見 - E げると黒い森が私を押しつぶすように迫ってきた。 ( 熊田達夫 ) 小島の自然林・ 61
0 喜入のリュウキュウコウガイ ( 鹿児島 ) ー - ・ - 搬にはメヒルギとよばれる、マングロープを 形成する植物て、ある。 17 世紀初め、沖縄から移入されたと伝えられる。 0 慶佐次湾のヒルギ林 ( 沖縄 ) 慶佐次川の河口にヤェヤマヒルギ、水路にそってメヒルギ 椒内則にオヒルギ林が生育している。 ①大池のオヒルギ群落 ( 沖縄 ) 海とつながらない内陸部に、オヒルギが自生しているのが 牛勺。島の隆起によって海と途切れたものと考えられる。南大東島にある。 きいれ げさしわん おおいけ =. メラを 常緑広葉高木林・ 97