天然記念物を考える 特別史跡名勝天然記念物及び 史跡名勝天然記念物指定基準 ( 抄録 ) 天然記念物所在地地図
目 次 地質・鉱物の指定 渡部景隆 天然記念物目録 執筆者一覧 特別記事目録 河食 海食 風化・風食 氷河遺跡 石灰岩地形 隆起・沈降・地震 断層・褶曲・特異な地形 火山 溶岩洞穴・溶岩樹型 地下水・湧泉 温泉現象 化石漣痕 化石 岩石・鉱物 岩脈 節理 天然記念物を考える加藤陸奥雄 特別史跡名勝天然記念物及び 史跡名勝天然記念物指定基準 ( 抄録 ) 天然記念物所在地地図 都道府県別天然記念物目録 50 音順索引 4 7 0 3 つ」っこ 0 4 4 一 8 6 3 5 6 6 8 8 222
[ 凡例 ] ( 特天 ) = 特別天然記念物 ( 天 ) = 天然記勿 れたりしたことを示す。 ら指定上或が ; 助ロ拡張されたり、解除縮小さ 6 助Ⅱ指定 ) ・ ( 一都解除 ) は、イ呆護の必要上か たことを示す。 合併その他やむをえない理由により改められ ( 名称変更 ) は、指定当初の名称を、市町村の むねー - ー一致する。 5 . 囮 = 指定年月日。官報に告示された日とおお により、多少頂序を入れかえた場合もある。 のものから南のものへとしたが、編集の都合 4 . 各項目内の指定物 ( 牛の配列は、原則として北 朝体 ) は指定外のものを示す。 のものは国指定の天然記念物を示し、細字 ( 明 写真説明文の名称のうち、太字 ( ゴシック体 ) ある。 断により、也での慣用に従ったものも若干 然記念牛舛旨定目録』によったが、編集部の判 3 . 天然記勿の名称は、文僊ヤ編『史跡名勝天 て 1 頁目とした。 の 14 項目をもとにしたが、その一にを改変し ひ文化庁文化財イ描矍部監修『天然記念物事典』 2 . 分類は、「天然記念物指定基準」の 12 項目およ 旨を記した。 が、官報て告示されない限りは料甦求し、その などのため指定解除申請中のものか若十ある 体指定のものは含まれていない。破損・崩壊 「国指定」の天然記靄勿のみであり、地方自治 ( 1984 ) 5 月現在の指定物件の全部である。 1 . 本書に収録した天然記念物は、昭和 59 年 6 . 新 = 所在地 7 . = 個理者またに里団体。ーヨ殳に土地の所 有者カにあたるのか建て前であるが、所 有権が多数にわたっていたり、その他必要な 事由がある場合には、管理団体かオ帛され管 理することになっている。都道紆県や市町村 など地方公共団体がこれにあたるのか普通で ある。 。里者名・管理団体名のうち、 * 印のものは 指定牛刎牛の所有者として明らかなもの。細字 ( 明朝体 ) のものは、『指定目録』では空白にな っているか、編集部の調査によって判明した 個理者または理団体を示す ( 従って、これは 公式のものではない ) 。なおかっ調べがつかな かったものは空白にしてある。 8 . 特別天然記念牛刎旨定のもの、名勝または特別 名勝に重複指定されているものについては、 名称の欄にその旨を記した。 9 . 巻末に、天然記念物の所在上也図、都道府県 別目録および 50 音順索引を掲載した。検索や 観察旅行などに役立ては幸いである。
せつり 石・鉱物 24 件、節理・岩脈等火成岩の産状 32 件、地層 とその変形 15 件、化石の産状 14 件がこの中に入る。 「岩石鉱物」て、は、産状を主とするという条件のた め、特殊なものが多い。特別天然記念物が 2 件 ( 玉 ほくとう 川温泉の北投石と根尾谷の菊花石 ) ある。また名勝 に指定された 2 件は岩石景観も合わせたやや広範囲 ながとろさんばせつ のものて、、いずれも広域変成岩地域 ( 長瀞と三波石 きよう せつり 峡 ) て、ある。火成岩体の産状て、は節理 10 件と火成岩 の岩脈 22 件があり、このうち、名月旨定は 8 件て、、 河食・海食と類似の性格のものが少なくない。これ らは初期に指定されたものが多い。鉱物には外国に 知られる鉱物標本がいくつもあるが、鉱山等から採 掘されたものが多く、産状のわかる現地保存の条件 を満し得ないため指定されていない。鉱物の指定に は再検討を要するところがある。 ぎそう れんこん 地層の特異現象て、は偽層 1 件、化石漣痕 3 件、泥 岩岩脈 2 件て、、泥岩岩脈は巨大地震の化石といえる。 しゅうきよく 褶曲 1 件、断層・断層破砕帯 10 件て、、断層には有 史時代のものを含むが、日本の構造発達史上著名な ものにも未指定のものがある。特別天然記念物は 2 件て、ある。 かたよ 化石も産状を主とするため偏りがある。 14 件のう けいかばく ち、新第三紀の珪化木が 6 件て、、日本の地史の主要 時代またはその環境を指示するものは数件にすぎな い ( 特別天然記念物は 2 件 ) 。これは、産地が長期保 存に堪えがたいためと思われるが、再検討が望まれ 指定件数 0 30 件 20 25 5 大正Ⅱ つな CO 4 ・ 昭和ー つ」っ 0 4 ・戸 0 フー 8 0 ) 0 史跡名勝天然記念物保存法 っこっ 0 4- 【 0 「 / 8 0 つ」 CO 4 ・ 0 「ー 8 0 ・ ) 0 っこっ 0 4- 【 0 「 / 8 0 ) 0 つ」っ 0 4 ・ ) (. 0 「 / 8 0 ・ ) 0 つ」っこっ亡つなっ乙っこ 2 」っこっ乙っム ? ) っ 0 CO 00 CO っ 0 3 、つ ) っ 0 4- 4- 4 4 4 ・ 4 ・ 4 4 4 ・ 4- 一 0 ) 【 0 -0 に 0 LO 文化財保護法 はさい 天然記念物「地質・鉱物の年度別指定件数 ( 全 206 件 ) 6 ・
ら第を〆 げとう の夏油温泉の石灰華 ( 岩手 ) 温泉水から ちんでん 殿した炭酸石灰が、ドームや鍾乳壁を形づ くった。天狗の湯石灰華大ドームは、わが国 最大のもの。特別天然記念物て、ある。 0 ①岩間の噴泉塔群 ( 石川 ) 温泉中の炭 酸石灰が高さ 5 メートルにもたっする徳利 形の譌丘をつくり、噴出口からは揚を噴 き上げることがある。特別天然記念物。 いわま ゆざわ 0 湯沢噴泉塔 ( 栃木 ) 嵬川上流の断崖の えんすい 中段にあり、固の円錐形の塔と噴湯丘が形 成された。現在、 96 度 C の温泉を噴出する。 じじようけいせき ①の鰤状珪石および噴泉塔 ( 秋田 ) かっ ては高温の熱泉が多量に噴出していた。魚而状 珪石は小さな魚馴大の石英立が集まったもの。
ー物ト しらはね ふんとう 0 白骨温泉の噴湯丘と球状石灰石 ( 長野 ) 石灰岩層から湧き出すために多量の炭酸を含んて、いる。活動を停止した噴湯丘はかなり侵食を ちんでん 受けている ( 写真左 ) 。球状石灰石 ( 写真中・右 ) は、湧出口の中て駭になるものを中心に炭酸石灰が殿したもの。特別天然記念物。 高瀬渓谷の噴湯丘と球状石灰石 ( 長野 ) 段丘上の噴湯丘はすて、に涸れたが、河床近く には、今なお形成過程の卩蔬昜丘が見られる。 中房温泉の状珪酸および珪華 ( 長 野 ) この温泉は多量の珪酸を含んて、おり 類の作用も加わってし、チーズ状の膠状 珪酸カ磨殿している。 、ん第ぐミド 0 渋の地獄谷噴泉 ( 長野 ) 数センチの孔 げき 隙から昜と水蒸気を噴きあげる。指定当時 は数十メートルの高さにたっしていた。 0 鬼吾の雌釜および雄釜間歇温泉 ( 宮城 ) ふきあげ 写真は、雌釜の吹上温泉の弁天湯間歇風 第を名ドツ . : 、んとう 水害 0 賁湯も衰えてしまった。雄釜はほとん ど停止している。特別天然記念物。 】。、をごふ
こまかど 0 駒門風穴 ( 静岡 ) 深いところを流れた溶岩て形成されており、溶岩層が厚く規模も大きい ①夫根島第ニ溶岩隧 ( 島根 ) 天井に短 い鍾乳石がさがり、床面に縄状の溶岩のしわ があり、龍棲洞と呼ばれる。 ①大根島の溶岩 ( 島根 ) 地元て、は幽鬼洞と呼ばれている。特別天然記念物。
単木個体の保護だけて、はなく、並木という形態が維 持されていくべきものと考えられるが、これについ ての措置はほとんどなされていない。日光の杉並本 にわずかにその配慮を見るにすぎない。これらは過 去の文化活動そのものを維持し続けてゆかねばなら ないところに意義があるはずて、ある。 もっとも重要なのは自然的といわれる天然記念物 て、ある。これにはアホウドリなどのように特定の生 きものを対象とする場合、ツバキ自生北限地帯のよ うに特定の生きものの生息あるいは生育する地域、 白馬連山高山植物帯というように特定の生きものて、 はなく、いわば特定地域そのものを対象とするもの などがみられる。地質鉱物もこれに類するとみられ るが、これらすべては指定当時の自然環境、生存を 維持している自然条件そのものを維持していかなけ ればならないはずて、ある。天然記念物の中の人文的 なものといわれるものとその保護管理のあり方は、 もちろん、今まて、述べてきた有形文化財等とは本質 的にちがっている。これらの保護をはかるためには、 当然のことながら、主役て、ある生きものの生態条件 とそれを支えている生態系の解明を基礎とした管理 維持の方策がたてられなければならない。しかもこ れは指定物件ごとにそれぞれ特異性をもっている。 ゆえん 専門的対応が要求される所以て、ある。危うい天然記 念物の現状を見るにしのびず、専門家の対応、そし てそれによる措置がとられていないことを訴える声 が大きいのは、このことに関連がある。 文化財保護法の制定と同時に国立博物館と国立文 188 ・ 化財研究所が設置されたことは適切なことて、あった が、両者とも文化活動が生みだした文化財、いわば 天然記念物を除く文化財を対象としている点て、は画 竜点睛を欠くといわなければならない 自然的なものといわれる文化財、天然記念物につ いても、このような措置がとられなければ後世に伝 えていくことはて、きないのだという世論が、大きく ふくらんて、くることを強く期待したい
地質・鉱物の指定 える。この指定年次は昭和 35 年まて、て、、それ以後に するよう定められていて、「地質鉱物」て、は 20 件を数 が特に高いもの」をさらに「特別天然記念物」に指定 天然記念物の中て、「世界的に、また国家的に価値 るが、動物・植物のように指定解除の例はない が変質・低下・消失するものが出てくるおそれもあ 相当数あって、自然環境の変化によって学術的価値 からみると、指定後 40 年以上を経過しているものが てからは平均年 1 件程度て、ある。この指定年次分布 に行われたものて、、文化財保護法 ( 昭和 25 年 ) となっ ( 1934 ) の 30 件をピークにして大多数が旧法律期間 ジ ) のように大正 11 年 ( 1922 ) にはじまり、昭和 9 年 ( 植物は 533 件を数える ) 。指定年次は、表示 ( 6 ペー 指定件数は 206 て、あり、動物の 191 件よりやや多い 自然を記念するもの」 ( 天然記念物指定基準 ) とされて て学術上価値の高いもの」 ( 第 2 条 4 ) て、、「わが国の 物の「地質鉱物」は、重直物とともに「我が国にとっ 的に変更がない。文化財保護法によれば、天然記念 護法に準拠している。法律が変っても内容には基本 美術品等の保存法とが統合して制定された文化財保 によるものて、、現在は昭和 25 年 ( 1950 ) に国宝重要 年 ( 1919 ) に制定された史蹟名勝天然紀念物保存法 「地質鉱物」の指定は、動物・植物とともに、大正 8 はない 和 26 年 ( 1951 ) の基準て、は、以下のような 12 項目が挙 容が十数個の項目に分けられていることて、ある。昭 指定基準にはもうひとつあって、「地質鉱物」の内 渡音曝隆 げられている。 ( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 ) ( 5 ) ( 6 ) ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ( 11 ) ( 1 の 岩石、鉱物及び化石の産出状態 地層の整合及び不整合 しゅうきよく しようじよう 地層の褶曲及び衝上 生物の働きによる地質現象 地震断層など地塊運動に関する現象 洞穴 岩石の組織 ちんでん 温泉並びにその勿 風化及び侵蝕に関する現象 りゆうきこう 硫気孔及び火山活動によるもの 水雪霜の営力による現象 特に貴重な岩石、鉱物及び化石の標本 これは三十余年前の項目て、あり、整理の上て、も必 ずしも適切だとはいえず、再検討の時期に来ている。 本書て、は、文化庁文イオ保護部監修の『天然記念物事 典』 ( 昭和 46 年、第一法規 ) の地質鉱物 14 項目を原則と したが、上の事情から一部、変更したところもある。 なお、天然記念物とともに名勝に指定されている ものも少なくない。これも「地質鉱物」の性格からく る特徴のひとって、、名勝の 11 項目の中て、関連あるも のは以下のとおりて、ある。 ( 5 ) ( 6 ) ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ 岩石、洞穴 湖沼、湿原、浮島、湧泉 砂丘、砌觜、海浜、島嶼 火山、温泉 峡谷、 渓初し、 山岳、丘陵、咼原、平原、河川 ばくふ 暴布、 深淵 ゆうせん
文化財としての天然記念物の保護保存間題を考え るまえに、ます、文化財として包括されるようにな った糸韋をふりかえってみよう。明治 30 年 ( 1897 ) に 古社寺保存法が制定されたが、それが前進して昭和 4 年 ( 1929 ) に国宝保存法が、昭和 8 年に重要美術品 等の保存に関する法律が設定された。この流れは、 間違いもなく、文化活動によって生みだされた文化 財の保護の方向を示すものといってよい。一方、名 勝や史跡などのいささか趣を異にする文化所産の保 護については、しばらくのあいだは古社寺保存法を 準用することによって処理されてきたが、大正 8 年 ( 1919 ) 、史蹟名勝天然記念物保存法の制定へと進展 したのて、あった。この二つの流れが合流して制定さ れたものが、現在の文化財保護法となったものと見 ることがて、きるし、事実、それ以前のものはすべて この時点て、消失してしまったのて、あった。 もともと文化活動といっても、自然風上がそもそ もの舞台となっていることからすれば、それとのか かわり合いなしには語れないし、自然は人間の文化 はぐく 活動を育む母なるものて、あることを考えると、いわ ゆる自然的なるものを対象として文化財という認識 の中に包括したことは、大きな見識て、あった。しか し、その糸習韋からみて、文化財は文化活動によって 生みだされたものて、あるという本来の考え方が根幹 となっていることは否めない。実際のところ、天然 記今物においても国の自然を記念するものといいな ロし、 がら、実際には人間が生活の中て、直接に手塩にかけ ながなきどり て育てている動物、例えば秋田犬や長鳴鶏など、ま た名木、巨樹、老樹といったものが指定されている。 むしろ、これらのものを指定することから始まった といってよい。自然のものと共通していることは、 これらが生きものて、あるというだけにすぎない のように考えることは、文化財の保護保存にとって 重要なかかわりをもっている。 この本の天然記念物それぞれについての解説て、 は、寒心に耐えない記述があまりにも多い。指定さ れた当時の状態を維持しているものが非常に少なく なっているだけて、なく、絶滅に瀕しているものが多 いし、すて、に絶滅してしまっているものも数多い そち やがて指定解除の措置がとられてしまう運命を辿る ことになる。なぜこのようなことになったのて、あろ うか。 文化活動は文化の進展とともに変貌してゆく。文 化財の重要部分を占める有形文化財や民俗資料等は 過去の文化の遺産て、あり、その保存管理のあり方は 天然記念物とは本質的にちがっている。天然記念物 にも人文的なもの、つまり文化活動の所産て、あるも のがある一方、自然的なもの、つまり文化活動が生 みだしたものて、はないものがあることはすて、に述べ た。鶏や大の各種の特定品種には指定されているも のが多い。明らかに過去の文化活動において生み出 されたものて、あるが、その品種の系統を絶やすこと なく、代を重ねて飼育が続けられている点て、は、有 形文イオの管理とは全く異質て、ある。また、各地の 社寺における並木にも指定されているものがある。 ひん ・ 187