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検索対象: 「文明論之概略」を読む 下
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1. 「文明論之概略」を読む 下

末 非武装国民抵抗の思想宮田光雄法律 政治 マ 宮沢俊義 ウ憲法講話 クラウスニック 近代民主主義と ナチスの時代 福田歓一 その展望 内山敏訳日本の憲法〔第一一版〕長谷川正安 憲法問題 憲法読本上・下 国際政治を見る眼武者小路公秀法律 研究会編 ォルドリッジ 核先制攻撃症候群 月島武宜 後藤昌次郎日本人の法意識 服部学訳冤罪 上田誠吉 近代政治思想の誕生佐々木毅 日本の刑事裁判青木英五郎誤まった裁判 後藤昌次郎 高榎堯 現代の核兵器 比較の日本国憲法樋口陽一経済 坂本義和なかの 軍縮の政治学 渡辺洋三近代経済学の再検討宇沢弘文 新・核戦略批判豊田利幸法とは何か 書中東情勢を見る眼瀬木耿太郎家庭の法律〔第一一版〕川島武宜イギリスと日本森嶋通夫一 渡辺・清水編続イギリスと日本森嶋通夫一 新データ戦後政治史石川真澄現代日本法入門 野弘久・・ミルと現代杉原四郎 岩苦悶するアフリカ篠田豊納税者の権利 食糧と農業を考える大島清 香港 岡田晃現代日本社会と 渡辺洋三 民主主義 ロワンⅡロビンソン 石川博友 穀物メジャー 核の冬 小林直樹 高榎堯訳憲法第九条 経済学とは何だろうか佐和隆光 国際連合 明石康嫌煙権を考える伊佐山芳郎 日本の巨大企業中村孝俊 *AO 条約と日本中山和久転機に立っ 渡辺徳二 佐伯康治 兼子仁石油化学工業 地方自治法 情報ネットワ 1 ク社会今井賢一 政治 岡義達家族という関係金城清子 挑戦する中小企業中村秀一郎 近代の政治思想福田歓一 0 経済データの読み方鈴木正俊 日本の地方自治辻清明

2. 「文明論之概略」を読む 下

治的社会的活動ということで、「西洋独立の人民」を特徴づけています。これに対比されるの が、他者への依頼心にもとづいて権力を希求したり、あるいはお世話焼き根性にもとづく他の 領域への干渉です。自分の「場」に根をおろしていない点では同じで、そこに一口に政治活動 といっても「雲壌の相違」が生まれます。 なお、右の文のなかの「他人の圧制を圧制せんがために」云々という表現も、「妨害の妨害」 と同じくリべラリズムの逆説的命題を適確に示していることに注意して下さい ( 「他人」という のは「権力」と、 しいカえてもいいでしよう ) 。 このあと、中国の項羽と漢の高祖のエピソード が出てきます。「彼れ取て代る可し」という一一 = ロ 葉は『史記』の「項羽本紀」に、また「大丈夫、当に斯の如くなる可し」は高祖本紀にありま す。二人とも、自分の「地位」にあって、その場からして秦の始皇帝の暴政を怒っているので はない。始皇帝の暴政をいい機会にこれを打倒して権力を奪い、始皇帝と同じことをしようと するにすぎない。たとえ事実上、始皇帝ほど暴虐でなくても、政治権力の専制で下民を御する という。ハターンは同じだ。そして、日本でもむかしから英雄豪傑の類は多いが、やった事を見 ると、項羽・漢の高祖の同類だ、ときめつけます。この点は同時にさきの章でみた英雄豪傑中 心史観にたいする批判 ( 中巻第八講参照 ) とも関連するわけです。 かいびやく こうして、日本の歴史では、「開闢の初めより今日に至るまで、全日本国中に於て独立市民等 116

3. 「文明論之概略」を読む 下

へ刀化にとどまり、ヨーロ ツ。ハにおけるような全社会体系にわたる諸価値の間のチェックス・ア ンド・ ハランセズという点に着目すると、『概略』では中国も日本も同じジャンルにくくられて 批判の対象になってしまうわけです。 その否定的判断が、新井白石以下、日本の歴史家の歴史叙述への批判となってきます。 あらいはくせき 新井白石の説に、天下の大勢、九変して武家の代と為り、武家の世、又五変して徳川の代に及ぶ ほか と云ひ、其の外諸家の説も大同小異なれども、此の説は、唯日本にて政権を執る人の新陳交代せ し模様を見て、幾変と云ひしのみのことなり。都てこれまで日本に行はる、歴史は、唯王室の系 せんさく 図を詮索するもの歟、或は君相有司の得失を論ずるもの歟、或は戦争勝敗の話を記して講釈師の 軍談に類するもの歟、大抵是れ等の箇条より外ならず。稀に政府に関係せざるものあれば、仏者 きょたん の虚誕妄説のみ、亦見るに足らず。概して云へば、日本国の歴史はなくして日本政府の歴史ある のみ。 ( 文一八九頁、全一五一ー一五二頁 ) この最後の「日本国の歴史はなくして日本政府の歴史あるのみ」も福沢の基本命題の一つで すね。これは記述としての歴史の批判であると同時に、事実としての歴史の批判でもあります。 『学問のす、め』には「日本には唯政府ありて未だ国民あらずというも可なり」 ( 四編 ) として出 ただ まれ ただ と

4. 「文明論之概略」を読む 下

あった、ということを忘れてはなりません。 福沢の課題は二つあります。一つは日本を「国民国家」にすることであり、もう一つは日本 を「主権国家」にすることです。第二次大戦までの日本が、いやひょっとすると今日の日本で さえ、福沢がこれまで縷々のべてきたような意味での「ネーション」形成を完了したといいき った れるかどうかについては、これまでの私の拙ない説明を通じてでも、皆様の中に疑問が生じう ることは予想されます。けれども日本が二十世紀の初頭までに西欧的国家体系の仲間入りをし、 東アジア唯一の「主権国家」の地位を築くのに成功したことは、シュ ーマンの指摘を俟たずと も確かでしよう。「日本には政府ありて国民なし」と第九章で断じたときの福沢は主として「国 ~ 民国家」を課題としていたわけですが、この結章での眼目は日本を国際的に一人前の「主権国 形家」にするということに置かれているわけです。こういう読み方をすれば、第十章がべつに先 おのす 国行章から浮き上ったものでなく、『概略』の一般的考察の不可分の一環をなすことも自から明ら 国かであると思われます。 権日本は古代から朝鮮・中国と政治的にも文化的にもさまざまな「外国交際」をおこなってき ました。いや、十六世紀にはキリシタン宣教師やスペイン、ポルトガル、オランダの商人も往 講 来し、「西欧」との交通もけっして幕末に率然としてはじまったわけではなかったのです。にも かかわらず、近代の主権国家のシステムの中に入る、という意味での「外国交際」は右のよう 251

5. 「文明論之概略」を読む 下

2. 直木孝次郎 竹前栄治奈良 02 日本史 林屋辰三郎 富岡儀八京都 塩の道を探る 世界史明治維新芝原拓自 鈴木良一 近代日本の民間学鹿野政直織田信長 日本国家の形成山尾幸久 島正元 西垣晴次江戸時代 お伊勢まいり 山茂夫 壬申の内乱 奈良本辰也 原田勝正吉田松陰 日本の国鉄 村井康彦 茶の文化史 / 泉信三 大江志乃夫福沢論吉 靖国神社 宮田登 神の民俗誌 田中正造 山井正臣明の舞台裏〔第一一版〕石井孝 盛田嘉徳 鈴木範久 ある被差別部落の歴史岡本良一内村鑑三 明治維新と現代遠山茂樹 森杉夫 藤井忠俊 藤村道生 日清戦争 黒田俊雄国防婦人会 寺社勢力 よ 古屋哲夫 日中戦争 山辺健太郎一 日韓併合小史 書日本中世の民衆像網野善 遠山茂樹・今井一 大江志乃夫高杉晋作と奇兵隊田中彰 昭和史〔新版〕 波徴兵制 清一・藤原彰 色川大吉文、昔 ! 「、井雅道 岩自由民権 中島健蔵 昭和時代 和久田康雄 日本の私鉄 長幸男 昭和恐慌 0 巨大古墳の世紀森浩一 岡義武 近衛文麿 牧英正本の歴史上・中・下井上 道頓堀裁判 太平洋戦争陸戦概史林三郎 上田正昭 原田勝正日本神話 満鉄 太平洋海戦史 高木惣吉 小林行雄〔改訂版〕 日本文化史〔第一一版〕家永三郎古墳の話 勝俣鎖夫日本国家の起源井上光貞 北山茂夫 日本旧石器時代芹沢長介萬葉の時代 北山茂夫 木簡が語る日本の古代東野治之大化の改新 ( 1986.1 )

6. 「文明論之概略」を読む 下

すことである。世界はまるいのだから、この仕事は ( 中略 ) 中国と日本とが開国したことで結末 がつくように見える」 ( 「中国にかんする手紙」 ) とのべているのと同じ事態を、日本の側から表現 していることになります。だからこそ新しい病患は重大なのです。 現在の日本はどこが病んでいるのか。政府の政令が行われないのか、納税状況が悪いのか、 こ、つい、つふ 人民の無智がひどくなったのか、官員様がバカでしかも不正をしているからか うに列挙していくと、今の日本は幕府時代からそんなに悪化しているとはいえない。それどこ ろか、むしろ前日に比して面目を一新した、とさえいえる。にもかかわらず困難に直面してい るというのは問題の発生がきわめて新しく、しかも従来の日本国のエネルギ 1 ではこの新しい ~ 病患に抵抗する力がないからだ、というのが福沢の診断です。 形 こうしてつぎの段では、この病患の実態の具体的叙述に入ります。それは大別して二つのポ の 国イントから成っています。 国第一は「外国交際」の経済上・貿易上の不利の問題です。 権第二は「外国交際」が日本国民の「品行」にあたえる衝撃、つまり行動様式や気風のレヴェ ルの問題です。 講 第 253

7. 「文明論之概略」を読む 下

我が日本にても、政治学術等の諸件を挙げて之れを文明なる欧人に附与し、我が日本人は奴隷と 為て使役せらる、も、日本の土地に差し響きあることなくして、然も今の日本の有様よりも数百 等を擢でたる独立の文明国と為らん ( 独立の文明国となった、という結論に陥ってしまうではな いか、という意味です ) 。不都合至極なるものと云ふ可し。 ( 文二五三ー二五四頁、全二〇三ー二〇四頁 ) さきのえせ「独立」の批判に対応するえせ「文明」の批判です。福沢の「報国心」が、日本 という土地への所属ナショナリズムではなく、いわんや政権への忠誠ではなくてーーー右の文の ポエープルべイ 「国」の名称のなかに政府が入っていないことに注意して下さい。ギゾーもしばしば人民と国 ~ とを互換的に用いておりますーー日本の人民が相集って自分で日本の権義を全うする、という 形民族自決主義であること、・ルナンのいう「ネーションの存在とは日々の一般投票である」 家 という定義と軌を一にするものであることが、ここにはっきりと示されています。この。ハラグ 国ラフと密接に関連するのが、こんどはずっと先にとんで福沢の大結論の一部をなすつぎの一節 権です。やはり文明の「外形」 えせ文明ーーを批判し、しかもそれを具体的に例示している ので、ここに一緒に掲げた方が分りやすいと思います。 講 第 ただ 唯文明とのみ云ふときは、或は自国の独立と文明とに関係せずして、文明なるものあり。甚しき ぬきん 287

8. 「文明論之概略」を読む 下

もどうしてもっと前にもってこなかったか、に不審を抱いても不思議ではないでしよう。 この問いに表面上の答えを出すことは簡単です。題名の上でつづく第九章の「日本文明の由 来」と対になっているからです。むろん福沢もそのつもりで題名をそろえたのかもしれません。 けれどもそれがすべてでしようか。 この第九章を第八章と読み比べると、表題の類似にもかかわらず、取り扱い方が両者で ( ッ キリと異な「ていることは読者のどなたにもお分りになるでしよう。「西洋文明の由来」の方 はギゾ 1 に依拠してーーきわめて自主的な取捨をしながらも ともかくギゾー『文明史』の 源順序どおりに、歴史的に「由来」を説明しております。ところが、第九章「日本文明の由来」 的の場合は、この題名を額面どおり受けとるならば、敢えていえば見かけ倒しなのです。その点 多では上巻でも言及した田口卯吉の『日本開化小史』の方がはるかに表題と内容との一致が見ら れます。 第九章はその個所であらためて申しますが、日本文明の「由来」についての歴史的説明には 一なっておりません。これをもって、福沢が歴史家でなかったためとか、当時はまだ日本文明の 歴史的由来を説くだけの史料がなか「た、という理由に帰するのは、私には皮相な見解と思わ 講 れます。ある意味では福沢は第九章では意識的に非歴史的にふるまっているのです。「権力の 第 偏重」という独特の大命題をかざして何百年にわたる日本史の歴史的発展を裁断しているので

9. 「文明論之概略」を読む 下

第十四講ヨーロツ。ハ文明の多元的淵源 第八章「西洋文明の由来」一 第十五講 トル・クラスの成長と英仏二大革命の背景 : ・ ーー第八章「西洋文明の由来」一一 第十六講「日本には政府ありて国民なし」 : ーー・第九章「日本文明の由来」一 第十七講諸領域における「権力の偏重」の発現その一・ 第九章「日本文明の由来」二 第十八講諸領域における「権力の偏重」の発現その二 : 第九章「日本文明の由来」三 ネーション 165

10. 「文明論之概略」を読む 下

的に西欧的国家体系の説明です。しかもそこで、西欧でも各国それぞれ風俗一言語のちがいはあ るけれども、そのちがいは、中国や日本対西洋諸国のちがいのようなものではなく「各国交際 たと つきあい の模様を譬へて云へば、日本の諸侯の国々にて互ひに附合するが如し」として、さきにも第十 九講で言及したような、幕藩体制における藩間外交の比喩を早くもこの段階で彼が用いている のはおどろくべき炯眼といわねばなりません。ただ、『西洋事情』の場合は、条約に基づく近代 的外交関係の一般的説明にとどまっていたのですが、『概略』においては、西欧的国家体系に日 本が加入するという問題の「問題性」を鋭くかっ鮮明に浮きあがらせているわけです。 結果的にいえば、二十世紀のはじめまでに西欧的国家システムに、自らの独立を失わずに構 成員となることに成功したのは東アジアでは日本だけでした。国際政治学者の・シー アディション が、日本は「西欧的国家システムへのもっとも最後の附加」であり、「ヨーロツ。ハ起源でない 人口をもっ唯一の列強」である、と言っている (). Schuman, The international politics. ー。ー戦後 初版の一九四七年版による ) のはそうした由来からです。これは実は今日でも「サッ ミト」など の解説をする際に、「西欧先進国および日本」というような不自然ないい方をしなければならな い歴史的背景でもあります。そこに内在する矛盾や問題性はまたあとで触れるつもりですが、 当面の私達の『概略』に戻っていうならば、日本が主権的国民国家として西欧的国家体系の一 員となることは、明治七、八年の福沢にとっては、また福沢の同時代人にとっては、まだ課題で 250